2025年に被爆80年を迎える広島。
2度と原爆の悲劇を繰り返さないという平和への想いは、企業の活動にも広がりを見せています。
そんな企業の取組を複数回に分けて紹介していきます。
初回は、牡蠣殻の活用に取り組んできた丸栄株式会社が販売する「貝適空間Hiroshima折り鶴」。
丸栄株式会社の営業部係長の沖野靖将(おきの やすまさ)さんに製品に込めた想いをお伺いしました。
原爆ドームの真向かいに位置するSHIMINT HIROSHIMA(シミントひろしま)。その一角にあるアパレル製品を取り扱う「MOTHERHOUSE(マザーハウス)」では、レジ周りなどに折り紙片がちりばめられた壁材が塗られています。
使われているのは、牡蠣殻と折り鶴再生紙を使った壁材「貝適空間Hiroshima折り鶴」。牡蠣殻の粉末と広島平和記念資料館に寄贈された折り鶴の紙片が混ぜられてできています。
平和公園の向かい側という象徴的な場所にふさわしい地元素材を、という想いから採用されました。
丸栄株式会社は、牡蠣の生産量日本一位の広島県で、大量に廃棄される牡蠣殻を活用することを事業としています。
米穀商から始まったため、最初は鶏の飼料や肥料の製造など、衣食住の「食」での牡蠣殻活用を主としていました。
牡蠣殻を活用する場をもっと広げていきたいと考えた沖野さんは、衣食住の「住」で牡蠣殻の活用策がないか模索し、2015年ごろ当時ブーム前夜だったDIY用の塗材の開発に着手しました。
壁材の製造で必要になってくるのがパルプ。当初は、ティッシュ等を材料に試作を開始していました。
沖野さんが折り鶴再生紙の活用を思いついたのは、勤務先からの移動中のこと。
「十日市町の事務所から海田町の工場方面に向かうときに、しばしば平和記念公園近くにある『原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑』の前を通るんです。その時にふと、壁材に入れるパルプに折り鶴再生紙を使ってみてもいいのでは、と思いました。」
当時、世間では折り鶴が大量に寄贈され、廃棄するわけにもいかず、その活用方法に困っているというニュースが話題になっていました。
「寄贈するのは迷惑だから折り鶴をもっていかないほうがいい、という話まで出ていて。正直それはないだろう、って思ったんです。むしろもっと持ってきてもらえるような環境になるべきなんじゃないかって。」
思いついたら即行動の沖野さん。折り紙を買って試作したところ、強度もふくめ壁材の材料としてに適しているとわかりました。
2019年に販売を開始。広島らしさのある牡蠣殻と、平和への想いがこもった折り鶴の2つのメッセージ性から、口コミでどんどん採用され始めるように。住宅メーカーのモデルルームで玄関の壁材として採用されたりしています。
世界中から広島に届く折り鶴は多様で、折った人の想いがたくさん込められています。
「アメリカ人が持ってきたであろう千羽鶴には、一つ一つにメッセージが書いてあったんですよね。そういう想いが伝わる形で使ってほしいと思います。国外の想いを寄せられるような場所にも活用してほしいですね。」
海水中のカルシウムと牡蠣の呼吸によってできる二酸化炭素が反応して作られる牡蠣殻。今後も有効活用することで、環境への貢献も続けていきたいといいます。
最後に、沖野さんにとっての平和について聞いてみました。
「平和は人類の永遠のテーマですが、壊れやすいものだと思います。壊れやすいものを持続させる一助に自分もなりたいと思います。そういうことを各々が日々考えていけば、平和になるんじゃないかなと。」
「へいわ創造プラットフォームひろしま」
丸栄株式会社さんは、広島を基点として、企業,経済団体、NGO・NPO,任意団体など様々な主体が参画する「へいわ創造プラットフォームひろしま」に参画されています。 登録されると、このサイトを通じてSDGsや平和の取り組みを発信することができるほか、平和の取組の情報収集や共有を図ることができます。
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