第2章 核不拡散 (1) 核不拡散義務の遵守
第2章 核不拡散
(1) 核不拡散義務の遵守
A) 核兵器不拡散条約(NPT)への加入
2019 年末時点で、核兵器不拡散条約(NPT)には191 カ国(北朝鮮、並びに国連加盟国ではないバチカン市国及びパレスチナを含む)が加入している。国連加盟国(193 カ国)のうち、非締約国は、2011 年7 月に独立して国連に加盟した南スーダン(核兵器は保有していない)、1998 年に核実験を実施し、核兵器の保有を公表したインド及びパキスタン、並びに核兵器を保有していると広く考えられているイスラエルの4 カ国である。また、北朝鮮は、1993 年及び2003 年の2 回にわたってNPT からの脱退を宣言し、国連安全保障理事会決議などで求められている「NPT への早期の復帰」に応じていない。なお、NPT 締約国全体としては北朝鮮の条約上の地位に関する解釈を明確にしていない。
B) NPT 第1 条及び第2 条、並びに関連安保理決議の遵守
北朝鮮
NPT 成立以降、締約国のなかで第1 条または第2 条の義務に違反したとして、国連を含め国際機関から公式に認定された国はない2。しかしながら、NPT 脱退を宣言した北朝鮮に関しては、脱退が法的に無効であるとすれば、あるいは脱退の効力発生前に核兵器を保有していたとすれば、その核兵器の取得行為は第2 条に違反する行為となる。米国務省が公表してきた軍縮・不拡散条約の遵守状況に関する累次の報告書には、北朝鮮が、「2003 年にNPT からの脱退を通告した時に、NPT 第2 条及び第3 条、並びに国際原子力機関(IAEA)保障措置協定に違反していた」3との判断が明記されてきた。
北朝鮮に対する国連安全保障理事会決議1787(2006 年10 月)では、国連憲章第7章のもとでの決定として、「北朝鮮が、すべての核兵器及び既存の核計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄すること、核兵器の不拡散に関する条約のもとで締約国に課される義務及びIAEA 保障措置協定(IAEA INFCIR/403)に定める条件に厳格に従って行動すること、並びに、これらの要求に加え、透明性についての措置(IAEA が要求し、かつ、必要と認める個人、書類、設備及び施設へのアクセスを含む。)をIAEA に提供すること」4と規定された。弾道ミサイルについても、その「計画に関連するすべての活動を停止し、かつ、この文脈において、ミサイル発射モラトリアムにかかる既存の約束を再度確認することを決定」した。しかしながら、北朝鮮は、安保理決議の決定を無視して核兵器及び弾道ミサイルにかかる活動を積極的に継続し、2017 年9 月には6 回目の核爆発実験を実施した。
2018 年になると北朝鮮は一転して、韓国、さらには米国との対話モードに舵を切り、南北首脳会談及び米朝首脳会談が開催され、北朝鮮は「朝鮮半島の完全な非核化に向けた作業」の約束を再確認した。金正恩(Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長は2019年1 月の新年演説でも、朝鮮半島の恒久的な平和体制の構築、完全な非核化に向けた前進の意思、並びに核兵器をこれ以上製造・実験せず、使用・拡散もしないとの約束に改めて言及した。その一方で、米国が約束を守らず、一方的に強制を試み、制裁や圧力をかければ、自主権と国家の最高利益を守るため、新たな道を模索せざるを得なくなるとも述べた5。
2019 年2 月の第2 回米朝首脳会議を前に、北朝鮮は米国にたびたび制裁緩和・解除を求め、米国からも非核化の第一ステップとして北朝鮮の核関連アセットに関する完全な申告は求めないとの発言が見られるなど6、米朝間で何らかのディール―北朝鮮に有利な内容になるのではないかとの懸念も見られた―が成立するのではないかとの見方が強まった。しかしながら、会談は決裂し、合意文書は作成されなかった。北朝鮮は、寧辺(ニョンビョン)の核施設を廃棄し、米国の専門家による査察を受け入れること、その見返りに2016 年及び2017 年の国連安保理決議で定められた経済制裁の大幅な緩和を求めたとされる。これに対して、米国は、北朝鮮による「最終的、かつ完全に検証された非核化(FFVD)」まで経済制裁は解除せず、また寧辺の核施設だけでなく、寧辺近くの分江(ブンガン)にある地下高濃縮ウラン施設―北朝鮮はその存在を認めていない―も廃棄対象に含め、核計画の申告や核兵器及び核物質への米国への引き渡しなど核計画の完全放棄を要求する「ビッグディール」を提案し、北朝鮮はこれを拒否したと報じられた。
米朝はその後、北朝鮮/朝鮮半島の非核化に対するアプローチの相違を隠さず、協議は進展しなかった。北朝鮮は一貫して、韓国に対する米国の「核の傘」を含めるという意味で、「朝鮮半島の非核化」と言及してきた7。米国は、朝鮮半島の唯一の核兵器は北朝鮮が製造したものだと主張した。金正恩朝鮮労働党委員長は4 月、「ハノイほどよい機会は二度とない」と述べ、米国が核交渉への姿勢を変える期限を年末に設定した。しかしながら、金委員長は米国を厳しく批判しつつも、トランプ( )大統領との友好関係を維持しようと努めた。
