Hiroshima Report 2023(2) コミットメント
A) 核兵器のない世界に向けたアプローチ
NPT前文では、「核軍備競争の停止をできる限り早期に達成し、及び核軍備の縮小の方向で効果的な措置をとる意図を宣言し、この目的の達成についてすべての国が協力することを要請」7している。また同条約第6条では、「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束する」と定められている。
「核兵器の廃絶」あるいは「核兵器のない世界」という目標に公然と反対する国はなく、NPT運用検討プロセスや国連総会などの場で、核兵器国や他の核保有国も核軍縮へのコミットメントを繰り返し確認してきた。しかしながら、そうしたコミットメントは、「核兵器のない世界」の実現に向けた核軍縮の着実な実施・推進を必ずしも意味するわけではない。近年の戦略的競争の激化、さらには2022年のロシアによる核恫喝を伴うウクライナ侵略を受けて、核保有国は国家安全保障における核兵器の役割を改めて重視し、核軍縮への積極的な取組はみられなかった。
NPT運用検討会議
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて4回にわたって延期された第10回NPT運用検討会議は、2022年8月1~26日にニューヨークの国連本部で開催された。当初予定されていた2020年4月の時点ですでに、核軍縮を巡る核兵器国・非核兵器国間の亀裂により、最終文書の採択は難しいとして会議の成功が危ぶまれていた。実際に開催された2022年になると、ロシアのウクライナ侵略がもたらした核兵器国内の対立の深刻化もあわさり、一層難しい会議となることが懸念された。
会議初日の演説で、グテーレス(António Guterres)国連事務総長は、NPT運用検討会議が「集団的な平和と安全の重要な岐路に開催される」8と述べたうえで、核兵器使用の脅威の高まりへの危機感を鮮明にし、「77年間続いている核兵器使用に反対するとの規範を強化し、再確認することが急務」であり、さらに、「戦争のリスクの低減では十分ではない。核兵器の廃絶だけが、それが決して使用されないとの保証になる」と訴えた9。
また、岸田文雄総理は初日の一般討論演説で、「『核兵器のない世界』という『理想』と『厳しい安全保障環境』という『現実』を結びつけるための現実的なロードマップの第一歩として、核リスク低減に取り組みつつ、次の5つの行動を基礎とする『ヒロシマ・アクション・プラン』にまずは取り組んでいきます」と述べ、その5つの行動として、(1)核兵器不使用の継続の重要性の共有、(2)透明性の向上、(3)核兵器数の減少傾向の維持、(4)核兵器不拡散の確保と原子力平和利用の促進、(5)国際的な指導者などへの被爆の実相に対する正確な認識の広がりを挙げた10。
核兵器国を含む会議参加国は、いずれも核軍縮や核兵器廃絶に向けたコミットメントを再確認した。議長のスラウビネン(Gustavo Zlauvinen)大使は8月23日に、それまでの参加国による主張や議論を取りまとめた最終文書案を提示し、2回の修正を経て同月25日に最終ドラフトを提示した。しかしながら、会議では実質的事項に関する最終文書を採択できなかった。唯一反対を表明したのはロシアであり、最終ドラフトの5つのパラグラフに同意できないと発言した。ロシアは「5つのパラグラフ」を明示しなかったものの、ロシアが占拠するウクライナのザポリージャ原子力発電所、並びにブダペスト覚書への以下のような書きぶりに反発したと見られる11。
➢ ザポリージャ原発など、武力紛争地域に所在する国際原子力機関(IAEA)保障措置の対象となる原子力施設及びその他のウクライナ国内の場所について、ウクライナの管轄当局による管理を確保すること、並びに核兵器あるいは核爆発装置への転用がないよう保障措置活動を効果的かつ安全に実施するためにIAEAへのアクセスを確保することが最も重要であると強調する。
➢ 1994年のウクライナによるNPT加入に伴う安全の保証に関する覚書の下でのコミットメントを含め、NPTの非核兵器国に一方的に、あるいは多国間で与えられる安全の保証に関する既存のすべての義務及びコミットメントを、すべての核兵器国が完全に遵守することの重要性を再確認する
