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国際平和拠点ひろしま

折り鶴をアップサイクルしたスニーカーで 平和への思いをつなぎ、広げる




捨てる代わりに新たな価値を与えてモノを再生する「アップサイクル」。品質や環境的な価値をより高めて生まれ変わらせることを指し、「創造的再利用」とも呼ばれます。

2022(令和4)年、広島平和記念公園に寄せられた千羽鶴をアップサイクルした、スニーカーが誕生。製造した広島県府中市のスニーカーメーカー、株式会社スピングルカンパニー・広報の舘上瑞紀(たちがみ みずき)さんにお話を伺いました。


広島平和記念公園などに寄せられた千羽鶴をアップサイクルしたスニーカー


 平和記念公園内の「原爆の子の像」には、平和への思いや祈りが込められたたくさんの千羽鶴が捧げられています。世界中から広島市に贈られた折り鶴を長期保存していた広島市ですが、2011(平成23)年から、折り鶴に込められた思いを昇華させる新たな取り組みに着手しました。

 折り鶴の再利用を通して核兵器廃絶と世界恒久平和を願う輪を広げ、新たな「思い」として継承する団体や個人に折り鶴を配布することにしたのです。

 この趣旨に賛同した株式会社カミーノが、折り鶴をアップサイクルし、日本国内外での平和イベントや教育の現場で、平和のシンボルとして使ってもらうために立ち上げた「ONGAESHI(恩返し)プロジェクト」もその一つ。プロジェクトの一環として、折り鶴の再生パルプを繊維化して糸にした「折り鶴レーヨン」を製造しています。

 その折り鶴レーヨンに着目したのが、株式会社スピングルカンパニー。千羽鶴を再生して平和教育活動に活かす取り組みに共感し、コラボレーション企画を立ち上げました。

株式会社スピングルカンパニーは、職人によるハンドメイドスニーカーを手掛けるスニーカーメーカー。多くの工程に手作業が必要なバルカナイズ製法による製造を、府中市の工場で続けています。同社のスニーカー「スピングルムーヴ」は、見た目のおしゃれさや履き心地はもちろん、長く履き続けられることも特長のひとつです。

「パッと見てスピングルムーヴの靴だとわかるオリジナリティあるフォルムにこだわっています。自社工場で製造加工するソールを使った『巻き上げソール』が特徴で、履き心地の良さも追求しています。丈夫で長く履ける製品を、というのが創業から変わらない精神で、特にバルカナイズ製法で製造するスニーカーは、ソールと靴本体が強固に密着するため剥がれにくく大変長持ちします。靴本体も、レザーを中心に質の良い素材を一つ一つ人の手で丁寧に縫製しています。履いているうちに靴底が摩耗したり、縫製がほどけたりすることは避けられませんが、より長く製品を使っていただくため、2013(平成25)年に修理事業を立ち上げています。」

 ほかにも、ユーズドデニムなどの素材を使った「サステナブルスニーカー」のラインナップも充実していますが、これらは、創業から続く「メーカーの責任としてできることを」という自然体での取り組みだそうです。

 その一環で再生素材を探していた際、折り鶴再生の取り組みや、再生糸について知ったことがコラボレーションのきっかけとなりました。


創業からの変わらない思いと、「ONGAESHIプロジェクト」の思いが重なりコラボレーション


「広島の企業として、平和への思いを発信するきっかけになればと。日常でスニーカーを履くという行為を通して、平和の大切さに気付いたり、思いを馳せたりしてもらいたいです」

 牛やカンガルーレザー、キャンバス地などを使用した製品を生み出すスピングルカンパニーですが、折り鶴再生糸を靴に仕上げるまでには、かなりの時間と労力を要しました。

「『折り鶴レーヨン』は繊細で、靴を作る素材としては弱いんです。試行錯誤の末、その糸と綿を混紡して、オリジナルのキャンバス生地を製造しました。普段使いしてもらえるよう使い勝手のいいキナリカラーにしましたが、ベロ上のタグや靴ひもは千羽鶴をモチーフにしているので、色柄ものの洋服にも合わせやすいと思います」


折り鶴再生パルプを繊維化する過程(押し固められた折り鶴)


 G7サミット開催を機に、広島から平和のメッセージを発信しようと、2023(令和5)年4月、第二弾を発表。サミット開催で広島へ注目が集まっていたこともあり、国内外のメディアで取り上げられました。10月には外務省が行う海外広報「日本ブランド発信事業」で、アメリカでも紹介されることになりました。折り鶴が靴になるという過去に例のないアップサイクリングは国内外で驚きを持って受け止められ、称賛されたそうです。

「第二弾では、売り上げの一部を広島県に寄付することができました。折り鶴を再生し、製品を作って得た利益を寄付としてお返しする循環が生まれ、作り手としても非常に充実したプロジェクトでした。このプロジェクトをきっかけに、引き続きこのような社会貢献活動を継続して行いたいという意思を社内で確認でき、私たちにとっても大変意義深い取り組みでした」


【お問い合わせ】

株式会社スピングルカンパニー

広島県府中市府中町74-1

https://www.spingle.jp/


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