2023世界平和経済人会議ひろしまの開催結果について
ウクライナ侵攻後の国際社会経済と
ビジネスによる平和貢献
世界平和経済人会議ひろしま
ビジネスのプラットフォームとしての「国際平和」の重要性を改めて関係者間で共有し、企業やNGOなどの各主体の
役割を見つめ直し、ビジネスと平和貢献のあり方の関係を多面的に議論することで、真に平和で持続可能な国際社会
につなげることを目指す。
2013年に初めて「国際平和のための世界経済人会議」を開催し、被爆から75年を迎えた2020年からは「世界平和経
済人会議ひろしま」として新たなスタートを切り、今回が8回目の開催。
開催日:令和5年4月20日(木)
主催:へいわ創造機構ひろしま(HOPe)
場所:ヒルトン広島(併せてオンラインで配信)
【オープニング 】
- (知事)
2年後に終戦・被爆80周年を迎え、さらに戦後100年を見据えたとき、真に持続可能な世界を作るには、今後経済界との連携が一層重要となる。また、インパクトのある平和発信を展開するには、会議の顔となる経済界リーダーが必要であり、このたび経済同友会代表幹事に就任される新浪氏に御参加いただいた。 - (新浪氏)
ロシアによるウクライナ侵略で、国際社会が冷戦後30年かけて作り上げ機能していたはずの抑止の枠組みが無力化した。我々はこの現実から目を背けず、正面から向き合う必要がある。大切なのは、日本が誰にとっても良い国であり欠かせない国だと思ってもらえること。
新浪 剛史 | サントリーホールディングス(株)代表取締役社長 | |
湯﨑 英彦 | 広島県知事 |
【基調講演】 「ウクライナ戦争が突き付ける21世紀の挑戦 ~核・サイバー・経済安全保障・情報・民主主義」
- ウクライナは旧ソ連の中では人口や経済面でロシアの次に大きい国であるが、プーチン大統領は、世界が米国・EU・ロシア・中国と多極化する中、ロシアが旧ソ連の部分を担い、コモンウェルス(国家連合)方式で支配しようと考え、それはウクライナなしでは叶わないと考えた。それが戦争の理由である。
- 戦争は当初から、ロシアによるチョルノービリ原子力発電所とザポリージャ原子力発電所の占拠によって、核の要素を持つようになった。このリスクに対し、世界として準備ができていない。
- この戦争がいつ終わるかわからないが、戦争後も両国の関係は良くなることはないし、ロシアと欧州の貿易関係のトレンドもすぐには変わらないだろう。
- ロシアの貿易は、欧州中心から、インド・中国へ方向転換している。ロシアによる欧州へのエネルギー供給は1970年頃に始まったが、我々が今直面しているのは、終わりの始まり。ドイツは原子力に依存しない、またフランスは化石燃料から脱却するといった動きはあるが、すぐには変わらず長期的に変化していくと考えている。
- マーク・トウェインは「歴史は同じ形では繰り返さないが、韻をよく踏む。」と言ったが、我々は冷戦を乗り越えた経験があり、過去に立ち返って当時何を誤ったのかを検証するだけでなく、核戦争や核紛争を繰り返さないために何を正したのかを考えなければならない。
- 冷戦時代と同様、新たな環境な中で、ビジネスリーダーには大きな役割を果たしてほしい。
セルヒー・プロヒー |
ハーバード大学 教授、 ハーバード大学ウクライナ研究所 所長 |
【セッション1】「平和における情報の重要性と情報企業の果たす役割」
- ジャーナリズムの観点から、ウクライナにおけるフェイクニュースの流布や情報環境の問題、メディアや政府の信頼性の問題、AI生成のルール作りの課題などがある。
- 健全な情報空間の定義は難しい。表現の自由は重要である一方、安全保障の問題もあり、両者のバランスが必要。
- 日本は人材の流動性が低く、公共部門と民間部門の分断があり、ジャーナリズムにも同様の傾向がある。一方、流動性が高いアメリカでは、異なる価値観を知り外部からの視点を持つことができる。日本は流動性の高い社会を作ることが重要である。
- 日本にはメディアの監督官庁が存在しないため、フェイクニュースやディスインフォメーション(故意に流される虚偽情報)への対策の場が限られている。日本では民間の自主的規律が尊重されてきたが、民間による対策は遅れており、偽情報に対する受け皿が不足している。リテラシー教育をはじめとする対策が必要であり、民間企業も社会的責任を持つべきである。
- 生成AIについては、言語の壁を克服するツールとして楽観的な意見がある一方、大きな問題を起こす可能性もあり注意が必要。AIの透明性が重要であり、特に政策決定者やビジネスリーダーが正しい理解のもとにアプローチすることが重要。
- 歴史を振り返り、技術がもたらす無限の可能性に注目すべきである。G7広島サミットでは、より良い技術が使えるよう、透明性の高い基礎資料や説明責任をもって信頼を得られるようにすること、そして素晴らしいメッセージを発信してもらえればと思う。
西田 亮介【モデレーター】 | 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 准教授 | |
