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国際平和拠点ひろしま

Reconstruction support project カンボジア復興支援プロジェクト 事業報告(2/2)

 広島県では,2005年から2020年までの15年間にわたり,JICA草の根技術協力事業を活用し,カンボジア王国(以下,「カンボジア」という。)の復興支援,特に教育分野の復興支援に取り組んできました。

 

 

5 現地ニーズ調査

 支援を開始するにあたり,現地における課題,ニーズを調査し,その結果を受け,支援内容,地域を決定した。

6 第1フェーズ(2005年~2008年)

(1)事業名

カンボジア元気な学校プロジェクト

 

(2)目標

・初等教育における教育能力(学校運営・授業能力等)を向上させることにより,カンボジアの将来を担う人材の育成に資すること

・小学校での保健教育を行うとともに,保健センター職員の育成等を通じて,保健センターを中心とした地域の健康改善への活動を促進し,地域の公衆衛生水準の向上を図ること

 

(3)活動の相手方

シェムリアップ州プク郡ササースダム地区小学校

 

(4)主な活動内容

・専門家等現地派遣(延べ50名)

【教育分野】

 ①現地の現状詳細把握,関係機関との活動内容・日程等についての協議,調整

 ②校長,教員を対象とした研修会の実施

【保健医療分野】

 ①現地の現状詳細把握,関係機関との活動内容・日程等についての協議,調整

 ②教員,生徒の健康診断,栄養状態調査

 ③現地児童等の食生活調査

 

(5)成果

・人材育成の重要性や,課題把握に関する管理職の認識の向上を図ることができた。

・授業観察や模擬授業などの授業研究手法や教材を活用した授業スタイルを提示し,授業改善に向けた意欲の向上につなげることができた。

・教科指導に係る課題を抽出し,その課題を郡教育事務所及びクラスター内教員と共有することができた。

・「教師主導の講義形式の授業から児童主体の問題解決型の授業への転換」に向け,教員らに課題意識を持たせることができ,教材や磁石黒板を活用した指導方法等について自主的な研修が実施されるようになった。

・健康診断や校長研修会を通じ,児童の健康と安全を守る視点が学校経営の中に盛り込まれ,栄養,衛生教育に関する講習,研修実施を通じて教員の保健,衛生に関する知識と意欲の高揚が図られた。

・保健センターやアンコールチュム圏域保健事務所など,地域の保健機関との協働(健診,研修実施)を通じ,学校と保健機関の連携の契機となった。

・半年間の自主的な研修計画が立案され,定期的な教員研修会が行われるようになった。

・学校と保健医療機関との連携の促進や,学校経営における保健医療分野の視点の導入が図られた。

 

 

7 第2フェーズ(2008~2011年)

(1)事業名

カンボジアにおける小学校教員の授業能力の向上

 

(2)目標

・タケオ州教員養成校における理数科教育の授業が質的に改善されること

 ①養成校教員による理数科に関する授業の質的改善

 ②養成校の理数科教育において授業実施案等について検討を行い,それに準拠した指導の実施

 ③教員候補生の実習・実験等を用いた理数科教育に関する知識の向上

 

(3)活動の相手方

タケオ州小学校教員養成校

 

(4)主な活動内容

・専門家等現地派遣(延べ33名)

 ①算数,理科,社会科及びクメール語の授業研究

 ②教育実習の指導

・広島への研修員受入(2名)

教員養成校の算数及び理科の教員を各1名,広島県に受け入れ,授業研究手法の研修を行った。

 

(5)成果

・授業研究を通して教員養成校の教員たちに,次の点について改善が見られ,教員たちの間に継続して授業研究をしようという意欲が高まった。

①生徒の興味関心を高めるような導入

②生徒一人ひとりに考えさせるような発問や活動

③生徒の発言を活かす教師-生徒間の応答,生徒間の意見交換の活性化

・教育実習に授業研究のサイクルが取り入れられつつある。学生がグループで協力して,「指導案検討・教材作成⇒授業実施⇒協議会」が行われることで,お互いの能力を高め合う取組が行われるようになった。

・教員養成校に授業研究のサイクルが定着した。自主的な計画に基づいて,4教科で授業改善の取組が行われている。

・教員養成校管理職及び教員に授業研究による授業能力の向上の取組の有効性が認められ,事業が関与していない,クメール語,社会科においても授業研究グループが設置され,活動を開始した。

・当初は,広島からの専門家派遣時のみ授業研究が行われていたが,専門家派遣時以外でも自主的に授業研究が行われるようになった。

・広島から派遣した専門家が関与した算数,理科以外の教科(クメール語,社会科)においても管理職の主導により授業研究グループが形成され,全校的な取組として「指導案検討・教材作成⇒授業実施⇒協議会」のサイクルが定着した。

 

8 第3フェーズ(2011~2014年)

(1)事業名

タケオ州における授業研究による教員の授業能力の向上事業

 

(2)目標

タケオ州教員養成校と近隣小学校との連携を強化し,理科や算数を中心として,お互いの経験を活かした授業研究の取組が効果的に行われることにより,授業が質的に改善されること

 

(3)活動の相手方

タケオ州教員養成校及び近隣小学校

 

