Hiroshima Report 2018(5) 核関連輸出管理の実施
A)国内実施システムの確立及び実施
核関連輸出管理に関する国内実施システムの確立・実施状況に関して、2017年に顕著な変化が見られた国はなかった。「ひろしまレポート2017年版」で述べたように、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、英国及び米国は、原子力供給国グループ(NSG)を含む4つの国際的輸出管理レジーム55に参加し、いずれも国内実施制度(立法措置及び実施体制)を整備し、リスト規制に加えて、リスト規制品以外でも貨物や役務(技術)がWMDや通常兵器の開発、製造などに使用されるおそれがある場合に適用されるキャッチオール規制を実施するなど、原子力関連の輸出管理を着実かつ適切に実施してきた。
こうした国々は、輸出管理の強化に向けた活動も活発に行ってきた。たとえば、日本は2017年2月、アジア及び国際的な不拡散の取組を促進すべく、アジア諸国や域外主要国を招き、第24回アジア輸出管理セミナーを開催した。
上記以外の本調査対象国のなかで、NSGメンバー国はブラジル、中国、カザフスタン、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコである。これら7カ国も、キャッチオールの実施を含め、核関連の輸出管理に係る国内実施体制を確立している。
NSGメンバー以外の本調査対象国に関しては、UAEが包括的な戦略貿易管理法を制定し(ただし、効果的な輸出管理システムの運用に必要な能力の構築には至っていないとも見られている56)、フィリピンも戦略貿易管理法(STMA)を制定してキャッチオール規制を導入した。これに対して、エジプト、インドネシア、サウジアラビアは適切な輸出管理制度・体制の構築に至っていない。
NPT非締約国のインド、イスラエル及びパキスタンは、いずれもキャッチオールの実施を含む輸出管理制度を確立している57。NSGではインドのメンバー国化に関する議論が続いているが、2017年もNSGメンバー国によるコンセンサスには至らなかった。
北朝鮮、イラン及びシリアといった拡散懸念国が、輸出管理の実効的な国内実施体制を整備していることを示す報告や資料を見出すことはできなかった。これらの国の間では、後述するように、少なくとも弾道ミサイル開発に係る協力が行われてきたとみられている。また北朝鮮は、シリアの黒鉛減速炉建設に関与したと疑われている。
米国のシンクタンクは、核兵器禁止条約(TPNW)採択に賛成した122カ国のうち、24%(29カ国)しか適切な輸出管理法制を制定していないと指摘しており58、そうした国による輸出管理の強化が求められている。
B)追加議定書締結の供給条件化
NPT第3条2項では、「各締約国は、(a)原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は(b)特殊核分裂性物質の処理、使用若しくは生産のために特に設計され若しくは作成された設備若しくは資材を、この条の規定によって必要とされる保障措置が当該原料物質又は当該特殊核分裂性物質について適用されない限り、平和的目的のためいかなる非核兵器国にも供給しないことを約束する」ことが規定されている。また2010年NPT運用検討会議の最終文書では、多国間で交渉され合意されたガイドライン及び了解事項を自国の輸出管理の発展に活用することが奨励された。NSGガイドライン・パート1では、パート1品目(核物質や原子炉などの原子力専用品・技術)の供給条件にIAEA包括的保障措置の適用を定め、さらに濃縮・再処理に係る施設、設備及び技術の移転に関しては、2011年6月に合意された改訂で、「供給国は、受領国が、包括的保障措置協定を発効させており、かつ、モデル追加議定書に基づいた追加議定書を発効させている(又は、それまでの間、IAEA理事会により承認された適切な保障措置協定(地域計量・管理取極を含む。)を、IAEAと協力して実施している)場合にのみ、この項に従って、59移転を許可すべきである」(第6項(c))としている。
NPDIやウィーン10カ国グループなどは、これまでに、包括的保障措置協定及び追加議定書がIAEA保障措置の現在のスタンダードであり、これを非核兵器国との新しい供給アレンジメントの条件にすべきだと主張してきた60。日本や米国がそれぞれ締結した最近の二国間原子力協力協定には、核関連物質を供給する要件として、相手国によるIAEA追加議定書の締結を含めるものがみられる。これに対してNAM諸国は、包括的保障措置協定の当事国に対する核関連資機材、物質、技術の移転にいかなる制限も課すべきではないと主張している61。
