原爆投下から78年が経った2023年8月6日、広島平和記念公園で行われた平和記念式典へ、過去最多の111ヵ国の代表や岸田文雄首相が参列しました。また、一般参列者もおよそ5万人と、コロナ禍前と同規模となりました。そしてこの日の午後、国連訓練調査研究所(UNITAR)と広島県/へいわ創造機構ひろしま(HOPe) 、国連軍縮部(UNODA)は、核兵器のない平和で持続的な世界のために知恵を出し合う「アイデアコンペ 平和 × 〇〇 核軍縮と持続可能な未来」を開催しました。
このイベントには、広島を中心に、長崎や東京在住の学生を含めた10―20代の若者が参加し、ブレーンストーミングやグループごとのプレゼンテーションを行う第一部と、第一部のプレゼンテーションで選抜されたチームが3名のパネリスト(中満泉 氏(国連事務次長・軍縮担当上級代表)、隈元美穂子 氏(UNITAR持続可能な繁栄局長兼広島事務所長)、湯﨑英彦 氏(広島県知事/HOPe代表))の前で発表を行う第二部という、二部構成のアイデアソン(idea+marathon=グループごとにアイデアを出し、競い合うイベント)として実施しました。
パネリスト等が登壇する第二部で選抜チームによるプレゼンテーションが行われた後、パネリストがアイデアの深化や実現に向けたフィードバックを提示しました。
湯﨑広島県知事は、「問題解決のためには課題の裏返しではなく、原因を分析し、仮説を立て、根底にある課題を考えるということが重要です。」と課題原因を考察・分析していくことの重要性を述べました。
また、中満国連事務次長は、「戦略的フォーサイト (先見性) と呼ばれる、まず理想的な未来を描き、それを実現するためのアプローチをとる手法を取り入れて議論することは重要です。」と理想の未来から逆算し、現時点で何をすべきか考えて行動していくことを実践してもらいたいと激励されました。
隈元UNITAR持続可能な繁栄局長は、「今回のようなイベントへの参加を通じて仲間を作り、知識やプレゼンテーション能力を高めていってほしいと思います。」と、様々な学びを続けていくことの重要性を述べられました。
また、発表終了後には、長崎と東京で平和への取組を活発に行っている2名の参加者から、取組の概要や思いについて以下のとおり紹介してもらいました。他の参加者もその様子を熱心に聞き入っており、平和活動への機運醸成に繋がったように思います。
野尻 稀海 さん は、大学でピースキャラバン隊サークルに所属し、その活動を通じて、「被爆者の高齢化が進み、被爆体験を直接聞ける機会が減少していく中で、私たちがそのバトンを繋いでいくのは非常に重要なことだと活動を通じて実感しました。」などと述べられ、被爆者の願いを受け継ぎ、これからも自分なりの形で活動を継続していく決意を新たにされました。
アニタ・セハガル さんは、国連開催のイベントや、被爆者の講話等を通じて核兵器廃絶に興味を持つようになったことを説明し、 「戦争に勝者はなく、誰もが負けるのです。考え方と考え方の戦いなのです。私たちは共に、核兵器のない世界を作ることができるのです。」と核兵器の無い理想の世界の実現に向けた熱意を述べられました。
イベントが終わった後も、会場の熱気が冷めることは無く、参加した若者は熱心にパネリストに質問をしたり、記念撮影をする等していました。国連及び被爆地広島のリーダーが、自分達と同じ目線に立って話し、接することは、若者にとって得難い経験になったように思います。このイベントでの経験が、今後彼らが様々なことにチャレンジする上で、その一助となることを切に願います。
※『アイデアコンペ 平和 × 〇〇 ― 核軍縮と持続可能な未来』の様子は、YouTubeで見ることができます