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国際平和拠点ひろしま

(3)核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組

2020 年2 月、ICONS 2020 がウィーンで開催され、北朝鮮を除く本調査対象国すべてを含む145 カ国及び25 以上の国際機関から1,900 名以上が参加し、うち53 カ国から閣僚レベルの代表が出席した93。この会議は2013 年、2016 年に続く3 回目として、核セキュリティに関するグローバルな取組をさらに強化するための方策について議論し、各国の知見の共有を促進することなどを目的として開かれた。閣僚セグメントと、政策系及び科学技術系の専門家が議論を行う科学技術セグメント94の2 部で構成され、閣僚セグメントでは22 項目からなる閣僚宣言が採択された。また、会議の成果として、科学技術セグメントの議論の成果をまとめた会議の共同議長(ルーマニア及びパナマ)による報告書が作成された95。こうした成果は「2022〜2025 年のIAEA 核セキュリティ計画」に反映されることとなっている。次回の会議は2024 年に開催される予定であり、閣僚宣言ではすべての加盟国に対して閣僚級の参加を奨励している96。
ICONS 2020 は、2016 年の核セキュリティサミット・プロセス終了後及び同年の第2 回ICONS 後に開催された最初の政治的ハイレベルの参加を伴う国際会議であった。各国が核セキュリティ強化へのコミットメントを再確認し、表明する最も重要な場であり、多くの国がIAEA の核セキュリティ基金への拠出を発表したほか、2016 年以降の自国の核セキュリティの取組を公式声明で発表するなどした。なかには、カナダのようにこれまでの取組を詳細に記した報告を自発的に公表したり97、パキスタンのように今次会議開催のタイミングに合わせて準備した小冊子(「パキスタンの核セキュリティ体制(Pakistan’s Nuclear Security Regime)98」)を配布したりするなど、自国の核セキュリティ措置に関する透明性や信頼性の向上を積極的に図る動きも見られた。さらに、核セキュリティサミット・プロセスで提示され、その後IAEA のINFCIRC文書として発出された各種バスケット提案について、提案主導国を中心に賛同国を増やすための広報活動がYouTube 動画を用いてなされるなど、サミット・プロセスで構築した取組の土台を活用した積極的な取組も見られた。
このようにICONS 2020 は多数の参加を得て実施されたが、その後はIAEA による活動を含め、核セキュリティに関する各種の国際的な取組の多くは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)により延期あるいは遠隔で実施されるなどした99。他方で、このような規模でのパンデミックは、国内外で移動制限を含む対応措置が講じられるなかでの、緊急時対応を含めた核セキュリティ措置の確保、またそのための国際協力の確保の重要性と課題を提起した。こうしたなか、IAEA は原子力事故または放射線緊急事態発生時の国際的な援助の要請及び提供にかかる仕組みの試験を目的とした国際緊急時対応演習(Convention Exercise)であるConvEx-2bを3 月にリモートで実施した100。原子力安全及び核セキュリティ事象に起因する核及び放射性物質に関する緊急事態は、災害、パンデミックなど様々な危機を伴うなかで対応せざるを得ない場合もあるかもしれず、パンデミックが進行するなかでの初動対応者の対応に焦点を当てて実施された意義は大きいと言えよう101。
A) 民生利用におけるHEU 及びプルトニウム在庫量の最小限化
核兵器を含む核爆発装置に利用可能なHEU及びプルトニウムの在庫量を最小限化する取組は、最高水準の核セキュリティを目指す上で重要な要素の1つに数えられる。2004 年のGTRI に始まり、2010 年以降の一連の核セキュリティサミット・プロセスを通じて取組が行われた結果、今日では南米、中央ヨーロッパ諸国、東南アジアがリスクの高い核物質が存在しない地域となった。こうした取組に関し、たとえば日本は、GTRI などを通じた日米協力の下、2016 年に日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速炉臨界実験装置(FCA)からHEU 及び分離プルトニウムを全量撤去したほか、日米両国は、2016 年のワシントン・核セキュリティサミットにおいて、京都大学臨界集合体実験装置のすべてのHEU 燃料を米国に搬出するために協働すると表明した102。
なお、ICONS 2020 の閣僚宣言では、HEU及び分離プルトニウムを保有しているすべてのIAEA 加盟国に対して、技術的及び経済的に実行可能な場合には、民生用のHEU在庫量を任意でさらに最小限化することが奨励された103。
以下では、民生利用におけるHEU 及び分離プルトニウム在庫量の最小限化に資する取組について、本調査対象国がICONS2020 やIAEA 総会での公式声明で言及した内容を列挙する。

➢ カザフスタン104:米国の協力を得て、IGR 研究炉に最後まで残っていた2.9kg の未照射のHEU を低濃縮ウラン(LEU)に希釈した。これは、2019 年のIAEA 総会における両国のコミットメントを実施に移したものである。両国はまた、2020 年のIAEA 総会の際に共同声明に署名し、2021 年にカザフスタン国立原子力センターのIVG.1M 研究炉をHEU 燃料からLEU 燃料を使用するタイプへと転換することとした。
➢ カナダ105:複数の研究炉で保有していた米国起源のHEU を2019 年末までにすべて米国に搬出し終え、国内にHEUを燃料とする研究炉はなくなった。
➢ ノルウェー106:HEU 使用の最小限化及びHEU 在庫の撤去を強力に推進している。HEU最小限化に関する共同声明を米国とともに発出した。HEU完全除去の障害となっているトリウムが混合したHEU 在庫の最小限化について技術的な解決策を模索している。
➢ 韓国107:研究炉用燃料の転換を可能とする高密度のLEU粉末を製造する革新的な技術を開発した。
➢ ベルギー108:医療用の放射性同位体の生産施設及び研究炉について、技術的、経済的に可能な限り早期にLEUターゲット及びLEU燃料を使用したものへの転換を完了することに完全にコミットしている。いずれの取組においても著しい進展が得られている。

➢インド109:HEU 使用の最小限化及び撤去の継続的な取組として、LEU ベースの燃料を使用したAPSARA-U 研究炉を稼働させている。また、LEU ベースのターゲットを使用するMo-99 の生産施設の稼働は進展した段階にある。
➢ 米国110:2016 年以降、13 トン以上の余剰HEU(核兵器換算で516 発分以上に相当)を希釈した。また、今日HEUが存在しない国となった2 カ国からのものを含む1,000kg 以上の核物質を撤去、またはその処分を確認した。
➢ 英国111:民生用の燃料への転換のための約700kg のHEU のスコットランドから米国への搬出を2018 年12 月に完了した。
➢ インドネシア112:2016 年以降、放射性同位体の生産及び研究炉の運転でLEUを使用している。これはICONS 2020の閣僚宣言の文言と精神に従って核物質を安全に管理するという自発的な取組の一部である。
➢ 南アフリカ113:技術的、経済的に可能な場合にはHEU 使用の最小限化のあらゆる方法を模索すべきとのICONS2020 閣僚宣言へのコミットメントを改めて表明する。

