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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024コラム5 G7広島サミットから核軍縮をどのように導くか

畠山 澄子

2023年5月に広島で開催されたG7サミットには大きな期待が寄せられていた。核軍縮をライフワークと自認する岸田文雄首相が被爆地での開催を強調していたこともあるだろう。長年にわたって核廃絶を訴え続けてきた被爆者の多くは、停滞する核軍縮を、サミットを追い風に前に進めたいという強い思いを持っていた。私はその思いがサミットの成果文書に反映されるようにと、外務省が運営する「C7(Civil 7/市民7)」というプロセスを通して、市民社会の立場からの政策提言づくりに携わった。核兵器廃絶に関する章を担当し、国内外の125の団体との半年にわたる議論の末に政策提言をまとめあげた。提言では、G7首脳に被爆者から直接話を聴き、核兵器の使用が人々や環境にもたらす被害を認識することを求めた上で「すべての核兵器使用の威嚇の明確な非難」「核兵器廃絶のための具体的な交渉の計画」「核兵器禁止条約への積極的な姿勢、核被害者援助と環境修復への尽力」「新戦略兵器削減条約(新START)の後継条約の交渉の支援」「核のリスクを低減するための措置」「ユースのための軍縮教育の重要性」などを最終成果文書に盛り込むことを求めた1

迎えたG7広島サミットでは、G7首脳が揃って平和公園を訪れ、資料館を訪問し、被爆者と面会をした。私たちが提言を通して訴えた被爆の実相に触れてほしいという点は、十分ではなかったかもしれないが果たされた。一方、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」と銘打たれた成果文書に、私たちの主張はほとんど反映されなかった。「核兵器のない世界の実現に向けたコミットメントを再確認する」としながら、そこには「全ての者にとっての安全が損なわれない形で」との枕詞がつき、中身は核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議などで言われてきたことの焼き直しだった。それどころか、2022年11月に出されたG20バリ首脳宣言では「核兵器の使用又はその威嚇は許されない」とされていたものが、「ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない」となり、核問題をロシアの問題に矮小化するような表現が使われたことは後退と言える。核兵器廃絶や核兵器禁止条約といった言葉がなかっただけでなく、「核兵器は、それが存在する限りにおいて、…侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべき」と、核抑止の肯定ともとれる文言が入ってしまったことも残念だ。

2023年はロシアのウクライナへの軍事侵攻が続いただけでなく、ハマスの攻撃をきっかけにイスラエルがガザでの戦闘を激化させた年となった。2つの核保有国が核の威嚇を振りかざしながら人々の命や尊厳を奪うなか、私たちは核抑止が本当に安全保障政策として機能しているかを検証していくべきだ。そのためにも、世界中の市民が経験してきた核被害や戦争被害の実態に目を向け直すことが重要だ。それらをもってしても核抑止は有効なのか。日本政府や世界のリーダーに疑問や声を届ける取組を加速化させなければいけない。核兵器のない世界のために政治家を動かしていくのは私たちだ。

はたけやま・すみこ:ピースボート共同代表


1 “Civil 7 Communiqué 2023: Design and Implement Sustainable Policies for Peace, Prosperity, and Transparency,” April 2023, https://civil7.org/wpC7/wp-content/uploads/2023/04/C7_communique2023_0412.pdf.

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