演劇を通して私たちが伝えたいこと(広島市立舟入高校演劇部)
広島市立舟入高等学校演劇部が、10名の部員(2年生5名、1年生5名)全員で取り組む原爆劇。1976年から続く、この活動についてお話を伺ってきました。
部では年間5~6本ほどの作品に取り組み、コロナ禍の中でも精力的に活動を続けています。その活動の中の一つとして、原爆の悲惨さや核兵器廃絶、平和の尊さを訴える作品に取り組んでいます。3年ほど前からは生徒たち自身で脚本も手がけ、自分たちにはどんな平和活動ができるかと自問しながら、作品作りに向き合っているのです。
2021年度に取り組んでいるのは『ケイショウ ~「ある晴れた夏の朝」から考えたこと~』。核兵器の必要性に対する是非について、見解の相違や多角的な考え方の必要性を、登場人物の心情を通して表現していく作品です。
「タイトルである『ケイショウ』には2つの意味が込められています。一つは原爆投下からその悲惨さを伝え、核兵器のない世界にしていくための『継承』。もう一つは、現在の核兵器を取り巻く世界情勢への『警鐘』というものです。私たち世代が原爆について伝えると同時に、核兵器のあり方などを警告していく作品です」と答えてくれたのは、脚本を手がけた一人佐田菜月(さだ・なつき)さん(写真中央)。
同じく脚本を手がけた小笠原穂香(おがさわら・ほのか)さん(写真右)は「作中にある戦争中の夢のシーンをはじめとするさまざまな場面に、たくさんの伏線が張られている作品です。台詞だけでは語られない、登場人物の心情などもしっかりと表現できたらと思います」と、話してくれました。
そして、二人と一緒に脚本を手がけ、同部の部長でもある宇多村侑香(うたむら・ゆうか)さん(写真左)は「核兵器はよくない、平和が大切だということは多くの人が感じていることです。では、それをどうやったら実現できるか、たくさんの考え方や意見にしっかりと目を向けていくことが大切だと思います。演劇は、私たちが多くの人にメッセージを伝えられる一つのツール。作品を通して、自分たちなりの思いを届けられたらうれしいです」。
1947年から続く舟入高校演劇部。舟入高校の前身である市立第一高等女学校では、原爆投下によりたくさんの生徒や教師の命が奪われました。そういった背景もあり同部では原爆や平和をテーマにした作品を、これまでも毎年取り組んできました。
演劇部顧問で同部のOBでもある小山耕平(こやま・こうへい)先生は「被爆地広島から多くの人に発信し伝え続けていくことが、今できる確かなことの一つです。そして何よりも、生徒自身が考え、疑問を持ち、自ら調べたことを形にするという過程が尊いことなのだと考えます」と語り、この日も熱のこもった演技指導をされていました。
コロナ禍により、残念ながら一般の方に見ていただくことが難しい状況にはなっていますが、2021年11月14日に福山市で行われた「第61回広島県高等学校総合演劇大会」において上演され、白熱した演技と力強いメッセージが届けられました。
※1名お休みでしたので生徒さんは9名で写っています
広島市立舟入高等学校 演劇部
HP:http://www.funairi-h.edu.city.hiroshima.jp/
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