民生用のHEU の在庫量については、2019 年8 月にノルウェーが、また2020 年1 月に豪州が、任意の報告をIAEA に提出した。これらの報告は、2017 年に発出された「民生利用における高濃縮ウランの最小限化と削減にかかる共同声明(INFCIRC/912)」に添付された任意報告用の定型様式を用いて行われたものである114。定型様式を使用することによって情報開示が望まれる情報の共有が期待できるほか、定期的に提出がなされれば、当該国のHEU最小限化の取組を国際社会が評価することも可能となる。この共同声明には、豪州及びノルウェーに加え、カナダ、オランダなど21 カ国が参加している115。
B) 不法移転の防止
核検知、核鑑識、法執行及び税関職員の執行力強化のための新技術の開発、IAEA移転事案データベース(ITDB)への参加は、核物質の不法移転防止のための取組として重要である。特にITDB は、核物質及びその他の放射性物質の不法な所有、売買・取引、放射性物質の不法散布、行方不明の放射性物質の発見などに関係した事例を情報共有するためのデータベースとして、IAEA の核セキュリティ計画を支える要素116であるのみならず、核セキュリティ上の脅威を現実のものとして広く受け止めるのにも役立つ統計的資料として、近年その存在感を一層高めている。
2020 年版の「ITDB ファクトシート」によれば、2019 年12 月末時点でのITDB 参加国数は139 カ国であり117、新たにコモロ連合が参加した。本報告書執筆時点で最新となる2019 年の「IAEA 年次報告」によれば、2019 年には189 件の事案がITDB に報告された118。前年は253 件であり、報告件数上は64 件減少した。
また、IAEA の2020 年の「核セキュリティ報告」119によれば、1995 年のITDB 開始以来、2020 年6 月末までに3,768 件の事案が報告された。2019 年7 月から2020 年6月末までの1 年間の報告件数は208 件であったが、そのうちこの期間内に発生した事案は94 件であった120。新たに報告された208 件の内訳は以下のとおりである。

➢ 不法移転または悪意ある使用にかかる事案:5 件(うち2 件は信用詐欺事案)。いずれもHEU やプルトニウム、あるいはIAEA の原子力安全基準で区分Ⅰに分類された放射線源ではなく、また事案を報告した国で管轄権を有する当局によって、すべての放射性物質及び放射線源が押収された。
➢ 情報不足のため、不法移転または悪意ある使用を企図したものであったか意図が不明な事案:67 件。内訳は放射線源の盗難が55 件、無許可の所持が3 件、紛失が9 件。これらすべてが原子力安全基準における区分Ⅲの放射線源にかかる事案であり、53 件について未回収である。
➢ 規制管理を外れた物質で、不法移転、悪意ある使用、あるいは詐欺には該当しない放射性物質にかかる事案:136件。大半は許可を受けていない廃棄や積み出し、そして過去に遺失した放射線源の予期せぬ発見などであった。

なお、ITDB では参加国の機微情報の保護という観点から、報告された事案や不法な取引の詳細については公開されていない。
本調査対象国の不法移転の防止措置、輸出管理を巡る法令整備、国境での放射性物質の検知装置設置、核鑑識に関する能力の強化(詳細は後述する)などに関する各種の取組は以下のとおりである。

➢ インド121:原子力または放射線緊急事態における放射能汚染された広大な地域での捜索、検知及び迅速な質的及び量的評価のための「最先端の」放射線監視システムを構築した。また、2020年3 月に最小検知可能量及び警報閾値の決定に関するIAEA の技術会合を開催し、15 カ国から43 名が参加した。
➢ インドネシア122:IAEA などと協力して、核セキュリティのインフラを開発し強化しており、キャパシティ・ビルディング・プログラムや放射能ポータルモニターや放射線データ監視システムをインドネシアの入国地点や国境に設置したほか、現在、規制を外れた核物質や放射線源に関する規定を盛り込むために原子力エネルギー法を改正している。
➢ ブラジル123:核物質の不法移転防止のための、17,000km 以上にわたる10 カ国との陸国境及び8,000km 以上の海岸線における国境管理並びに輸出管理において大きな進展を遂げた。周辺国の法執行機関及び関係当局との調和の取れた行動を通じて、統合国境防護プログラムが幅広い周知の越境犯罪の防止を向上させている。このプログラムは、海上法執行機関の調整の下、国内水域に入ってくる核物質の荷送も対象に含めている。
➢ イラン124:放射線源のセキュリティに関する規則と、放射性及び核物質の規制及び不法移転対策に関する関連の指針を更新しているところである。
➢ カナダ125:国境サービス庁(Canada Border Services Agency)が、自国に入国する商業用海上コンテナを介した不法移転防止のために国の放射線検知ネットワークの性能を向上させた。国内の主要な海港でコンテナの荷送時に単独作動自立型放射線検知ポータルを用いて検知を行っている。
➢ 英国126:国境及び国内で最新の検知技術を実験的に試し、使用している。
➢ 米国127:2016 年以降、世界の672 の国境地点に放射線検知システムを設置し、不法移転を検知及び特定するために177 の可搬型システムを配備した。
➢ メキシコ128:2020 年第3 四半期に、中米諸国を対象とした核セキュリティ検知アーキテクチャに関する意識向上のための地域ワークショップの実施を予定している。

他方、国際機関の取組にも目を向ければ、核テロ防止に関するデータ収集、捜査支援、各国法執行機関間の信頼醸成と協調のためのフォーラムを提供するINTERPOL では、2019 年4 月にIAEA が主催した「核鑑識にかかる技術会合」において、規制の管理を外れた核物質及びその他の放射性物質の脅威への対処の際に核鑑識が果たすべき役割について報告を行い、その知見を明らかにした129。
以下の表3-6 では、平和目的のHEU を最小限化する取組、ITDB への参加、及び核物質・その他の放射性物質の不法移転の防止のための措置の実施に関して、各種の公式声明において取組の意思表示があったケースを示した。
C) 国際評価ミッションの受け入れ
核物質及びその他の放射性物質の防護、関連施設及び活動に関する国際文書やIAEA のガイダンスの実施について国際的な専門家が助言をする国際評価ミッションの1 つである国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)とは、加盟国の要請に基づき、IAEA 主導で核物質防護専門家から構成される国際的なチームが当該国の政府及び原子力施設を訪問し、国の核物質防護体制、施設の核物質防護措置の内容の確認、並びに政府関係者及び原子力事業者へのヒアリングなどを通して、IAEA の核物質防護勧告(INFCIRC/225)に準拠した防護措置を実施する上で必要な助言などを行うものである。近年のIPPAS ミッションの実施件数は、2018 年及び2019 年が5 件であったが、2020 年は新型コロナウイルスの影響もあると思われるが0件となった130。他方で、過去にIPPAS ミッションを受け入れ、その後フォローアップミッションを要請し、核物質防護の強化に継続的に取り組んでいる国々もある131。IAEA はIPPAS ミッション受け入れの3〜4年後にフォローアップミッションによる評価を受けることを推奨している。
将来のIPPAS ミッションなどの受け入れについて、本調査対象国がICONS 2020 の公式声明で言及した内容は以下のとおりである。

