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国際平和拠点ひろしま

International Day against Nuclear Test核実験に反対する国際デー

8月29日は核実験に反対する国際デーです。

これは,カザフスタンにあった旧ソ連最大の核実験場であるセミパラチンスクが1991年に閉鎖されたことを記念して設けられました。セミパラチンスクでは1949年から1989年までに地上26回,空中87回,地下346回,合計459回の核実験が行われました[i]。核実験により犠牲になった方々や影響を受けた人も多くいます。

今回は,核実験の数,影響,国際的枠組みなどについて紹介します。

[i]広島平和科学, セミパラチンスク核実験場近郊被曝証言の日本語版全文データベース化, 2003, https://home.hiroshima-u.ac.jp/heiwa/JNL/25/kawanoetal.pdf

核爆発実験の数

1945年7月16日に米国が最初の核爆発実験を行い,1945年8月6日に広島,8月9日に長崎に原子爆弾が投下されました。その後,核兵器を保有する国は増え続け,現在までに少なくとも,中国,フランス,ロシア,英国,米国,インド,パキスタン,北朝鮮の8か国が2,056回にのぼる核爆発実験を行いました。核兵器の保有有無を公表していないイスラエルについては,核爆発実験の実施の可能性についても言及していません。

核実験は,カザフスタンのセミパラチンスク以外にも,中国のロプノール,太平洋諸島,米国のネバダ,アルジェリアなど核兵器国の首都から離れた場所で行われました。

核爆発実験の数

Arms Control Association, The Nuclear Testing Tallyを基に作成

https://www.armscontrol.org/factsheets/nucleartesttally

米国の核爆発実験の数には,広島・長崎への原爆投下は含まれない。

核実験による影響

広島大学原爆放射線医科学研究所が2002年7月にセミパラチンスクの被曝者を対象とした健康と被曝の実態に関する調査を行った報告書「カザフスタン共和国セミパラチンスク被曝実態調査報告書」が発行されている。報告書の「セミパラチンスク核実験周辺地域住民に対する健康状態聞き取り調査の結果ならびに文献的考察」の中で次のように記されている。

「広島・長崎における放射線被曝と疾患の発生率との因果関係についてはこれまでに詳細な疫学的検討が行われており、原爆放射線により悪性腫瘍(白血病、甲状腺癌、乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌、多発性骨髄腫)、副甲状腺機能亢進症、白内障等の疾患発生率の増加が認められている。それ以外の生活習慣病等を含む多岐の疾患に関しても放射線と有病率の関係を中心に、多施設で比較・検討が行われている。一方、セミパラチンスク地区での核実験被曝による後障害について目を向けるとこれ迄に甲状腺疾患と悪性腫瘍についての論文の報告があるものの、我々が検索した範囲ではそれ以外の疾患についての報告は確認することが出来なかった。また、我々の報告の様に住民からの聞き取り調査を行ったという論文も認められなかった。セミパラチンスクにおける核実験被曝の形態は広島・長崎の被曝と比べて、複数回に渡る低線量放射線被曝であり、爆風や熱線による傷害がないという点において大きく異なるものの、類似の放射線後障害が起こる可能性も推測されることから網羅的に多岐の疾患に渡って被曝の影響を比較検討することは広島・長崎の被曝の後障害を考える上でも意義があると考えられる。」

また,同報告書の「セミパラチンスク核実験場近郊での被曝証言調査の結果ならびに被曝証言の内容分析」の中では,被曝証言として次のことが掲載されています。

  • 私は25年間、サルジャルにある地区病院に勤めた。年に平均2、3人が癌でなくなり、ある年は、4、5人が亡くなった。これらの苦しんだ患者ばかりではなく、私自身も苦しみました。1989年にサルジャル村の人口は3500人でしたが、自殺者も多いでした。実験場は人間の体を圧迫すると強く感じます。私の孫は、生まれつき身体障害者です。この土地は汚染されましたが、これは私達が生まれた土地であり、私達はここから離れたくありません。政府は、私達に援助すべきです。
  • 核実験の有害性については全く知らなかった。実験の後で発生した湖で泳いだ。現在の私のすべての病気は核実験が原因である。
  • 実験の時には地面が揺れた。煙突を閉じて、窓のカーテンを閉めた。地面に伏せなさいと命じられた。あの時代の思い出はひどい。思い出したくない。この実験を次の世代は見ないように。

 

核実験に関する国際的枠組み

核実験に関する国際的枠組みとしては,部分的核実験禁止条約(PTBT)と包括的核実験禁止条約(CTBT)があります。PTBTは地下での核実験が禁止されておらず,核開発を抑止する効果は限定的な条約でした。一方,CTBTは,あらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止していますが,中国,エジプト,イラン,イスラエル,米国の未批准などが続いているため条約は発効していません。また,CTBTは核爆発を伴わない核実験は禁止していません。

詳細は,https://hiroshimaforpeace.com/ctbt/ をご覧ください。

中国,フランス,ロシア,英国,米国の5核兵器国,インド及びパキスタンCTBTの発効まで核爆発実験を自主的に停止する核爆発実験モラトリアムを維持しています。北朝鮮は,2018年5月に核実験の凍結を発表して以降,核爆発実験を実施していませんが,核実験場が不可逆的に使用不能になったかは不明であると言えます[i]

 

 

広島県の取組

広島県は,核爆発を伴わない核実験を含めいかなる核実験も認めていません。核実験の実施が判明した場合には,抗議文を送付しています。

核実験に対する抗議文は以下をご覧ください。

https://hiroshimaforpeace.com/abolition-of-nuclear/effortlist/ 

 

[i] ひろしまレポート2020,https://hiroshimaforpeace.com/hiroshimareport/report-2020/page-11/

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ひろしまレポート

2013年から核軍縮に向けた各国の取組状況を分析・評価しています。本レポートを国内外に発信し,核軍縮に向けた各国の取組状況を広く示すことで,国際社会における核兵器廃絶のプロセスが一歩ずつでも着実に前に進むことを期待し発行しています。

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