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国際平和拠点ひろしま

Event Report【Event Report】国際平和シンポジウム2020 「核兵器廃絶への道」

朝日新聞社・長崎市等主催のシンポジウム「核兵器廃絶への道〜世界の危機に、歩みを止めない〜」が8月1日(土)に開催されました。シンポジウムの様子を紹介します。(報告者:広島県平和推進プロジェクト・チーム職員)

ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領のビデオメッセージ

ゴルバチョフ氏といえば,次の声明が有名であろう。

「核戦争に勝者はなく,また,核戦争は決して戦われてはならない」1)

この声明は1985年11月の米・ソ首脳会談の共同発表に記載された文章である。当時ソ連大統領のゴルバチョフ氏と米国大統領のレーガン氏による共同声明は今日も引き継がれている。

今回のビデオメッセージでゴルバチョフ氏は、「この声明を再認識することが必要」であると言われた。また、「核兵器なき世界に向けた動きを再開させる必要がある」とも述べられ、昨今の核軍備管理体制の崩壊を危惧した発言もあった。

基調講演 ウィリアム・ペリー氏

基調講演者のウィリアム・ペリー氏は、米国カーター政権で国防次官、クリントン政権で国務長官を務めていた方である。ペリー氏の基調講演について2点ほど紹介したい。

1点目はペリー氏が、自身の経験を踏まえた上で核使用のリスクについて言及したことである。

ペリー氏は冒頭、終末時計2)が終わりまで100秒に迫ったことを例に挙げ、核戦争のリスクは冷戦の最も深刻な時に匹敵すると述べた。そして、多くの人がこのことを理解しておらず核戦争は冷戦の終結とともになくなったと考えている人が大半であるとも言われた。その上で、なぜ終末時計が100秒になったかを自身の経験を踏まえ述べられた。米国では、核兵器の発射権限は大統領が持っており、大統領が発射する指令をしたら止める事はできない。仮にこれが誤った情報により大統領が発射をしたとしても止める事はできないのである。実際に、ペリー氏が政権にいた際に、コンピューターの一枚のチップの不具合により誤警報が起きたことがあった。また、オペレーションの担当者のミスも起きたことがある。コンピューターも人も完璧ではないのである。さらには政治的誤算により核戦争が始まることも危惧していると言われていた。このような誤警報や政治的誤算により核戦争が起こる可能性は十分にあり、今まで起こらなかったのは「運が良かった」だけであると述べられていた。このようなリスクを回避する唯一の方法は核兵器廃絶である。

2点目は、ペリー氏が核兵器廃絶をあきらめてはいないが、道筋が見えないと言われていた点である。実際、核兵器削減・廃絶に向けて米国政権で尽力されてきたペリー氏が今の核兵器をめぐる国際情勢を鑑みいわれていた言葉にはとても重みがある。ただ、ペリー氏は何もしていないわけではない。核使用のリスクを減らすため様々な形で世界に発信している。その一つ、 “AT THE BRINK”というポッドキャストは若い世代をターゲットとしているそうだ。

ペリー氏は最後に次のように述べられた。

「核戦略が安全保障を危険に晒しているということを理解することが必要。また国民も核兵器が自分の家族を危機に晒しているということを理解することが必要。終末時計の針を戻すためにできることをする。」

パネル討論

パネル討論は長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)の吉田センター長モデレーターのもと、ウィリアム・ペリー氏に加え、レイチェル・ブロンソン氏(米科学誌「原子力科学者会報」最高経営責任者)、藪中三十二氏(立命館大学客員教授、元外務次官)、向和歌奈氏(亜細亜大学国際関係学部講師)によるパネルディスカッションが開催された。

このパネル討論についても2点紹介したい。まず1点目は日本政府の役割についてである。日本は唯一の戦争被爆国として、世界に模範を示すことが必要であり、東アジアの平和に貢献し、非核化にコミットしていることを世界に発信することが必要という意見があった。

2点目は、核兵器、気候変動、パンデミックの三つの課題についての議論である。新型コロナウイルス感染症拡大により人々は何にお金をまわすべきかということに気づいたというコメントがあった一方で、今回のパンデミックで核軍縮の議論が停滞するようなことはあってはいけないというコメントもあった。

戦後100年まで続く平和運動をつくる

第二部は、「戦後100年まで続く平和運動をつくる」をテーマに20代、30代の若者によるディスカッションが行われた。

ヒバクシャ国際署名事務局キャンペーンリーダー林田光弘氏がコーディネーターを務め、ウェブメディア70seeds編集長 岡山史興氏、カクワカ広島共同代表 田中美穂氏、ピース・キャラバン隊前代表 光岡華子氏によるディスカッションが行われた。

このディスカッションで一番印象に残っていることは、最後の「2045年戦後100年の私はどうなっているか。」という問いに対し、「核兵器廃絶を実現したい」という力強い言葉があったことである。冒頭のペリー氏の基調講演で、核兵器廃絶への道筋が見えないという言葉とは対照的に、若い世代から25年後に核兵器廃絶という言葉がでたことは平和活動を行っている我々自身がこの道を切り開かないといけないのではないかということを再認識させられたように感じる。また、核兵器廃絶ということを夢にしないこと、核兵器を前提としている社会のあり方に疑いをもつよう(もてる)ような空気を作っていきたいというコメントもあり、日本を含む世界の定石を覆す必要があることも感じさせられた。

最後に無関心層に対して、自分事化してもらう方法について彼らの意見を紹介したい。

まずは、触れる機会を増やすことが必要ではないか。そして、核兵器という大きな話だけではなくそれぞれの立場(親、学生、会社員など)にあわせた情報発信や活動があるのではないか。伝える方法ももちろんだが何をどうして伝えたいかということも重要である。

「戦後100年まで続く平和運動をつくる」に登壇した若者の活動ページ

ヒバクシャ国際署名 ウェブメディア70seeds カクワカ広島 ピース・キャラバン隊

1 外務省、https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1986/s61-shiryou-513.htm

2 終末時計は、核戦争などによる人類の終末を午前0時と捉え、終末までの残り時間を発表している。Bulletin of the Atomic Scientists https://thebulletin.org/doomsday-clock/current-time/

朝日新聞特別サイト

朝日新聞「核といのちを考える」

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