二国間原子力協力協定における濃縮・再処理の取り扱い
核兵器拡散の観点から最も機微な活動の1つであるウラン濃縮、及び使用済み燃料の再処理は、平和的目的であり、IAEA保障措置が適用される限りにおいて、非核兵器国であってもNPTの下では禁止されていない。他方で、その技術の拡がりは、核兵器を製造する潜在能力をより多くの非核兵器国が取得することを意味しかねない。上述のように、NSGではIAEA保障措置協定追加議定書の締結を濃縮・再処理技術の移転の条件に含めた。近年、日米がそれぞれ原子力新興国と締結した二国間原子力協定には、そうした機微技術が移転されないと規定するものもある。
また、米国がUAEと締結した原子力協力協定では、UAEが濃縮・再処理活動を実施しないことが義務として明記されており、「ゴールドスタンダード」と称されて注目された。しかしながら、2014年のベトナムとの協定など、米国がその後に締結・更新した他国との原子力協力協定では、米台協定を除き、同様の義務は規定されていない。2018年7月に期限を迎える日米原子力協力協定については、日本による再処理活動などに与えられてきた包括的同意の取り扱いが注目された。協定の期限の6カ月前までに日米のいずれも協定の終了や再交渉を通告せず、自動延長が確定した。他方、2015年に署名・発効された新しい米韓原子力協力協定では、米国は協議・合意の下で乾式再処理(パイロプロセッシング)の共同研究を継続することには同意しつつ、他方で韓国独自のウラン濃縮及び乾式再処理を含むすべての再処理技術の研究については事前同意を付与しなかった。
C)北朝鮮及びイラン問題に関する安保理決議の履行北朝鮮核問題との関連では、国連安保理決議で、すべての国連加盟国に対して、核兵器を含むWMD関連の計画に資する品目及び技術の移転防止が義務付けられている。北朝鮮の履行状況に関しては、安保理制裁委員会専門家パネルが毎年、報告書を公表してきた。なお、イラン制裁委員会及び専門家パネルは、JCPOA成立後、イランの主張により終了し、その後は安保理が監視の責任を担っている62。
北朝鮮
北朝鮮の核・ミサイル活動に対しては、その停止を求めるとともに北朝鮮に非軍事的制裁措置を課す累次の国連安保理決議が採択されてきた。2017年にはまず、北朝鮮による累次の弾道ミサイル発射実験の実施等を受けて、6月2日に安保理決議2356が全会一致で採択された。この決議では、「北朝鮮が、安全保障理事会の決議に違反し、甚だしく無視して、2016年9月9日以降に実施した、一連の弾道ミサイル発射及びその他の活動を含む、核兵器及び弾道ミサイルの開発活動を最も強い表現で非難」するとともに、北朝鮮の4団体を資産凍結、14人を渡航禁止と資産凍結の対象に追加することが定められた63。これに続き、8月5日には、北朝鮮によるICBM発射実験を受けて、安保理決議2371が全会一致で採択された64。この決議で定められた主要な制裁措置は以下のとおりである。
- 北朝鮮の9人を渡航禁止及び資産凍結、4団体を資産凍結の対象に追加
- 石炭、鉄、鉄鉱石、海産物、鉛、鉛鉱石の北朝鮮による供給、販売または移転、並びにこれらの北朝鮮からの調達を禁止
- 北朝鮮海外労働者の新たな受け入れの禁止
- 北朝鮮との新たな合弁事業や共同事業体の開設、追加投資を通じた既存の合弁企業の拡大を禁止
9月11日には、北朝鮮による6回目の核実験(9月3日)を受けて、安保理決議2375がやはり全会一致で採択された。この決議では、「北朝鮮が、安全保障理事会の決議に違反し、甚だしく無視して、2017年9月2日に核実験を実施したことを最も強い表現で非難」した上で、以下のような制裁措置を規定した。
- 北朝鮮の1人を渡航禁止及び資産凍結、3団体を資産凍結の対象に追加
- 大量破壊兵器及び通常兵器に関連する品目、資機材、技術等の追加的な指定
- 公海上で船舶が決議違反の物資を積載しているとの合理的な情報がある場合、旗国の同意の下で加盟国が臨検を行うことを要請
- 石油精製品の北朝鮮への供給、販売または移転、並びにこれらの北朝鮮による調達を年間200万バレルに制限
- 北朝鮮への原油供給の年間上限を過去12カ月の総量に制限
