「環境問題、気候変動問題に対して多くの人が関心を持てば、結果的にそれが世界平和につながると信じています」と、精力的に環境活動、平和活動を続けている広島県出身の大学生・奥野華子（おくの・かこ）さん。未来を担う若者たちが、どんな気持ちでさまざまな問題と向き合っているのか、お話を伺ってきました。

　高校生まで広島市内のごく普通の学校に通い、平和教育を受けてきたという奥野さん。そのころから、平和記念公園のガイドツアーや修学旅行生向けのプログラムの運営をしている、PCV（Peace Culture Village）で平和活動をしていました。あるとき「核兵器は核抑止のための必要悪だ」という考え方に触れ、ショックを受けたそうです。

　その後、東京の大学に進学し、地球環境問題に取り組む活動に参加。同世代の若者たちと交流するなかにも、一つの違和感があったそうです。

　「地球環境問題について一緒に活動する全国の同世代の人たちと話をしたとき、意外にもみんな原爆のことをあまり知らなかったんです。核エネルギーに対する知識はあるけど、広島で起こった原爆のことについては、『過去に悲惨な出来事があったんだ』という程度の認識しかないようでした」

国会議事堂前でのスタンディングアクション（2021年）

　現在、平和記念公園でのガイドツアーなどPCVを中心とした平和活動に積極的に参加し、さらに、気候変動を訴える「Fridays for Future」の広島支部を立ち上げ、同世代の若者たちと一緒になってさまざまな取り組みを続けています。

　Fridays for Future とは、2018年に当時15歳だったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが、気候変動に対する行動の欠如に対する抗議の座り込みを行ったことをきっかけに始まったもので、より多くの方に気候変動危機を考え、行動を始めてほしいという運動です。奥野さんはじめ、その考えに共感した日本の若者たちが手を取り合い、地球環境の未来のために働きかけています。

「2019年9月には、『グローバル気候マーチ（行進）』と題して、世界同時に700万人もの人が参加して環境危機を訴えました。選挙のときには、立候補者に質問状をお送りして、環境に対する考えや取り組みを伺ったりもしています」

グローバル気候マーチin広島（2019年）

コロナ禍で密を避けるため、グローバル気候マーチの代わりに行ったシューズアクション（2020年）

　奥野さんが取り組む、「平和活動」と「地球環境問題」。この二つがどうつながっていくのでしょうか。そこには、実に明確でわかりやすい答えがありました。

　「人の暮らしや命を脅かす、台風や大雨、飢饉などといった自然災害。これは地球温暖化によって引き起こされると言われています。そして暮らしを脅かす災害が原因となり、やがて戦争に発展してしまうおそれは十分に考えられるのです。逆に暮らしの安定によって、戦争のない平穏な世界を作り出すことができます。地球環境問題に取り組むことにより、戦争のない世の中が実現できると信じて、たくさんの方たちと活動を続けているんです」

　一緒に活動する仲間たちにも、ガイドツアーなどの経験で得た原爆に対する知識や考え方、被爆者の体験談などを伝えることを忘れていません。

　「普段は東京にいる私が、広島の声を伝えることはとても大切な役割だと考えています。被爆者の方たちの生の声を聞けるのは、きっと私たちの世代が最後になると思います。その声をできるだけ多くの人につなげ、もっと広島のことを知ってもらいたいです」

　この奥野さんの思いは、原爆に対する広島県外の若者たちの意識変化に、大きく影響を与えているはずです。

平和公園での修学旅行生へのガイドツアーの様子

「みんなで声を上げたら、社会が変わった！　私自身もそんな体験をしていきたいし、一人でも多くの方たちにこの体験をしていただけたらうれしいです」

　2022年3月25日には「世界気候アクション」と題し、各国のリーダーたちに気候危機を防ぐための具体的な取り組みを求めるさまざまなアクションが、世界各地で同時に実施される予定です。若者たちの動向に注目し、そして共に歩んでみませんか。

PCV（Peace Culture Village）

住所：三次市甲奴町福田26番地

HP：https://peaceculturevillage.org/

Fridays for Future Hiroshima

Twitter：@FFFHiroshima　

Instagram：fridaysforfuturehiroshima　

HP：https://fridaysforfuture.jp/　（Fridays For Future Japan）