「国際平和拠点ひろしま構想」に掲げる「核兵器廃絶のロードマップへの支援」を具体化するため,核軍縮・軍備管理に向けた多国間協議の場として,「ひろしまラウンドテーブル」を開催した。(平成25年度に第1回を開催し,今回で10回目の開催となる。)
1.日程
令和5(2023)年7月18日(火)・19日(水)の2日間
2.場所
リーガロイヤルホテル広島(広島市中区基町6-78)
3.実施主体
広島県・へいわ創造機構ひろしま(略称HOPe)
(構成 広島県,広島県市長会,広島経済同友会,広島大学ほか 計20団体)
4.参加者
国 | 氏 名 | 所 属 等 | |
1 | 日本 | 阿部 信泰 | 元国連事務次長(軍縮問題担当) |
2 | 日本 | 秋山 信将 | 一橋大学大学院法学研究科教授、国際・公共政策大学院長 |
3 | 日本 | 藤原 帰一 | 千葉大学国際高等研究基幹特任教授 東京大学名誉教授/未来ビジョン研究センター客員教授 |
4 | 日本 | 石井 良実 | 外務省軍備管理軍縮課 課長 |
5 | 日本 | 向 和歌奈 | 亜細亜大学国際関係学部 准教授 |
6 | 日本 | 鈴木 達治郎 | 長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)副センター長 |
7 | 日本 | 髙見澤 將林 | 東京大学公共政策大学院客員教授 元軍縮会議日本政府代表部大使 |
8 | 日本 | 戸﨑 洋史 | 公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター 所長 |
9 | 日本 | 湯﨑 英彦 | 広島県知事 へいわ創造機構ひろしま(HOPe)代表 |
10 | 豪州 | ギャレス・エバンズ | オーストラリア国立大学 特別栄誉教授 元オーストラリア外務大臣 |
11 | 豪州 | ラメシュ・タクール | オーストラリア国立大学 名誉教授 |
12 | 中国 | 沈 丁立 | 復旦大学 教授 |
13 | 中国 | 趙 通 | プリンストン大学
「科学とグローバル安全保障プログラム」客員研究員 カーネギー国際平和財団 シニアフェロー |
14 | 韓国 | 田 奉根 | 韓国国立外交院外交安保研究所 教授 |
15 | 韓国 | 金 永峻 | 韓国国防大学校安全保障大学院 教授 韓国大統領府国家安全保障室政策諮問委員 |
16 | ロシア | アントン・フロプコフ | ロシアエネルギー・安全保障研究センター長 |
17 | 米国 | ジョン・アイケンベリー | プリンストン大学 教授 |
18 | 米国 | ジェフリー・ルイス | ミドルベリー国際大学モントレー校 ジェームズ・マーティン不拡散研究センター 東アジア不拡散プログラム ディレクター |
19 | 米国 | リン・ラステン | 核脅威イニシアティブ(NTI) 副会長(グローバル核政策プログラム) |
20 | 米国 | スコット・セーガン | スタンフォード大学 教授 |
21 | 米国 | アンドリュー・ウェーバー | 戦略的危機評議会 シニアフェロー 元米国防次官補(核・化学・生物防衛計画担当) |
5.会議の内容
ア テーマ
核兵器の危機を越えて ”Beyond Nuclear Brinkmanship”
イ 構成
○ 開会(藤原議長による趣旨説明、湯﨑知事による開会挨拶)
○ セッション1:核兵器とその使用のリスク
○ セッション2:核兵器廃絶への道についての具体的な選択
ウ 総括
上記のテーマに沿って意見交換を行い,議長声明をとりまとめ,7月19日(水)に記者会見で発表した。
エ 議長声明概要
ロシアによるウクライナへの侵略、朝鮮半島での緊張など、世界各地で核兵器使用のリスクが高まっている。ヨーロッパにおける大規模な地上戦や核兵器の脅威など、想像もできなかった事態が起きており、このことは、重大な核リスクを削減し、あらゆる核の脅威をなくすことの緊急性を痛感させるものである。
今後、核リスクを削減する具体的な措置を続ける必要があり、そうした措置は、G7広島ビジョン声明で提案された限定的な措置にとどまるのではなく、さらにその先へ躍進する必要がある。
(核リスク削減のための対策)
・世界の政策立案者にとっての基本目標は、核兵器の完全廃絶であり続ける必要があり、核兵器を保有する国と「核の傘」の下にある国々が、核リスク削減に取り組む必要がある。
・核リスクの削減には、以下の2点を提案する。
- 先制不使用(No First Use)
すべての核保有国は、核兵器の先制不使用(No First Use)、あるいは核兵器政策の唯一の目的は、「核攻撃の抑止」と、もし必要であれば「核攻撃への報復」のみ、という宣言的声明にコミットすること。
- 消極的安全保証
すべての核保有国が、非核保有国に対して、核兵器を使用しない、あるいは使用する脅威を与えない、という消極的安全保証保障(NSA)を行うこと。
(軍備管理の復活)
・G7広島ビジョンでは、NPTのような多国間の枠組みには言及しているが、二国間の措置には言及していない。軍備管理に関する二国間及び多国間対話と交渉の可能性を探るべきである。
・ロシアと米国は、それぞれの国で新START条約がどのような状況であろうと、核兵器を条約の制限下に置かなければならない。
・核兵器保有国5カ国(N5)は、「核戦争の防止と軍拡競争の回避に関する5核保有国首脳の共同声明」の原則を再確認し、N5の対話を継続・強化すべきだ。
・軍備管理の努力は、戦略核兵器だけでなく、低出力核兵器や非戦略核兵器についてもなされなければならない。
・核保有国は、エスカレーションのリスクを最小化するための自制策の推進や、信頼できる危機管理連絡メカニズムの構築、核戦力の低警戒態勢の維持、警報即時発射態勢の回避などの措置を進めなければならない。
・核爆発実験に関するモラトリアムへの支持を維持し、CTBTを発効させるための対話と透明性の措置の確保が急務である。
(核抑止力の再考)
・核兵器に基づく抑止は、核戦争という本質的リスクを伴い、地球上の生命の存在そのものを脅かす。それを避ける唯一の解決策は、すべての核兵器を廃絶し、核兵器のない世界を維持するための国際的なメカニズムを確立することである。
・核兵器の抑止力としての有用性については、決定的な証拠はない。敵対国が核兵器を保有することで、国家の外交・軍事に警戒が加わることは認めるが、抑止力の崩壊という並外れたリスクを考え、またそのリスクと天秤にかけなければならない。
(ひろしま・ウォッチ)
・G7広島ビジョンには、核兵器のリスクを減らし、核抑止力に頼らない信頼できる安全保障を提供するために必要な措置が欠けている。
・2024年から、ラウンドテーブルは、「ひろしま・ウォッチ」と呼ばれる新しい文書を作成する。
・「ひろしま・ウォッチ」は、G7やP5会合、G20及びNPT運用検討会議などでの宣言で、各国政府が実際に何を約束したか、その約束を守ったか、に注目する。
・「ひろしま・ウォッチ」は、「ひろしまレポート」による広範な情報収集に基づき、核軍縮における主要国の実績を評価し、主要国政府の公約に対する責任を問う年次レビューとして、毎年開催される「ひろしまラウンドテーブル」で発表する。
その他
今回まとめた議長声明は、被爆地広島からの呼びかけとして、NPT運用検討会議第1回準備委員会前に、日本を含む同条約の締約国(191か国)に送付する。
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