20 カ国・地域首脳会合(G20 大阪サミット後)の6 月30 日、トランプ大統領は板門店を電撃訪問した。金正恩委員長と1 時間会談し、軍事境界線を越えて北朝鮮に入った初めての現職大統領となった。しかしながら、そこでなされた唯一の合意は実務協議の再開であった。
10 月にはストックホルムで米朝実務者協議が開催されたが、北朝鮮の金明吉(Kim Myong Gil)首席代表は、米国が「古い見方と態度」を変えていないため失敗し、「米国は柔軟なアプローチ、新しい方法、創造的な解決策といった提案で期待を高めたが、交渉のテーブルに何も持ち込まず、我々を大いに失望させ、協議に対する熱意をくじいた」と厳しく批判した(他方、米国は良好な協議ができたとの評価を示した)8。この協議では、北朝鮮が米国に、敵対政策の完全かつ不可逆的な終了( completeand irreversible dismantlement of the “hostile policy”)、並びに体制保証と制裁解除を求め、既に取った非核化措置に「誠意をもって応じる」ことが必要だとする従来の主張を繰り返したと報じられている9。
上述のように北朝鮮は、米朝による合意の期限を2019 年12 月末に設定したが、北朝鮮が望むような進展が見られないなか、11 月には金桂冠(Kim Kye Gwan)外務省顧問が米朝首脳会談に対して、「我々は、我々に何ももたらさないこのような交渉に、もはや興味を持っていない。われわれに見返りがないため、我々は米大統領が自慢できるような贈り物をするつもりはない。…米国が我々との対話を本当に放棄したくないのであれば、敵視政策の撤回を決定すべきだ」と強調した10。北朝鮮が「交渉期限」としてきた12 月に入ると、金星(Kim Song)国連大使が、米国は国内の政治的な思惑から時間稼ぎをしているだけであり、「米国と長々とした対話をする必要はない。非核化はすでに交渉のテーブルから外れた」と述べ、またそれまで抑制してきたトランプ大統領への批判を再開するなど、対米批判を強めていった11。
この間、北朝鮮は2018 年に行ったコミットメントのとおり、核兵器及び長距離ミサイルの実験は実施しなかった。しかしながら、北朝鮮は短距離ミサイルや多連装ロケットの発射を繰り返し、その数は2019年の1 年間で20 発以上に及んだ。また10月には、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」を元山(ウォンサン)の沖合から発射した。さらに、米朝協議に関して米国が(北朝鮮への譲歩を含む)新たな提案を示さなければ、核兵器及び長距離ミサイルの実験を再開するとも警告した12。
上述のように、北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」に向けた取組を約束しているが、米国の情報機関は、北朝鮮が体制の維持に核兵器が不可欠だと考えており、これを放棄する用意はできていないと分析している13。
イラン
E3/EU+3(中、仏、独、露、英、米、欧州連合(EU)上級代表)とイランは2015年7 月に、「包括的共同作業計画(JCPOA)」に合意した。この合意では、イランがウラン濃縮をはじめとする核活動への制限を受諾し、他の参加国は対イラン制裁を緩和・解除することが定められた。JCPOA はイランにより概ね遵守(2016 年の重水貯蔵量にかかる2 件のケースを例外としつつ)され、このことはIAEA による検証・監視によって確認されていたが、トランプ大統領は選挙期間中からJCPOA を強く批判し、2018 年5 月にこれからの離脱と、核関連の対イラン制裁再発動に関する大統領令に署名した。
これに対してイランは、JCPOA から離脱せず、2018 年には合意内容の遵守を継続した。また、米国によるJCPOA 離脱以降、欧州の参加国を中心に、合意とイランの遵守を維持すべく、様々な取組が講じられてきた。2019 年1 月には、仏独英がイランとの貿易継続に向けて、ドルを介さずにイランと合法的に金融取引・貿易ができる体制として、特別目的事業体(SPV)である貿易取引支援機関(INSTEX)を設立した。しかしながら、米国の制裁によって米国市場を失うことを懸念する欧州金融機関・企業は、INSTEX 参加を躊躇した。
しかしながら、JCPOA の継続を模索する欧州諸国などの取組が奏功しないなか、イランはJCPOA の不遵守に踏み出した。イランは2019 年5 月15 日に、JCPOA で定められた低濃縮ウラン(LEU)及び重水の貯蔵の上限に関する義務の履行を停止したと述べた。また、規定を超えた濃縮度(JCPOAの上限は3.67%)でのウラン生産については、米国以外のJCPOA 参加国による原油・金融取引などの保証が60 日以内になされなければ着手するとした。
