地域や国際社会の平和と人権の環を広げる! 盈進(えいしん)学園ヒューマンライツ部
創立117年を超える広島県福山市の盈進学園 盈進中学高等学校には、人権や平和の問題に取り組むヒューマンライツ部というクラブ活動があります。2005年に人権問題を考える3つのクラブが統合して生まれた部で、現在は中学1年生に当たる1年生から、高校3年生に当たる6年生までの24人が所属。「手と手から ~中高生として地域や国際社会の平和と人権の環を広げるために貢献する~」を活動テーマに掲げ、ボランティアと人権・平和に関する調査研究を行っています。部員の皆さんに、活動内容やクラブ活動への思いなどを伺いました。
ヒューマンライツとは「人を大切にする」(人権)という意味。「平和の原点は自分とすべての人々の命を大切にすること」と考え、地域とのつながりを大切にしながら、人や町を笑顔にする活動を積極的に展開しています。主な3つの活動内容について教えてもらいました。
1つ目は、核廃絶を目指す活動です。盈進中学高等学校、沖縄尚学高等学校・附属中学校、広島女学院中学高等学校の3校が合同で署名活動を行っている「核廃絶!ヒロシマ・中高生による署名キャンペーン」では、これまでに約60万筆を国連に提出しました。
核廃絶署名提出のため広島市長を訪問(2021年10月27日)
署名活動の実績が認められ、現在までに12人の部員が外務省のユース非核特使として、ニューヨーク、ウィーン、ジュネーブの国連に派遣されました。現在6年生の酒見知花(さかみ・ともか)さんは、2019年にニューヨーク国連本部で核廃絶への想いを英語でスピーチ。「聴衆の外国人から『パワフルな若者がいるとわかってうれしい』と言っていただき、広島の中高生が活動する意味を改めて感じることができました。核兵器がある現状に悔しさ、もどかしさを感じ、私たちがもっとアプローチしていく必要があると思いました」と振り返ります。
6年生の酒見知花さん
また、被爆者の証言を自分たちで聞き取り、冊子化にも取り組んでいます。2017年には被爆者で広島県原水爆被害者団体協議会理事長を務められていた坪井直さん(2021年10月死去)にお話を伺い『にんげん坪井直~魂の叫び』の日本語版と英語版を発行。現在は、「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」顧問の森瀧春子さんからオンラインで話を聞き取り、冊子を制作している最中です。
坪井直さんの被爆体験と核廃絶への願いを一冊に。日本語版と英語版を制作
冊子制作のため、オンラインで森瀧春子さんから聞き取りを行う
2つ目は、ハンセン病問題から学ぶ活動です。約25年間、岡山県の国立ハンセン病療養所・長島愛生園を中心に、入所者との交流や園内フィールドワークを通じて、「人間が生きる意味、社会がどうあるべきか」について学んでいます。2014年には文部科学大臣賞を受賞した部員の作文が教育映画『こんにちは金泰九さん~ハンセン病から学んだこと~』になり、人権集会の場など全国で上映されています。2018年には、子ども向けの長島愛生園内マップも作成しました。
部員たちがまとめたハンセン病問題に対する文集(左)と長島愛生園ガイドマップ(右)
5年生の延泰世(のぶ・やすよ)さんは「私は幼い頃からハンセン病回復者の方と交流する機会がありましたが、苦しい体験をされてきたハンセン病回復者の方は、人への大きな優しさを持っていらっしゃいます。合宿などで現地を訪れ、直接目で見て肌で感じると、ハンセン病問題をより身近に感じられます」と話します。
5年生の延泰世さん
3つ目は、東日本大震災など自然災害で被災された方との被災者支援交流活動です。2011年から3年連続で宮城県岩沼と福島県を訪問し、被災者と交流。「私たちはこれからもずっと被災者の方々と共にあります」というテーマを代々受け継ぎ、現在も手紙や電話で交流するなど、被災地とつながっています。毎月、東日本大震災が発生した日にちである11日には、部員が学校の校門に立ち、通学する生徒に「思いを寄せること」を呼びかけます。
毎月11日を「思いを寄せる日」とし、校門に立って通学する生徒に活動を呼びかける
また、阪神淡路大震災で息子を亡くされた加藤りつこさんと長年交流を続けています。「部員たちは親しみを込めて、りつこお母さんと呼ばせてもらっています。私たちの講演活動にも駆けつけてくださるし、5年生は来年受験なのでカツを入れてくれます(笑)」と5年生の伊藤咲夢(いとう・さくら)さんが教えてくれました。
5年生の伊藤咲夢さん
ほかにも、障がい者施設や人権講座での手話歌の披露、福山市にあるホロコースト記念館のボランティアガイドなど、すべての活動に対し平等に心を込め、中高生だからこそできる社会貢献活動を精力的に行っています。
ホロコースト記念館でのボランティアガイドで使用する手作りの資料
最後に入部して得たこと、将来生かしていきたいことについて話してくれました。
「平和への思いや社会問題に対する関心、視野が広がりました」
「日々人の温かさを感じながら貴重な体験をしています。同情ではなく人に寄り添うということがわかりました」
「無関心でいることの恐ろしさ、社会問題の複雑さを学びました。卒業後は一人の人間として、自分にできることをできる場所から発信していきたいです」
「被爆者やハンセン病回復者の方の思いを改めて深く知ったことで、自分がいかに幸せなのかと思うようになり、自分の価値観も大きく変わりました」
「ハンセン病問題も核廃絶も、次の世代へ伝えなければいけないこと。平和活動には今後も関わっていきたいですし、部で学んだことは人生の軸になると思います」
(学校紹介)
盈進学園 盈進中学高等学校 ヒューマンライツ部
https://www.eishin.ed.jp/club/hrc/
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