➢ ポーランド132: これまでの取組の成果を踏まえ、2021 年にIPPAS フォローアップミッションの受け入れを検討している。
➢ パキスタン133:IPPAS ミッションの受け入れを引き続き積極的に検討している。
➢ トルコ134:国の法的枠組みを国際的な最高水準とすることや履行能力を向上させることは継続的なプロセスである。近い将来にIPPAS ミッションの受け入れを希望している。

➢ ベルギー135: 2020 年末に3 回目となる「IPPAS ミッション実施の経験及び最良慣行の共有に関する国際セミナー」を開催する予定である

また、2020 年8 月に、ロシアの国営原子力企業であるロスアトム社がIPPAS や統合核セキュリティ支援計画(INSSP)を含むIAEA の核セキュリティ関連のミッションに関するオンライン・ワークショップを開催し、国内の産業界の専門家が40 名以上参加した。ロシアはこれまでのところIPPASミッションを受け入れた実績はないが、近い将来の受け入れに向けて国内関係者の理解を深めることを意図したものと思われる136。
近年のIPPAS ミッションにかかる動向として、機微情報を保護しつつ、その報告書の一部を公表することが取組の透明性や説明責任の観点から奨励されている。こうした動向を受け、オランダ、スウェーデン、豪州などに続いて2019 年12 月に日本もIPPAS ミッション及びフォローアップミッションの報告書の一部を公開した137。
IAEA では、核セキュリティ体制整備・強化を支援すべく、IPPAS 以外にも、要請に基づき実施される国際核セキュリティ諮問サービス(INSServ)やINSSP 策定のためのミッションなども提供している。INSServ は要請国に求められる核セキュリティ体制の要件全般を検討し、改善が必要な点をIAEA が助言するサービスである。INSSP は各国が体系的かつ包括的に自国の核セキュリティ体制を向上させるためのものであるほか、各国に支援を行うIAEA、関係国及びドナーが支援の重複を避け、技術的・財務上の観点からもリソースを最適化し、当該国の核セキュリティ関連活動を持続可能にせしめるものである。2020 年のIAEA の「核セキュリティ報告」によれば、2020 年6 月時点で、84 カ国がINSSP を正式に承認しており、21 カ国で正式承認待ちとなっているほか、2 カ国で最終化(finalization)待ちとなっている138。

IAEA はINSSP 策定ための一連の会合に先立ち、その準備のために核セキュリティ情報管理システムを利用した自己評価サーベイの実施を促進してきており、2020 年2月にラテンアメリカ諸国及びカリブ諸国を対象とした地域ワークショップを開催し、核セキュリティ体制にかかる自己評価に関して支援を行った139。
D) 技術開発―核鑑識
核鑑識は、核物質及び放射性物質が関係した不正取引や悪意のある行為の犯行者を特定し、刑事訴追を可能としうる核セキュリティ上重要な技術であり、さらなる技術開発と国内体制及び国際的なネットワーク体制の構築のための取組やそのための支援が行われてきている。核鑑識は、2016 年開催のICONS の閣僚宣言においてIAEA が加盟国への支援をさらに発展させる必要がある重要分野の1 つとされている140。この点に関連し、IAEA は2020 年1 月に核セキュリティ部内に「犯罪現場管理・核鑑識室(Crime Scene Management and Nuclear Forensics Unit)」を新設した141。
ICONS 2020 の閣僚宣言では核鑑識に言及はなされなかったが、会議の技術セッションでは核鑑識における協働の取組(Nuclear Forensics Collaborative Efforts)に関するパネルディスカッションが行われたほか、25 件以上の発表が行われた142。本調査対象国については、日本、米国及びカナダがパネル討論に貢献した。
こうした核鑑識の多国間協力の取組として重要な位置づけにあるのが、「核鑑識に関する国際技術ワーキンググループ(ITWG)」(旧称「核物質の不法移転に関する国際技術ワーキンググループ」)である。2020 年はITWG 創立25 周年にあたり、25 回目となる年次会合の開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により2021 年6 月に延期となった。他方で、いくつかの活動がバーチャルで行われ、たとえば国内の核鑑識ライブラリ開発のための第4回ギャラクシーサーペント演習(Fourth Galaxy Serpent Exercise: GSv4)を9 月までに終えるべく作業が行われた143。また、「第7 回ITWG 協同物質比較演習( ITWG 7th Collaborative Materials Exercise〔CMX-7〕)」が2021 年9 月に開催される予定となっている144。
なお、CMX はその取組の開始当初(CMX-1)、参加する分析ラボはわずか6機関であったものの、前回(CMX-6)では豪州、オーストリア、アゼルバイジャン、ブラジル、カナダ、チェコ、中国、フランス、ドイツ、ハンガリー、イスラエル、日本、カザフスタン、韓国、リトアニア、モルドヴァ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国、欧州委員会(共同研究センター、Joint Research Centre: JRC)が参加した145。
核鑑識にかかるもう1 つの重要な多国間協力の枠組みが、後述する核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ( Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism: GICNT)内に設置された核鑑識作業部会(NFWG、議長国はカナダ)である。多国間協力を通じた核鑑識能力の強化という観点で、NFWG においても多数のワークショップや机上演習が実施されている。
本調査対象国による核鑑識にかかる取組について、以下に列挙する。

➢ イスラエル146:国の鑑識研究所が最先端技術を用いて核鑑識の科学及び応用を促進するグローバルな取組に参加しており、この研究所はGICNT の参加国と協働している。
➢ ブラジル147:放射性物質の検知や追跡のため、核鑑識のさらなる開発に特に関心がある。
➢ カナダ148:国の核鑑識能力を向上、拡大すべく連邦の枠組みを正式に決定する途上にある。また、同様の目的のため、複数の科学研究開発及び技術運用能力開発プログラムを正式決定された連邦の省庁間の枠組みに移行させているところである。
➢ 豪州149:IAEA との協力及び二国間による協力の双方を通じて、地域トレーニングコースを提供することにより核鑑識に関する作業を続けている。この閣僚会合の機会に、既に賛同した31 カ国と同様に核鑑識に関する共同声明に参加することを各国に奨励する。
➢ 中国150:2020 年2 月に、核セキュリティ技術センターがIAEA との間で核鑑識科学における支援提供の推進を目的とした実務協定に署名した。
➢ オランダ151:2020 年2 月に鑑識研究所がIAEA との間で核鑑識科学における支援提供の推進を目的とした実務協定に署名した。