- コンデンセート(超軽質原油)及び天然ガスの北朝鮮への供給、販売または移転、並びにこれらの北朝鮮による調達を禁止
- 繊維製品の北朝鮮による供給、販売または移転、並びにこれらの北朝鮮からの調達を禁止
- 北朝鮮海外労働者への就労許可発給・更新を制裁委員会が認めた場合を除き禁止
- 北朝鮮の個人・団体との合弁企業の開設、維持、運営を禁止し、既存の合弁企業は120日以内に閉鎖
さらに12月22日には、北朝鮮による11月末のICBM発射実験を受けて安保理決議2397が全会一致で採択され、以下のように制裁措置の一層の強化が決定された。
- 北朝鮮への原油輸出を年間400万バレルに制限し、提供する国は安保理に報告
- 北朝鮮への石油精製品の輸出を年間50万バレルに制限し、提供する国は安保理に報告
- 北朝鮮による食料・農作物、機械、電子機器、木材、船舶などの供給、販売などの禁止
- 北朝鮮海外労働者の24カ月以内の本国送還
- 海上輸送などに係る一層厳格な措置の実施
- 北朝鮮によるさらなる核実験及びICBM級の弾道ミサイル実験に対しては、一層の石油制限の措置
安保理決議の履行状況については、北朝鮮制裁委員会専門家パネルが2017年2月に年次報告書を公表した65。報告書では、以下のような点などが指摘された。
- 北朝鮮が制裁を無視し、とりわけ中国、東南アジア、アフリカなどで制裁逃れの手法の規模、範囲及び巧妙性を高めつつこれを駆使し、禁制品を取引している。
- 制裁対象に指定された団体及び銀行が、制裁環境下でもフロント企業などを活用しつつ巧みに運営を継続している。
- 北朝鮮の外交官等が禁止された販売、調達等を組織的に行っている。
- 禁止された鉱物資源の輸出を継続している。
また、2017年9月に公表された中間報告66では、北朝鮮の活動として以下のような点などが指摘された。
- 国の団体に代わって金融取引を行うために海外にエージェントを駐在させている。
- 決議で禁止されたほぼすべての品目を輸出している。
- アフリカ諸国に軍や警察等へ訓練、武器などを提供している。
北朝鮮による核関連の違法調達活動の実態は依然として必ずしも明らかではないものの、北朝鮮は国外のネットワークを駆使するなどして、核兵器開発を支援するための外貨獲得など様々な活動を試みている。2017年には、以下の事例が報道された。
- 安保理決議で制裁対象の石炭の輸出先を中国から東南アジア諸国に切り替えている67。
- 2017年前半、少なくとも8隻の北朝鮮貨物船が燃料を積載してロシアを出港し、登録した仕向地と違う仕向地に向かった(北朝鮮で荷降ろしをしたかは不明だが、仕向地変更は制裁回避の常套手段とされる)68。
- 豪州連邦警察は12月、北朝鮮による弾道ミサイル、ミサイル部品・技術などの不法輸出を仲介しようとした韓国系豪州人を逮捕した69。
対北朝鮮制裁において、なかでも動向が注目されてきたのが北朝鮮と緊密な関係にある中国である。中国は対北朝鮮制裁の履行・強化に関して、以下のような発表を行った。
- 商務省などは1月、安保理決議に基づき、核開発やミサイル開発などに関連する物質、設備、技術等の輸出を禁止する新たな制裁項目を公表。禁輸対象は100項目以上にのぼる。
- 商務省は2月、北朝鮮からの石炭輸入を全面的に停止するとの通達を発表した。
その一方で、依然として中国の取組が不十分だとの指摘も少なくない70。2017年には、たとえば以下の事例が報じられた。
- 中国は鉄鉱石、ローエンド製品、海産物を大量に購入しており、北朝鮮の貿易収支は全体的に増加した71。
- 中国の衣料会社が、北朝鮮に生地などの素材を送り衣料を作らせ、「メイド・イン・チャイナ」のラベルを貼らせて入手し、輸出している。北朝鮮の衣料産業は2016年に5億ドル以上の売り上げを記録した72。
- 米検察当局は6月、朝鮮貿易銀行のダミー企業としてマネーロンダリングに関わったとして、中国の貿易会社「明正国際貿易」に対して、約190万ドルの差し押さえを求めてワシントンの連邦地裁に提訴した73。
- 韓国外務省当局者は12月末、韓国・麗水港を出港した香港船籍の船が、10月に東シナ海の公海上で北朝鮮の船舶に600トンの石油精製品を移し替えていたと明らかにした。香港船籍の船は韓国の港に入港したところで臨検を受けた74。また、米国の偵察衛星の映像で、中国の船舶が黄海の公海上で北朝鮮の船舶に石油を移転しているのが、2017年10月以来少なくとも30回にわたって確認されたとも報じられた75。
