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国際平和拠点ひろしま

Leaning from Hiroshima’s Reconstruction Experience: Reborn from the Ashes vol1II 戦後広島の保健・医療の推移

1 死因別等からみた広島市の特徴

昭和26(1951)年から同50年までの広島市の死因別順位の推移を示した表7―3によると,26年はそれまでと同様に全結核が第1位を占めているが,27年からは悪性新生物,35年からは中枢神経系の血管損傷が1位となっている。このほか5位以内に登場する死因としては,不慮の事故,心臓の疾患,老衰などがあげられる。

こうした状況を表7―4により全国と比較すると,広島市の場合,死因別5位内で死亡する10万人当たりの患者が少ないなかで,悪性新生物と不慮の事故での死亡順位の高いことが目につく。とくに悪性新生物の場合,全国的には昭和30年になって初めて2位となるのに対し,広島市では27年から34年まで1位であり,一貫して死亡率が上昇している。しかも死亡率を全国と比較すると,たとえば30年の場合,87に対し103というように広島市が著しく高いという興味深い現象がみられる。

広島市と全国の人口動態率をみると,出生率が低く,死産率が高いという注目すべき現象がみられる。なお死亡率,乳児死亡率,新生児死亡率はいずれも全国平均より低い25)。

2 医療機関の動向

昭和20年代の広島県内の医療機関を経営形態別に分類すると,昭和23(1948)年から28年にかけて,病院数が91から106へと1.2倍に,診療所数が1,406から1,535へと1.1倍に,病院の病床数が昭和25年から28年にかけて4,501から6,718へと1.5倍に増加している26)。こうしたなかで広島市の医療機関は,昭和26年から30年にかけて病院数が43から51へと1.2倍に,一般診療所数は232から307へと1.3倍に,歯科診療所数は151から164へと1.1倍に,病床数は病院が2,176から3,135へと1.4倍に増えている27)。これをみると,広島県全体に比較して広島市の診療所数の増加が多いことが分かる。

次に昭和31年から50年までの広島県の医療機関を示すと,病院が168から246へと1.5倍に,一般診療所が1,397から2,011へと1.4倍に,歯科診療所が671から781へと1.2倍にいずれも増加している。さらに10年ごとに区切ると,31年から40年までに病院が1.4倍,41年から50年までに1.0倍,一般診療所は1.3倍から1.1倍,歯科診療所は両時期とも1.1倍となっている28)。

このように広島県の医療機関が変動するなかで,広島市の医療機関は,同じく31年から50年まで病院が55から82へと1.5倍に,一般診療所が336から741に2.2倍に,歯科診療所が164から296に1.8倍に増加している。また10年ごとの動向をみると,病院は31年から40年までに1.3倍,41年から50年までに1.1倍,一般診療所がそれぞれ1.4倍と1.5倍に,歯科診療所が1.2倍と1.4倍になっている29)。広島県全体と比較すると,病院数は差異が認められないが,一般および歯科診療所の増加が大きい。

一方,医療機関と同じ資料により広島県の病床数の推移をみると,昭和31年から50年までに病院は1万3,278から2万7,655床へと2.1倍に,一般診療所は2,366から6,656床へと2.8倍に,両者とも大幅な拡大を示しているが,診療所の伸びの方が上回っており,病院以上に有床診療所の増床が大きかったと推測される。さらに10年ごとの動向をみると,病院が31年から40年にかけて1.6倍,41年から50年までに1.2倍と前者の伸び率が大きいのに対し,一般診療所は1.6倍から1.8倍へと後者の方が高くなっている。

同様の方法で広島市の医療機関の病床数をみると,20年間に3,337床から9,202床へと2.8倍に増加した。またこのうち昭和31年から40年に1.6倍,42年から50年までに1.3倍になった。これをみると広島県を大幅に上回る増床をしており,病院の大規模化が進展したことがうかがわれる。なお病院数を上回る増加を示した診療所の増床も県全体を相当上回ったものと思われるが,実態を確認する資料が得られなかった。

最後に1951年から75年までの広島市の医療従事者の動向を追うと,この25年間,医師は495人から1,626人へと3.3倍に,歯科医師は173人から498人へと2.9倍に,薬剤師は277人から861人へと3.1倍に増員されている。これをみると増床数を少し上回る傾向を示しており,医療の質的向上への努力がうかがわれる30)。


注・参考文献

25)広島市衛生局『保健衛生要覧』1976 年版,89 頁。

26)広島県衛生部『広島県衛生統計』各年。

27)広島市保健所普及課編『衛生統計』各年。

28)広島県衛生部『広島県衛生統計年報』第 18 号(1965 年),第 26 号(1973 年),第 28 号(1975 年)。 

29)広島市東保健所・広島市西保健所『衛生年報』1963 年版,広島市衛生局『保健衛生要覧』1976 年版。 

30)前掲『保健衛生要覧』1965 年版,1976 年版。

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