米国は、「最大限の圧力」として対イラン経済制裁を段階的に強化しつつ、イランに交渉を呼びかけた。5 月には、トランプ大統領がツイッターで、イランに対して、「ディールを結ぶ」べく交渉の席に着くよう呼びかけた。翌月にはポンペオ(Michael R. Pompeo)国務長官が、イランが「普通の国」として振る舞うのであれば、イランの核計画に関して前提条件なしに協議する用意があるとも述べた14。これに対して、イランのロウハニ(Hassan Rouhani)大統領は、「交渉のテーブルを離れ、協定を破棄した側が通常の状態に戻るべきである」15と述べ、また最高指導者のハメネイ(Ally Khamenei)師も、米国との対話を拒否するとの発言を繰り返した16。この間、米国財務省は5 月と6 月にそれぞれハメネイ師とザリフ(Mohammad Zarif)外相を制裁対象に加えた。
6 月末には、米国を除くJCPOA 参加国は高官協議で、INSTEX が稼働し、最初の取引の処理も行われていることを確認した17。これに対して、イランのアラグチ(Seyed Abbas Araghchi)外務次官は、欧州諸国がイラン産原油を輸入しておらず、依然として不十分だと主張した。また、INSTEX は期待どおりには機能していないとも指摘されている18。他方、米国もINSTEX を、米国が科す制裁を回避する試みであり、「それはイランを強化し、EU を弱体化させ、さらにヨーロッパとアメリカの間の距離をさらに広げる、悪いアドバイスを与えられたステップだ」19として批判していた。
また日本も、安倍晋三首相がイランを訪問し、ハメネイ師及びロウハニ大統領との会談で、核問題の解決と緊張緩和を働きかけた。しかしながら、日・イラン首脳会談と同日の6 月13 日、ホルムズ海峡付近で日本などのタンカーが水雷攻撃を受け、米国はイランの革命防衛隊(IRGC)によるものだと非難した(イランは否定)。同月20日には、イランがペルシャ湾付近で米国の無人機を撃墜した(イランは自国領空を侵犯したと主張)。その翌日、トランプ大統領は報復としてレーダーやミサイル発射台といった複数の標的への対イラン軍事攻撃を承認し、実施の初期段階に入っていたものの、民間人の死傷者が想定されるとして、攻撃直前に中止したことを明らかにした。
こうして米・イラン間の緊張も高まるなか、7 月1 日にIAEA は、イランの濃縮ウラン保有量がJCPOA の規定上限(202.8kg)を超え、205kg になったことを確認したと理事会に伝え20、イランも同日、上限を超えたと発表した21。さらに、イランは7 月8日、ウランの濃縮度が規定上限(3.67%)を超えて4.5%になったこと、必要があれば濃縮度を20%まで引き上げることを明らかにした22。
9 月4 日には、ロウハニ大統領が予告どおり、義務の一部履行停止の第3 段階として、「イラン原子力機関は直ちに研究開発分野で必要とされているあらゆることを開始し、(JCPOA で)規定された研究開発のコミットメントをすべて放棄するよう命ずる」と表明した23。IAEA も同月9 日に声明で、遠心分離機の「IR-4 を22 機、IR-5を1 機、IR-6 を30 機、IR-6s を3 機が設置済みまたは設置中であることを確認した」と発表した24。
JCPOA の崩壊を防ぐべく、フランスを中心に様々な働きかけや取組をイランに対して行ったが、状況は好転しなかった。8月のG7 首脳会談終了後の米仏首脳による共同記者会見では、マクロン(Emmanuel Macron)大統領が、トランプ・ロウハニ両大統領の会談を「数週間以内に実現できることを期待している」と述べ、トランプ大統領もイラン指導部の変更は求めず、核兵器・弾道ミサイル禁止に関する長期間の合意が必要であり、「適切な条件下」であれば会談すると応じた25。9 月に入ると、フランスのルドリアン(Jean-Yves le Drian)外相が、原油を担保にフランス政府が150 億ドルの融資を行うことをイランに提案していると明らかにした26。しかしながら、米国は、制裁の適用免除には応じないと明言し27、逆にイランに対する追加制裁を科していった。トランプ大統領は9 月の国連における首脳会談開催を模索したものの、ロウハニ大統領は米国がまず制裁を解除しなければ応じないと主張した。そこには、イランの強い対米不信が反映されていた。
