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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2018(12)軍縮・不拡散教育、市民社会との連携

軍縮・不拡散における市民社会との連携に関して、まず特筆すべきは、TPNWの策定過程におけるNGOなど市民社会の関与である。推進国が交渉会議開催への道筋をつくった2016年の多国間核軍縮交渉の前進に関するオープン・エンド作業部会(OEWG)と同様に、核兵器禁止条約交渉会議でも市民社会の参加が認められ、被ばく者、NGOなどがステートメントの発表、あるいは公式文書の提出などを行った。なかでもICANは、オーストリアなど主導国とともに条約締結に向けて積極的なイニシアティブをとり、上述のようにその功績が認められてノーベル平和賞が授与された。

NPDIは、2017年NPT準備委員会に提出した作業文書で、とりわけ10代の若者への教育はもっとも重要であり、被爆の実相を次の世代に伝承していくべきであるとした186。特にそうした活動を重視してきた日本は、2017年8月にジュネーブの軍縮会議日本政府代表部で、第20代高校生平和大使(ユース非核特使)の22名と現地の軍縮関係者との意見交換会を開催した。

近年のNPT運用検討会議及びその準備委員会、並びに国連総会第一委員会では、NGOなどが参加するサイドイベントが開催されている187。2017年のNPT準備委員会では豪州、オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、カザフスタン、韓国、ニュージーランド、メキシコ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国、米国などが、また国連総会第一委員会では、豪州、オーストリア、カナダ、チリ、ドイツ、日本、カザフスタン、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スイス、英国などがそうしたサイドイベントを開催した。

「市民社会との連携」に関しては、各国政府が核軍縮・不拡散に関する情報をどれだけ国内外の市民に向けて提供しているかも判断材料となろう。調査対象国のうち、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、ニュージーランド、スウェーデン、スイス、米国、英国といった国々のホームページ(英語版)では、(核)軍縮・不拡散に関するセクションが設けられ、程度の差はあるものの他国と比べて充実した情報が掲載されている。最後に、近年の動きとして、核兵器の開発・製造などに携わる組織や企業などへの融資の禁止や引揚げ(divestment)を定める国が出始めている。ICANの報告書によれば、スイス及びルクセンブルグでは、核兵器のための投資を制限する国内法が制定された。核兵器に関係する企業への投資を行わないとのポリシーを明確にしている銀行や投資ファンドもある188。また、ノーベル財団のヘイケンステン(Lars Heikensten)専務理事は2017年10月、同財団は「倫理に関する明確なガイドラインを有しており、たとえば対人地雷やクラスター弾に関する国際条約に違反する企業に投資するファンド、あるいは核兵器に投資するファンドへの新規の投資はなされていない」189としている。


[186] NPT/CONF.2020/PC.I/WP.16, April 19, 2017.

[187] 2017 年 NPT 準備委員会では、広島県が主催し、広島県知事などがパネリストとして参加した会合「核兵器国と 非核兵器国の間の亀裂の橋渡し」(5 月 2 日)が開催された。

[188] 核兵器に関係する企業への銀行及び投資ファンドの動向に関しては、IKV Pax Christi and ICAN, “Don’t Bank on the Bomb: A Global Report on the Financing of Nuclear Weapons Producers,” December 2016 を参照。

[189] “Nobel Foundation Accused of Indirect Nuclear Arms Investments,” Swissinfo.ch, October 20, 2017, https://www.swissinfo.ch/eng/politics/transparency-call_nobel-foundation-accused-of-indirect-nuclear-arms- investments/43614160.

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