E) キャパシティ・ビルディング及び支援活動
核セキュリティサミット・プロセスの開始に前後して、教育・研修機能を含む国内の核セキュリティの持続性強化の手段として核セキュリティ支援センター(Nuclear Security Support Center: NSSC)の設置、あるいは地域諸国の専門家を対象とした中心的拠点(COE)の発足など、多くの国や地域において核セキュリティに関するキャパシティ・ビルディングなどの国際支援活動の取組が継続的に実施されてきた。
IAEA はこの分野における取組として、2020 年に「国の核セキュリティ訓練・支援センター( NSSC ) の設置及び運用 ( Establishing and Operating a National Nuclear Security Support Centre)」と題する技術文書1734(TECDOC-1734)の改訂版を刊行した152。また、新たな取組として、核セキュリティに関連した機器や技術の実証及び核セキュリティ・システムや大規模公共イベントにおける措置の実施に関する研修活動の準備に特化した研修施設をサイバーズドルフに設立する作業を開始した153。

核セキュリティを基軸とする関係各国でのCOE の動向について、ICONS 2020 及びIAEA 総会における声明で言及があったものは以下のとおりである。

➢ 日本154: 新型コロナウイルスの蔓延のなかでもIAEA と協力し、地域の人材育成活動を通じて核セキュリティの世界的な向上を続けていく。日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(JAEA-ISCN)がオンラインセミナーなどを通じて実施していく。今日までに、主にアジア諸国から4,600 名以上の専門家を受け入れ、研修を提供した。日本はこの分野において引き続き貢献を行っていく。
➢ インド155:2017 年にアクセス管理や高度な監視システムなどを含む最新技術を用いた物理的防護システムが備わった原子力エネルギーパートナーシップ・グローバルセンターの運用を開始し、研修コース、ワークショップ、技術会合などを含む25 以上の国際的なプログラムを実施し、40 以上のIAEA 加盟国から約400 名が参加した。また、世界原子力パートナーシップ・センター(GCNEP)は、グローバルな核セキュリティの強化のため、米国、フランス、英国、IAEA など、10 カ国と覚書(MOU)を締結した。

➢ サウジアラビア156:サイバーズドルフの核セキュリティセンターの設立及びその活動のために1 千万ドルをIAEAに拠出した。

なお、『Russian Nuclear Security Update』によると、ロシアのロスアトム技術アカデミーは2020 年9 月にIAEA の核セキュリティ国際スクール(理論セッション)を初めてロシア語で実施し、9 カ国から25 名がビデオ会議形式で参加した。また、実務セッションの開催が2021 年に予定されている157。
この他、本調査対象国によるキャパシティ・ビルディング関連の取組としては以下が挙げられる。

➢ イスラエル158:支援拡大のため、IAEAの緊急時対応援助ネットワークに参加し、IAEA の緊急事態センターの研修にも参加している。原子力または放射線緊急事態において、近隣諸国及びそれ以外の諸国も支援する用意がある。
➢ 韓国159:2019 年に地域のキャパシティ・ビルディングの向上を目的として、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国向けに核鑑識に関する研修コースを含む新たなプロジェクトを設計した。
➢ インド160:GCNEP が、バングラデシュに対し、物理的防護システムの研修に加えて、建設間近のバングラデシュ原子力発電所のキャパシティ・ビルディングにおける技術支援を行った。
➢ ナイジェリア161:ナイジェリアの核セキュリティセンターは、国内のみならず地域のイニシアティブも十分に支援できる戦略的な位置づけにある。

訓練・支援における国際ネットワーク

近年までに世界各地に設置された数多くのCOE の地域内外での活動面での重複を避け、効率的な連携や情報共有の緊密化、そしてIAEA などを軸としたより広範なネットワークの維持・拡大、国際支援を通じた教育・研修の強化や意識啓発を図ってゆくことが重要な課題となっている。
この関連で、2012 年にIAEA 主導で発足した「核セキュリティ訓練・支援センター国際ネットワーク(NSSC Network)」は、各国COE の間での連携やネットワーク構築の基軸として重要な役割を担っている。2020 年時点で、64 カ国から72 の機関が参加しており、地域別には、アジア太平洋が24 機関、欧州が22 機関、アフリカが18 機関、ラテンアメリカが6 機関、北米が2 機関となっている162。本調査対象国の参加国には、チリ、中国、エジプト、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、パキスタンがある。

これらの動向については複数の国々がこれまでの実績などについて、ICONS 2020及びIAEA 総会などにおける声明で言及しており、主なものを以下にまとめる。

➢ 日本163: JAEA-ISCN がこれまでに主にアジア諸国からの4,600 人の専門家を受け入れ、トレーニングコースを提供した。この分野での貢献を継続していく。
➢ 韓国164:国際核セキュリティアカデミー(INSA)が、2014 年以降、45 の国際トレーニングコースを開催し、うち19 についてはIAEA と共催で実施した。IAEA の統計によれば、INSA は世界の主導的なNSSCs の1 つであると見做されている。

また、中国については国家原子能機構(CAEA)がキャパシティ・ビルディングに関する取組を詳細にまとめた冊子をICONS 2020 において配布した。2019 年9月には、CAEA がIAEA の核セキュリティ技術のための協働センターに指定され、核セキュリティ技術センターが協働センターのスキームに参加している165。この新たな協力合意の下で、今後CAEA とIAEA は、たとえば、過酷な環境下のシミュレーション試験を含む放射線検知機器及び物理的防護システムの改善のために協働してゆくことになっている166。

アジアにおけるNSSCs のネットワークのメンバーである日本、中国及び韓国がアジア太平洋地域の人材開発に焦点を当て、NSSCs の初となる技術交流訪問を2021 年秋に実施を予定するなど、地域における連携が進んでいる。
また、『MirageNews』によると、2020年10 月、マレーシアの原子力許認可委員会がIAEA とともに、アジア太平洋地域における核セキュリティ研修や大規模公共イベントでの検知能力を支援するために、貸し出し可能な放射線検知機器の備蓄制度を設立した。機器はマレーシアのNSSC に保管される。IAEA が関与して核セキュリティ機器の備蓄制度が設立された最初の事例であり、機器の購入には日本が財政支援を行っている167。

