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国際平和拠点ひろしま

【コラム7】地域安全保障と非核兵器地帯

【コラム7】地域安全保障と非核兵器地帯

ジョン・キング

地域安全保障は、総体的に世界の安全保障を高めるための重要な方法である。他方で、定義することが非常に難しいがために、混乱を招きかねない概念でもある。地域安全保障の要素とは何であろうか。それはいつ達成できるのであろうか。地域安全保障とは目的なのか、あるいは、プロセスなのか。これらやその他の関連する疑問への答えは、信頼に足る地域安全保障が、安全保障に関連した様々な手段を冗長かつ重複した方法で用いることに依頼していることを示している。また、これらの要素は、地域の特定のニーズに直接的に向けられなくてはならない。

こうした手段の1つが非核兵器地帯であり、世界の様々な地域で安全保障を強化する方法として長期にわたって認識されてきた。非核兵器地帯は、そこでの核兵器の不在を強調するとともに、域内に核兵器の持ち込みや使用をしないという核兵器国の合意を公式化することで地域安全保障を強化使用とするものである。それゆえ、非核兵器地帯条約は、核兵器不拡散条約(NPT)の目的を支えるとともに、域内での政治的・法的な重要性を高める、非常に明確な象徴と言える。

さらに言えば、地域的な非核兵器地帯条約は不可侵条約、(核兵器の)先行不使用の宣言、通常兵器の軍備管理条約などといった他の法的・政治的手段によって強化される場合、よりよく機能する。それでも、非核兵器地帯条約は、特別な政治的認知度、地域の主要国による直接的な関与という事実、並びにNPT上の5核兵器国が非核兵器地帯条約の要請を守るとの具体的な保証を与えることを明記した特別な議定書への署名といったことから、地域安全保障の要素の中で主要な位置を占めているものである。

既に世界の多くの地域が非核兵器地帯条約の範囲内にある一方で、中東と東アジアという2つの重要な地域がいまだ取り残されている。(なお、欧州と北米も重要な地域ではあるものの、これらの地域に含まれる国家はほとんどが非核兵器国であり、また北大西洋条約機構(NATO)加盟国としての核兵器に係る暗黙の義務が課されているため、本稿では取り上げないこととする。)

中東に非核兵器地帯を設置する努力は、国連とその第一委員会において長年見られてきたものの、北東アジア地域を包含する非核兵器地帯条約の締結の可能性についてはほとんど注目されてこなかった。以下に見るように、北東アジアで非核兵器地帯条約に参加が見込まれる国の数自体は多くないものの、適切な条約が締結されることで、この地域には大きな利益や恩恵がもたらされると考えられる。北東アジアには核保有国や「核の傘」を提供する安全保障条約によって守られている国家が存在しており、それゆえに他の地域には見られないような、核兵器を伴う紛争の潜在的だが差し迫った危険性があるからだ。このことが北東アジアにおける非核兵器地帯条約の締結を困難にしており、同時にその重要性を高めているとも言えよう。

北東アジア安全保障地域を定義するならば、中国、モンゴル、韓国、北朝鮮、ロシア及び日本といった国が含まれる。ただし、この定義には重要な例外も存在する。たとえば、モンゴルは一国非核の地位を宣言している。マカオ及び香港は中国に返還されたものの一定の自治レベルを維持している。中国とロシアは核兵器国と認められており、北朝鮮は核兵器を保有しNPTを脱退した。韓国と日本は、自国領土への核兵器の持ち込みを拒否している一方で、両国は米国との間にそれぞれ防衛協定を締結しており、米国の核の傘に守られている(他方で、両国ともにNPT締約国であるため、非核兵器地帯を形成すること自体は可能だろう)。台湾は多くの軍備管理・軍縮条約の原則を非公式に遵守しているものの、国連加盟国として承認されていないがゆえに法的には非核兵器地帯条約のような国家を単位とする協定に参加することができないという実情がある。

北東アジアにおいて、安全保障に対する唯一かつ最大の挑戦は、ならずもの国家として振る舞う北朝鮮とその北朝鮮による核保有である。まずはこの問題に対応しなければならず、日本と韓国は北朝鮮への近隣性という観点から、必然的に主要な役割を担わなければならないだろう。以下では、修正版の非核兵器地帯、関連するような独自の協定、あるいはより信頼と安全保障の段階を高める政治的・外交的要素など、地域安全保障の改善に寄与すると考えられる政策の選択肢を述べていく。これらの選択肢は新たなかつ「独創的な」政治的思考と協力を必要としているが、悪化の一途をたどる北東アジア地域の安全保障環境には必要な措置とも考えられるだろう。

第一に、日本と韓国による東南アジア非核兵器地帯条約(バンコク条約)−拡大を許容すべく修正が加えられた場合−への加盟を検討することで、東南アジア非核兵器地帯を東アジア非核兵器地帯に転換することである。バンコク条約第15条は新たな国家による条約加入について規定しており、これに基づいて両国がバンコク条約に加入することで、北朝鮮の核兵器能力に対応するに際して、本条約の認知度と効力が拡大された範囲において高められるという利点が見込めると考えられる。

第二に、日本と韓国がバンコク条約に加入できなかった場合、両国間で北東アジア非核兵器地帯に関する交渉と設置を目指す方法がある。バンコク条約を拡大した場合に得られるであろうより大きな支持を欠く一方で、北朝鮮の核の脅威を相殺するために両国が政治的に協力し合う意欲や姿勢を示すことによって、小規模な非核兵器地帯であっても地域における顕著な安全保障効果をもたらすことが可能となる。

そして第三に、北朝鮮による核保有の現状によって引き起こされる安全保障上の諸問題を平和的に解決する政治的基盤を提供すべく、域内で最もその影響を受けている日韓が、核兵器国との協力のもと、北朝鮮との関係を正常化することを目指すという方法が挙げられる。この前例として、1979年の米中国交正常化が挙げられる。これが仮に可能となった場合、北東アジアにおける破壊的な戦争をかいひするという意味でも、1953年の休戦協定に終止符を打つための交渉の実施への工程を進めるとともに、地域における安全保障上の緊張を軽減する補完的な措置や行動への着手を開始することが可能となるだろう。

他方で、このためには北朝鮮が事実上の核保有国であるということを公に受け入れる必要がある。この点に関しては、国際社会がこれまでイスラエル、パキスタン、そしてインドに同様の対応をしてきたという先例がある。北朝鮮への同様の対応が見られたならば、数多くある目標のうち、特に北朝鮮と国際社会を再び結びつけるための交渉を促進させると同時に、朝鮮半島における政治的状況の秩序を保つことにも寄与するだろう。実施・運用検討機関を有する東アジア、あるいは北東アジアにおける地域内な非核兵器地帯は、上記の内容を実施するための効果的な政治的側面の強化に寄与し、核軍縮戦略に係る調整メカニズムを提供しうるだろう。北東アジア、中でもとりわけ日韓が得る地域安全保障上の利益は、計り知れないだろう。

上記の提案は、これらの重要な目標を達成するためのほんの一例に過ぎない。また、上記以外の方策、あるいはそれらを組み合わせたその他の方法もあるだろう。北東アジア地域の安全保障を十分に達成する場合、長年の守り続けられてきた政策を打破するような発想力や意欲が必要となる。北東アジア地域の国々にはこのような挑戦が求められているのだ。

(国連軍縮研究所リサーチフェロー)


 

 

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