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国際平和拠点ひろしま

木に会いに行く~広島から世界へ被爆樹木を~

 広島市の市民団体「グリーン・レガシー・ヒロシマ・イニシアティブ(GLH)」の活動は、広島に残る貴重な被爆樹木の種や苗を世界中へ広めること。被爆樹木を通して、反戦反核、自然の尊さ、そして人間の在り方を見つめ直すきっかけとしてほしいとの思いが込められています。
 GLHの活動を支える、国連訓練調査研究所(ユニタール)の特別上級顧問ナスリーン・アジミさんと、NGO団体ANT‐Hiroshima理事長の渡部朋子さんにお話を伺いました。

 GLHの活動は2011年から始まりました。GHLが立ち上がる前、広島で国連の仕事を続けていたアジミさんは「長年、アジア太平洋からの研修生を受け入れ、平和や世界遺産研修、復興からの平和構築などの研修を行ってきました。そこで、いつも研修生たちが言っていたのが『広島でなにができるか』ということでした。それに対して、当時の私は明確な答えを出すことができていませんでした」と振り返ります。世界平和のために広島から発信できることは何かを思案し続けていたときに出会ったのが、被爆樹木の保護活動と大切さを伝えるために活動していた渡部さんでした。
 「私はナスリーンとは違い、広島で生まれ育ちました。一方でナスリーンは世界を渡り歩いてきた人。その二人が広島で出会って、このグリーン・レガシー・ヒロシマという活動が始まったというのは、とっても素敵ですよね。お互い、本当に刺激的な出会いでした。地方都市の広島を拠点として活動する私と、国連という大きな組織で世界的な活動をしてきたナスリーン。この多様な二人を結び付けるのは『木への愛』なんです」と、渡部さんがアジミさんとの出会いを話します。

 そんな二人が出会い、GLHの活動をスタートさせたのは2011年に起こった東日本大震災での原発事故も大きな要因となりました。
 「樹木というのは、歴史や自然環境、戦争に対する拒絶、核廃絶の思いなど、さまざまな問題を組み合わせ、投げかけることができる重要なものだと気づいたのです。私たちの生き方を木は見つめてくれていて、これまでに起こった出来事をすべて記憶し、それをメッセージとして伝えてくれます」とアジミさん。樹木がもらたす大きな力を、広島に残る被爆樹木を通して世界に広めていきたいと考え、渡部さんと共に歩み出したのです。

 アジミさんの言葉によって、広島に暮らし、普段何気なく見上げていた木が、渡部さんにとってとても大切で、大きな存在へと変わったそうです。
 「木は、見るものではなく会うものなんです。私たちにとって、『木は出会うもの』なのです。いろいろなことを語りかけ、教えてくれる存在です。しかも、被爆をしても生き抜いてきた160本もの木を、今日まで大切にケアをして見守ってきた人たちがいる。こんなに素晴らしい物語は世界を探してもほかにないと、ナスリーンは言いました。私はそれを聞いて100%賛同しました。ナスリーンが見つけてくれたからこそ、この素晴らしい広島の宝に気が付けたのだと思います。広島に生まれ育った私は、それまで木は木でしかありませんでした。しかしナスリーンに、もう一度木に出会い直してみてと言われ、傍らにただ立っていた木に改めて出会ってみると、私の人生を変えるような出会いと力がそこにあったのです」。

縮景園での被爆イチョウの種取の様子(2018年11月)

米国オバリン大学で生徒たちが被爆イチョウの苗を育てている様子(2016年)

 広島の被爆樹木を通して、さまざまなことを伝え見つめ直すGLHの活動は、2021年までに世界38の国や地域へ広島の被爆樹木から採取された種や苗を贈り、124カ所で芽吹いています。
 「ナスリーンの名言があるのよ『木が嫌いな人はいない』って。私たちの生き方を木は見つめてくれているんです。これまであった出来事を記憶し、それをメッセージとして伝えてくれます」(渡部さん)
 「総理大臣から学校の先生、子どもたちまで、世界中のどこでもみんな木が大好き。この苗は広島で被爆した木の赤ちゃんだと伝えると、とてもインパクトがあって詳しい説明もいりません。グリーン・レガシー・ヒロシマはとてもシンプルな活動で、たくさんの人が共感してくれています。ただ忘れてはいけないのは、本当の英雄は、被爆樹木を守り続けてきた人たちだということ。1000年のプロジェクトとして、これからも被爆樹木を守り、世界中の子どもたちと共に木の美しさを広めていきたいです」(アジミさん)

爆心地から一番近い被爆樹木のシダレヤナギに会いに 

 コロナ禍で思うような活動をすることができない状況になっていますが、被爆樹木は現在でも広島市内で私たちを見守ってくれています。改めて「木に会いに」行ってみてはいかがでしょう。

グリーン・レガシー・ヒロシマ・イニシアティブ
HP:https://glh.unitar.org/

国連訓練調査研究所(ユニタール)広島
HP: https://www.unitar.org/ja/hiroshima

ANT-Hiroshima
TEL:082‐502‐6304
住所:広島市中区上八丁堀8‐14安芸リーガルビル5F
HP:https://ant-hiroshima.org/

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