これに対して、多くの参加国は最終文書が採択できなかったことへの失望を表明した。ロシアが反対を言明した直後に発言したコスタリカは、最終文書案は「我々の期待を大きく下回り、核軍縮を進めるための具体的な措置に乏しいものであった。しかしながら、我々は、ここ数十年で最も核リスクが高まっている瞬間に直面して、NPT締約国が共通の目標に向けて国際法を守るという決意をともに確認することが必要であると考えた」12と述べた。55カ国(豪州、オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国など)及びEUは共同声明で、「ロシアの危険な核のレトリック、行動、並びに核の警戒レベルの引き上げにかかる挑発的な発言は、『5核兵器国の指導者による核戦争の防止と軍拡競争の回避に関する共同声明』と矛盾しており、遺憾である」とし、「核兵器国であるロシアが、ウクライナに対して違法な侵略戦争を行うことで、国際の平和、安全、安定、国際的な不拡散アーキテクチャ、及びNPTの整合性と目的を損なっていることを深く憂慮している」13とも述べて、ロシアを強く批判した。米国はさらに、最終文書案に対して「ロシアが模索した最終段階での修正は、小さなものではなかった。彼らは、ウクライナを地図から消し去るという明白な意図を隠そうとしなかった」14と非難した。
非核兵器国からは、閉会に際して、核軍縮の停滞・逆行に対する批判も改めて表明された。TPNW締約国・署名国を代表したメキシコは、「TPNWの第1回締約国会議も今回の会議も、核兵器使用の危険性が高く、核兵器が人道的に破滅的な影響を与える可能性が不吉にも迫っている重要な時期に開催された。この事実が、NPT運用検討会議の審議において、緊急に必要とされる核軍縮の進展に反対し、核抑止力の誤謬に基づく安全保障のアプローチを支持する理由とされたことに落胆している」15と述べた。ニュージーランドなどいくつもの非核兵器国が、最終文書案に示された核軍縮に関する内容は乏しいものであったと指摘し、オーストリアは、「前向きなアジェンダと、NPTの成功裏の履行が意味するものについての十分な政治的意思と共有されたビジョンが欠けている。この4週間は、NPTがいかに現状を固定し、あるいは後退させるものであるかを改めて示した。既存の義務やコミットメントがどうであれ、この条約は現実には核軍縮を前進させることはほとんどない」16とも発言した。
採択できなかったものの、NPT運用検討会議の最終文書案では、「締約国は、条約の目的に従って、すべての国にとってより安全な世界を実現し、核兵器のない世界の平和及び安全を達成することを改めて約束する」とされた。他方で、上述のような非核兵器国の核軍縮に対する厳しい主張も反映して、最終文書案には、「世界的な核ストックパイルのさらなる削減における明白な進展、並びに2015年運用検討会議以降の核兵器国による軍縮コミットメントの履行がいずれも欠如することへの深い懸念を表明する」とも明記された17。
核保有国のアプローチ
5核兵器国はこれまで、緊張や対立が深まるなかでも、NPTの文脈における核軍縮問題に対しては、定期的な会議の開催、並びにNPT運用検討会議・準備委員会での共同声明の発出など、一定程度の協調的な対応を続けてきた。
5核兵器国は、第10回NPT運用検討会議の4回目の延期が決定した直後の2022年1月3日に、「5核兵器国の指導者による核戦争の防止と軍拡競争の回避に関する共同声明」18(以下、「5核兵器国共同声明」)を発出した。この共同声明で、5核兵器国は、「核兵器国間の戦争の回避、並びに戦略的リスクの低減を最も重要な責務だと考えている」とし、「核戦争に勝者はありえず、核戦争は決して戦われてはならない」こと、並びに「核兵器が存在する限り、それは防衛目的、侵略抑止及び戦争回避のためにあるべきだということを確認」した。5核兵器国はまた、NPT第6条の義務を含め、核不拡散・軍縮・軍備管理の合意・コミットメントを維持・遵守していること、未承認の、あるいは意図せざる核兵器の使用を防止するための国家の措置を維持・強化する意図があること、並びに「すべての国にとっての安全保障を毀損せずに核兵器のない世界を実現するという究極的な目標に向けて、軍縮の進展に一層資する安全保障環境を創出すべく、すべての国と取り組むこと」などに言及した。5核兵器国は2021年12月7日付で、NPT運用検討会議に作業文書「戦略的リスク低減」19も提出した。
しかしながら、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略以降、ロシアを厳しく非難して制裁を科すとともに、ウクライナに軍事支援を提供するフランス、英国及び米国と、ロシア及び(ロシアと戦略的パートナーシップを強化し、台湾問題をはじめとしてインド太平洋地域で米国など西側諸国との緊張を高めつつある)中国の間で、核兵器国内の亀裂が一層拡がり、これがNPTの文脈にも大きな影響を与えた。2月末以降、5核兵器国会議は開催されず、8月のNPT運用検討会議では、5核兵器国による共同声明も発出されなかった。
NPT運用検討会議では、フランス、英国及び米国は3カ国で作業文書「核兵器国のための原則と責任ある実践」20を提出するとともに、会議の初日に閣僚声明を発出し、「NPTが核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力平和利用の追求のための基盤であることを再確認する。NPT第6条の下での我々の核軍縮義務を促進するため、核リスクを削減するための我々の永続的な努力を想起する」と述べた21。これら3カ国は、非核兵器国に対する安全保証(security assurances)についての共同声明も発出した22。
