抗　議　文

　貴国は、５月14日に、ネバダ州の核実験場内にある地下施設で臨界前核実験を実施したと発表しました。人類史上最初の原子爆弾による破壊を経験した広島県民を代表して、ここに厳重に抗議します。

　貴国に対しては、先日、決して核実験を実施しないよう、強く要請を行ったにもかかわらず、実施されたことは、核兵器の廃絶と恒久平和の実現を世界に訴えてきた広島県民の切実な願いを踏みにじるもので、強い憤りを感じます。

　貴職が、一年前に、Ｇ７広島サミットにおいて、他のＧ７リーダーとともに核軍縮に向けた意思を示されたことは、非常に意義深いものであったと認識しています。

　しかしながら、わずか一年の間に、今回の臨界前核実験を実施されたことに、広島県民は大きく失望しています。

　この核実験は、ロシアをはじめ、中国や北朝鮮など、他の核保有国に更なる核開発と核抑止力を強化する口実を与え、国際社会が積み上げてきた核軍縮の取組を大きく後退させることは明白です。

　さらに、先日、貴国の政府及び議会関係者による原爆投下を正当化する発言がありました。

　これら、貴国における核兵器に関する言動は、世界の人々に、核兵器の非人道性に対する誤った認識を与えるとともに、核兵器が使用されるのではないかという大いなる不安と恐怖の念を抱かせることとなります。

　貴職におかれては、核兵器廃絶を願う国際世論、そして広島県民の強い思いを真摯に受け止め、今後、一切の核実験を中止するともに、核兵器廃絶を一歩でも前進させるよう、国際社会においてリーダーシップを発揮し、模範となるべき行動をとっていただくよう強く求めます。

2024年５月18日

アメリカ合衆国　大統領
ジョセフ・バイデン　　閣下

日本国　広島県知事　湯﨑　英彦