広島の“ピーススポット”を巡る デジタルスタンプラリー「ピースパズル」
広島市では、市民社会における平和意識の醸成を図るため、令和3年度から毎年11月を「平和文化月間」と定め、芸術文化活動やスポーツを通じた交流など、「平和の思いの共有」につながる、さまざまな取り組みを集中的に実施しています。
平和文化月間と連動し、好評を博しているのが、広島のまちに点在する平和にまつわる場所や史跡“ピーススポット”を巡るデジタルスタンプラリー「ピースパズル」です。テーマごとにモデルコースを用意し、自転車や徒歩で巡りながら各スポットでスタンプを集めると、集めた数によって特典に応募できます。
ピースパズルの開発に携わったのが、「戦争を知らない世代が次の世代へ継承していく方法を探る」ことをテーマに、多様な平和活動を行う任意団体『第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展』です。
代表の久保田涼子(くぼた りょうこ)さんは、広島出身で東京在住の被爆三世。縁あって、朗読劇『父と暮せば』の方言指導に携わった際に、「広島についてまだまだ知らないことがある。自分は知っているつもりで何も行動していない。何かしたい」という思いが強くなり、同団体を立ち上げたのだといいます。
『第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展』代表の久保田涼子さん
平和文化月間中に参加することができるピースパズルのコースは、全5コース。「特定非営利活動法人 Peace Culture Village」と考案した、「徒歩で巡る 子どもたちが歩んだ軌跡ルート」や、「sokoiko! cycling tours(株式会社mint)」と企画した、「自転車で巡る 川と海の記憶ルート」、「一般社団法人 Hello Hiroshima」と共同開発した「徒歩で巡る 未来への手紙ルート」などがあります。また、修学旅行生向けには、ワークシートとピースパズルを組み合わせた平和学習ツールも提供しています。
修学旅行生向けツールの資料。学生さんにも興味を持ってもらえるよう、漫画で表現するなど、対象者に向けて工夫されている
2023年11月23日(木・祝)には、広島女学院高等学校の生徒と考えた「徒歩で巡る アートとまちの展望ルート」を、ガイド付きツアーで開催。スタート地点である鶴見橋東詰の被爆樹木シダレヤナギ下に集合し、6つのスポットを巡りました。
当日は、久保田さんチームと、今回のルート開発に携わった一人でもある、広島女学院高等学校の山島雫(やましま しずく)さんチームに分かれ散策。各スポットに到着すると、そのスポットに関するエピソードとクイズがスタンプラリーに表示されます。解答して正解するとスタンプを取得できるという仕組みです。今回は被爆樹木のシダレヤナギを出発し、多聞院の鐘楼、頼山陽文徳殿、被爆樹木クスノキ、広島市現代美術館を巡り、ゴールの比治山陸軍墓地へ向かいます。
スタート地点となった被爆樹木に登録されているシダレヤナギ。久保田さん、山島さんから、お話を聞きながら各スポットを巡ります
各スポットを訪れると出題されるクイズに挑戦。正解するとスタンプを獲得できる仕組み
途中、広島市現代美術館ではアートナビゲーターの方から、同館の歴史や所蔵作品について案内してもらいました。アプローチプラザの円形屋根の切れ目が爆心地の方角を指していることや、床石に被爆石が用いられていることを知り、参加者は一様に驚きの表情。平和にまつわる作品の解説も、とてもためになる内容でした。
2023年3月にリニューアルオープンした広島市現代美術館
美術を通じた学びの場を創出し、広島から世界、世界から広島をとらえる地域性と国際性を備えたプログラムから、広島を見つめ、現代と未来をつないでいる
コースを考案した山島さんは、「地元の人に被爆当時のエピソードを聞き、そのストーリーが見える内容になるよう意識しながらルートを考えました。また、多聞院の鐘楼では『鐘に刻まれている言葉はなんでしょう』、被爆樹木のクスノキでは『クスノキに残る原爆被害の跡はどこでしょう』と実際に見て、探すことで、答えがわかるクイズにし、参加者ご自身のアクションにつながるよう心掛けました」と話します。
広島女学院高等学校3年生、山島雫さん。ピースパズルの英訳募集に応募したことがきっかけで、今回のルート開発にも携わった
この日の参加者は広島在住の方や県外から来られた方、親子や友人と出身も関係もさまざま。父と息子の二人で参加された方は、「子どもは学校で平和学習を受けていると思いますが、実際に自分の足でピーススポットを訪れ、肌で感じることでしか得られない経験があると思います。スタンプラリーという楽しみがあるのも参加しやすくていいですね」と、笑顔で話してくれました。
また、東京や神戸から参加したというグループは、「学生時代、修学旅行で広島を訪れた時は平和学習について受け身でした。戦争経験者が高齢となり、伝承者が減っていく中で、若い世代が積極的に平和について学び直さないといけないと思い、今回のイベントに参加しました。世界中ではいまだ戦争や紛争が絶えません。誰もが平和を自分事として考えなければならないと思います」と話します。
当日参加された皆さん。東京から来られた方も
「ピースパズルのテーマは『“知らない”を、知る』です。広島には原爆ドームや平和記念公園だけでない、小さなピーススポットがたくさん点在しています。県外から広島を訪れる人の中には、『平和について学びたいけれど、どこへ行けばいいのかわからない』と口にされる人もいます。そういった県外の方たちに、ぜひこのようなルートを活用いただき、広島の歴史と平和について学びを深めていただければと思います。もちろん、広島在住の方にも利用していただけたらうれしいです」と、久保田さん。
デジタルスタンプラリーとの連動は平和文化月間中のみとなりますが、モデルコースの公開は今後もインターネット上で継続される予定です。ぜひさまざまなシーンで活用し、平和の思いを共有するまち巡りを行ってみてはいかがでしょうか。
【問合せ】
ピースパズル事務局
080-1916-8638(久保田)
■ピースパズル
https://tsuguten.com/peacepuzzle
■学校用:ピースパズル(修学旅行や平和学習ツール)
https://tsuguten.com/peacepuzzle/schooltrip/
■第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展
■平和文化月間
https://heiwabunka.info/2024/(10月オープン予定)
【イベント情報】
① 2024年8月4日(日)11:30-13:00
「未来への手紙ルート無料ツアー」開催
11:30- 白神社 前集合(雨天中止)
② 2024年8月6日(火)11:00-12:30
「アートと町の展望ルート無料ツアー」開催
11:00- 鶴見橋東詰被爆樹木シダレヤナギ前集合(雨天中止)
イベントのお問い合わせ・お申し込み
tsuguten2020@gmail.com / 080-1916-8638(久保田)
※ピースパズルは、令和6年度広島市ピースツーリズムの一環として実施しています。
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