核兵器国はそれぞれ個別にも、核軍縮へのコミットメントや考え方について、NPT運用検討会議などの場で発言してきた。
中国は、「国際的な核軍備管理の努力に積極的に参加し、核兵器の完全な禁止と徹底的な廃棄を堅く主張し、すべての核兵器国はNPT第6条の義務を真剣に果たし、核兵器の永続的な保有を目指さないことを公けに約束すべきであると考えている」23との考えを示した。他方で、中国は以下のようにも述べて、自国が現時点で核軍縮交渉に参加する意思はないことを示唆した。
核軍縮は、公正かつ合理的な漸進的かつ均衡ある削減の過程であるべきである。
最大の核兵器保有国は、核軍縮に関して特別かつ包括的な責任を負っており、一般的かつ完全な核軍縮を究極的に実現するための条件を整えるために、検証可能かつ不可逆的で法的拘束力のある方法で、自国の核兵器を大幅かつ実質的に削減し続けるべきである。条件が整えば、すべての核兵器国は多国間の核軍縮交渉プロセスに参加すべきである24。
中国はまた、「核軍縮の実践においては、『世界の戦略的安定性の維持』と『すべての国にとって毀損されない安全保障』の原則に従うべきである」25とも主張した。
フランスは、「平和を追求するため、条約の目的に沿って、軍縮に全面的に取り組んでいる」としたうえで、「核軍縮の目標は集団安全保障の目標と切り離すことはできないと考えている。核軍縮は、戦略的背景が考慮された場合にのみ前進することができ、すべての国にとって毀損されない安全保障と、その先にある世界の安定と安全を保証する漸進的プロセスの一部と見なされるべきものである」26との考えも明らかにした。
ロシアについては、プーチン(Vladimir Putin)大統領がNPT運用検討会議に寄せたメッセージで、「NPTの締約国及び寄託国の1つとして、ロシアは条約の文言及び精神を一貫して遵守している」と述べた。また、ロシアは一般討論演説で、「大量破壊兵器(WMD)がもたらす脅威から世界を解放するために、ロシアが一貫して重要な実際的貢献を行ってきたことを強調したい。我々は、核兵器のない世界という崇高な目標に引き続きコミットしている。NPT第6条を含む国際的な義務を完全に履行することで、平和を維持し、世界の安全保障を強化するために、我々は相応の責任を担っている」27とも述べた。同時に、ロシアは、作業文書「核軍縮:共同責任の領域」で、「軍縮に向けた実際的措置への現実的なステップは、それを可能にするような国際的な環境がなければ不可能である」28との考えも明記した。
英国は、「核軍縮に関する効果的な措置についての誠実な交渉の追求、並びに核兵器のない世界という目標にコミットしている。我々は、他の核兵器国とともに、第6条の下ですべての締約国が約束している核軍縮を導くような核兵器の全面的廃絶を達成するという我々の明確な約束を再確認する」29とした。また、作業文書「核兵器のない世界への到達」で、核兵器のない世界の実現に向けたステップとして検討が必要な要因を短期的及び長期的な観点から列挙した30。
米国は、バイデン(Joseph Biden)大統領がNPT運用検討会議初日に発出した声明で、「米国は、核兵器の責任ある管理者となり、核兵器のない世界という究極の目標に向けて努力し続けるという約束を、世界に対して新たにする」31と述べた。また、ブリンケン(Antony Blinken)国務長官は「米国は、核兵器の役割を低減すること、並びに軍備管理におけるリーダーシップを再確立することを約束し、その目標に向けて慎重な政策見直しを行ってきた」32とし、主要委員会Ⅰでは、「NPT第6条、及び核兵器のない安全な世界の実現に向けた揺るぎない約束を再確認」33した。
米国が2019年以降に開始し、43カ国(核兵器国、非核兵器国、NPT非締約国、非同盟諸国、米国の同盟国、核兵器禁止条約〔TPNW〕署名国など)が参加する「核軍縮環境創出(CEND)イニシアティブ」について、2022年にもその動向はさほど報じられなかったが、以下の課題に対応する3つのサブグループが、非政府の専門家ファシリテーターのサポートを受けつつ、取組を着実に進めている。
非核兵器国のアプローチ
核軍縮へのアプローチについて、5核兵器国が「ステップ・バイ・ステップ・アプローチ」を主張するのに対して、米国と同盟関係にあり拡大核抑止(核の傘)の下にあるいくつかの非核兵器国(核傘下国)が「ブロック積み上げ(building blocks)アプローチ」に基づく「前進的アプローチ(progressive approach)」を、また非同盟運動(NAM)諸国が「時限付き段階的(time-bound phased)アプローチ」をそれぞれ提唱してきた。
