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国際平和拠点ひろしま

被爆後の復旧工事直後の姿に復原されたモダン空間を一般公開
旧日本銀行広島支店




広島電鉄「袋町」電停の目の前に建つ、地上3階・地下1階建ての風情ある建築。旧日本銀行広島支店は、1936(昭和11)年に建てられ、爆心地からわずか380メートルの近距離で被爆した被爆建物です。現在は広島市の重要有形文化財に指定され、日本銀行からの無償貸与を受け、広島市が管理。2022(令和4)年3月7日から復原改修工事が行われていましたが、2023(令和5)年9月15日に完了し、内部が無料公開されています。


入口から入ってすぐの多目的スペース(旧一般事務室)に立つと、2層吹き抜けの大空間に、銀行窓口が残っている姿を見ることができます。かつては、多くの働く人や顧客で賑わっていたことが想像されます。案内してくれた広島市市民局文化スポーツ部文化振興課の芳原 拓実(よしはら たくみ)さんによると、昨年までの工事は、建物の文化財的価値を高めるため、被爆の痕跡を残しつつ、資料が残っている被爆後の復旧工事直後の状態に復原することが目的でした。


1階から2階にかけて吹き抜けになっている多目的スペース(旧一般事務室)。厳かな雰囲気が漂う


内装の壁は白から当時の色調である淡いクリーム色に塗り替えられ、鉄製の一部の建具枠等はブラウンの杢目塗装を再現。改修前と比べると、昔の映画に出てくるようなレトロな雰囲気に。当時は大きな柱の柱頭にも装飾が施されていたとのことで、より華やかでモダンな空間だったのでしょう。古典主義的意匠を残す、広島の昭和初期を代表する歴史的建築物としても一見の価値があります。


木製の建具枠のように見えるが実は鉄製。特殊技法(杢目塗装)を施し当時の姿を再現している


多目的スペースの天井には、天窓のような照明がつけられています。かつては本物の天窓で、被爆した際は爆風でガラスが割れ、被災直後の混乱の中、行員の皆さんは雨が降れば傘を差しながら、市民の要望に応えて働いていたそうです。建物だけは残ったものの、内部の窓枠や欄干などはすべて吹き飛ばされ、建物内で職員18名が被爆し、8名が亡くなる甚大な被害を受けました。

それでも、地下金庫は無事だったため、被爆翌日の8月7日には市内の銀行代表者がこの建物に集まり、翌8日からは他の11銀行とともに、内部を共同で使用しながら業務を再開しました。まさに広島の復興を資金面で支えた人々の歴史が、この建物に刻まれています。


案内をしてくれた広島市の芳原さん




建物内を歩くと、内部は想像以上に広く、入り組んでいることがわかります。見どころは、2階の旧支店長室と旧支店長応接室。旧支店長室は今回の復原改修工事で、二重天井を撤去し、創建当時の天井形式を再現するとともに、天井や壁を当時の色調に塗り替えています。床には幾何学模様の寄木張りの装飾も残り、当時一流の豪華な部屋だったことがわかります。旧支店長応接室は、旧日本銀行広島支店の被爆前の写真や被爆時の様子を写真やパネルで展示しており、当時の様子を知ることができます。また、食堂や3階の旧会議室も、時期によって企画展などが開催されるフリースペースとして公開されています。


かつて支店長室だった2階の展示室。今回の改修工事では二重天井を撤去したことで創建当時の天井が見えるようになった


被爆前の写真や被爆時の様子を写真やパネルで展示している(旧支店長応接室)


広島市では、この貴重な被爆建物を広く市民の芸術・文化発表の場として親しんでもらうため、企画展やコンサート会場として貸し出しています。この取り組みは改修工事前の2001(平成13)年からスタートし、多目的スペースでのクリスマスコンサートやポーランドのワルシャワ蜂起に関する展覧会などが開催されてきました。街中でアクセスも優れ、改修工事で建物の雰囲気がさらに良くなっていることから、今後、より広く親しまれていくでしょう。

地下には旧金庫室を利用した広島市所蔵資料常設展示も。地下金庫の分厚い扉などを見学しながら、被爆前後の広島市の歩みや海外移民について、当時の写真や資料を通して知ることができます。

今回の復原改修工事は、国の重要文化財指定に向けた取り組みの一つ。文化財としての価値を高める一方で、コンサートや展示によって、より多くの人々に訪れてもらい、その歴史を体感してもらうことが、建物の存在意義をさらに高めることにつながります。ここを目的に訪れるのはもちろん、街で少し時間があいたときにも、ぜひ立ち寄ってみたい施設です。



【問合せ】

旧日本銀行広島支店

広島県広島市中区袋町5−21

082-504-2500(広島市市民局文化スポーツ部文化振興課)

開館時間 10:00~17:00

休館日 12月29日~1月3日

入館料 無料


【地下1階展示室】

開室時間 10:30~16:30

休室日 月曜 ※祝日の場合は翌平日

入室料 無料

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