北朝鮮に対しては、安保理決議の下での制裁に加えて、独自制裁を課す国もある。たとえば、日米韓はそれぞれ独自の措置として、北朝鮮の核・ミサイル開発に関係する団体及び個人への資産凍結を拡大してきた。それらの対象は、北朝鮮のみならず中国やロシア等の団体も含まれている。EUも10月に、原油・石油の輸出や投資の全面禁止等の独自制裁を決定するなど、北朝鮮への制裁を強化した。米国はまた、11月に北朝鮮をテロ支援国家に再指定すると発表した。さらに、北朝鮮と一定の外交・経済関係を維持してきた国からも、関係の大きな見直しの動きがみられる。たとえば、9月にはフィリピンが北朝鮮との貿易取引の停止を、エジプトが軍事面での協力関係の断絶をそれぞれ表明した。翌月には、UAEが北朝鮮国民へのビザ発給や北朝鮮企業へのライセンス発行を停止すると発表した。この他にも、スーダンなどいくつかのアフリカ諸国が北朝鮮との軍事・貿易関係の断絶などを発表した。
安保理決議では国連加盟国に制裁措置の履行状況の報告を求めているが、2017年9月の政府専門家パネル中間報告書によれば、安保理決議2321の履行に関する報告は、他の対北朝鮮制裁決議に関する報告と比べると増加し、78カ国が提出した76。中間報告書によれば、『ひろしまレポート』調査国のうち、オーストリア、イラン、カザフスタン、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、シリアが報告を提出していない77。
イラン
JCPOAに基づき、イランによる原子力関連資機材の調達は、JCPOAの下で設置された調達作業部会の承認を得なければならない。JCPOAの履行日から2017年6月中旬までの間、調達作業部会には16の提案が提出された78。また、NSGガイドライン・パート2に記載される汎用品・技術については、2017年1月から6月までの間に10件の新規提案があり、5件が承認され、1件の提案が撤回され、4件がレビューされていること79、2017年7月から12月までの間には8件の新規提案があり、4件の承認、2件の却下、2件の提案撤回という結果であったことが報告された80。
懸念国間の取引
北朝鮮とイランは、核・ミサイル開発で協力関係にあるとの懸念が指摘されてきた。弾道ミサイル協力については広く知られており、2016年には両国のミサイル関連協力に対して米国の制裁も課された81。他方で、核分野での協力関係に関しては公開された証拠等に乏しく、そうした主張は立証されていない82。
北朝鮮を巡っては、新型の中距離弾道ミサイル(IRBM)火星12型や大陸間弾道ミサイル(ICBM)火星14型に使用されたエンジンがロシアのSS-18・ICBMなどに使用された「RD250」を改良したものである可能性があり、これがロシアあるいは(製造企業があった)ウクライナの組織から北朝鮮に流出した可能性が指摘された(両国ともに自国からの流出を否定)83。
D)拡散に対する安全保障構想(PSI)への参加
米国が2003年5月に提唱した「拡散に対する安全保障構想(PSI)」に関しては、オペレーション専門家会合に参加する豪州、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ロシア、トルコ、英国、米国など21カ国に、ベルギー、チリ、イスラエル、カザフスタン、フィリピン、サウジアラビア、スイス、スウェーデン、UAEなどを加えた105カ国が、PSIの基本原則や目的に対する支持を表明し、その活動に参加・協力している84。
PSIの実際の阻止活動については、インテリジェンス情報が深く絡むこともあり、明らかにされることは多くはないが、北朝鮮やイランが関係するWMD関連資機材などの移転を阻止したケースなどが時折報道されてきた。加えて、PSIのもとでは、阻止訓練の実施・参加、あるいはアウトリーチ活動の実施を通じて、阻止能力の強化が図られてきた。2017年9月には、豪州主催の阻止訓練「Pacific Protector 17」が開催され、21カ国が参加した85。
E)NPT非締約国との原子力協力
2008年9月、NSGにおいて「インドとの民生用原子力協力に関する声明」がコンセンサスで採択され、NSGガイドラインの適用に関するインドの例外化が合意された。その後、インドとの二国間原子力協力協定が、豪州、カナダ、フランス、カザフスタン、韓国、ロシア及び米国との間で締結されてきた。2017年6月には、前年11月に署名された日印原子力協力協定が日本により批准された86。採決に先立ち、参議院外交防衛委員会は決議を採択し、インドが未臨界実験を実施した場合には協定を終了すること、インドに核実験モラトリアムを継続するよう働きかけることなどを日本政府に求めた。
