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国際平和拠点ひろしま

(8)兵器用核分裂性物質生産禁止条約 (FMCT)

A) 条約交渉開始に向けた取組

1995 年 NPT 運用検討・延長会議で採択 された「原則及び目標」では、CD における FMCT の即時交渉開始及び早期締結が目 標に掲げられた。また、日本を含む西側諸 国や軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI) なども、そうした目標の早期実現を繰り返 し求めている200。しかしながら、現在に至 るまで条約交渉は開始されていない。2019 年の CD の会期でも、FMCT の交渉を行う 特別委員会(ad hoc committee)の設置を 盛り込んだ作業計画を採択できなかった。 前年までと同様に、パキスタンが兵器用核 分裂性物質の新規生産だけでなく、既存の ストックをも条約交渉の対象に含めるよう 強く主張し、これが受け入れられない限り は作業計画の採択に反対するとの姿勢を変 えなかったためである。中国及びイスラエ ルは、兵器用核分裂性物質の新規生産禁止 を定める FMCT の交渉開始に賛成している が、西側核兵器国ほどの積極性を示してい るわけではない。

CD での FMCT 交渉開始を促進すべく、 これまでも様々な施策が講じられてきた。 2016 年の国連総会決議では、FMCT ハイ レベル専門家準備グループの設置が決定さ れた。25 カ国の専門家で構成される同グル ープは、FMCT の実質的な要素に関する検 討及び勧告を目的として、2017 年と 2018年にそれぞれ 2 週間の会合を開催し、2018 年 6 月に最終報告書を採択した201。最終報 告書では、条約のスコープ、定義、検証、 法的・制度的取極、並びにその他の側面 (前文、透明性・信頼醸成措置など)とい った問題をカバーし、条約の要素となり得 る点や交渉者が考慮すべき問題などが取り まとめられた。

B) 生産モラトリアム

核保有国による兵器用核分裂性物質の生 産モラトリアムについては、前年から状況 に変化はなく、中国、インド、イスラエル、 パキスタン及び北朝鮮が宣言していない。 このうち、インド、パキスタン及び北朝鮮 (寧辺の核施設を廃棄する意向を示してい るが、それ以外に秘密の施設を有している と考えられている)は、兵器用核分裂性物 質の生産を続けていると見られる。他方、 中国は現在、兵器用核分裂性物質を生産し ていないと考えられている202。イスラエル の状況は明らかではない。NPDI は、モラ トリアムを宣言・実施していない核兵器国 に、宣言・実施するよう求めている203。

核保有国は、自国が保有する兵器用核分 裂性物質の量を公表していないが、民間研 究所による分析・推計については本報告書 第 3 章でとりまとめている。


200 NPDI が 2019 年 NPT 準備委員会に提出した作業文書は、NPT/CONF.2020/PC.III/WP.42, April 29, 2019。

201 A/73/159, July 13, 2018. 同グループについては、 “High Level Fissile Material Cut-Off Treaty (FMCT) Expert Preparatory Group,” The United Nations Office at Geneva, https://unog.ch/80256EE600585943/(httpPages)/ B8A3B48A3FB7185EC1257B280045DBE3?OpenDocument; Paul Meyer, “UN High-level Fissile Material Cut-Off Treaty Expert Preparatory Group Report: Little Prospect for Progress,” IPFM Blog, September 26, 2018, http:// fissilematerials.org/blog/2018/09/un_high-level_fissile_mat.html も参照。参加国は、アルジェリア、アルゼンチン、 豪州、ブラジル、カナダ、中国、コロンビア、エジプト、エストニア、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、 日本、韓国、メキシコ、モロッコ、オランダ、ポーランド、ロシア、セネガル、南アフリカ、スウェーデン、英国、 米国。なお、同グループにはパキスタンも参加を要請されたが、2017 年 3 月の同グループ非公式協議会合で、兵 器用核分裂性物質の新規生産のみを禁止する条約にかかるいかなる議論にも参加できないなどと述べ、参加を拒否 した。

202 たとえば、Hui Zhang, “China’s Fissile Material Production and Stockpile,” Research Report, International Panel on Fissile Materials, No. 17 (2017); Hui Zhang, “Why China Stopped Making Fissile Material for Nukes,” Bulletin of the Atomic Scientists, March 15, 2018, https://thebulletin.org/2018/03/why-chinastopped-making-fissile-material- for-nukes/ などを参照。

203 NPT/CONF.2020/PC.III/WP45, April 29, 2019.

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