イランは11 月4 日、JCPOA の一部履行停止の第4 段階として、IR-1 より10 倍の濃縮能力を持つIR-6 を30 機導入(これにより60 機が稼働)すると発表した。翌日にはロウハニ大統領が、フォルドゥの核関連施設(ここでの濃縮活動はJCPOA で禁止されている)で1,044 機の遠心分離機にUF6 のガスを注入すると表明し28、イラン原子力庁は7 日にウラン濃縮を開始したと明らかにした。同時にロウハニ大統領は、JCPOA の他の参加国が合意を遵守すればガスの注入は停止するとして、イランの行動が可逆的なものであることを強調した29。12 月には、JCPOA 参加国(米国を除く)の協議で、仏独英が国連の対イラン制裁復活につながる「紛争解決手続き」開始の可能性に言及したのに対して、一部履行停止の第5 段階として、IAEA による査察受け入れを一部停止すると警告した30。そして、イランは2020 年1 月6 日、第5 段階として、JCPOA で定められた濃縮ウランの濃縮度や貯蔵量、ウラン濃縮の研究・開発に関する制限を遵守しないと発表した。同時にイランは、IAEA と引き続き協力すること、また米国が対イラン制裁を解除すればJCPOA を完全に遵守する用意があるとも明らかにした。
IAEA が理事会に提出した11 月11 日付のイラン核問題に関する報告書―IAEA査察の実施状況をまとめたIAEA 事務局長報告が四半期毎に理事会に提出されている―では、以下のようなことが報告された31。
➢ 規定の 3.67%を上回る4.5%でウラン濃縮を開始したことをIAEA は確認した。
➢ 濃縮ウランの貯蔵量は、2019 年7 月8日より前に生産された3.67%のU-235が212.6kg、並びに同年7 月8 日以降に生産された4.5%までのU-235 が159.7kg である。
➢ IAEA は、イランの未申告の場所で人為起源の天然ウラン粒子を検出した。早期解決のために、イランはIAEA との意思疎通を継続することが重要であり、保障措置協定と追加議定書の完全な実施に関するイランによる完全かつ適時の協力が必要である。
上述の天然ウラン粒子については、報告書には記載されていないが、イスラエルがイランの「秘密核倉庫(secret atomic warehouse)」と称したテヘラン近郊のトゥルクザバド(Turquzabad)地区にある場所で、環境サンプリングにより採取された試料から検出されたと見られている32。また、IAEA は11 月18 日、イランの重水貯蔵量が131.5t(JCPOA で定められた上限は130t)になったことを明らかにした33。
この間、JCPOA から離脱した米国は以下のように、イランに対して再発動した非軍事的制裁を段階的に強化していった。
➢ IRGCの「外国テロ組織」指定(4 月)
➢ イラン産原油の禁輸制裁について、特定輸入国に対する適用除外の打ち切り(それ以降もイラン産原油の輸入を続ければ、米国による制裁対象になる恐れ)(4 月22 日に表明)。輸入禁止に違反したとして中国の企業に対する制裁措置(7 月22 日)
➢ イランの鉄鋼、アルミニウム、銅の全取引に対する禁止(5 月8 日)
➢ IRGC が金融支援を行っているとされる石油化学業界への制裁措置(6月7日)
➢ IRGC のコッズ部隊などを支援したとして、イランの原油輸送ネットワークに関わる個人・団体を制裁対象に指定(9 月4 日)
➢ 民生用原子力技術の分野でのロシア、中国及び欧州諸国とイランが進めるイラン国内の5 事業に対して、延長が繰り返されてきた制裁免除について、フォルドゥの核施設に対する免除措置を終了すると表明(11 月18 日)
脱退問題
NPT 第10 条1 項は条約からの脱退について規定しているが、そのプロセスは明確性に欠けるところがある。北朝鮮による上述のようなNPT 脱退宣言以降、日本、韓国及び他の西側諸国は、NPT 締約国が条約に違反して核兵器(能力)を取得した後にNPT から脱退するのを防止すべく、NPT脱退の権利が濫用されないようにすること、あるいは締約国である間に取得された核物質が核兵器に使用されないようにするための施策を講じることなどを行うべきだと主張してきた。
「ウィーン10 カ国グループ」(豪州、オーストリア、カナダ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンなど)は、前回に続き2019 年NPT 準備委員会で、2020 年NPT 運用検討会議に向けた提案の1 つとして、条約からの脱退―不拡散努力へのリスクをもたらし、国際の平和及び安全を脅かしかねない―は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態に直面した時にのみ脱退の権利を行使すること、脱退前の違反には責任を有すること、IAEA保障措置を含め脱退前に条約の履行を通じて形成された他国との権利・義務に影響を与えないこと、脱退の決定を再考するよう説得するためのすべての外交努力がなされるべきであること、脱退前に取得したすべての核物質、設備及び技術は脱退後もIAEA 保障措置下に置かれること、原子力供給国グループ(NSG)は脱退に際しての返還条項を行使するよう促すことといった原則のもとでなされるべきだと提言した34。
