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国際平和拠点ひろしま

(4) IAEA との協力

(4) IAEA との協力
IAEA 保障措置の強化策として最も重視されているものの1 つが、追加議定書の普遍化である。本調査対象国のうち、豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE、英国及び米国は、包括的保障措置に加えて、IAEA 追加議定書のもとでの保障措置が、現在のIAEA 保障措置システムの標準、あるいは「一体不可分な部分(integral part)」だと主張している。
これに対して、NAM 諸国(一部の国を除く)は、追加的な措置は、非核兵器国の権利に影響を与えてはならず、法的約束と自発的な信頼醸成措置(CBM)とを明確に区別すべきだと主張する68。また、ブラジルは2019 年NPT 準備委員会で、「追加議定書をNPT のもとでの不拡散検証の標準とするいかなる試みにも反対する」とした69。他方、南アフリカは、追加議定書は自発的措置であるとしつつ、追加議定書を「未申告の核物質・活動がないことに関して、信頼を構築し、信頼できる保証を提供することを可能にする不可欠の手段である」と論じた70。
2019 年のIAEA 総会決議「IAEA 保障措置の有効性強化と効率向上」では、上述のような意見の相違を踏まえつつ、追加議定書に関しては、前年の決議と同様に下記のように言及された71。
➢ 追加議定書の締結はIAEA 加盟国の主権的な決定だが、いったん発効すれば追加議定書は法的義務となることに留意しつつ、追加議定書の締結・発効を行っていない加盟国に対して、可能な限り早期に締結・発効を行うこと、並びに発効までの間は暫定的に履行することを奨励する。
➢ 効力を持つ追加議定書によって補完される包括的保障措置協定を有するIAEA 加盟国のケースでは、これらの措置は、強化された検証標準を受諾していることを意味する。
IAEA 保障措置の強化・効率化に関して、IAEA は、各国の原子力活動について幅広い情報を検討し、これに従って各国において保障措置活動を調整するという「国レベルの保障措置概念(SLC)」の検討を続けている。2019 年のIAEA 総会決議「IAEA保障措置の有効性強化と効率向上」72には、前年に続き、SLC に関して以下の重要な保証がなされたことを歓迎すると記された。
➢ SLC が追加の権利と義務を伴わず、既存の権利と義務の解釈を変更することもない。
➢ SLC はすべての国に適用し得るが、各国の保障措置協定の枠内にとどまる。
➢ SLC は追加議定書を代替するものではなく、追加議定書によって提供される情報及びアクセスを追加議定書なしにIAEA が獲得する手段としては考案されない。
➢ SLC の開発と実施は、締約国及び地域共同体の計量管理制度(SSAC/RSAC)との緊密な協議を必要とする。
➢ 保障措置関連情報は、対象国との協定に基づく保障措置実施の目的にのみ使用される。
また、IAEA 事務局長報告によれば、IAEA は2019 年6 月末時点で、拡大結論を得ている67 カ国、包括的保障措置協定及び追加議定書を発効するものの拡大結論を得ていない35 カ国、包括的保障措置協定は発効させているものの追加議定書については未発効の28 カ国、VOA 及び追加議定書を発効している1 カ国について国レベルの保障措置アプローチ(SLA)を開発・承認した73。
保障措置技術の研究開発に関しては、IAEA の長期プラン74のもとで、当面の計画として「核検証のための開発・実施支援計画2018~19 年」が実施され、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ロシア、南アフリカ、スウェーデン、英国、米国など20 カ国と欧州委員会(EC)が参加している75。


68 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.17, March 21, 2019.
69 “Statement by Brazil,” Cluster 2, 2019 NPT PrepCom, May 3, 2019.
70 “Statement by South Africa,” Cluster 2, 2019 NPT PrepCom, May 2, 2019.
71 GC(63)/RES/11, September 19, 2019.
72 Ibid.
73 GC(63)/13, July 31, 2019.
74 IAEA, “IAEA Department of Safeguards Long-Term R&D Plan, 2012-2023,” January 2013.
75 IAEA, “Development and Implementation Support Programme for Nuclear Verification 2018-2019,” January 2018.

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