NPT運用検討会議では、新アジェンダ連合(NAC:ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ)が、「核軍縮は法的義務であり、道徳的・倫理的要請でもある。このことを念頭に置きつつ、NACは、NPT第6条の義務の履行を促進するための具体的で透明性のある、相互に補強し合う措置に関する提案を行ってきた。我々は、既存のコミットメントをさらなる進展のための出発点としつつ、創造的である必要がある」と主張した39。
NAM諸国は、「特定の時間枠内に核兵器を完全に廃絶するための段階的なプログラムを含む、核兵器に関する包括的な条約を交渉し、締結することが緊急に必要であることを強調する」との従来の提案を繰り返した40。また、「核兵器の完全廃絶と、核兵器が二度と製造されないという法的拘束力のある保証が、核兵器の使用や使用の脅威に対する唯一の絶対的保証であることを再確認」41した。NAC及びNAMはともに、核兵器の廃絶におけるTPNWの重要性にも言及した。
日豪のイニシアティブで結成された軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)は、「核兵器を廃絶するという核兵器国の明確な約束を実現するために、軍縮義務履行のさらなる進展を求める」として、すべてのタイプの核兵器の世界的なストックパイルのさらなる削減、核兵器を増加しないという約束の再確認、具体的なリスク低減措置の採択、並びに具体的な行動による関与を通じた透明性の向上を挙げた42。
また、日本は米国と2022年1月に「NPTに関する日米共同声明」を発出し、「発効以来51年にわたって核軍縮・不拡散の礎石で在り続けてきたNPTに対するコミットメントを完全に再確認」し、「日本と米国は、NPTが核兵器の拡散防止及び核兵器の全面的廃絶の達成のために不可欠なものであると認識している」ことを明記した43。同年5月の日米首脳会談共同声明でも、「岸田総理及びバイデン大統領は、『核兵器のない世界』に向けて協働する意思を改めて確認した。特に、両首脳は、国際的な核不拡散・軍縮体制の礎石としてNPTを強化することへのコミットメントを確認した。岸田総理は、安全保障上の課題に対処しつつ核軍縮に関する現実的な取組を進める重要性に言及し、バイデン大統領は同意した」44ことが記された。その記者会見で岸田総理は、2023年G7サミットの広島開催を決定したことについて、「唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣として、私は広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はないと考えています。核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示し、バイデン大統領を始め、G7首脳と共に、平和のモニュメントの前で平和と世界秩序と価値観を守るために結束していくことを確認したいと思っています」45と述べた。
B) 日本、新アジェンダ連合(NAC)及び非同盟運動(NAM)諸国などがそれぞれ提案する核軍縮に関する国連総会決議への投票行動
2022年の国連総会では、例年どおり核軍縮に関する3つの決議・決定―日本が提案した「核兵器のない世界に向けた共通のロードマップ構築のための取組(Steps to building a common roadmap towards a world without nuclear weapons)」46、NACなどが提案する決定「核兵器のない世界に向けて:核軍縮コミットメントの履行の加速(Towards a nuclear-weapon-free world: accelerating the implementation of nuclear disarmament commitments)」47、及びNAM諸国による「核軍縮(Nuclear dis-armament)」48―がそれぞれ採択された。これらの3つの決議・決定について、本報告書での調査対象国による2022年国連総会での投票行動は下記のとおりである。
➢ 核兵器のない世界に向けた共通のロードマップ構築のための取組―賛成147(豪州、オーストリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、サウジアラビア、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国など)、反対6(中国、北朝鮮、ニカラグア、ロシア、南アフリカ、シリア)、棄権27(ブラジル、エジプト、インド、インドネシア、イラン、イスラエル、カザフスタン、パキスタンなど)
➢ 核兵器のない世界に向けて:核軍縮コミットメントの履行の加速―賛成153(オーストリア、ブラジル、カナダ、エジプト、ドイツ、インドネシア、イラン、日本、カザフスタン、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、サウジアラビア、南アフリカ、スウェーデン、スイス、シリアなど)、反対3(インド、イスラエル、ロシア)、棄権23(豪州、中国、フランス、北朝鮮、韓国、パキスタン、ポーランド、トルコ、英国、米国など)
