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国際平和拠点ひろしま

(11) 不可逆性

A) 核弾頭及びその運搬手段の廃棄の実施ま たは計画

米露による新 START では、過去に締結 された主要な二国間核軍備管理条約と同様 に、条約で規定された上限を超える戦略 (核)運搬手段について、検証を伴う解 体・廃棄を実施することが義務付けられて いる。核弾頭の解体・廃棄については、条 約上の義務ではないものの、両国は一方的 措置として部分的に実施してきた。このう ち、米国は年間に廃棄された核弾頭数を公 表していたが、上述のように国防総省は、 その新たな公表は行わないことを決定した。 他の核兵器国からは、核兵器の廃棄に関す る新たな報告はなされていないが、フラン ス及び英国は、退役した核弾頭や運搬手段 の解体を行っている。

B) 核兵器関連施設などの解体・転換

核兵器関連施設などの解体・転換に関し て、2019 年には顕著な動きは見られなかっ た。核保有国から新たな情報の公開もなさ れなかった220。

フランスは、核保有国のなかで唯一、 1996 年に核実験場の完全かつ不可逆的な閉 鎖を決定し、1998 年に完全に閉鎖して除染 作業を行った221。上述のように、北朝鮮も核実験場の閉鎖を宣言し、坑道を爆破した が、完全かつ不可逆的な閉鎖であるかは確 認されていない。

C) 軍事目的に必要ないとされた核分裂性物 質の廃棄や平和的目的への転換など

2011 年 7 月に発効した米露間のプルトニ ウム管理・処分協定(PMDA)―解体する 核弾頭から取り出された米露の余剰プルト ニウム各 34t を、混合酸化物(MOX)燃料 化して民生用原子炉で使用し処分すること などを規定―に関して、ロシアは 2016 年 10 月に履行を停止するとの大統領令を発表 した。ロシアは、米国の敵対的な行為、並びに協定が署名された 2000 年以来の状況 の劇的な変化への対応として履行を停止し ただけだと主張してきた222。2019 年には、PMDA のもとで兵器級プルトニウムから MOX 燃料を生産すべく設置された施設で、 原子炉級プルトニウムを用いての MOX 燃 料の生産が行われた223。

他方、トランプ米政権は、(米露合意に 基づいて計画された)MOX 燃料生産施設 (MFFF)について、建設費の高騰とスケ ジュールの遅延を理由に、その建設中止、 並びにプルトニウムの処分を模索してきた。 議会は「希釈・処分オプション」を認めず、 MFFF 建設への予算を計上してきたが224、NNSA は 2018 年 10 月、MFFF 建設の事業 体に建設にかかる契約終了通知を送付し、 このプロジェクトを公式に終了させた225。NNSA は、MFFF を核兵器用のプルトニウ ム・ピット生産施設に改装することを検討 している。

米テキサス州のパンテックス施設では核 弾頭の解体作業が行われているが、エネル ギー省の施設には合計 54t の余剰プルトニ ウムが貯蔵され、その量は増加していると される226。余剰高濃縮ウラン(HEU)に関 しては、エネルギー省の予算要求によれば、 米国は 2019 会計年度に 162t の希釈を完了 する予定である(159.7t が希釈済み)227。


220 前年までの動向に関しては、『ひろしまレポート 2017 年版』を参照。

221 NPT/CONF.2015/10, March 12, 2015.

222 Maggie Tennis, “INF Dispute Adds to U.S.-Russia Tensions,” Arms Control Today, Vol. 47, No. 5 (June 2017), pp. 29-30. 軍備管理協定などの遵守に関する米国の 2019 年 4 月の報告書では、過去 2 年の報告書に続き、ロシア が協定の義務に違反しているとの兆候はないものの、履行の停止は将来の遵守に対する懸念を高めているとした。 The U.S. Department of State, “Adherence to and Compliance with Arms Control, Nonproliferation, and Disarmament Agreements and Commitments,” August 2019, p. 22.

223 “Russia Uses Civilian Reactor-Grade Plutonium to Produce MOX Fuel for BN-800,” IPFM Blog, August 29, 2019, http://fissilematerials.org/blog/2019/08/russia_uses_civilian_reac.html.

224 Kingston Reif, “MOX Facility to Switch to Plutonium Pits,” Arms Control Today, Vol. 48, No. 5 (June 2018), p. 29.

225 Timothy Gardner, “Trump Administration Kills Contract for Plutonium-to-Fuel Plant,” Reuters, October 13, 2018, https://www.reuters.com/article/us-usa-plutonium-mox/trump-administration-kills-contract-for-plutonium-to- fuel-plant-idUSKCN1MM2N0.

226 Scot J. Paltrow, “America’s Nuclear Headache: Old Plutonium with Nowhere to Go,” Reuters, April 20, 2018, https://www.reuters.com/article/us-usa-nukes-plutonium-specialreport/americas-nuclear-headache-old-plutoni um-with-nowhere-to-go-idUSKBN1HR1KC.

227 “United States to Down-Blend HEU for Tritium Production,” IPFM Blog, October 1, 2018, http://fissile materials.org/blog/2018/10/united_states_to_down-ble.html.

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