オンラインで被爆者と 双方向の語らいの場
平和記念公園からほど近い場所に位置する『Social Book Cafe ハチドリ舎』では2017年7月のオープン以来、毎月6日、16日、26日に「「6」のつく日 語り部さんとお話ししよう!」(以下、語り部の会)というイベントを開催し続けています。ハチドリ舎の店主であり、イベントを主催する安彦恵里香さんにお話を伺いました。
ハチドリ舎オープン以来3年半続くイベントには、これまで多くの方が戦争や被爆体験を語ってきた
「6のつく日 語り部さんとお話ししよう」では、ただ被爆証言を聞く会ではなく、参加者が自分のことや考えも話す、双方向のやりとりをしてほしいと思っています。現在、証言をしてくださっている被爆者の方々は、私が働いていたピースボート(※)を通じて知り合い、仲良くなった人たちです。私のお友だちであるおじいちゃんの頭の上に原爆が落とされたと思うと、戦争や原爆に対する私自身の捉え方が変わって、原爆がより身近になりました。
社会問題について語る場と交流の場を作ることを目的として始めたハチドリ舎では、オープン前からこのイベントの構想をしていて、グランドオープンの日に第一回目を開催しました。この会に参加する方に、遠い昔に起きた出来事としてではなく、目の前で語る人に起きた事であること、その歴史は続いている事を体感してほしい。そして、できれば友達になってほしいと思っています。
※ピースボートとは、国際交流を目的として設立された日本の NGO が企画している船舶旅行。貧困や震災で苦しむ地域を訪れ、日本からの支援物資を届ける UPA プロジェクトや、広島や長崎の被爆者と航海をしながら世界中で平和の大切さを伝える活動(おりづるプロジェクト)など、多岐にわたって活動している。
この日は、オンラインでの開催。安彦さん(右)と瀬戸さん(左)も話に耳を傾ける
新型コロナウイルスによる影響が出る前までは、被爆者と被爆体験伝承者に開店から夕方までハチドリ舎にいてもらい、参加希望の方が来たら席にお通して、同じタイミングで来た方と一緒に話してもらうという形をとっていました。海外の方が来たときはスタッフの瀬戸麻由が通訳をします。これまで様々な年代で、海外の方も含め1400人以上の方がこの回に参加してくださいました。
被爆者や伝承者たちは「核兵器が二度と人に使われないように」という同じ思いを持ち、私の「語ることができる場所作り」というコンセプトに共感してくれて一緒に活動しています。
コロナ禍では、ご高齢の方たちにハチドリ舎まで来ていただくことが難しくなりましたが、早い段階でウェブ会議サービス「Zoom」を使ったオンラインでの開催に切り替え、コロナが落ち着いていた時期にはオンラインとリアルを同時開催。状況次第ではオンラインのみという形で現在まで開催を続けています。
今後についても「続けること」を一番に考えています。コロナの影響で参加者が大幅に減った日もありましたが、そもそも、人がたくさん来ないと良いイベントじゃないという考えはありません。一人でも参加者が来てくれて、その人が本当に大切なものを持って帰ってくれたら大成功だと思っています。この場所が大切で、このイベントに限らず、他のイベントでも「語る場所があることで救われる」と言ってくれる方たちがいるので、これからも永く続けて行きたいです。
今後についても「続けること」を一番に考えています。コロナの影響で参加者が大幅に減った日もありましたが、そもそも、人がたくさん来ないと良いイベントじゃないという考えはありません。一人でも参加者が来てくれて、その人が本当に大切なものを持って帰ってくれたら大成功だと思っています。この場所が大切で、このイベントに限らず、他のイベントでも「語る場所があることで救われる」と言ってくれる方たちがいるので、これからも永く続けて行きたいです。
(プロフィール)
安彦恵里香(あびこ・えりか)
Social Book Cafeハチドリ舎店主。ピースボート勤務ののち、広島へ移住。2017年7月に『Social Book Cafe ハチドリ舎』オープン。核兵器廃絶へ向けての活動を続けるとともに、ハチドリ舎では社会の問題を真面目に語る場を提供することを大切にしており、毎月約30ものイベントを開催し続けている。
瀬戸麻由 (せと・まゆ)
ハチドリ舎スタッフ。シンガーソングライター。核兵器廃絶に向けて取り組む団体,「カクワカ広島」「すすめ!核兵器禁止条約プロジェクト」の中心的メンバーでもある。「6のつく日 語り部さんとお話ししよう」では進行役や通訳を担当。
カクワカ広島
https://kakuwakahiroshima.jimdofree.com
すすめ!核兵器禁止条約プロジェクト
Social Book Cafeハチドリ舎
電話番号:082-576-4368
住所:広島市中区土橋町2-43-201
営業時間:15:00~18:30(水~金曜)、11:00~18:30(土・日曜、祝日)
休:月・火曜
※6の付く日は曜日関わらず11:00~営業(定休日に営業した場合、その週の水曜休み)
HP:http://hachidorisha.com/ (イベントの詳細などもこちらから)
(「6」のつく日 語り部さんとお話ししよう!のWEB参加申し込みは、上記のホームページ内イベントカレンダーの申し込みフォームより。参加無料)
「6」のつく日 語り部さんとお話ししよう! 参加レポート
2021年1月。完全オンラインでの開催となった「6のつく日 語り部さんとお話ししよう」に参加しました。
この日の語り部は岡本忠さん(76歳)。参加者一人ひとりの自己紹介の後、岡本さんがZoom上でスライドを用いて、自らの被爆体験を語ります。1歳半で被爆したという岡本さんに当時の記憶はなく、叔父が残した体験記や資料をもとにお話しされました。
岡本さんが被爆したときに負った腕の傷を、最近になって写真入りで紹介するようになったとのこと。記憶はなくても、傷跡は75年経った今もはっきりと残っているのです。
参加者からは「私も原爆について何か発信したいという気持ちでいっぱいだけど、私が発信していいのかという葛藤がある」という意見も出ました。岡本さんは「自分できちんと調べたことなら、ぜひ発信してください」と答えていたのが印象的でした。
イベントを終えて「証言を聞いて、次にこうしたい! という思いを語ってくれたのがうれしかった」とハチドリ舎スタッフの瀬戸さん。
これまでもこの会に参加したことで安彦さんと瀬戸さんが関わる「カクワカ広島」や「すすめ!核兵器禁止条約プロジェクト」の活動をお手伝いするようになった若者もいるそうです。ハチドリ舎の思いが「6のつく日 語り部さんとお話ししよう」を通して広がっていくのを感じました。
平和学習
核兵器について考える若者たち「カクワカ」
この記事に登場する核兵器廃絶に向けて活動する「カクワカ」。 各国の核政策や核兵器のない世界の実現に向けて活動しています。彼らの活動について、代表者の田中美穂さんに話を伺いました。
核兵器について考える若者たち「カクワカ」SDGsの観点から見るハチドリ舎
SDGsに取り組む企業紹介:「未来につなげるSDGsとビジネス~広島における企業の取組現場から~」でハチドリ舎の取り組みを紹介しています。
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