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国際平和拠点ひろしま

chapter2-1第2部:行動の提案 1.軍縮に向けた行動

では、こうした課題に向けて私たちは何ができるだろうか。達成されるべき具体的な提案は以下の通りである。

a.核軍縮及び核不拡散の促進

米ロ間の新STARTのプロセスは、正しい方向への第一歩であり、国際社会はこれを支持すべきである。さらに、核抑止力と拡大抑止に依存した現在の二国間核軍縮プロセスが、核兵器管理及び最終的にはその削減のための多国間プロセスに発展するよう、米ロ以外の核保有国の積極的な関与を求めるべきである。

より具体的に言えば、核軍縮プロセスを今まで以上に進展させるために、私たちは次に述べる対策がとりわけ重要であろうと考えている。これらの対策は、過去にすでに提案されているが、実施されるにはいたっていない。

1) 全核保有国は、自国の核兵器の数を増やさないことを約束すべきである。

2) 私たちは、核のない未来のための英国、フランス、中国の合意を歓迎する。また、全核保有国が参加する多国間軍縮プロセスを開始するために、この三カ国が、自国の核兵器を削減するための具体案を提出するよう要求する。

3) 全核保有国は、核拡散防止条約を遵守している非核保有国に対しては核兵器を使用しないという、新しく明確な消極的安全保証を供与するべきである。

4) 核軍縮に関する交渉においては、非核保有国は実質的な役割を果たすべきである。さらに、市民社会における地方自治体や非政府主体が果たしうる役割も模索されるべきである。

b.核兵器依存の低減

冷戦の終結とともにSTARTのプロセスが開始されることになったが、それは、本質的には米国、ロシア、ヨーロッパ間における進展であり、そのほかの国々に対する安全保障体制はほぼ手付かずのままであった。核軍縮は、緊張緩和や紛争処理を目的とした取組からは除外された。朝鮮半島の将来に関する六カ国協議は唯一の例外であったが、その成果はこれまでのところ限定的である。

ここで必要とされるのは、安全保障を理由とした核抑止力への依存を低減するための、潜在的な敵国同士による信頼醸成のプロセスである。もちろん、自国の安全保障に対して十分な確証が持てないまま核兵器を進んで手放す国はなく、そのようなプロセスの実現は容易ではない。アジア太平洋地域の核保有国と非核保有国が集まってともに緊張緩和及び核兵器の相互削減の方策を探る国際交渉が必要である。私たちはここで、そのような国際交渉をはじめに広島で開催することを提案したい。

アジア太平洋地域の政府は、特に次に挙げる事柄から始めていくべきである。

1) 北東アジアにおける六カ国協議は、北朝鮮の核問題の成功裏の解決のみを目指すべきではない。核抑止力への依存を必要としない東アジア安全保障体制の確立も目指すべきである。

2) 核拡散防止条約に未加盟の核保有国が「核兵器のない世界」の実現のための取組に参加し、また世界の各地域において核兵器の役割が縮小されるようあらゆる努力がなされるべきである。

3) 軍事利用か民間利用かにかかわらず、全ての国家は、核物質や核関連施設の安全性を強化するために必要な対策を講じるべきである。これは、核テロに効果的に備えることにもつながるはずである。

c.国際的なメカニズムの強化

紛争処理に関する外交交渉には、核兵器管理と核不拡散を管理する国際機関も取り組んでいくべきである。私たちは、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の勧告を強く支持するとともに、以下に述べるアジェンダに焦点を当てた地域プロセスを提案したい。

 

1) 核エネルギー関連施設開発の監視における国際原子力機関(IAEA)の役割は強化されるべきである。また、IAEAの世界規模での活動を地域レベルで支えるものとして、アジアに類似の地域システムを構築することを提案する。
2) アジア地域におけるウラン濃縮施設、再処理施設、使用済み核燃料貯蔵施設の多国間管理に関し、より一層の努力がなされるべきである。かつ、この取組は、民間利用を目的とした全ての核物質を管理の対象にすべきである。
3) 核抑止力の有効性に関し、核兵器の意義を低下させる多国間安全保障の枠組を発展させる必要がある。そのために、アジア地域の全ての国々がともに取り組むことを要求する。


[写真提供] ユニタール広島事務所