➢ 核軍縮―賛成120(ブラジル、中国、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、メキシコ、サウジアラビア、シリアなど)、反対42(豪州、カナダ、フランス、ドイツ、イスラエル、韓国、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ロシア、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国など)、棄権20(オーストリア、インド、日本、北朝鮮、ニュージーランド、パキスタン、南アフリカなど)
日本が提案した核兵器廃絶決議では、岸田総理がNPT運用検討会議で提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」をベースに、以下のような措置の実施を求めた。
➢ すべての締約国、特に核兵器国に、核兵器が二度と使用されないこと及び核兵器使用に関する扇動的な表現の使用を自制することを要請
➢ すべての締約国、特に核兵器国に核戦力・能力に関する具体的データの情報提供(兵器用核分裂性物質の生産状況などを含む)の透明性向上措置を要請
➢ 世界全体の核兵器数の減少傾向の維持の重要性を強調。核兵器国に対して核兵器要性を強調。核兵器国に対して核兵器
のさらなる削減、並びに究極的な廃絶を要請
➢ 未署名・未批准国に包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期署名・批准の要請
➢ CDに兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の即時交渉開始を、また核兵器国に兵器用核分裂性物質の生産に関するモラトリアムの維持・宣言を要請
➢ すべての締約国、特に核兵器国に、核リスク低減にかかる有効な措置の実施、並びに核リスク低減に関する核兵器国間、及び核兵器国と非核兵器国の対話の強化を要請
➢ 北朝鮮の関連安保理決議に従ったすべての核兵器、既存の核計画、その他すべての既存のWMD及び弾道ミサイル計画の完全、検証可能かつ不可逆的な放棄の実現へのコミットメント、及びすべての加盟国による関連安保理決議の完全な履行の責務を再確認。北朝鮮に対して、NPT及びIAEA保障措置の完全な遵守への早期復帰を要請
➢ すべての締約国に、NPTの目標達成に有効な手段として、核軍縮・不拡散教育に向けた取組を要請
また、日本提案の決議では初めて、事実関係のみであったがTPNWについて前文に、「2017年7月7日に採択されたことを認識し、同条約が国連事務総長により2017年9月20日に署名のために開放され、2021年1月22日に効力を生じ、2022年6月21日から23日にかけて第1回締約国会議が開催されたことに留意」すると言及した。
7 日本語公定訳では「nuclear disarmament」を「核軍備の縮小」としているが、核兵器の制限、削減及び廃絶を意味するものと解釈されている。
8 António Guterres, “Statement,” NPT Review Conference (RevCon), August 1, 2022, https://www.un.org/sg/en/ content/sg/speeches/2022-08-01/secretary-generals-remarks-the-tenth-review-conference-of-the-parties-the-treaty-the-non-proliferation-of-nuclear-weapons.
9 Ibid.
10 岸田文雄「第10回NPT運用検討会議一般討論演説」2022年8月1日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/dns/ac_ d/page3_003388.html。
11 他方でロシアは、最終文書案に反対する国はロシアだけではなかったはずだとも述べ、コンセンサス採択できなかった責任はロシアだけに帰されるものではないとも強弁した。ロシアは、閉会前の最後の発言の機会にも、ウクライナの問題について最終文書案の一部が「政治化」されており、「一方的な会議」であったと批判した。“Statement by Mr. Andrei Belousov, Deputy Head of the Russian Delegation at Closing Meeting of the 10th NPT Review Conference,” Permanent Mission of the Russian Federation to the United Nations, August 26, 2022, https://russiaun.ru/en/news/260822d.
