「国際平和拠点ひろしま構想」に掲げる「核兵器廃絶のロードマップへの支援」を具体化するため,核軍縮・軍備管理に向けた多国間協議の場として,「ひろしまラウンドテーブル」を開催した。(平成25年度に第1回を開催し,今回で9回目の開催となる。)
1.日程
令和4(2022)年7月12日(火)・13(水)の2日間
2.場所
リーガロイヤルホテル広島(広島市中区基町6-78)
3.実施主体
広島県・へいわ創造機構ひろしま(略称HOPe)
(構成 広島県,広島県市長会,広島経済同友会,広島大学ほか 計20団体)
4.参加者
国名 | 氏名 | 所属等 | |
1 | 日本 | 阿部 信泰 | 元国連事務次長(軍縮問題担当) |
2 | 日本 | 秋山 信将 | 一橋大学大学院法学研究科 教授 |
3 | 日本 | 藤原 帰一(議長) | 東京大学未来ビジョン研究センター 客員教授 |
4 | 日本 | 石井 良実 | 外務省軍備管理軍縮課 課長 |
5 | 日本 | 栗崎 周平 | 早稲田大学政治経済学術院 准教授 |
6 | 日本 | 水本 和実 | 元広島市立大学広島平和研究所 教授 |
7 | 日本 | 戸﨑 洋史 | 公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター 所長 |
8 | 日本 | 湯﨑 英彦 | 広島県知事 へいわ創造機構ひろしま(HOPe)代表 |
9 | 豪州 | ギャレス・エバンス Gareth EVANS |
オーストラリア国立大学 特別栄誉教授 元オーストラリア外務大臣 |
10 | 豪州 | ラメシュ・タクール Ramesh THAKUR |
オーストラリア国立大学 名誉教授 |
11 | 中国 | 沈 丁立 SHEN Dingli |
復旦大学 教授 |
12 | 中国 | 趙 通 ZHAO Tong |
清華カーネギーグローバル政策センター シニアフェロー |
13 | 韓国 | 田 奉根 JUN Bong-Geun |
韓国国立外交院外交安保研究所 教授 |
14 | 韓国 | 金 永峻 KIM Youngjun |
韓国国防大学校安全保障大学院 教授 韓国大統領府国家安全保障室政策諮問委員 |
15 | 米国 | ジョン・アイケンベリー G. John IKENBERRY |
プリンストン大学 教授 |
16 | 米国 | ジェフリー・ルイス Jeffrey LEWIS |
ミドルベリー国際大学モントレー校ジェームズ・マーティン不拡散研究センター東アジア不拡散プログラム ディレクター |
17 | 米国 | リン・ラスティン Lynn RUSTEN |
核脅威イニシアティブ(NTI) 副会長(グローバル核政策プログラム) |
18 | 米国 | アンドリュー・ウェーバー Andrew C. WEBER |
戦略的危機評議会 シニアフェロー 元米国防次官補(核・化学・生物防衛計画担当) |
5.会議の内容
ア テーマ
核兵器を乗り越えた世界を構想する
イ 構成
○ 開会(藤原議長による趣旨説明、湯﨑知事による開会挨拶)
○ セッション1:ロシアによるウクライナ侵略が核兵器に与える影響
○ セッション2:核軍縮・不拡散のための選択
ウ 総括
上記のテーマに沿って意見交換を行い,議長声明をとりまとめ,7月13日(水)に記者会見で発表した。
エ 議長声明概要
ロシアによるウクライナへの攻撃が、国際秩序の中核をなす規範に深刻な影響を与えている。核抑止—「核の傘」の下にある国々では、拡大核抑止—の有効性に対する信頼が世界中で復活している。
核保有国、非核保有国を含め、すべての国よる行動を呼びかけるため、4つの最も重大な問題に対する見解は以下のとおりである。
(核抑止への依存及び核抑止の拡充を再考すること)
○ 核兵器が抑止力として決定的な有効性を持つということはいつも主張されてはいるものの、その真偽については十分な証明は行われていない。
○ 事故、誤り、誤算によって、結果として核兵器の使用という悲惨な事態が生じ、どこかで、核抑止が機能しなくなる可能性によってもたらされる甚大なリスクとの比較に基づいて評価しなければならない。
○ 米国の「核の傘」の下にある全ての国の政策立案者は、現在の通常兵器による軍事力が、仮想敵国からの攻撃を阻止するために十分ではないのか、拡大抑止は必要でも、拡大「核」抑止は本当に必要なのか、慎重に検討するべきである。
○ 今は、核の傘の下にある国々が、核共有に関する協定に参加したり、あるいは自国の潜在的または実際の核兵器能力を高めたりすることによって、核兵器への依存を増やすべき時ではない。
(核軍縮及び核不拡散に真剣に取り組むこと)
○ 核兵器の廃絶は、大いなる理想ではなく、どれだけ長くかかろうとも、責任ある国家が実現に向けて着実に努力すべき良識ある政策である。
○ 核兵器不拡散条約(NPT)第6条の義務履行のための着実な努力を核兵器国が明らかに怠っており、NPT運用検討会議でのコンセンサスの実現を妨げている。
○ 昨年、核兵器禁止条約(TPNW)が発行したことは、規範上の大きな前進であり、核兵器使用に対する人道上の重大な懸念を反映しており、核保有国及び核の傘の下にある国々もこの点を認識するべきである。
○ TPNWには、技術的な弱点—特に、検証及び履行確保に関して—があるという主張は妥当なものではあるが、核兵器国及び核の傘の下にある国々は、締約国会議にオブザーバー参加し、この条約の運用上の有効性を向上させるための提言を行うべきである。日本にもこれを促したい。
(核軍備管理交渉を再開すること)
○ 米露両国は、戦略核兵器の制限を延長し、非戦略核兵器を含むような新START条約への後継合意のための交渉を再開しなければならない。
○ ウクライナでのいわゆる小型核兵器の使用が示唆されたことは許しがたいことである。広島に投下された原子爆弾は小型核兵器の定義に当てはまるが、この爆弾が、市民、インフラストラクチャー及び環境に与えた影響は決して小さいものではなく短期的でもなかった。
○ 低出力の非戦略核兵器、とりわけ巡航ミサイルを含む核・非核両用運搬手段への核兵器の配備を制限し、それを撤廃するために、軍備管理のための努力を強化すべきである。
(核リスク削減の取組)
○ 核兵器使用のリスクは、地球の持続可能性を左右する重大な意味を持つものであり、核兵器が存在し続ける限り、このリスクも存在する。
○ このリスクの「最小化」という課題に、もう一度注目することを求める。
○ すべての核保有国に対しては、核兵器の先制不使用を約束することを、そして核の傘の下にあるすべての国に対しては、この政策を支持することを求める。
○ 米中両国には、この先制不使用のコミットメントが行われるべき具体的なケースが存在し、つまり両国は、台湾問題を含め、いかなる状況においても、両国の対立を解決するために決して核兵器を使用してはならない。
その他
今回まとめた議長声明は、被爆地広島からの呼びかけとして、NPT運用検討会議前に、同条約の締約国(191カ国)に送付する。
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