教育分野における国際ネットワーク

こうしたNSSC ネットワークと同様の取組としては、核セキュリティ教育にかかる技術開発や情報共有を進め、卓越性をさらに強化するためのIAEA 主催による国際核セキュリティ教育ネットワーク(INSEN)の存在がある。INSEN は2020 年に創立10周年を迎え、IAEA の2020 年核セキュリティ報告書によれば、2020 年時点で65 カ国から194 の教育機関が参加している168。参加国については前年比で1 カ国増えたほか、教育機関については10 機関が新たに参加し、近年も増加傾向にある。本調査対象国の参加国には、オーストリア、ブラジル、カナダ、エジプト、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、日本、カザフスタン、オランダ、ナイジェリア、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、スウェーデン、トルコ、英国、米国などがある169。
2020 年7 月に開催されたINSEN 年次会合では、核セキュリティにおける女性に関するジェンダー・イニシアティブをテーマとして昨年に続き女性の役割に関するパネル討論が行われた。なお、核セキュリティにおけるジェンダーの側面については、ICONS 2020 の閣僚宣言においても、教育や研修への平等なアクセスを含め、国のセキュリティ体制内で包括的な労働力を確立することが加盟国に奨励された170。ICONS2020 ではさらに、IAEA が「原子力における女性」と題するジェンダーに関するサイドイベントを開催した171。
F) IAEA 核セキュリティ計画及び核セキュリティ基金
IAEA は4 カ年ごとに「核セキュリティ計画」(Nuclear Security Plan)を策定しており、2020 年12 月現在の最新版は2018〜2021 年を対象とした第5 次活動計画172である。この「核セキュリティ計画」を実施するために、IAEA では2002 年に核テロリズムの防止、検知及び対処にかかる核セキュリティ基金(NSF)を設立し、以来、IAEA 加盟国には自発的な資金の拠出が要請されている。
ICONS 2020 の閣僚宣言では、NSF が核セキュリティ分野におけるIAEA の活動の重要な手段であるとの認識が示され、IAEA が核セキュリティ分野における作業を実施し、加盟国が必要とする支援を要請に基づき提供できるようにすべく、ICONS2020 に参加の加盟国は任意でNSF への拠出を継続すること、また必要に応じて、技術的及び人的資源の提供を継続することが謳われた173。
核セキュリティに関するIAEA の通常予算の割当は近年漸増しているものの、その増加については途上国を中心に否定的な意見が根強いことから限定的となっている174。こうしたことから、ICONS 2020 では、ベルギー、ドイツ、ノルウェーといった国々が通常予算割当の増加の必要性に言及した
175。

各国によるNSF への貢献については、IAEA の「核セキュリティ報告」の2020 年版によれば、2019 年7 月1 日から2020 年6 月30 日までの1 年間に、ベルギー、カナダ、中国、エストニア、フランス、イタリア、日本、韓国、ノルウェー、ロシア、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国の15 のIAEA 加盟国及びその他のドナーがNSF に拠出した176。また、本報告書執筆時点で最新である2019 年版の「IAEA 年次報告」によれば、2019 年度のNSF の歳入は3,330 万ユーロであった177。前年度比で1,110 万ユーロの増額となったが、2018 年度の歳入は2017 年度比で2,190 万ユーロの減額となっていた。このNSF への拠出額増加の背景には、閣僚級の参加をもって開催されたICONS 2020 があり、会議の最終日には、NSF へ総額2,000 万ドル以上の新たな拠出の発表及び拠出の再確認が行われたことが発表された178 。
ICONS 2020 における各国声明で明らかになった本調査対象国のNSF への具体的な拠出の表明について記す。

➢ 英国179:160 万ポンドを拠出する予定である。他の加盟国にも拠出を要請する。

➢ ニュージーランド180:NSF に定期的に拠出している。2020 年に15 万ニュージーランドドルをNSF に拠出した。

また、ICONS 2020 では多くの本調査対象国がNSF へのこれまでの拠出に言及しており、以下にそれらをまとめる。

➢ カナダ181:これまでに5,800 万ドル以上を拠出し、第3 位のNSF 拠出国である。地域を超えて研修や機器を提供するIAEA の能力強化のため、核セキュリティサポート・研修センターに関するIAEA の作業のために250 万ドルを拠出することを発表する。
➢ ベルギー182:2010 年以降200 万ドル以上を拠出した。
➢ スイス183:2016 年の核セキュリティ国際会議以降31.5 万ユーロを拠出した。
➢ ドイツ184:500 万ユーロ以上をNSF に拠出した。
➢ ロシア185:2010 年以降毎年100 万ドルを拠出している。NSF に継続的に貢献している。
➢ フランス186:毎年NSF に拠出している。2020 年からサヘル地域における新たなキャパシティ・ビルディングのプロジェクトに100 万ユーロ相当の資金支援を実施する。
➢ 韓国187:2012 年以降に約700 万ドルを拠出した。
➢ 豪州188:2019 年に追加で25 万豪ドルを拠出した。
➢ 米国189:IAEA がその核セキュリティに関するマンデートの範囲内で様々な活動を実施するのに必要な資源を提供し続けなければならない。2016 年の核セキュリティ国際会議以降、IAEA 及びNSF に5,100 万ドル以上を自発的に拠出した。
➢ オランダ190:長年にわたって拠出を行ってきており今後も継続していく。
➢ スウェーデン191:NSF への拠出に加え資金以外の提供も通じてIAEA の活動に貢献した。

G) 国際的な取組への参加
核セキュリティの水準向上のための国際的な取組は、今日重層的な構造を形成している。こうした核セキュリティにかかる国際社会の主だった取組としては、国連憲章第7 章に基づき、加盟国に大量破壊兵器などの拡散を禁ずるための法的措置を講じ、厳格な輸出管理制度の策定などを求める不拡散に関する安保理決議第1540 号(2004年)192をはじめとして、INTERPOL による核セキュリティ関連での各国法執行機関への支援や、IAEA 主催による核セキュリティに関する国際会議のほか、各種の関連する会合やワークショップなどに象徴される国際機関におけるアプローチ、そして2016 年に終了した核セキュリティサミット・プロセスといった多国間フォーラムが挙げられる。
核セキュリティサミット・プロセスについては、2016 年のプロセス終了後も核セキュリティの水準向上における国際的な取組を継続的に行うための複数の仕組みが設けられており、その中心に位置するのが「グローバルな核セキュリティ強化のための持続的な行動に関する共同声明」を通じて設立された核セキュリティ・コンタクト・グループ(NSCG)である。NSCG の目的は、各国による核セキュリティへの持続的な関与及び実施を促進すること、またグローバルな核セキュリティ・アーキテクチャが強化され持続的かつ包括的に構築されることである。具体的な活動としては、IAEA 総会に合わせて年に1 度開催する会合に加えて、関連する会合も開催するとされており、たとえばインドが2020 年に技術会合を開催する予定であると発表した193。NSCG の参加国については、設立当初は40 カ国であったが、その後カナダが主導国となってNSCG の原則声明(Statement of Principles)を明示した文書をIAEA の情報文書 INFCIRC/899 として発出し未参加国の参加を呼び掛けている194。2020 年11 月時点で、豪州、中国、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、日本、韓国、パキスタン、スウェーデン、スイス、英国、米国など48カ国に加えて、欧州連合(EU)、IAEA、INTERPOL 及び国連の4つの地域・国際機関がオブザーバーとして参加している195。参加国は徐々にではあるが増加しており、たとえばパキスタンは2019 年に新たに参加した196。
NSCG については、ICONS 2020 の公式声明において、本調査対象国が以下の言及を行った。

➢ カナダ197:包括的で国際的な核セキュリティ・アーキテクチャの構築及び維持のためのNSCG の取組を強く支持し続けており、INFCIRC/899 に示されたグループの原則声明に賛同するすべての国の参加を歓迎する。
➢ ナイジェリア198:NSCG の継続的な作業への関与を強調する。