2015 年のNPT 運用検討会議でなされた議論を見ると35、西側諸国は、締約国の脱退の権利を認めつつ、その行使にあたっては様々な要件が勘案されなければならないとして厳格化を求めているのに対して、中国及びロシアは必ずしも積極的ではない。また非核兵器国のなかには、ブラジルや非同盟運動(NAM)諸国を中心に、NPT 脱退を規定した条約第10 条を変更する必要はなく、脱退は締約国の権利であるとして、その厳格化に批判的な主張も根強い。2019年NPT 準備委員会では、イランが以下のように厳しく批判した。
脱退の権利について、イランは、条約から脱退するとの締約国の主権的権利に挑戦し、制約し、または条件を付すいかなる提案にも決して合意しないことを強調したい。この固有の権利は、NPT の締結に至った妥協の不可欠な部分であった。
米国は国際文書・機関から次々と脱退しているが、NPT 脱退の権利を行使する非核兵器国に対して厳格な条件を設定しようとしているのは逆説的である。
第10 条は完全に明確で、曖昧さはない。それは、国家主権の行使において条約から脱退する無条件の権利の存在をいかなる締約国にも認めている。
それはまた、締約国が、その「至高の利益」が条約に関連する「異常な出来事」によって「危険に晒されている」と決定した場合には、条約上の義務を終了させ、脱退するための合法的なメカニズムを作り出している。異常な事態の存在の判断は、完全に脱退国の裁量に委ねられる。
条約に関連する異常な事態には、とりわけ、核軍縮義務の不遵守、原子力技術の交換及び民生用原子力協力を促進する義務の違反、非核兵器国の保障措置下にある原子力施設に対する軍事攻撃、並びに非核兵器国に対する平和的目的のための原子力技術を開発する締約国の権利の行使を阻害するような一方的制裁の適用が含まれる。
我々の見解では、条約の文言と精神がすべての側面において遵守されない場合、核兵器国が条約にとどまるための利益とインセンティブは減少する。
したがって、NPT からの将来の脱退を防止するための最も効果的な方法は、選択性、二重基準または差別的なアプローチなしに、そのすべての規定の完全な実施を確保することである36。
核取得発言
核兵器拡散問題で近年注視されてきたのは、サウジアラビアの動向である。サウジアラビアは、今後25 年間に16 基の発電用原子炉を建設する計画を有しており、同国初となる研究用原子炉の建設も進んでいる。サウジアラビアは原子力計画を、自国のエネルギー供給と、これによる石油の輸出量増加という、厳密に民生目的のために推進していると説明してきた。しかしながら、イランと対立関係にあるサウジアラビアは、イランが核兵器を開発すれば自国もこれに続くとの発言をたびたび行っており、その原子力開発が核兵器拡散の可能性を高めることへの懸念も論じられてきた。6 月には、サウジアラビアが中国の支援で弾道ミサイル開発を大幅に加速していることも報じられた37。
また、トルコのエルドアン( Recep Tayyip Erdogan)大統領は演説で、「核弾頭を積んだミサイルを持つ国はいくつもあるが、我々は持てない。これは受け入れられない」38と述べ、9 月24 日の国連総会での演説でも「核兵器の保有は全ての国に認めるか、完全に禁止するかの二者択一にすべき」39だと主張した。これらは、核兵器取得の意図を明言したわけではないものの、関心を示唆したものだとして懸念が示された。
C) 非核兵器地帯
非核兵器地帯条約は、これまでにラテンアメリカ(ラテンアメリカ及びカリブ地域における核兵器の禁止に関する条約〔トラテロルコ条約〕:1967 年署名、1968 年発効)、南太平洋(南太平洋非核地帯条約〔ラロトンガ条約〕:1985 年署名、1986年発効)、東南アジア(東南アジア非核兵器地帯条約〔バンコク条約〕:1995 年署名、1997 年発効)、アフリカ(アフリカ非核兵器地帯条約〔ペリンダバ条約〕:1996 年署名、2009 年発効)、中央アジア(中央アジア非核兵器地帯条約:2006 年署名、2009年発効)で締結された。またモンゴルは、1992 年に国連総会で自国の領域を一国非核兵器地帯とする旨宣言し、1998 年の国連総会ではモンゴルの「非核の地位」に関する宣言を歓迎する決議40が採択された。ラテンアメリカ、東南アジア及び中央アジアの非核兵器地帯条約に関しては、域内のすべての非核兵器国が締約国となっている。
中東に関しては、2010 年NPT 運用検討会議で合意された中東非大量破壊兵器(WMD)地帯に関する国際会議(以下、「中東会議」または「ヘルシンキ会議」)が開催できないまま2015 年NPT 運用検討会議を迎え、そこでも中東会議を巡り最終文書のコンセンサス採択に失敗した。
