写真と文章で被爆者と出会い その人生を感じる
被爆者一人一人の人生や言葉を記録し、本人のポートレートと共に紹介する「ヒロシマ、顔」プロジェクト。2022年5月までに5名の方にお話を伺い、5冊の冊子にしてまとめてきました。5月9日~11日には、広島市中区上八丁堀にある「gallery G」において、『「ヒロシマ、顔」写真展』が開催されました。このプロジェクトを推進するNGO団体ANT‐Hiroshima理事長の渡部朋子(わたなべ・ともこ)さんと、制作に携わる方々にお話しを伺ってきました。
ANT-Hiroshima理事長の渡部さん
このプロジェクトが始動したのは、2018年のこと。それまでもANT‐Hiroshimaでは映像や音声で、被爆された方々を記録する活動は続けていましたが、被爆体験だけではなく、お一人お一人の人生を写真と文章で残していこうという思いを形にしました。
「どうやったら若い方、より多くの方に被爆者に出会っていただけるか、そのメッセージを伝えられるかを考えたときに、私の力だけでは限界があります。そうしたときに、ここにいる方たちのアイデアや力を貸してもらえることで、さらにその輪が広がり、一つの冊子という形になったんです。」と話す渡部さん。この冊子の写真を撮り続けている写真家の石河真理(いしこ・まり)さんとの出会いが、このプロジェクトが始動するきっかけだったと話します。
撮影を担当した石河さん
「このプロジェクトを始める前に、被爆者でもある坪井直(つぼい・すなお)さんの写真を、個人的に撮らせていただいていたんです。そこで坪井さんからすごく影響を受け、写真を撮ることで私ができることは一体何だろうと、より考えるようになりました。」と石河さん。
そこで渡部さんと話をするうちに、多くの人が手に取ることのできる冊子という形が一番理想的だという結論に至りました。
「坪井さんをはじめ、被爆者の方々は皆さんすごく愛情深く、優しく接してくださいます。過去の辛くとても大変な体験を聞きに伺っている私たちを逆に気遣っていただいたり、ねぎらいの言葉を掛けていただいたり。皆さんが見せる豊かな表情、優しさ、温もりを写真で表現することが、私にできることなんだと思うようになったんです。」
冊子に収められている、石河さんが撮った被爆者の方々の写真は、凛とした空気の中にもどこか温かくやわらかな雰囲気が漂っています。
第一号の岡田恵美子さんの冊子
文章を担当した後藤さん
そして、そんな石河さんの写真に乗せる文章は、ライターの後藤三歌(ごとう・みか)さんが担当しています。
「このプロジェクトは、私の人生観がガラリと変わることだらけでした。これまで『被爆者』という、なにか目に見えない特別な枠組みを、勝手に作ってしまっていた自分に気づかされたのです。」
被爆者の方々に直接会って話を聞き、たくさんの関わりを持つことで、これまで後藤さんが抱いていた思いが大きく変わりました。
「人生の中で、『被爆』という体験をされた方々。たしかに特別な体験であり、しっかりと伝えていかないといけません。でも決して特別な人ではないんです。一人の人間として向き合い、その方たちがこれまで歩んできた時間を、この冊子を通して感じていただければと考えています。」
現在5名分が発行されている「ヒロシマ、顔 プロジェクト」の冊子。これからも取材・撮影を続け、さらに多くの方々の人生を紡いでいく予定です。また、9月24~27日には広島市中区袋町にある広島市まちづくり市民交流プラザで、写真展が予定されています。
ヒロシマ、顔プロジェクト
https://faces-hiroshima.com/about/
※冊子やイベントのお問い合わせはANT‐Hiroshimaまで
ANT-Hiroshima
TEL:082‐502-6304
住所:広島市中区上八丁堀8-14 安芸リーガルビル5F
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