インドと原子力協力協定を締結した国々によるインドとの実際の原子力協力は、フランス、ロシア及びカザフスタンからのウランの輸入、並びに豪州(2017年7月、インドに最初のウランを輸出した)、カナダ、モンゴル、アルゼンチン及びナミビアとの同様の合意を除き87、必ずしも進んでいるわけではない88。
インドを巡っては、NSGメンバー国化に関する議論が続いているが、2017年も中国などの反対により、合意には至らなかった。中国は、インドがNPT締約国でないとの原則論に加えて、インドの参加を認めるのであればパキスタンの参加も認めるべきだと主張してきたとされる89。パキスタンも、原子力安全と核セキュリティに関して模範的な行動をしているとしてNSGに参加する資格があると主張してきた。NSGでは、NPT非締約国のメンバー化に関するガイドラインの策定が検討されており、2016年12月にメンバー国に示された案では、保障措置・軍民分離、核実験モラトリアム、多国間不拡散・軍縮レジームの支援・強化が要件に挙げられていたとされる90。
パキスタンに関しては、中国によるパキスタンへの2基の原子炉輸出がNSGガイドラインに違反するのではないかと依然として批判されている。中国は、NSG参加以前に合意された協力には適用されないという祖父条項(grandfather clause)によりNSGガイドライン違反ではないと主張している。2013年11月には施設の建設が開始され、中国は原子炉(ACP-1000)に加えて、その燃料となる濃縮ウランを供給する91。2013年2月には、チャシュマ(Chashma)に3基目の原子炉を建設することで中国とパキスタンが合意に達したと報じられた92。とりわけこの合意は、祖父条項によりNSGの下で認められるか、先の2基の原子炉供与以上に疑わしい。
NAM諸国は、インドあるいはパキスタンといったNPT非締約国との原子力協力に批判的であることを強く示唆しており、包括的保障措置を受諾していない国への核技術・物質の移転を慎むべきであるとの主張を繰り返している93。
[55] NSG に加えて、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、及びワッセナー・アレ ンジメント(WA)。
[56] “Middle East and North Africa 1540 Reporting,” Nuclear Threat Initiative, January 31, 2014, http://www.nti.org/ analysis/reports/middle-east-and-north-africa-1540-reporting/. Aaron Dunne, “Strategic Trade Controls in the United Arab Emirates: Key Considerations for the European Union,” Non-Proliferation Papers , No. 12 (March 2012) も参照。
[57] このうち、整備が遅れていたパキスタンの状況に関しては、Paul K. Kerr and Mary Beth Nikitin, “Pakistan’s Nuclear Weapons,” CRS Report , August 1, 2016, pp. 25-26 を参照。
[58] David Albright, Sarah Burkhard, Allison Lach and Andrea Stricker, “Most Nuclear Ban Treaty Proponents are Lagging in Implementing Sound Export Control Legislation,” Institute for Science and International Security, September 27, 2017, http://isis-online.org/isis-reports/detail/most-nuclear-ban-treaty-proponents-are-lagging-in-implementing- sound-export.