その後も会議の開催には至らず、2018 年NPT 準備委員会では、NAM 諸国が作業文書で、2020 年より前に中東会議を開催するよう求めた41のに対して、米国は、NPT 運用検討サイクルは中東非WMD 地帯進展や地域紛争解決のための主たるメカニズムではないことなどを挙げ、(特に米国を含む1995 年中東決議の共同提案国が責任を負う形で)中東問題が取り上げられることに反対した。2018 年の国連総会では、アラブ連盟が提案した決定案「中東非WMD 地帯に関する会議の開催」が、西側諸国など多くの国の棄権に直面しつつも辛うじて採択され42、2019 年末までに中東非WMD 地帯設立に関する1 週間の会議を国連本部で開催すること、並びに中東非WMD 地帯を設置する法的拘束力のある条約が締結されるまでの間、国連本部で1 週間の年次会議を開催することとなった。
2019 年のNPT 準備委員会では、アラブ諸国グループが作業文書で、中東非WMD会議の開催にかかる国連総会決議の決定を歓迎し、すべての招待国、特にイスラエルに参加するよう求めた43。イラクはさらに、中東非WMD 地帯の設置は実質的にNPTの「第四の柱」であるとして、その重要性を強調した。また、NAM 諸国は、2020 年NPT 運用検討会議の主要委員会2 に、「中東決議」の履行を評価する補助機関の設置を求めるとともに、イスラエルのNPT 加入などに関する運用検討会議での勧告の履行について会期間にフォローアップする常設委員会を設置し、2025 年NPT 運用検討会議及びその準備委員会に報告することを提案した44。これに対して、米国は、中東非WMD 地帯の目標を支持し続けると述べつつ、そのための取組はすべての地域諸国により相互に合意されたアレンジメントに基づく自発的なものでなければならず、地域諸国のコンセンサスによる支持がないにもかかわらず2018 年の国連総会で中東非WMD 地帯に関する会議の開催が決定されたことは遺憾であるとし、すべての地域諸国による参加が得られない場合には、米国は会議に参加しないと発言した45。
「中東非WMD 地帯の設置に関する会議」は2019 年11 月18~22 日に国連本部で開催された。前年の国連総会における決定に反対したイスラエル及び米国は参加しなかったが、エジプト、イラン及びサウジアラビアなどほとんどの中東諸国、並びに他の4 核兵器国は会議に参加した。会議では、地域諸国のコンセンサスによるアレンジメントを基盤として、中東非WMD 地帯設置のための法的拘束力のある条約の策定を追求することなどが記された政治宣言が採択された46。また、今後も11 月第3 月曜日からの1 週間を会期として会議を開催することが合意された47。
国連総会では「中東地域における非核兵器地帯の設置」決議が1980 年以来、投票無しで採択されてきたが、2018 年に続いて2019 年にも採決がなされ、その投票結果は賛成175、反対2(イスラエル、米国)、棄権3(英国など)となった48。
北東アジア及び南アジアにおける非核兵器地帯の設置については、研究者などから提案される一方で政府間では具体的な動きは見られない。なお、北東アジアに関しては、モンゴルが2015 年NPT 運用検討会議に提出した報告で、「北東アジア非核兵器地帯設置の構想を促進する積極的な役割を果たすであろう」49と記載するなど、関心を時折表明している。
1 第2 章「核不拡散」は、戸﨑洋史により執筆された。
2 IAEA によるNPT 第3 条(非核兵器国による包括的保障措置の受諾)の遵守にかかるものを除き、どの国際機関もNPT の各条項の遵守を評価する明示的な権限は与えられていない。
3 The U.S. Department of State, “Adherence to and Compliance with Arms Control, Nonproliferation, and Disarmament Agreements and Commitments,” August 2019, p. 26.
4 S/RES/1718, October 14, 2006. 2009 年4 月の北朝鮮による核実験に対して採択された安保理決議1874(2009 年6 月)でも、「北朝鮮に対し、関連する安全保障理事会決議(特に決議第1718 号(2006 年10 月))の義務を直ちにかつ完全に遵守すること」などが要求された。
5 “New Year Address of Supreme Leader Kim Jong Un,” KCNA, January 1, 2019, http://www.kcna.co.jp/item/2019/201901/news01/20190101-24ee.html.
6 Edward Wong, “U.S. Appears to Soften Timing for List of North Korea’s Nuclear Assets,” New York Times, January 31, 2019, https://www.nytimes.com/2019/01/31/world/asia/us-north-korea-nuclear.html.
