「2020世界平和経済人会議ひろしま」を開催しました
5回目となる今回は、COVID-19との闘い・共存を踏まえた「積極的平和」と「SDGs」について議論。テーマ別に4つの討議をCISCO社のWebExを通じて行いました。
【概要】
日時/令和2(2020)年8月8日(土)、10:00~18:05
場所/広島県庁(登壇者は各自の所在地から参加)
主催/ひろしま平和推進ネットワーク協議会
WEB参加者/761名
●基調講演 小林 喜光 株式会社三菱ケミカルホールディングス取締役会長
テーマ
「地球と共存する経営 ~ 不確実な経済環境に、どう立ち向かうか、企業価値向上に向けて何が必要か、国家が追求すべき価値とは何か~」
〇新型コロナウイルスで日本が気付いた点は、オンラインを使った診療や教育の普及と、それに伴う格差是正など、社会全体で「デジタルルネッサンス」を起こす気概が必要であること。
〇今回のパンデミックによる世界経済の成長率は大幅に低下した。それに伴い、今年5月の二酸化炭素排出量も削減されたが,経済成長の低下をこのまま継続させるわけにはいかない。また、リーマンショック後に排出量が再拡大したことを考えると、2040年まで年平均6.4%削減の目標達成は容易ではない。その方策として、地球の表面に溜まった二酸化炭素を減らすだけでなく、出してしまった二酸化炭素を元に戻すことも考えなければならない。その観点から、広島県大崎上島に整備された「カーボンリサイクル実証研究拠点」の今後の方向性や研究結果に期待したい。
〇当社は、資本の効率化を重視する経営、イノベーション創出を追求する経営、サステナビリティの向上を目指す経営の3つを軸に経営。その集合体が企業価値になる。
〇国家の使命は、GDPを中心にした経済の軸、AIやバイオなどを中心としたイノベーションの軸、教育・財政・環境エネルギーなど次代のサステナビリティの軸を最大化すること。
●セッション1
【ウィズ/アフターCOVID-19の「グローバル経済」と「格差」への対応】
〇今回の「コロナ」で、テレワークやテクノロジーを使った働き方が重要視されるなか、医療や介護などハンドオンでしかできない職種に所得・健康・安全面で格差が広がっている。今こそ、企業も足元の現実を見据え、グローバルな経済活動を行っていく必要がある。
〇西村康稔 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
今回「新型コロナ」は日本の弱いところ、とりわけデジタル化の遅れや非正規雇用の問題を突いてきた。今後は、時間ではなく成果で評価する「働き方改革」が求められる。
●セッション2
【都市化、工業化と気候変動等による平和のリスク】
〇SDGsの17の目標の一つ、「気候変動に具体的な対策を」。地球温暖化のスピードと社会の営みをいかに調和させるかが課題。社会の在り方として、これまでの集中化することで効率化を図ってきた時代から、分散化の時代へ向かいつつある。
〇小泉進次郎 環境大臣(ビデオメッセージ)
平和とは、人々が安定的かつ幸せに暮らしている状態のこと。環境を置き去りにした経済社会では、この平和を持続可能にしていけない。
●セッション3
【グローバル社会における自治体の役割】
〇自治体の役割は、常に顔の見える外交をしていくことで、国際的な平和や国際交流に貢献すること。
〇地方自治に求められるのは、現場、現場に適応した判断。
●スペシャル・セッション
【ウィズ/アフターCOVID-19の「人間の安全保障」と「平和×ビジネス×SDGs】
〇国と国が安全保障を担う時代から、個々の人間にとっての安全保障に重きを置く時代に来ている。経済活動も同じで、単に国境を前提として国家間で行うという考えでは通用しなくなり、新たなシステムを考えていかなければならない。
●総括パネル「2020広島宣言」
〇広島が被爆75年という節目の今年、ウィズコロナを踏まえた上で「経済と平和」の連携の重要性を再認識。今後25年の世界を視野に入れ、民主的で自由なビジネスの前提条件となる「積極的平和」実現のための行動を始めることを宣言する。
〇具体的な行動
【グローバル経済と格差への対応】
◎SDGsの目標「格差の縮小」「地球環境の保全」を企業経営に組み込み、インクルーシブな社会・経済をつくるように努める。
◎SDGs・ESGの視点に資する企業が金融機関・投資家から適切に評価され、消費者へのコミュニケーションを深めるように努める。
◎SDGsの観点を組み込んだ企業、金融機関・投資家が、その志を果たせるように努める。
【都市化、工業化と気候変動等による平和リスク】
◎経済人は「平和」が担保された社会変容の在り方を見据えた経済・金融活動を行うように努める。
◎大きなイノベーションや官民を含む新たな金融機能を活用し、気候変動に適切に対応する。
◎経済人は企業としての目標達成を目指すとともに、社会全体がwin-winとなるように努める。
【グローバル社会における自治体の役割】
◎「科学リテラシー」「足元のコミュニティへの関与」「偏見の除去と社会格差の縮小」といった視点を組み込んだ、グローバルに活躍するビジネスパーソンを育成するために、公共・民間教育を支援していく。
◎市民社会やコミュニティと密接な関係をもつ地方自治の役割をしっかり認識し、持続可能な平和の構築に寄与していく。
【人間の安全保障】
◎COVID-19を機に、人類を襲う未知のリスクと、それに起因する平和へのリスクを認識し、積極的に対応していく。
広島宣言全文を見る
●会議を振り返って
コロナ禍に大臣をはじめ、国内外のそうそうたる経済人や研究者が揃ったのは、オンライン開催だったからこそ。同会議の新たなスタイルとして、今後に注目したい。
このページに関連する情報
この記事に関連付けられているタグ