[59] INFCIRC/254/Rev.12/Part 1, November 13, 2013.
[60] たとえば、NPT/CONF.2020/PC.I/WP.2, March 15, 2017
[61] NPT/CONF.2015/WP.6, March 9, 2015.
[62] David Albright and Andrea Stricker, “JCPOA Procurement Channel: Architecture and Issues,” Institute for Science and International Security, December 11, 2015, http://isis-online.org/uploads/isis-reports/documents/Parts_1_and_2_JCPOA_Procurement_Channel_Architecture_and_Issues_Dec_2015-Final.pdf.
[63] S/RES/2356, June 2, 2017.
[64] S/RES/2371, August 5, 2017.
[65] S/2017/150, February 27, 2017.
[66] S/2017/742, September 5, 2017.
[67]「石炭輸出先を東南アジアに切り替え」『毎日新聞』2017 年 8 月 20 日、https://mainichi.jp/articles/20170821/ k00/00m/030/113000c。
[68] Polina Nikolskaya, “From Russia with Fuel – North Korean Ships May Be Undermining Sanctions,” Reuters, September 20, 2017, https://www.reuters.com/article/us-northkorea-missiles-russia-exclusive/exclusive-from-russia- with-fuel-north-korean-ships-may-be-undermining-sanctions-idUSKCN1BV1DC.
[69] “Sydney Man Charged with Brokering North Korea Missile Sales,” Associated Press , December 16, 2017, https:// www.nbcnews.com/news/north-korea/sydney-man-charged-brokering-north-korea-missile-sales-n830451.
[70] Shirley A. Kan, China and Proliferation of Weapons of Mass Destruction and Missiles: Policy Issue, Congressional Research Service, RL31555, January 5, 2015, p. 21.
[71] Will Edwards, “Can China Actually Restrain Kim Jong-Un?” CIPHER Brief, June 20, 2017, https://www. thecipherbrief.com/article/asia/can-china-actually-restrain-kim-jong-un-1091.
[72] Jane Perlez, Yufan Huang and Paul Mozur, “How North Korea Managed to Defy Years of Sanctions,” New York Times, May 12, 2017, https://www.nytimes.com/2017/05/12/world/asia/north-korea-sanctions-loopholes-china- united-states-garment-industry.html?_r=0.
[73] Jonatyan Soble, “U.S. Accuses Chinese Company of Money Laundering for North Korea,” New York Times, June 16, 2017, https://www.nytimes.com/2017/06/16/business/north-korea-money-laundering-mingzheng.html.
[74] Yi Whan-woo, “Chinese Vessel Seized over North Korea Oil Trafficking,” Korea Times , December 29, 2017, http:// www.koreatimes.co.kr/www/nation/2017/12/103_241669.html; Choe Sang-Hun, “South Korea Seizes Ship Suspected of Sending Oil to North Korea,” New York Times , December 29, 2017, https://www.nytimes.com/2017/12/29/world/ asia/south-korea-ship-seized.html.