7 北朝鮮の国営通信社である朝鮮中央通信(KCNA)は論評で、「我々が『朝鮮半島の非核化』に言及する時、それは南北だけではなく、半島を標的にするすべての近隣地域から核の脅威のすべての源を除去することを意味している。…朝鮮半島の非核化は、北朝鮮の核抑止力を廃絶する前に『朝鮮に対する米国の核の脅威を完全に廃絶すること』を定義すべきである」と説明している。“North Korea Media Says Denuclearization Includes Ending ‘U.S. Nuclear Threat,’” Reuters, December 20, 2018, https://www.reuters.com/article/us-northkorea-usa-denuclearisation/
north-korea-media-says-denuclearization-includes-ending-u-s-nuclear-threat-idUSKCN1OJ0J1.
8 “North Korea Breaks off Nuclear Talks with US,” DW, Ocotber 5, 2019, https://www.dw.com/en/north-korea-breaks-off-nuclear-talks-with-us/a-50712028.
9 Hyung-Jin Kim, “North Korea: No More Talks Until US Ends ‘Hostile Policy,’” Associated Press, October 6, 2019,https://apnews.com/2348fb048cc34bc1a8265e0ce3033c6f.
10 “Advisor to DPRK Foreign Ministry Issues Statement,” KCNA, November 18, 2019, http://www.kcna.co.jp/item/2019/201911/news18/20191118-08ee.html.
11 Dakin Andone and Elizabeth Joseph, “North Korea’s UN Ambassador Says Denuclearization Is off the Table in Talks with US,” CNN, December 7, 2019, https://edition.cnn.com/2019/12/07/us/north-korea-denuclearizationoff-table/index.html.
12 Hyung-Jin Kim, “N. Korea Threatens to Resume Nuke, Long-Range Missile Tests,” Associated Press, October 10,2019, https://www.apnews.com/75aaddf43e064d44b667bf09da627201.
13 Dan Coats, Director of National Intelligence, “Remarks,” Senate Select Committee on Intelligence, January 29, 2019,https://www.dni.gov/files/documents/Newsroom/Testimonies/2019-01-29-ATA-Opening-Statement_Final.pdf.
14 David Brunnstrom and John Revill, “U.S. Prepared to Talk to Iran with ‘No Preconditions,’ Iran Sees ‘Word-Play,’” Reuters, June 2, 2019, https://www.reuters.com/article/us-usa-iran-switzerland/u-s-prepared-to-engage-with-iran-without-pre-conditions-pompeo-idUSKCN1T30DT.
15 “US Must Get Back to Normal Conditions: Rouhani,” Press TV, June 3, 2019, https://www.presstv.com/Detail/2019/06/03/597561/Rouhani-nuclear-deal-Iran-US-Pompeo-preconditons-talks.
16 “Iran’s Khamenei: Tehran Will Not Abandon Its Missile Program,” Reuters, June 4, 2019, https://www.reuters.com/article/us-usa-iran-khamenei/irans-khamenei-tehran-will-not-abandon-its-missile-program-idUSKCN1T5233.
17 “Chair’s Statement Following the 28 June 2019 Meeting of the Joint Commission of the Joint Comprehensive Plan of Action,” European External Action Service, June 28, 2019, https://eeas.europa.eu/headquarters/headquarters-homepage/64796/chairs-statement-following-28-june-2019-meeting-joint-commission-joint-comprehensive-plan_en.
18 たとえば、以下を参照。Alexandra Brzozowski, “INSTEX Fails to Support EU-Iran Trade as Nuclear Accord Falters,” EURACTIV, January 14, 2020, https://www.euractiv.com/section/global-europe/news/instex-fails-to-support-eu-iran-trade-as-nuclear-accord-falters/.
19 Joe Gould, “Pence Calls on EU Allies to Withdraw from Nuclear Deal in Latest Trans-Atlantic Rift,” MilitaryTimes,February 14, 2019, https://www.militarytimes.com/congress/2019/02/14/pence-calls-on-eu-allies-to-withdraw-nuclear-deal-in-latest-transatlantic-rift/.
20 GOV/INF/2019/8, July 1, 2019.
21 Jon Gambrell and Amir Vahdat, “Iran Breaches Uranium Stockpile Limit Set by Nuclear Deal,” Associated Press,July 2, 2019, https://apnews.com/3e2d08074a4f4256ba6ee379cdb168f7.
22 “Iran’s Uranium Enrichment Breaks Nuclear Deal Limit. Here’s What That Means,” NPR, July 7, 2019,https://www.npr.org/2019/07/07/738902822/irans-uranium-enrichment-breaks-nuclear-deal-limit-here-s-what-that-means.
23 Darryl Coote, “Iran to Develop Nuclear Centrifuges in Defiance of JCPOA,” UPI, September 5, 2019, https://www.upi.com/Top_News/World-News/2019/09/05/Iran-to-develop-nuclear-centrifuges-in-defiance-of-JCPOA/5361567664360/?sl=11.
