第1章 各分野別の取組状況
(1) 核軍縮
核兵器国による核軍縮の取組状況の6 つのポイントによる分析
核軍縮を促進するためには、核兵器国による核兵器の削減や運用政策の変更、核軍縮につながる多国間枠組みへの積極的な関与、「核兵器のない世界」に向けた取組(コミットメント)の強化、核戦力などに関する透明性向上の推進が不可欠である。これらのポイントについて各核兵器国の取組状況をレーダーチャートで示すと下記のようになる。中国については、削減への取組及び透明性、ロシア及び米国については核戦力のさらなる削減について改善の余地があると言えよう。フランス及び英国は、他の3 カ国と比較すれば、相対的にバランスのとれた形で核軍縮に取り組んでいることがうかがえるものの、核兵器の削減、「核兵器のない世界」に向けた取組の強化、及び運用政策の変更への課題が残る。
【6 つのポイントと評価項目の関係】
6 つのポイント | 評価項目 |
核兵器保有数 | 核兵器の保有数 |
核兵器削減状況 | 核兵器の削減状況 |
「核兵器のない世界」に向けた取組 (コミットメント) |
核兵器禁止条約(TPNW) 核兵器のない世界に向けた取組 軍縮・不拡散教育・市民社会との連携 広島・長崎の平和記念式典への参列 |
運用政策 | 核兵器の役割低減 警戒態勢の緩和 |
関連多国間条約の署名・批准状況、 交渉への対応等 |
包括的核実験禁止条約(CTBT) 兵器用核分裂性物質生産禁止条約 (FMCT) |
透明性 | 透明性 検証措置 不可逆性 |
評点率の変動
以下のグラフは、核兵器国、他の核保有国・北朝鮮、及び非核兵器国(一部)の核軍縮に関する2014〜2021 年の評点率の推移を示したものである。この期間内に、核軍縮を巡る動向の推移を踏まえつつ、評価項目や評価基準に一定の修正を重ねた。言うまでもなく、異なる評価項目・評価基準に基づく評点・評価率をグラフ化して分析・考察することは、適切な方法ではない。たとえば、2017 年に核兵器禁止条約(TPNW)が成立した際、『ひろしまレポート』でもこれに関する評価項目・基準を新たに設定した。各国の核軍縮に関する評点率がその前後で変動しているのは、そうした修正、とりわけTPNW への署名・批准に関する動向によるものである。
このように方法論としては問題があるが、それでも一国単位で見れば、2010 年代中盤から2021 年にかけての核保有国・同盟国の取組は、TPNW 成立の影響とは別に、核軍縮に対する取組について、大きな傾向は見て取れる。たとえば戦略的競争が厳しさを増すなかで、核兵器国による核軍縮への取組は依然として低調である。NPT 非締約国及び北朝鮮は、もとより核軍縮への取組に消極的であり、その程度が悪化してきていることがみてとれよう。他方、非核兵器国は、TPNW への対応を除けば、概ね核軍縮への一貫した取組を継続している。しかしながら、それはまた、そうした国々による取組が頭打ちにあることを示しているとも言える。
(2) 核不拡散
(3) 核セキュリティ