[75] Yu Yong-weon and Kim Jin-myung, “Chinese Ships Spotted Selling Oil to N.Korea,” Chosunilbo, December 26, 2017, http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2017/12/26/2017122601156.html. 中国はこれを否定している。 Philip Wen and David Brunnstrom, “After Trump Criticism, China Denies Selling Oil Illicitly to North Korea,” Reuters, December 29, 2017, https://www.reuters.com/article/us-northkorea-missiles/after-trump-criticism-china-denies- selling-oil-illicitly-to-north-korea-idUSKBN1EN0D3. また 12 月末には、ロシア船籍の複数のタンカーが過去数カ月間に 少なくとも 3 度、海上で北朝鮮の船舶に積み荷の石油精製品を移し替えていたとも報じられた。Guy Faulconbridge, Jonathan Saul and Polina Nikolskaya, “Russian Tankers Fueled North Korea Via Transfers at Sea—Source,” Reuters, December 30, 2017, https://www.reuters.com/article/us-northkorea-missiles-russia-oil-exclus/exclusive-russian- tankers-fueled-north-korea-via-transfers-at-sea-sources-idUSKBN1EN1OJ.
[76] S/2017/742, September 5, 2017, p. 7. [77] Ibid., p. 43.
[78] S/2017/537, June 27, 2017.
[79] Ibid.
[80] S/2017/1058, December 15, 2017.
[81] U.S. Department of Treasury, “Treasury Sanctions Those Involved in Ballistic Missile Procurement for Iran,” January 17, 2016, https://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/jl0322.aspx.
[82] John Park and Jim Walsh, Stopping North Korea, Inc.: Sanctions Effectiveness and Unintended Consequences (Cambridge, MA: MIT Security Program, 2016), p. 33; Paul K. Kerr, Steven A. Hildreth and Mary Beth D. Nilitin, “Iran- North Korea-Syria Ballistic Missile and Nuclear Cooperation,” CRS Report , February 26, 2016, pp. 7-9.
[83] Michael Elleman, “The Secret to North Korea’s ICBM Success,” IISS Voices , August 14, 2017, https://www.iiss.org/ en/iiss%20voices/blogsections/iiss-voices-2017-adeb/august-2b48/north-korea-icbm-success-3abb. ウクライナ政府 による調査結果の報告書は、“Repot of Secretary of the National Security and Defense Council of Ukraine, Head of the Working Group Oleksandr Turchynov on Investigation of the Information Stated in the Article of The New York Times,” National Security and Defense Council of Ukraine, August 22, 2017, http://www.rnbo.gov.ua/en/news/2859.html.
[84] Bureau of International Security and Nonproliferation, U.S. Department of State, “Proliferation Security Initiative Participants,” June 9, 2015, http://www.state.gov/t/isn/c27732.htm.
[85] “Exercise Pacific Protector 17,” Australian Government, September 2017, http://www.defence.gov.au/psi/ExPP17. asp.
[86] 日印原子力協力協定交渉の主要な論点などは、『ひろしまレポート 2017 年版』を参照。
[87] Adrian Levy, “India Is Building a Top-Secret Nuclear City to Produce Thermonuclear Weapons, Experts Say,” Foreign Policy, December 16, 2015, http://foreignpolicy.com/2015/12/16/india_nuclear_city_top_secret_china_ pakistan_barc/.
[88] インドとの原子力協力が進展していない要因やその後の動向に関しては、『ひろしまレポート 2017 年版』を参照。
[89] “China and Pakistan Join Hands to Block India’s Entry Into Nuclear Suppliers Group,” Times of India, May 12, 2016, http://timesofindia.indiatimes.com/india/China-and-Pakistan-join-hands-to-block-Indias-entry-into-Nuclear- Suppliers-Group/articleshow/52243719.cms.
[90] Kelsey Davenport, “Export Group Mulls Membership Terms,” Arms Control Today, Vol. 47, No. 1 (January/ February 2017), p. 50.
[91] “Pakistan Starts Work on New Atomic Site, with Chinese Help,” Global Security Newswire, November 27, 2013, http://www.nti.org/gsn/article/pakistan-begins-work-new-atomic-site-being-built-chinese-help/.
[92] Bill Gertz, “China, Pakistan Reach Nuke Agreement,” Washington Free Beacon , March 22, 2013, http://freebeacon. com/china-pakistan-reach-nuke-agreement/.
[93] “Statement by Indonesia on behalf of the Non-Aligned Movement State,” Cluster 3, First Session of the Preparatory Committee for the 2020 NPT Review Conference, May 9, 2017.