APLN(Asia Pacific Leadership Network)のウェブサイトに、湯﨑知事の寄稿文が掲載されました
APLN(Asia Pacific Leadership Network)のウェブサイトに、湯﨑知事の寄稿文「核兵器なき世界を目指す次世代リーダー育成に向けた広島の取組」(英語)が掲載されました。
※記事概要(日本語)は以下の通りです。
核兵器なき世界を目指す次世代リーダー育成に向けた広島の取組
(2024年8月5日)
2023年5月、G7サミットが広島で開催され、核兵器国や核の傘下国のリーダー達が、被爆の実相に触れ、核兵器廃絶に向けた決意を表明した。
一方で、ロシアのウクライナ侵略やイスラエルとハマスの紛争により、核兵器を巡る私たちの世界は一変し、広く一般の人々の間でも「近い将来、核兵器が使用されるかもしれない」との恐怖や懸念が、かつてなく高まっている。
核兵器が地球上に存在する限り、私達はその意図的な使用はもとより、偶発的な使用リスクからも完全に逃れることはできず、30分後には、地球や人類が破滅するかもしれない危機と常に隣り合わせで生きている。
そして、このような核兵器の維持や増強のため、世界では、昨年だけでも900億ドルを超える資金と官民から幅広い多数の人材が投入されている。
核兵器問題を巡り世界の分断が続く中、私たちは被爆から79回目の8月6日を迎えようとしている。長年、核兵器廃絶に向けた取組における大きな力となっていた被爆者は、その平均年齢が85歳を超え、毎年数千名が亡くなられている。被爆者の想いを受け継ぎ、厳しい国際情勢の中においても、核軍縮の歩みを前進させることができる次世代の人材育成は、私たちが最優先で取り組まなければならない課題の一つである。
そのため、広島県/へいわ創造機構ひろしま(HOPe)では、核兵器のない平和な世界の実現を目指しており、国際社会の中で核兵器廃絶に貢献するグローバルリーダーの育成を目指した人材育成に力を入れている。
県内高校生を対象とした「グローバル未来塾inひろしま」では、15才から18才の若者が、核軍縮・不拡散や紛争解決などの基本的な国際課題について学び、日英両言語で発信することを目指したトレーニングを実施している。
そして毎年8月には、世界各地の高校生が広島で、国際平和についての討議や交流等を行い、平和のメッセージを世界に発信する「ひろしまジュニア国際フォーラム」を開催している。
また、大学生・大学院生及び若手実務者を対象にした、広島-ICANアカデミーでは、核兵器国・非核兵器国、双方の若者が、オンライン研修と現地広島研修を通して、被爆の実相に触れるとともに、安全保障、外交、市民社会の取組などについて、第一線で活躍する専門家等によるレクチャーを受けている。
これらの取組の修了生のうち、少なくない人数の若者が、その後、大学院等で安全保障や核問題について学びを深め、外交官や国連職員、国際NGO職員として活躍するともに、自ら団体を立ち上げて活動をする人や、SNS等を用いて自らのコミュニティに核兵器問題を発信する人の活躍を通して、社会にインパクトをもたらしている。
広島には、国連における人材研修の専門機関である国連訓練調査研究所(UNITAR)と、(日本)国際協力機構(JICA)の支部が設置されており、これらの機関が実施する研修を通じて、各国政府や国連の若手職員をはじめとした多くの人々が広島を訪れている。世界各国において、将来外交や国防を含む国の意志決定に携わる多くの人々が、被爆地広島で、核兵器使用の結末と復興平和構築について理解を深めることは、将来の国際社会の安定に向けて極めて重要である。広島県/HOPeでは、これらの機関との協働や財政的支援など、直接・間接に連携し、次世代の専門家、政策立案者、リーダーの育成を行っている。
また、日本政府は若者の人材育成にも力を入れており、日本政府の財政的支援のもと国連が実施する「ユース非核リーダー基金」プログラムはその好例である。世界各国の数千名の応募者から選抜された若者が2年間のコースの中で核軍縮・不拡散について深く学び、この8月末に、広島と長崎に1週間のスタディ・ツアーで来訪する予定になっている。
広島では、こうした一連の取組により、年間2万人を超える国内外の人々に、人材研修事業をはじめとした学びの機会を提供している。
混迷を深める世界情勢の中にあって、またやがて到来する被爆者の声を聴くことができなくなる日を前に、次世代のリーダー育成は急務であり、その重要性が強調されすぎることはない。核兵器の維持や増強に割かれている巨額のリソースは、この困難な時代を切り開いていかなければならない、次世代人材育成のためにこそ、もっと振り向けられる必要があるし、広島はそういう若者・人材を世界へ力強く輩出していける地でなければならない。このグローバル課題に向き合うべきは、世界の一部リーダー達だけでなく、私達一人一人である。
この記事に関連付けられているタグ