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国際平和拠点ひろしま

原爆投下は政治目的のため

2020年は広島・長崎に原子爆弾が投下され75年目となります。

「広島県史 原爆資料編」に掲載されている原爆に対する国際的反応:海外の新聞論調を紹介します。1945年8月6日に広島,8月9日に長崎に投下された原子爆弾について海外の新聞はどのように報じたのでしょうか。

本県が進めている国際平和拠点ひろしま構想の趣旨と合致しない論調も含まれますが,原子爆弾投下を海外でどのように伝えたか知っていただくため 「広島県史 原爆資料編」に掲載されている新聞論調をそのまま掲載しています。

原爆投下は政治目的のため

昭和21.1.2 シカゴ・トリビューン紙

[大下応氏蔵]

 

日本人への原子爆弾攻撃は,戦争目的のためでなく政治目的のため

——ウォルター・トローハン記者 

(シカゴ・トリビューン紙報道員)

昭和21年1月2日,ワシントン・D・C——去る8月6日,日本の広島に,あの惨澹たる損害を与えた原子爆弾の投下は,実は,戦争目的のためではなく,むしろ政治目的遂行のためではなかったかという疑惑が,当地,下院議員間に高まっている。

人類が手にしたこの脅威的な兵器を使用するかどうかの決定には,軍部の反対があったにもかかわらず,政府行政当局の手によってそれが推進されたという事実を,下院議員はこのほど聞き知ることとなった。

いったん,原子爆弾が投下されるや,ソ連は,連合軍協力の証拠として,原子爆弾の提供を米国に要求していい立場になった。

——反対意見が一般的であった——

太平洋戦線の卓抜な海戦指揮官でもあったハルゼー海軍大将は,先日下院議員数氏に,広島と長崎を抹殺するために原子兵力を使うことでえた軍事的な効用は全くなかった,と語り,またこの海の英雄は同様な見解を上院各方面の関係者にも伝えている。

同氏は,「原子爆弾投下の時点ではすでに戦争の勝敗は決しており,日本は連合軍の本土上陸作戦が行なわれる前に降伏していたものと思われる。本土はすでに通常の空襲によって壊滅し,海上部隊と輸送船団も全水域から追い落とされていたからである」と語った。

同氏はこれら両院議員に,統合参謀本部長リーヒー陸軍大将も,ルーズベルト,トルーマンの二代の大統領に対し,原子爆弾使用に反対してきたという事実,および,同本部の部員であったマーシャル,アーノルド両将軍やキング提督も,リーヒー氏のこの立場を全面的に支持していたという事実とを明らかにした。

——ポツダムでの決定——

対日戦争遂行上の指導者であったマッカーサー陸軍大将,ニミッツ海軍大将は,ともに原子兵器の使用の採択にあたって反対票を投じている。原爆の使用に賛成意見であった者は,少くとも責任的地位にある高級司令官中には一人もいなかった事実も同氏によって明らかにされた。

原子爆弾を世に出すという決断は,ポツダムでなされた。原子爆弾の事実上の投入は数カ月遅延したものの,原子力を使うか否かの採決は,米国側代表内部から強く発議されたと伝えられている。このポツダムにおける採決が,実は最大の難関であった,とトルーマン大統領は身辺に洩らしている。

米国国会の記録には,米国はナチス・ドイツの崩壊に先立つ1944年1月すでに原子爆弾を可動状態で保有しているということが,否定されない形で残っている。

——使用計画は1944年に——

去る10月のワシントン・スター誌によれば,わが国は1944年初頭に初めて原子爆弾の使用を企画し,結局去る8月,日本において弾体の発射となるに至るまで,予定の投下時期を数度にわたって延期したという。

かりに原子爆弾がナチス・ドイツに対して使われていたとすれば,その降伏は,原子爆弾の結果であって,赤軍の殲滅的な陸上攻撃,あるいは連合軍諸部隊の敢行した侵入作戦の効果であったとはされなかったに違いない,とも言われている。

広島では原子爆弾の余燼がおさまるかおさまらない時点において,すでに原子爆弾の機密を共有すべきこと,とくにソ連との間に共有すべきだという宣伝戦がわが国内に始まった。

——科学者がその共有を歓迎した——

原子爆弾製造に各施設で参画,関与した民間人科学者中100人をこえるものが,ソ連とこの重大機密を共有すべきことを求める陳情書に署名している。また上記の計画に参画した科学者の一部は亡命者であり,その多くがソ連に対し同情的・親和的である。

過激論者の花形である商務長官ワレス氏は,ソ連への機密の即刻提供を要望した。また英語世界で,親ソ主義者の最先端とされている英国カンタベリー大寺院の僧正,ヒューンツト・ジョンソン師は,もしわれわれがこの機密を一人じめにするとソ連がつむじを曲げるだろう,と語っている。

(片柳 寛訳)

出典 広島県史 原爆資料編

 

 

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