当サイトを最適な状態で閲覧していただくにはブラウザのJavaScriptを有効にしてご利用下さい。
JavaScriptを無効のままご覧いただいた場合には一部機能がご利用頂けない場合や正しい情報を取得できない場合がございます。

国際平和拠点ひろしま

広島-ICANアカデミー2022 参加者インタビュー

 

 広島県と核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、2019年度より「核兵器と安全保障を学ぶ広島‐ICANアカデミー」を開催しています。今年度はウェビナーによる講義・セッションを経て、11月9~12日に広島セッションが行われました。15ヶ国24名の参加者が広島に集まり、活発な意見交換が展開されました。セッションに参加したハンナ・ハリスさん(アメリカ)とワルスング・ムトンガさん(ザンビア)に話を聞きました。

●応募したきっかけ

(ハリスさん) 
私はカリフォルニアの大学院で宇宙物理学を勉強しています。以前東京の三鷹市にある国立天文台に仕事で通っていたことがあり、そこで日本の文化や歴史に触れ、特に東アジアの科学と安全保障に興味を持ちました。科学者の中には科学と安全保障は無関係だと思っている人もいますが、北朝鮮のミサイルの弾道をGPSで測定するなど、科学は常に政治に利用されています。私はそうした問題を“科学外交”によって解決できればという想いがあります。そのためもっと詳しく原爆や核実験について学べたらと思い応募しました。

(ムトンガさん) 
私は医大生です。私の父も医者で、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)で働いていたのですが、2017年に亡くなりました。父が亡くなったとき私はまだ幼く、父のやっていたことがよくわかりませんでした。しかし齢を重ねるにつれ、父が情熱を傾けていた仕事の内容に興味が湧きました。今ザンビアではIPPNWの学生版組織が立ち上がっていますが、自分たちと核戦争は関係ないと考えている人がほとんどです。それを自分事として考えたいと思ったし、ここに来ればいろんな国の人とつながることができ、自分が伝えたいメッセージの助けになると思いました。



●印象に残ったこと

(ハリスさん) 
印象に残っているのは、小グループに分かれて被爆者や被爆者の家族の方の話を聞いたことです。原爆という苦しみをいかにして克服し、生きる力に変えていったかを知りたかったのですが、宮崎千代さんは「原爆を落としたアメリカへの憎しみは持っていない」と言われました。そういう気持ちがあったから、1945年以降、日本とアメリカの間で信頼関係が続いてきたのかと思いました。彼女は在日韓国人二世の被爆者の娘で、被爆体験の伝承活動をされていて、日韓の複雑な歴史も語ってくれました。つらい体験を話してくれる彼女の勇敢さに心を打たれました。

 あと、このセッションにはいろんな人が参加していて、ムトンガさんのような医学生、3人の子供を持つお母さん、詩を学んでいる学生など、今回の出会いで私の視野や地平線は大きく広がりました。

(ムトンガさん) 
私がお話を聞いた方は14歳で被爆して、当時のことを細かく憶えておられました。もっとも衝撃的だったのは70歳すぎまで被爆経験を誰にも話さなかったこと。差別を怖れて黙っていたのです。原爆は街を破壊するだけでなく、人に対しても長く影響を与えることを学びました。

 あと印象に残ったのは、広島の街が想像以上に復興していることです。廃墟の状態からここまで美しい街を作り上げたことに希望を感じます。そしてセッションに参加して感じたのは、若い世代の情熱でした。19歳のアメリカ人活動家やNPOのANT-Hiroshimaなど、広い視野を持って活動している若い人がたくさんいることを知って、とても刺激を受けました。



●セッションで得たもの

(ハリスさん) 
今回私は3つの気付きを得ました。まずは「水」。被爆者の人は水を強くほしがった経験があり、その後の人生で子供や孫に「水を無駄にするな。水は貴重なものだ」と伝えたけど、なかなか理解してもらえない――その話は印象的でした。2つめは「木」。平和公園の被爆樹木も悲惨な状況の目撃者で、被爆者の方はその被爆樹木から芽が出たことで希望を感じたことを知りました。3つめは「キムチ」。在日韓国人の人がキムチの臭いで差別された話は、(韓国に在住経験がある)私にとっても身近なものでした。

 今後は、今回学んだ内容をクラスメイトに伝えていきたいです。そして将来は若い科学者の間に橋をかけたい。特に東アジアの安全保障に関して日米中ロ韓・北朝鮮で行っている6カ国協議の若い世代版をいつか開催できればと思います。

(ムトンガさん) 
今回、平和公園や平和記念資料館を実際に訪れたことで、情報や知識以上に肌で感じられるものがありました。静けさの中で被爆当時の状況に想いを馳せたり……今回の体験で被爆者の方の気持ちに寄り添うことができた気がします。

 今後は、今回のアカデミー参加者も含めて、オンラインで交流できる場を立ち上げようと思います。ここからさらに学びを深め、各自の祖国での活動をサポートできるようにしたいです。もちろんそこにザンビアの若者も入ってもらいたいと思っています。

●ハンナ・ハリス(Hanna Harris)さん。
米国ミドルベリー国際大学院モントレー校在学中。カナダ系のアメリカ人で現在はカリフォルニア在住。

●ワルスング・ムトンガ(Walusungu Mtonga)さん。
ザンビア大学医学部在学中。現在はザンビアの首都であるルサカ在住。

この記事に関連付けられているタグ