復興を支えた被爆電車 第2回
相生橋の復旧工事。昭和21年撮影(所蔵/きしもと写真館・岸本坦、提供/広島市公文書館)
被爆後の広島の街で復興へと向かう市民の支えとなったのは、被爆による損傷から復帰した路面電車たちでした。前回紹介した651号もそのうちの1両ですが、その同系車両も、やはり市民の足として活躍したのです。
その「650形」の兄弟をご紹介しましょう。
今も現役で走る652号
(撮影/長岡耕治)
650形の次男にあたるのが652号。宇品近くで被爆しましたが、爆心地から4㎞ほど離れていたため軽度の損傷で済みました。8月のうちには修復を終えて復帰し、被爆以前と同じ宇品の区間を走ったと思われます。以来、長兄の651号と同様に、現在に至るまで幾度も改修を受けていて、今も現役で広島の街を走り続けています。
平和学習に活躍する653号
(提供/中国放送、広島電鉄)
653号は爆心地から3kmほどの地点、江波付近で被爆し、大破しました。復帰を果たした1945年(昭和20年)12月以来、60年以上にわたって運用されましたが、2006年(平成18年)、ダイヤ改正を機に一線から退き、休車扱いとなりました。
ですが2015年(平成27年)、「被爆電車特別運行プロジェクト」によって現役復帰し、イベント車両へと生まれ変わりました。その際、車体は被爆時と同じ配色である灰色と青色に再塗装。車内にはモニターが設置され、被爆者の証言や広島の復興の様子を見ることができます。現在ではその設備を活かし、平和学習のための貸し切り車両として活躍しています。
展示車両となった654号
(撮影/橋本真宏撮影)
653号と共に江波付近で被爆したのが654号です。1946年(昭和21年)2月に復帰しましたが、やはり2006年(平成18年)のダイヤ改正により現役を引退、除籍となりました。
その後、被爆電車の1両として広島市に贈呈された654号は、653号と同様に往時のカラーに塗りなおされ、現在はヌマジ交通ミュージアムで屋外展示されています。原則毎月第3土曜日には車内も公開されているので、見学に行かれてみてはいかがでしょう。
他にも存在した被爆電車
「650形」の末っ子で、広島駅前で被爆した655号は損傷が激しく、修理が完了したのは1948年(昭和23年)11月のことでした。その後、兄弟車両たちと共に市民の足として働き続けましたが、1967年(昭和42年)1月、大型トラックと衝突して大破、廃車となってしまいました。
現在、貸し切りも含めて運行されている被爆電車は、651号、652号、653号の三両のみとなりました。ですが、被爆による損傷から復帰し、市民の足となり復興に貢献した車両は、まだ他にもありました。それらもまたの機会に紹介できればと思います。
ヌマジ交通ミュージアム
住所:広島市安佐南区長楽寺2-12-2
電話:082-878-6211
営業時間:9:00~17:00
休:月曜日(休日の場合は開館し、原則火曜日と水曜日を休館)、休日の翌平日、年末年始(12月29日~1月3日)、その他臨時休館あり※詳しくはホームページなどでご確認ください
料金:大人510円、高校生相当・シニア(65歳以上)250円、中学生以下無料
HP:http://www.vehicle.city.hiroshima.jp/
(この記事は下記の書籍を元に制作しました)
制作協力:広島電鉄(2017年発刊)
価格:2500円+税
ISBN:978-4862505279
原爆投下のわずか3日後から、次々に運行を再開した広島の路面電車。”営業運行される歴史モニュメント”被爆電車の実録ビジュアル・ブック。
平和学習事業の紹介
広島の復興について知る:「広島の復興の歩み」
小冊子「広島の復興の歩み」では、路面電車の復旧の様子も含め、被爆後の広島がどのように復興したのか解説しています。
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