村井 純 | 慶應義塾大学 教授 | |
ジョン・V・ルース | ジオデシック・キャピタル社パートナー兼共同創業者 元駐日米国大使 |
|
瀬尾 傑 | スローニュース(株)社長 |
【セッション2】「経済の武器化にどう向き合うか(エネルギー、食糧など)」
- 先進国は、今こぞって先端半導体の供給能力確保に躍起になっている。従来の効率重視の社会から、将来のリスクと今日の犠牲を天秤にかけて国策を策定する時代に入っている。企業は国策に影響されることを理解し、この転換期にできる限り戦略的なオプションを増やして、大きな意思決定は先送りにすべき。
- 政府と企業の関係性でいうと、経済安全保障上、政治のリーダーシップを支える上で技術インテリジェンスは非常に重要であるので、企業はそれを強化し、政府と連携して取り組んでいく必要がある。
- ウクライナ危機により、液化天然ガスなどは争奪戦になることは明らかであり、当面は需要と供給のギャップが激しい状態になる。エネルギー転換期において、足元の激変緩和は根本的な解決にならないところがこの問題の難しい点。
- エネルギーインフラの入れ替えは非常に時間がかかるので、エネルギー自給率を高めて自衛の手段を確保していくには、現実的なエネルギー政策の議論が極めて重要であり、国の関与がより強く求められる。また、エネルギーについてのリテラシーを上げていくことも必要。
- 我々の食物によるエネルギー源は、50%以上を小麦と米とトウモロコシに依存しているが、その中でも小麦とトウモロコシは、ロシアとウクライナの2か国に依存している。自由に流通できなくなった結果、食糧価格高騰の問題が起き、社会的に弱い国が非常に困るという状況が起きている。
- 国内で貧富の格差が非常に激しくなっている。市場に対してオープンであることが平和というのがこれまでの常識だったが、市場に任せていると勝ち組はどんどん勝ち、負け組はどんどん負ける。どの国でも共通して見られる現象であるが、経済に政治が介入しないとこの格差は埋まらなくなる。
- 成長戦略として目指すものがあれば、そのリスクに対処するためのプランBを考えておくことが重要であり、その備えに対してコストがかかることをしっかり認識しておく必要がある。それは、エネルギーや食糧などの実物経済だけでなく、デジタル経済でも同様である。
髙島 宏平【モデレーター】 | オイシックス・ラ・大地(株)代表取締役社長 経済同友会 副代表幹事 |
|
小柴 満信 | JSR(株)名誉会長 経済同友会 副代表幹事 |
|
鈴木 一人 | 東京大学公共政策大学院 教授 (公財)国際文化会館地経学研究所 所長 |
|
竹内 純子 | 国際環境経済研究所 理事 U3イノベーションズ合同会社 共同代表 |
【 クロージング 】
- (新浪氏)
平和な社会を構築するための日本の役割は、アメリカとの関係を深めることだけではなく、グローバルサウスとの関係をもっと強化する必要がある。食糧や医療といった生活の上で欠かせない物事は、こういった国々ともっと繋がることによって、この転換期を乗り切ることが重要。悲劇的な経験をした広島から発信していくことに大きな意味がある。そういった中で、日本の経済界は企業活動を通じて信頼の輪を作っていくことで役割を果たしていきたい。 - (知事)
人間の力は破壊にもつながり、また平和を基盤とした繁栄を創り上げることもできるが、広島はその両方を知ることができる場所である。そういった文脈において、G7の広島開催は非常に重要である。平和な世界を築くためにはビジネスが果たす役割は大きいというメッセージを発信していきたい。 - (新浪氏)
2025年に戦後80年という大きな節目を迎える。影響力のある世界のリーダーに会議に参画していただき、同じような思いを持たれる方、場合によっては違う視点を持たれる方々にも加わっていただき、侃々諤々の議論をしながら平和の大切さを訴えていきたい。2025年の会議を大成功に収められるよう、私も一緒にやっていきたい。
加治 慶光【モデレーター】 | シナモンAI会長兼CSDO、日立Lumada Innovation Hub Senior Principal、鎌倉市スマートシティ推進参与 |
|
新浪 剛史 | サントリーホールディングス(株)代表取締役社長 | |
湯﨑 英彦 | 広島県知事 |
2023会議ダイジェスト
これまでの開催状況
2020 世界平和経済人会議ひろしま (2020 年8 月)
2019 国際平和のための世界経済人会議(2019 年10 月)
2018 国際平和のための世界経済人会議(2018 年11 月)
2016 国際平和のための世界経済人会議(2016 年10 月)
このページに関するお問い合わせ先
へいわ創造機構ひろしま(広島県地域政策局平和推進プロジェクト・チーム内)
住所:〒730-8511 広島県広島市中区基町10-52
Tel:082-513-2366
Fax:082-228-1614
この記事に関連付けられているタグ