NSCG に加えて、核セキュリティサミット・プロセスでは多数のバスケット・イニシアティブが打ち出されており、たとえば日本がリード国を務める「輸送セキュリティ(INFCIRC/909)」、米国が主導する「内部脅威緩和(INFCIRC/908)」、豪州が主導する「核鑑識(INFCIRC/917)」、フランスが主導する「高放射能線源のセキュリティ(INFCIRC/910)」などがある199。
ICONS 2020 においては、イスラエルのように自らが参加するバスケット・イニシアティブに言及するとともにサミット・プロセスでのコミットメントに引き続き取り組むと表明する国があったほか200、特定のイニシアティブの主導国となった国が各種テーマについてサイドイベントを開催するなどして、継続的な取組を主導する役割を果たした201。
さらに、前述の各種多国間フォーラムの取組に加えて、核セキュリティにかかる多国間協力の枠組みとして、G7 原子力安全セキュリティ・グループ(NSSG)、大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG7 グローバル・パートナーシップ(G7GP、旧称G8 グローバル・パートナーシップ)、並びにGICNT による取組がある。
NSSG は毎年3回の会合を開催し報告書を作成しており、2019 年開催の報告書では、小型モジュール型原子炉(SMR)のような新興技術が原子力安全、核セキュリティ及び保障措置上の課題となりうること、民生用原子力施設でのサイバーセキュリティの枠組みに政治面と規制面から取り組む必要があることなどが言及されたが202、2020 年については会合開催及び報告書作成の有無は公開情報からは明らかではない。なお、SMR の核セキュリティ措置については、ICONS 2020 の公式声明において、日本はSMRのような先進原子力技術の研究開発に深く関与する国として、技術的進展をしかるべく考慮することにより、そのさらなる向上を目指すことは重要な課題であると発言した203。
一方、G7GP については、6 月に全体会合がバーチャルで開催され、議長国の米国が、核・放射線セキュリティにおけるIAEA の取組を補完するグローバル・パートナーシップの作業を続けねばならず、ICONS 2020 で設定された優先事項についてのモメンタムを維持するとともに、CPPNM/A の履行や普遍化の支援を行わねばならない と述べた204。この点に関し、カナダはG7 のパートナーとともにCPPNM及びCPPNM/A の普遍化のための外交的なアウトリーチ活動の調和を図り、ラテンアメリカ及びアフリカにおいて普遍化と条約履行の取組の強化を助けるための地域ワークショップを支援したとしている205。
2006 年のサンクトペテルブルク・サミットにおける米露主導の合意に基づくGICNT は、核セキュリティ分野におけるもう1 つの重要な国際的取組である。核鑑識の分野でのGICNT の取組については前述したとおりだが、あくまでも自発的な国際協力の枠組みとして、GICNT には2020年11 月時点で豪州、中国、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、日本、韓国、パキスタン、ロシア、スウェーデン、スイス、英国、米国など89 カ国のパートナー国に加えて、IAEA、INTERPOL、国連テロ対策オフィス(UNOCT)など6 つの国際機関がオブザーバー参加している206。
GICNT では「対応と緩和」、「核鑑識」及び「核検知」の3つの作業グループを中心に活動が行われている。2019 年度は核物質及びその他の放射性物質の検知能力支援や核鑑識能力の向上、核セキュリティ事案に関連した災害対応などを扱った共同演習やワークショップなどが実施されたが、2020 年についてはGICNT に関する個別の取組は、公開情報からは窺い知ることができなかった。
他方で、複数の本調査対象国がICONS2020 においてGICNT に言及した。

➢ カナダ207:GICNT の核鑑識ワーキングループの議長を引き続き務めており、このような多国間イニシアティブに関与し続けている。
➢ フランス208:定期的にトレーニングコースや他国の代表団による訪問を受け入れており、2020 年4 月にGICNT に関するセミナーを開催する予定である。
➢ ニュージーランド209:2016 年以降、アジア太平洋諸国を中心にGICNT のワークショップを支援している。

2019 年以降の活動を踏まえ、今後の方向性などについて政府高官レベルで議論を行うGICNT の次回の全体会合は2021 年に開催が予定されている210。
多国間の取組に加えて、二国間による核セキュリティ強化の取組も複数行われている。たとえば、日本は、2010 年11 月に日米核セキュリティ作業グループ(NSWG)の設立を発表し、人材育成、核鑑識、輸送セキュリティ、HEUの最小限化などの分野において両国の関係省庁を中心に協力を進めてきている211。また、米国と韓国は2020年9 月に第4 回核セキュリティ作業グループ会合及びハイレベル二国間委員会をバーチャルで実施した。そこでは核セキュリティにおける二国間の協力の現状をレビューし、今後の協働の方法について議論を行った212。米韓両国は、グローバルな核セキュリティレジームの強化において主導力を示してきており、特にHEU の最小限化、核関連施設のサイバーセキュリティの向上、並びにIAEA の核セキュリティ活動の強化で国際社会を牽引してきたとしている213。さらに10 月には、米国の国家核安全保障庁(NNSA)とカナダの原子力エネルギー公社が、原子力安全及び核セキュリティ分野におけるより効果的な二国間の協働を可能とするため、核セキュリティ、保障措置及び不拡散問題における協力及び情報交換に関する覚書に署名した。覚書の合意事項には、相互のトレーニング、ワークショップ及び研修、研究・開発における協働を含む知識や情報の共有が含まれる214。
これまでに述べた核セキュリティに関するIAEA 諮問ミッション(本報告書ではIPPAS ミッションを基準に評価するが、その他の関連する諮問ミッションもこれに含める)の各国受け入れ状況、核鑑識への対応、核セキュリティ分野でのキャパシティ・ビルディング及びその支援活動などは、いずれも核セキュリティに関連するパフォーマンスの向上に裨益し、調査対象国の核セキュリティ体制強化の取組を示す指標になると考えられる。また、NSF への貢献や、G7GP、GICNTへの参加も、こうした核セキュリティ体制の整備に向けたコミットメントを示すものとして評価できる。かかる前提に基づき、以下の表3-7 では、上記の各項目(核セキュリティ・イニシアティブ)への各国の参加・取組状況を示した。

 


93 “Co-Presidents’ Report,” ICONS 2020, February 14, 2020, p. 2.
94 科学技術セグメントは、ハイレベル・パネルセッション及び技術セッションで構成される。
95 “Co-Presidents’ Report,” ICONS 2020, February 14, 2020, p. 2.

96 “Ministerial Declaration,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.
97 “Government of Canada: National Progress Report,” ICONS 2020, February 2020.
98 Ministry of Foreign Affairs Government of Pakistan, Pakistan’s Nuclear Security Regime, February 2020.
99 IAEA, IAEA Nuclear Security Report 2019, GC (64)/3, p. 1.
100 35 のIAEA 加盟国、世界気象機関(WMO)及び2 つの地区特別気象センター(RSMC)が参加した。
101 Nicholas Tarsitano, “Preparing to Assist in a Nuclear or Radiological Emergency Under all Circumstances,” IAEA,
March 30, 2020.