24 GOV/INF/2019/10, September 8, 2019.
25 “Remarks by President Trump and President Macron of France in Joint Press Conference,” Biarritz, France, August 26, 2019, https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-president-macron-france-joint-press-conference-biarritz-france/.
26 John Irish and Parisa Hafezi, “France Pushes $15 Billion Credit Line Plan for Iran, If U.S. Allows It,” Reuters,September 3, 2019, https://www.reuters.com/article/us-iran-usa-france-idUSKCN1VO1AF.
27 “U.S. Official Rules out Sanctions Waivers for Iran Credit Line Plan,” Radio Free Europe, September 4, 2019,https://www.rferl.org/a/france-explores-15-billion-relief-plan-for-iran-pending-green-light-from-washington/30145703.html.
28 “Iran Starts Injecting Uranium Gas into Centrifuges, Further Unraveling Nuclear Accord,” Press From, November 5, 2019, https://pressfrom.info/us/news/world/-347884-iran-starts-injecting-uranium-gas-into-centrifuges-further-unraveling-nuclear-accord.html.
29 “Iran Nuclear Deal: Fordo Uranium Centrifuges to be Injected with Gas,” BBC, November 5, 2019, https://www.bbc.com/news/world-middle-east-50300952.
30 “Iran Nuclear Deal Signatories Meet in Vienna As Accord Nears Collapse,” France 24, December 6, 2019, https://www.france24.com/en/20191206-iran-nuclear-deal-vienna-tehran-meet-uranium-enrichment-nuclear-weapon-usa-sanction-europe-eu-un-united-nations-zarif-iaea-russia-china-rouhani.
31 GOV/2019/55, November 11, 2019.
32 “Iran Nuclear Deal: IAEA Finds Uranium Particles at Undeclared Site,” BBC, November 11, 2019, https://www.bbc.com/news/world-middle-east-50382219.
33 “IAEA: Iran’s Heavy Water Stock Exceeds Authorized Limit,” AFP, November 18, 2019, https://www.voanews.com/middle-east/iaea-irans-heavy-water-stock-exceeds-authorized-limit.
34 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.5, March 15, 2019.
35 2015 年NPT 運用検討会議における調査対象国の主張や提案に関しては、『ひろしまレポート2016 年版』を参照。
36 “Statement by Iran,” Specific issue—Improving the effectiveness of the strengthened review process, 2019 NPT PrepCom, May 7, 2019.
37 Phil Mattingly, Zachary Cohen and Jeremy Herb, “US Intel Shows Saudi Arabia Escalated Its Missile Program with Help from China,” CNN, June 5, 2019, https://edition.cnn.com/2019/06/05/politics/us-intelligence-saudi-arabia-ballistic-missile-china/index.html.
38 Erdogan Says It’s Unacceptable That Turkey Can’t Have Nuclear Weapons,” Reuters, September 4, 2019, https://www.reuters.com/article/us-turkey-nuclear-erdogan/erdogan-says-its-unacceptable-that-turkey-cant-have-nuclear-weapons-idUSKCN1VP2QN.
39 Hannon Bugos, “Turkey Shows Nuclear Weapons Interest,” Arms Control Today, Vol. 49, No. 9 (October 2019),p. 25.
40 53/77D, December 4, 1998.
41 NPT/CONF.2020/PC.II/WP.16, March 22, 2018.
42 決定案は第一委員会で賛成103、反対3、棄権71 で総会に送付され、総会では賛成88、反対4(イスラエル、米国など)、棄権75(豪州、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、フランス、インド、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、英国など)で辛うじて採択された。
43 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.20, March 29, 2019.
44 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.19, April 4, 2019.
45 “Statement by the United States,” Specific issue–Regional issues, including with respect to the Middle East and implementation of the 1995 Middle East Resolution, 2019 NPT PrepCom, May 6, 2019.
46 “Political Declaration of the Conference on the Establishment of a Middle East Zone Free of Nuclear Weapons and Other Weapons of Mass Destruction,” New York, 22 November 2019.
47 会議に関しては以下を参照。“Conference on the Establishment of a Middle East Zone Free of Nuclear Weapons and Other Weapons of Mass Destruction,” United Nations, https://www.un.org/disarmament/topics/conference-on-a-mezf-of-nwandowomd/; “Conference on Nuclear- and WMD-Free Zone in the Middle East Adopts Political Declaration,” Reaching Critical Will, http://www.reachingcriticalwill.org/news/latest-news/14454-conference-on-nuclear-and-wmd-free-zone-in-the-middle-east-ends-in-declaration.
48 A/RES/74/30, December 12, 2019.
49 NPT/CONF.2015/8, February 25, 2015.