(4)主な活動内容

・専門家等現地派遣(延べ45名)

①現地人材の活用による小学校での授業研究実施を念頭に置いたワークショップの開催

②現地関係者を含む組織「プロジェクト運営委員会」の立ち上げ

③プロジェクトの取組について教育省教員養成局でプレゼンし,その成果についての関係者の理解・周知

・広島への研修員受入(延べ9名)

教員養成校の教員(管理職を含む)を広島県に受け入れ,授業研究の枠組み,教材研究や授業方法等の実践手法の研修を行い,最終的には研修員が実際に指導案や教材を作成して模擬授業を行った。

 

(5)成果

・近隣小学校教員の授業研究への参画と授業研究への理解・意欲が向上した。

・教員養成校において,教員養成を意識した授業改善が図られた。

・広島からの専門家不在時にも,プロジェクト運営委員会の自主的な運営が行われ,事業終了後も継続的活動を行う体制が整備された。

・教育省からの要請により,プロジェクトの成果及び課題が整理され,州内外へ普及させるための準備が開始された。

・前フェーズでは,教員養成校を対象に行われた支援の成果が,より現場レベルに波及された。

 

9 第4フェーズ(2014~2016年)

(1)事業名

カンボジアにおける持続可能な社会構築のための教育改善事業

(2)目標

カンボジアにおけるESD実施の枠組みと実践事例が示され,MoEYS(カンボジア政府教育・青年・スポーツ省)において今後のESD推進に向けた体制が整うこと

 

(3)活動の相手方

教育省,コンポンスプー州教員養成校

 

(4)主な活動内容

・専門家等現地派遣(延べ37名)

①ESDの視点に立った理科・社会科の授業研究支援

②ESDの視点に立った理科・社会科の授業づくり等に関する研修,セミナーの開催

③単元の検討及び実践

④指導案,教材の蓄積

・広島への研修員受入(延べ23名)

①専門家による指導・模擬授業

②授業研究,カリキュラムに係る研修の実施

③広島のESD,平和教育の実践事例の紹介

④広島県内の授業・授業研究の実践校訪問

 

(5)成果

・教員がESDの視点を学ぶことを通して,教員が抱く学習観,指導観,教材観に変化があった。

・プロジェクトの自律的な運営と持続的な活動に向けた体制(組織,計画)が整備された。

・授業内容の質的な改善が図られ,これまでの教員が一方的に話す講義型の授業から,児童が考え,知識を獲得していく授業へと変化を遂げた。

・MoEYSにおいて,ESDを担う中核人材の意識と能力が向上した。

・プロジェクトを実施した成果が州以外にも波及した。

・中央(教育省)との連携が強化され,今後は,教育省主導でカンボジア国内全体にESD推進体制が整うことが期待できる。

 

10 第5フェーズ(2017~2020年)

(1)事業名

カンボジアにおける持続可能な社会構築のための社会科カリキュラム・教科書開発支援

 

(2)目標

カンボジアの授業改善に有効な社会科カリキュラムが改訂され,社会科教科書開発者の能力が高まること。

※事業開始当初は,教科書開発・改訂を目標に掲げていたが,現地ニーズの変更に基づき,カリキュラム・マニュアル開発に目標変更した。

 

(3)活動場所

教育省

 

(4)主な活動内容

・専門家等現地派遣(延べ40名)

①社会科カリキュラム/教科書の構成原理及びデザイン原則に関するセミナー,ワークショップ

②カリキュラム総則,教科シラバス及び教科書間の構造化に関するセミナー,ワークショップ

③小・中学校段階における社会科の新シラバス,教科書モデル単元を作成するワークショップ

④パイロット校における教科書モデル単元の授業研究

⑤社会科シラバス及び教科書のデザイン,運用のための実用的なマニュアルの開発

・広島への研修員受入(延べ18名)

①専門家による指導・模擬授業

②マニュアル執筆に係る研修の実施

③教科書モデル単元の原案開発

④広島県内の授業・授業研究の実践校訪問

 

(5)成果

・新社会科シラバスの改訂が承認された。

・カリキュラム・教科書開発担当者の活動参加率が上昇し,知識と意識が向上した。

・新社会科カリキュラムが開発され,教育大臣の承認を受けたことで,正式な社会科カリキュラムとなった。

・教科書モデル単元が開発され,その妥当性と有効性が評価された。また,パイロット校でモデル授業が開発・実施され,授業研究により評価された。

・マニュアルが開発され,今後,研修で活用しうる公式資料として教育省に承認された。

 

11 おわりに

 本事業は,現地のニーズ調査も含めると17年間にわたって実施してきました。当初は地方の小学校の支援から開始し,最終フェーズには,国のカリキュラム・教科書開発に係るマニュアルの作成にいたりました。このマニュアルの展開により,これまで支援してきたことが全国に一律に普及できる状況となり,今後はカンボジアが自律的に復興していくことが期待されます。

 事業の最後には新型コロナウイルス感染症の影響を受けましたが,これまで無事に支援を続けることができましたのは,JICAの皆様をはじめ,県内大学等の専門家の皆様,現地関係者の皆様の御尽力によるものです。

 心より御礼申し上げます。

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