平和を考える映画⑤ 『とべない風船』
(C)buzzCrow Inc.
年間200本以上の映画を上映している広島市中区の映画館「八丁座」「サロンシネマ」を運営する序破急の方々に、「今観ておきたい平和を考える映画」をテーマに、おすすめの作品を紹介してもらいます。
『とべない風船』は、2018年7月に発生して広島県内にも甚大な被害をもたらした西日本豪雨を背景にした映画です。
豪雨災害で家族を失い、瀬戸内海の島で漁師をしながら孤独に暮らす主人公が、人生に迷い故郷に帰ってきた元教師の女性や、共に島で暮らす人々と心を通わせていくうちに、少しずつ前向きに人生を歩み始める姿が、瀬戸内の美しい多島美を舞台に描かれています。
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西日本豪雨を間近で体験した広島市出身の宮川博至監督は、「広島で生活しているからこそ、豪雨災害をテーマにした映画を作らなくてはならない」と決意し、呉市・下蒲刈島・倉橋島・江田島市などオール広島ロケによって初長編作品を作り上げました。
被災体験によって閉ざされた心を徐々に開いていく主人公を東出昌大さんが熱演しています。主人公に寄り添いながら自らも新たな道を模索していくヒロインを演じるのは、『ドライブ・マイ・カー』に続いての広島ロケとなる三浦透子さん。小林薫さん、浅田美代子さんが共演しています。
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近年多発している地震や豪雨などの自然災害や、世界各地で起きている内戦や戦争によって被害に見舞われた地域には、まずは取り急ぎ食糧や医療などの迅速な人道支援が必要です。しかし、時が経過して建物やライフラインは復興できたとしても、心に傷を負った人が再び平穏な日常生活を取り戻すことは簡単ではありません。被災直後の恐怖や悲惨な光景が記憶に焼きついて離れなかったり、大切な人や家屋を奪われた喪失感から立ち直ることができなかったり、その後も心理的な影響に苦しんでいる人も多いことでしょう。
西日本豪雨からも4年が経ちましたが、この作品は、災害の風化に警鐘を鳴らすことも一つのテーマとなっています。誰もが平和に暮らす世界を実現するには、戦争や災害を未然に防ぐことが第一ですが、多くの人々が平和な暮らしを奪われてしまった場合には、その時点での早急な被災地への支援活動に加え、その後の長期的な被災者の心のケアも必要です。被災者の苦悩に心を寄せて温かく見守っていくためには、災害や戦禍の記憶を忘れ去ってはいけません。
■タイトル:とべない風船
■2022年12月 広島先行公開(八丁座 2022年12月1日~)
2023年1月 新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
監督・脚本:宮川博至
出演:東出昌大、三浦透子、小林薫、浅田美代子
原日出子、堀部圭亮、笠原秀幸、有香、中川晴樹 柿辰丸 根矢涼香 遠山雄 なかむらさち
プロデューサー:奥野友輝
協力プロデューサー:鈴木剛
助監督:濱本敏治
撮影:亀井義紀
照明:太刀掛進
美術監督:部谷京子
録音:古谷正志
音楽:菊地智敦
製作:buzzCrow Inc.
配給:マジックアワー
2022年/日本/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/104分
公式サイト:https://tobenaifusen.com
八丁座
広島市中区胡町6-26 福屋八丁堀本店8階
TEL:082-546-1158 FAX:082-546-1159
サロンシネマ
広島市中区八丁堀16-10 広島東映プラザビル8階
TEL:082-962-7772 FAX:082-962-7773
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