Leaning from Hiroshima’s Reconstruction Experience: Reborn from the Ashes vol3発刊にあたって
本書は,広島県と広島市で構成する国際平和拠点ひろしま構想推進連携事業実行委員会が,平成25年度に取りまとめた『ひろしま復興・平和構築研究事業報告書広島の復興経験を生かすために一廃嘘からの再生-』の一層の充実を目的として,平成27年度に引き続き実施した,紛争終結国等からの研修生のニーズの高いテーマを取り上げ調査を行う補完研究の成果を報告書としてまとめたものである。
平成27年度に実施した補完研究では,教育と医療の2つのテーマを取り上げた。教育については,爆心地近くの小学校の復興過程とそれに地域社会が果たした役割の検証について,医療については,壊滅的な破壊から,広島の医療現場が比較的速やかな復興を遂げたとされることについて,具体的事例の紹介によって,その過程を検証した。
平成28年度においては,原爆被災と行政,そして原爆孤児の2つのテーマを取り上げた。
原爆被災と行政については,原爆投下に至るまでの行政組織体制,そして被爆後の行政組織の建て直しと対応,戦災処理における行政組織と軍との関係,そして常態への復帰までが,著者の広範な知識と文献研究によって検証される。破滅的な被害に遭いながらも,行政機能がいかに担保されたかを検証する。
原爆孤児については,これまで語られることが少なかった復興過程における原爆孤児の軌跡を,一次資料や豊富な取材を基礎にたどり,原爆被害からの人聞の「再生」とは何かを問いかけることで,復興の過程に埋もれ,見えなくなっていく人々の思いを検証したものである。紛争後社会における子供や女性といった社会的弱者の保護や精神的ケアの問題は,現代においても国際社会に対する課題として突き付けられている。その意味において,この問題は極めて現代的課題を扱ったものといえる。本書が,広島で復興を学ぶ人々の関心に応え,紛争終結国における復興・平和構築の取組を後押しし,平和な国際社会の実現に向けた取組が一層促進されることを期待している。最後に,執筆者の方々をはじめ,本研究にあたり貴重な助言や資料提供などに御協力いただいた関係各位に深く感謝申し上げる。
平成29年3月
国際平和拠点ひろしま構想推進連携事業実行委員会