2025年に被爆80年を迎える広島。2度と原爆の悲劇を繰り返さないという平和への想いは、企業の活動にも広がりを見せています。
そんな企業の取り組みを複数回に分けて紹介していきます。
五回目は、修学旅行などで広島の平和を発信する「ピースツーリズム」。
取り組みを実施している株式会社JTB広島支店長の濱口剛(はまぐち たけし)さんに、お話しを伺いました。
広島の被爆の実相を伝え、犠牲になった方々への鎮魂を祈る平和記念公園では、多くの修学旅行生の姿を見かけます。年間30万人もの修学旅行生が広島に来ているのだとか。
「修学旅行そのものがずいぶん変わってきています。行ってから見て学ぶ、ではなく事前にその土地について学ぶ形が増えています。」
原爆・戦争のもたらす悲劇を子供たちに伝え続けてきたこの場所で、株式会社JTBとNPO法人PCV(ピース・カルチャー・ビレッジ)が修学旅行生向けに始めたのが「ピースダイアログ」。平和記念公園内の碑めぐりをしながら、地元の若者で構成される「ピースバディ」との対話を通して、自分にとっての平和を深く考えることができます。
「当社の経営理念は『地球を舞台に、人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する』。私たちの取り組みのひとつひとつに平和への思いが込められています。」
旅行は訪れる人と迎える人との「相互交流」であり、この交流を生み出すことが平和の実現に貢献できると考えています。そのため、平和をテーマに広島に訪れる修学旅行生達に、平和について真剣に考えてもらう機会を持ってもらおうと始めたのが取り組みのきっかけでした。
ボランティアで学習を提供することが多い平和学習。当初は、有償で実施するピースダイアログを採用することに抵抗を示す学校もあったそうです。
「正直『平和を学ぶことに対価を求めるとはけしからん』という目で見られていたのだと思います。ただ、修学旅行自体の質を見直す動きもある中で、内容を共感いただき、なぜその費用が発生するのかもご理解いただくことを通じて、徐々に採用されていきました。」
2023年度は89団体(延べ11,900名)、2024年度は上半期時点で既に88団体(延べ11,600名)を受け入れており、どんどん広がりを見せています。
「一度ピースダイアログを体験された学校がリピートで採用してくださることも多いです。」
参加した生徒から学ぶことも多く、感想を通じて伝え方や語り掛けもブラッシュアップしているのだとか。
「修学旅行は学校行事のなかでも生徒のみなさんの記憶に残るものだと思います。その時に見聞き・体験したものが将来を決めることにもなる。だからこそ、いい加減なことはできないと思っています。」
広島の観光業界では、様々な分野の人が関わりはじめており、その中心軸には平和につながる生き方をする「平和文化」があるといいます。
「重視したいのは共創。自社だけで完結するのではなく、共に価値を導くことが重要だと思っています。」
被爆者の想いを受け継ぎ、未来に平和を繫いでいかないといけない中、被爆80年をただの行事にしてはいけないと濱口さんは考えています。
「広島に住む自分たちは『過ちを二度と繰り返さない』ということを国内外の人々に発信していかねばならないと考えています。来年は、長崎支店との共創プログラムや新サッカースタジアムを活用した企画も検討しています。」
最後に濱口さんにとっての平和を聞いてみました。
「平和とは、愛と思っています。世界で起こっている様々な問題は愛が足りないから。愛はお互いを思いあう、未来を共創することだと思います。だから私は愛を中心に置いた旅を提供していきたいと思っています。」
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「へいわ創造プラットフォームひろしま」
株式会社JTB広島支店さんは、広島を基点として、企業、経済団体、NGO・NPO、任意団体など様々な主体が参画する「へいわ創造プラットフォームひろしま」に参画されています。 登録されると、このサイトを通じてSDGsや平和の取り組みを発信することができるほか、平和の取組の情報収集や共有を図ることができます。
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