102 「第4回米国核セキュリティサミット 核セキュリティ協力に関する日米共同声明(骨子)」外務省。
103 “Ministerial Declaration,” ICONS 2020, February 2020, p. 1.
104 National Nuclear Security Administration, “Kazakhstan and U.S. Cooperate to Eliminate Highly Enriched Uranium in Kazakhstan,” September 22, 2020, https://www.energy.gov/nnsa/articles/kazakhstan-and-us-cooperate-eliminate-highly-enriched-uranium-kazakhstan.
105 “Statement of Canada,” ICONS 2020, February 2020.
106 “Statement of Norway,” ICONS 2020, February 2020; “U.S. and Norwegian Experts Cooperating to Make Norway Free of Highly Enriched Uranium,” National Nuclear Security Administration, September 21, 2020.
107 “Statement of Republic of Korea,” ICONS 2020, February 2020, p. 4.
108 “Statement of Belgium,” ICONS 2020, February 2020.

109 “Statement of India,” ICONS 2020, February 2020.
110 “Statement of United States of America,” ICONS 2020, February 2020, p. 3.
111 “Statement of United Kingdom,” ICONS 2020, February 2020, p. 13.
112 “Statement of Indonesia,” ICONS 2020, February 2020.
113 “Statement of South Africa,” ICONS 2020, February 2020.
114 “Joint Statement on Minimising and Eliminating the Use of Highly Enriched Uranium in Civilian Applications,” INFCIRC/912, February 16, 2020; “Australia’s 2019 INFCIRC/912 HEU Report,” IPFM Blog, January 23, 2020,http://fissilematerials.org/blog/2020/01/australias_2019_infcirc91.html.
115 IAEA, INFCIRC/917, April 20, 2017. なお、HEU の在庫量に関する報告については、「国際プルトニウム管理指針(INFCIRC/549)」に基づく民生用分離プルトニウム在庫量の報告において自発的に追加して報告を行っている国もある。

116 IAEA, “ITDB: Incident and Trafficking Database.”
117 IAEA, “IAEA Incident and Trafficking Database (ITDB) Incidents of Nuclear and Other Radioactive Material out of Regulatory Control 2020 Fact Sheet,” p. 1.
118 IAEA, IAEA Annual Report 2019, GC (64)/5, p. 82.
119 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, pp. 8-9. なお、IAEA の2020年版「ITDB ファクトシート」によれば、1993 年から2019 年12 月31 日までの間にITDB に報告された事案の総件数は3,686 件にのぼり、その内訳は、グループⅠ(移転及び悪意ある使用に関する確認済みの事案、あるいはほぼ確実と思われる事案)が290 件、グループⅡ(移転や悪意ある使用に関係するか否かを確定するための情報が不足している事案)が1,023 件、そしてグループⅢ(移転や悪意ある使用に関連していない事案)が2,373 件あった。
“IAEA Incident and Trafficking Database (ITDB) Incidents of Nuclear and Other Radioactive Material out of Regulatory Control 2020 Fact Sheet,” p. 2.
120 208 件には2019 年7 月以前に発生した事案も含まれている。

121 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 20; “Statement of India,”
ICONS 2020, February 2020.
122 “Statement of Indonesia,” ICONS 2020, February 2020.
123 “Statement of Brazil,” ICONS 2020, February 2020.
124 “Statement of Iran,” ICONS 2020, February 2020, p. 6.
125 Government of Canada, “National Progress Report,” ICONS 2020, February 2020, p. 4.
126 “Statement of United Kingdom,” ICONS 2020, February 2020, p. 15.
127 “Statement of United States of America,” ICONS 2020, February 2020, p. 3.
128 “Statement of Mexico,” ICONS 2020, February 2020.

129 Jerry Davydov, David Kenneth Smith and Nicola Vorhofer, “The IAEA Technical Meeting on Nuclear Forensics: Sharing Global Success in Nuclear Forensics Development and Implementation,” ITWG Nuclear Forensics Update, No. 11, June 2019, p. 2.
130 IAEA, “Peer Review and Advisory Services Calendar.”
131 たとえばポーランドは、1997 年に初回となるIPPAS ミッションを受け入れ、2016 年に2 度目を、さらに2021年にフォローアップミッションの受け入れを予定している。“Statement of Poland,” ICONS 2020, February 2020.
132 “Statement of Poland,” ICONS 2020, February 2020.
133 “Statement of Pakistan,” ICONS 2020, February 2020.
134 “Statement of Turkey,” ICONS 2020, February 2020, p. 3.

135 “Statement of Belgium,” ICONS 2020, February 2020. ベルギーは2019 年にIPPAS フォローアップミッションを受け入れた。IPPAS ミッションによる評価には、「勧告」や「提案」に加えて、受け入れ国によって講じられている「最良慣行」が含まれており、ミッション受け入れ国にとっては核物質防護への取組の励みやモチベーションの向上となっているほか、各国が機微情報を保護しつつ最良慣行を共有することは他の国々が核物質防護のさらなる向上に取り組む上で有益であり、奨励されてきている。“Twenty Years of International Physical Protection Advisory Service (IPPAS) (History and Benefits: 2nd International Regulators Conference on Nuclear Security,” IAEA, May 2016.
136 “ROSATOM Concluded Online Workshop on IAEA Nuclear Security Missions,” Russian Nuclear Security Update, September/October 2020 Issue, http://russiannuclearsecurity.com/september-october2020issue.
137 「国際原子力機関(IAEA)の国際核物質防護諮問サービス(IPPAS)ミッション報告書及び同フォローアップミッション報告書の公開について」原子力規制委員会, 2019 年12 月24 日。
138 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 7.
139 Ibid., p. 8.

140 “Ministerial Declaration,” ICONS 2016, December 2016, pp. 1-2.
141 Henrik Horne and David Kenneth Smith, “IAEA Perspectives on the ICONS 2020,” ITWG Nuclear Forensics Update, No. 16, September 2020, p. 5.
142 Michael Curry and Klaus Mayer, “ITWG’s Contribution to the International Conference on Nuclear Security, 2020,”
ITWG Nuclear Forensics Update, No. 15, June 2020, p. 1-5.
143 “Chairpersons’ Address,” ITWG Nuclear Forensics Update, No. 16, September 2020, p. 1.
144 Ibid.
145 Jon M. Schwantes, “Trends in Nuclear Forensic Analyses: 20 Years of Collaborative Materials Exercises,” ITWG Nuclear Forensics Update, No. 10, March 2019, p. 6.

146 “Statement of Israel,” ICONS 2020, February 2020, p. 5.
147 “Statement of Brazil,” ICONS 2020, February 2020.
148 “Statement of Canada,” ICONS 2020, February 2020, p. 3.
149 “Statement of Australia,” ICONS 2020, February 2020.
150 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 21
151 Ibid.
152 IAEA, “Establishing and Operating a National Nuclear Security Support Centre, Revision of IAEA-TECDOC-
1734,” 2020.
153 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 6.

