広島県では,広島県出身のJICAボランティアを対象に,ひろしま平和貢献大使を委嘱しています。大使の方々には,赴任国と広島県の架け橋として,広島の被爆の実相や復興の歩みについて伝える原爆展を現地で積極的に開催していただくこととしています。
今回2018年度にインドに赴任された真加部湧大さん(2018年度2次隊/コミュニティ開発)にインドで開催した原爆展について紹介してもらいます。
開催概要
普段は繊維省にて、養蚕農家の技術普及システム改善や収入向上に関わる仕事をしていましたが、週に1度、日本文化紹介講師として、任地近くの私立学校で、日本でいう小学5年生から中学2年生までの生徒への授業を受け持っていました(2019年8月~2020年3月)。その中で、ヒロシマ・ナガサキについて、原爆、サダコと折り鶴について紹介し、一緒に折り鶴を折る体験を行いました。
授業にあたっては、JICA中国様から頂いたDVD「ヒロシマ・母たちの祈り」、また、NGO ANT-Hiroshima様から頂いた「おりづるの旅」英語版を活用させていただきました。
生徒の反応・実施しての感想
ヒロシマ・ナガサキ、A-bomb(原爆)について、また、サダコと折り鶴についても、これまでの歴史の授業などで名前は知っている生徒が多かったですが、実際の当時の状況や被爆者の体験を耳にして、驚きを隠せない様子の生徒が多かったです。1学年12~15クラスもあるマンモス校だったこともあり、全てのクラスに紹介するまで3か月程度を要しましたが、すでに授業を受けた他のクラスの生徒から話を聞いて質問に来てくれる生徒がいるなど、自身の探究に結びつけて考えてくれる生徒がいたのはうれしかったです。
折り鶴体験も、多くの生徒が興味深く感じ、友人とも協力しながら折ってくれました。時間の都合上授業では1羽しか折れず、また人数分の折り紙を用意できず大きさの違う紙を正方形に切って使用していたこともあって、そこで作った折り鶴は記念に生徒が持って帰れるようにしましたが、絵本にて、原爆の子の像とそこに多くの折り鶴が世界中から届けられていることを紹介していたこともあり、「私たちも作った折り鶴を広島平和記念公園内にある原爆の子の像に届けたい」と話す生徒が複数人いました。次回の授業では折り紙を人数分用意し、鶴を束ねていきたいと思っていたため、新型コロナウイルス蔓延による帰国は残念でした。
インドの生徒たちは疑問に思ったことを積極的に質問してくれる生徒が多く、「もっと被爆者の思いや平和教育への理解を私自身が深く学ばなければ」と私自身も強く思わされ、意見を出し合いながら授業では一緒に考えたり、家に帰って調べたり、帰国後再度広島平和記念資料館を訪れたりする契機となりました。
近所に住んでいた繊維省のスタッフの1人は、仕事の会議で渡日した際に、合間を縫って広島を訪れ広島平和記念資料館を見学してくださいました。彼のより深く理解したいとの思いに少しでも貢献できていたのであれば嬉しいなと思いました。