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国際平和拠点ひろしま

【コラム6】NPT 体制:2020 年 NPT 運用 検討会議に向けて

【コラム6】NPT体制:2020年NPT運用検討会議に向けて

ティティ・エラスト、シビル・バウアー

2020年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議に向けては、凶兆を予感させる負の力学がいくつか存在している。2015年の運用検討会議の時と同じように、NPT上の核兵器国(すなわち、国連安全保障理事会の5常任理事国であり、P5としても知られる、中国、フランス、ロシア、英国、米国、)は、核軍縮の進展に関してほとんど成果を示してこなかった。この状況に対する非核兵器国の不満が、2017年7月に採択された核兵器禁止条約(TPNW)交渉の大きな要因だった。P5とその同盟国は、既に確立されたNPTを基軸とした秩序を脅かすものとして、この新しい条約をほぼ一致して退けている。したがって、TPNWの直近の短期的な影響は、核兵器国と非核兵器国間のさらなる分極化であった。TPNWは、多くの者にとって、NPT締約国間で最も論争を招く問題のように思える一方で、遅々として進まない核軍縮に関するより深い亀裂の氷山の一角にすぎない。2020年NPT運用検討会議までにこうした亀裂を埋める方法はあるのか?そして、埋めることができないとすれば、軍縮・不拡散体制にとって何を意味することになるのだろうか?

1.NPTの核軍縮の柱の再活性化

NPT成立からほぼ半世紀にわたって、核軍縮は条約の3本柱(核不拡散、原子力平和利用及び核軍縮)のうち最も脆弱であることが判明してきた。2000年運用検討会議で採択された13の「実際的措置」と、2010年運用検討会議で合意された64項目の行動計画は、打ち砕かれていた希望を再生した。2010年の新戦略兵器削減条約(新START)と核関連用語集の策定を除けば、P5は具体的な核軍縮のステップに関して、ほとんど何も成果を挙げてこなかった。NPT内の不満のもう1つの大きな源泉は、中東地域における非大量破壊兵器地帯の設立に関する1995年の決議が履行されてこなかったことである。実際、後者の問題は、2015年運用検討会議でコンセンサスの最終文書を採択できなかった唯一最大の重要な要因だった。

コンセンサスに基づくNPTの枠組みと、核兵器に対する言説を支配している伝統的な安全保障のパラダイムの制約を避けようとして、非核兵器国の大多数は、核兵器の問題に国際人道法を持ち出すことによって異なるアプローチを模索した。2013年から2014年にかけて、非核兵器国は、核兵器のいかなる使用による壊滅的な非人道的影響を強調する一連の会議を組織した。これらの会議は結果として、2016年12月、核兵器を禁止する条約に関する交渉を開始するという、113カ国が賛成した国連総会決議に結実した。交渉は2017年7月にまとまり、TPNWの採択につながった。

TPNWの交渉担当者によれば、TPNWの目的の1つはNPTの核軍縮の柱を強化し、核兵器の禁止と廃絶に向けたいわゆる法的ギャップを埋めていくことである。TPNWの法的禁止は、核兵器国が条約の外に留まる限りは適用されないものの、核兵器に対する普遍的な汚名を強めることによってTPNWが間接的に核兵器国に影響を与え得ることを想定したものである。

TPNWは長期にわたって予想通りに機能するかもしれないが、最も明瞭で短期的な効果は、NPT締約国間の分極化を高めたことである。中国を除くP5はTPNWに対して、非現実的な期待を創出し、現在の安全保障の問題と既存の安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割を無視していると批判している。多くの要因がほぼ間違いなく、現在までのTPNWの比較的低い署名国数と批准国数に関係している。それはたとえば、NPTとTPNWのオーバーラップによって核軍縮の努力に断片化をもたらしかねないという恐怖、TPNWの文言の一部やNPTとの関係に対する留保、あるいは条約を署名することに対する米国の圧力である1。

2.2020年運用検討会議の重要性とその先

TPNWに対する立場に関わりなく、非核兵器国の多数は、核軍縮の義務に対するP5コミットメントの欠如に対して不満を持ち続けている。この観点からすれば、分極化を低減する最も効果的な方法は、P5が実質的なステップを通じて過去に確立された義務の達成に向けて確実に前進することだろう。

したがって、核軍縮に向けた最も実行可能なステップの特定、これへの関与によりTPNWの亀裂を乗り越えることが、すべてのNPT締約国にとって理に適うことであろう。過去のNPT文書に述べられているように、それらの措置には、偶発的であるいは意図的な核兵器使用のリスクを減らすこと、包括的核実験禁止条約(CTBT)を発効させること、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉を開始することが含まれている。さらには、米露の戦略兵器の削減は伝統的には多国間軍縮の問題とは切り離されてきたが、この方面でのいかなる進展もNPTの枠組みを強化するだろう。とりわけ、1987年に成立した中距離核戦力(INF)条約を破綻から救うことが、核軍備管理の逆行を防ぐ上で極めて重要である。核軍縮を検証する新たなツールの発展にだけではなく、核戦力に関する透明性と報告を進める手段にも、多国間のより大きな注目が当てられるべきである。さらに、NPTの核不拡散の柱は、新しい検証基準としての国際原子力機関(IAEA)保障措置協定追加議定書を未締約国に採択するよう促すことで強化され得る。同時に、核不拡散に対する支持は、既存の合意の尊重、とりわけ全てのP5によるイラン核合意への継続的で明確な支持を意味している。

最後に、TPNWを議論するより誠意ある方法を発見することは、NPTで建設的な議論をするための道を開くだろう。なぜなら、両条約とも核兵器の最終的な廃絶という長期的な目標を共有しているからだ。2020年に明確で具体的な結果について合意することが、NPTの将来的な信頼性と正当性にとって不可欠なものとなろう。

(ディティ・エラストストックホルム国際平和研究所研究員/シビル・バウアー同研究所研究部長)


[1] 2017 年 7 月には 122 カ国が TPNW の採択に賛成票を投じたが、2018 年 2 月までに 56 カ国のみが署名し、5 か 国が批准するのみである。

 

 

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