12 “Statement by Costa Rica,” Plenary Meeting, 10th NPT RevCon, October 26, 2022.
13 “Joint Statement, delivered by France,” Plenary Meeting, 10th NPT RevCon, October 26, 2022.
14 “Statement by the United States,” Closing Meeting, 10th NPT RevCon, October 26, 2022.
15 “Closing Statement, delivered by Mexico,” Plenary Meeting, 10th NPT RevCon, October 26, 2022.
16 “Statement by Austria,” Plenary Meeting, 10th NPT RevCon, October 26, 2022.
17 NPT/CONF.2020/CRP.1/Rev.2, August 25, 2022.
18 “Joint Statement of the Leaders of the Five Nuclear-Weapon States on Preventing Nuclear War and Avoiding Arms Races”, January 3, 2022, https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statementsreleases/2022/01/03/p5-statement-on-preventing-nuclear-war-and-avoiding-arms-races/.
19 NPT/CONF.2020/WP.33, December 7, 2022.
20 NPT/CONF.2020/WP.70, July 29, 2022.
21 “NPT — Ministerial statement of France, the United Kingdom and the United States of America,” August 1, 2022, https://www.diplomatie.gouv.fr/en/french-foreign-policy/security-disarmament-and-non-proliferation/news/2022 /article/npt-ministerial-statement-of-france-the-united-kingdom-and-the-united-states-of.
22 “P3 Joint Statement on Security Assurances,” August 4, 2022, https://www.state.gov/p3-joint-statement-on-security-assurances/.
23 NPT/CONF.2020/41, November 16, 2021.
24 NPT/CONF.2020/41, November 16, 2021.
25 “Statement by China,” General Debate, 10th NPT RevCon, August 2, 2022.
26 NPT/CONF.2020/42/Rev.1, August 1, 2022.
27 “Statement by Russia,” General Debate, 10th NPT RevCon, August 2, 2022.
28 NPT/CONF.2020/WP.56, May 27, 2022.
29 “Statement by the United Kingdom,” Main Committee I, 10th NPT RevCon, August 5, 2022.
30 NPT/CONF.2020/WP.35, December 10, 2021.
31 “President Biden Statement Ahead of the 10th Review Conference of the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons,” August 1, 2022, https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/08/01/ president-biden-statement-ahead-of-the-10th-review-conference-of-the-treaty-on-the-non-proliferation-of-nuclear-weapons/.
32 “Statement by the United States,” General Debate, NPT RevCon, August 1, 2022.
33 “Statement by the United States,” Main Committee I, NPT RevCon, August 4, 2022.
34 Robert Wood, “Prevention of Nuclear War, Including All Related Matters: Nuclear Risk Reduction,” Remarks to the CD Plenary Thematic Debate on Agenda Item 2, May 18, 2021, https://geneva.usmission.gov/2021/05/18/ ambassador-woods-remarks-to-the-cd-plenary-thematic-debate-on-agenda-item-2/.
35 “Statement by India,” General Debate, UNGA, October 10, 2022.
36 “Statement by Pakistan,” General Debate, UNGA, October 4, 2022.
37 “Statement by North Korea,” General Debate, UNGA, October 11, 2022.
38 “Respected Comrade Kim Jong Un Makes Policy Speech at Seventh Session of the 14th SPA of DPRK,” KCNA, September 10, 2022, http://www.kcna.co.jp/item/2022/202209/news10/20220910-23ee.html.
39 “Statement by Mexico on behalf of the NAC,” General Debate, 10th NPT RevCon, August 1, 2022.
40 “Statement by Azerbaijan on behalf of the NAM,” General Debate, 10th NPT RevCon, August 1, 2022.
41 NPT/CONF.2020/WP.20, November 22, 2021.
42 “Statement by NPDI,” General Debate, NPT RevCon, August 2, 2022.
43 「核兵器不拡散条約(NPT)に関する日米共同声明」2022年1月21日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/ release/press3_000706.html。
44 「日米首脳共同声明:自由で開かれた国際秩序の強化」2022 年5月 23 日、https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/ 100347254.pdf。
45 「日米共同記者会見」2022年5月23日、https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0523 kaiken.html。
46 A/RES/77/76, December 7, 2022.
47 A/DEC/77/516, December 7, 2022.
48 A/RES/77/65, December 7, 2022.