154 “Statement of Japan,” 64th IAEA General Conference, September 21, 2020, p. 6.
155 “Statement of India,” ICONS 2020, February 2020.
156 “Statement of Saudi Arabia,” 64th IAEA General Conference, September 21, 2020; “Saudi Arabia Donates $ 10mn to IAEA for Combating Nuclear Terrorism,” Saudi Gazette, September 22, 2020, https://www.saudigazette.com.sa/
article/598318/SAUDI-ARABIA/Saudi-Arabia-donates-$10mn-to-IAEA-for-combating-nuclear-terrorism.
157 “IAEA and ROSATOM Technical Academy Held the First Nuclear Security School in Russian,” Russian Nuclear Security Update, September/October 2020 Issue, http://russiannuclearsecurity.com/september-october2020issue.
158 “Statement of Israel,” ICONS 2020, February 2020, p. 5.
159 “Statement of Republic of Korea,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.
160 “Statement of India,” ICONS 2020, February 2020.

161 “Statement of Nigeria,” ICONS 2020, February 2020.
162 “Chair’s Welcome,” IAEA NSSC Network Newsletter, Issue 5, March 2020, https://us6.campaign-archive.com
/?u=958dfcbed8f359a6db0bb9c87&id=1c47327614.
163 “Statement of Japan,” ICONS 2020, February 2020.
164 “Statement of Republic of Korea,” ICONS 2020, February 2020, p. 4.
165 Miklos Gasper, “China’s Nuclear Security Technology Centre Supports International Training Efforts,” IAEA Bulletin, Vol. 61-1, February 2020, pp. 10-11.
166 Ibid.

167 “Malaysian Nuclear Security Support Center to Make IAEA Radiation Detection Equipment Available Regionally,”
Mirage News, October 7, 2020, https://www.miragenews.com/malaysian-nuclear-security-support-center-to-makeiaea-
radiation-detection-equipment-available-regionally/.
168 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 24.
169 “Annual Meeting of the International Nuclear Security Education Network (INSEN), Chair’s Report,” July 2019;
“Working Group Meeting of the International Nuclear Security Education Network (INSEN), Chairman’s Report,”
February 2015.
170 “Ministerial Declaration,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.
171 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 3.

172 IAEA, “Nuclear Security Plan 2018-2021, GC (61)/24,” September 14, 2017.
173 “Ministerial Declaration,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.
174 “Support for the International Atomic Energy Agency,” NTI Nuclear Security Index, https://www.ntiindex.org/
story/support-for-the-international-atomic-energy-agency/.
175 “Statement of Belgium,” International Conference on Nuclear Security, February 2020; “Statement of Germany,”
ICONS 2020, February 2020, pp. 3-4; “Statement of Norway,” ICONS 2020, February 2020.
176 IAEA, Nuclear Security Report 2020, GOV/2020/31-GC (64)/6, August 12, 2020, p. 29.
177 IAEA, IAEA Annual Report 2019, GC (64)/3, p. 82.
178 Inna Pletukhina, “Countries to Provide US$20 million to IAEA Nuclear Security Fund,” February 17, 2020,
https://www.iaea.org/newscenter/news/countries-to-provide-us-20-million-to-iaea-nuclear-security-fund.
179 “Statement of the United Kingdom,” ICONS 2020, February 2020.

180 “Statement of New Zealand,” ICONS 2020, February 2020.
181 “Statement of Canada,” ICONS 2020, February 2020, pp. 1-2.
182 “Statement of Belgium,” ICONS 2020, February 2020.
183 “Statement of Switzerland,” ICONS 2020, February 2020.
184 “Statement of Germany,” ICONS 2020, February 2020, pp. 3-4.
185 “Statement of Russia,” ICONS 2020, February 2020.
186 “Statement of France,” ICONS 2020, February 2020.
187 “Statement of Republic of Korea,” ICONS 2020, February 2020.
188 “Statement of Australia,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.
189 “Statement of the United States,” ICONS 2020, February 2020.
190 “Statement of the Netherlands,” ICONS 2020, February 2020.
191 “Statement of Sweden,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.

192 “Joint Statement on Promoting Full and Universal Implementation of UNSCR 1540 (2004),” 2016 Washington
Nuclear Security Summit, April 5, 2016.
193 “Statement of India,” ICONS 2020, February 2020.
194 “Statement of Principles Nuclear Security Contact Group.”
195 “Members,” Nuclear Security Contact Group, http://www.nscontactgroup.org/members.php.
196 “Statement of Pakistan,” ICONS 2020, February 2020.
197 “Statement of Canada,” ICONS 2020, February 2020, p. 2.
198 “Statement of Nigeria,” ICONS 2020, February 2020.

199 NSCG のホームページ(http://www.nscontactgroup.org/)を参照。“INFCIRC 909: A Global Tool for Transport Security”; “INFCIRC 908: A Global Tool for Insider Threat Mitigation”; “INFCIRC 910: A Global Tool for Radioactive Source Security.”
200 “Statement of Israel,” ICONS 2020, February 2020.
201 日本は輸送セキュリティについて、米国はベルギーと共同で内部脅威について、フランスはドイツ及び米国とともに高放射能線源のセキュリティについてのサイドイベントを開催した。
202 “2019 Report Nuclear Safety and Security Group (NSSG),” French G7 Presidency Biarritz, 2019.
203 “Statement of Japan,” ICONS 2020, February 2020.
204 “The Global Partnership: Still Standing Strong Against WMD Proliferation,” June 30, 2020, https://www.state.gov/The-Global-Partnership-Still-Standing-Strong-Against-WMD-Proliferation.

205 “Government of Canada: National Progress Report,” ICONS 2020, February 2020, p. 4.
206 “Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism Partner Nations List.”
207 “Statement of Canada,” ICONS 2020, February 2020.
208 “Statement of France,” ICONS 2020, February 2020.
209 “Statement of New Zealand,” ICONS 2020, February 2020.
210 “Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism (GICNT),” Nuclear Threat Initiative, May 28, 2020.
211 外務省「日米核セキュリティ作業グループ(NSWG)」2018 年8 月31 日。

212 この作業グループは、2015 年の改定韓米原子力協力協定に基づき開始された二国間のハイレベル委員会の下に設置された4つの作業グループの1 つである。
213 Ministry of Foreign Affairs Republic of Korea, “4th Meeting of ROK-U.S. Nuclear Security Working Group Takes Place,” Press Releases, September 23, 2020, http://www.mofa.go.kr/eng/brd/m_5676/view.do?seq=321231.
214 “U.S., Canada Sign MOU on Safeguards and Nonproliferation,” American Nuclear Society, October 19, 2020,
https://www.ans.org/news/article-2296/us-canada-sign-mou-on-safeguards-and-nonproliferation/.

 

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