平和を考える映画③ 『クレッシェンド 音楽の架け橋』
© CCC Filmkunst GmbH
年間200本以上の映画を上映している広島市中区の映画館「八丁座」「サロンシネマ」を運営する序破急の方々に、「今観ておきたい平和を考える映画」をテーマに、おすすめの作品を紹介してもらいます。
長期化の様相を呈しているウクライナ情勢をはじめ、世界では未だ解決していない紛争が数多くあります。中でも“世界で最も解決が難しい紛争”とも言われるのがパレスチナ問題です。民族的・宗教的に異なるアラブ人とユダヤ人によるパレスチナの地をめぐる争いは、開戦から70年以上たった現在も多くの民間人が犠牲となり、解決の糸口が見えてきません。
9月16日から22日まで八丁座で上映する『クレッシェンド 音楽の架け橋』は、紛争が続くパレスチナとイスラエルの双方から若者たちを集めてオーケストラを編成し、平和コンサートに挑んでいく感動作です。世界的指揮者ダニエル・バレンボイムが中東の障壁を打ち破ろうと設立し、現在も世界各地で活動を続けている実在のユダヤ・アラブの混成楽団「ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団」をモデルにしたといいます。
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分断や憎しみを乗り越えて、若者たちが互いの音に耳を傾けながら、同じ目標に向かって一つの音楽を奏でていく姿は、世界で起きている紛争に一筋の希望を与えてくれます。ラヴェルの『ボレロ』、パッヘルベルの『カノン』、ドヴォルザークの『新世界より』といった名曲の数々が、言葉を越えて心をつなぐ重要な役割を果たしています。
生まれた時からパレスチナ問題に強い関心を持つイスラエル出身のドロール・ザハヴィ監督は、ありのままの現実をただ映し出すのではなく、前進するためには何ができたかを映画を通して問いかけたと言います。多くの観客の心に響き、世界の映画祭で観客賞を受賞している本作ですが、残念なことに舞台となっているイスラエルとパレスチナでまだ上映できていません。
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この春に八丁座で上映していた『ウエスト・サイド・ストーリー』も、プエルトリコ系の移民とヨーロッパ系の移民が激しく対立する1950年代のニューヨークを舞台に、敵対関係を超えて恋に落ちる若者を描いたミュージカルでした。往年の名作『ウエスト・サイド物語』をこの時代にあえてリメイクしたスピルバーグ監督は、「人種間の隔たりが観客のすべてが直面する問題となっている現在、どんな隔たりも埋める愛がある」ことを伝えたかったと言います。
コロナ禍や格差社会により世界で更なる分断が進んでいると言われていますが、国家や民族の単位では激しく対立する関係であっても、ひとりの人間同士として対話を続ければ、互いの立場を尊重して理解しあうことができるのではないでしょうか。
■タイトル:「クレッシェンド 音楽の架け橋」
■2022年1月28日(金)から全国順次公開
八丁座9月16日~22日
監督:ドロール・ザハヴィ
脚本:ヨハネス・ロッター、ドロール・ザハヴィ
出演:ペーター・シモニシェック(『ありがとう、トニ・エルドマン』)
ダニエル・ドンスコイ (『ザ・クラウン』『女王ヴィクトリア 愛に生きる』)
サブリナ・アマーリ
2019年/ドイツ/英語・ドイツ語・ヘブライ語・アラビア語/112分/スコープ/カラー/5.1ch/
原題:CRESCENDO #makemusicnotwar/
日本語字幕:牧野琴子/ 字幕監修:細田和江
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/crescendo/
八丁座
広島市中区胡町6-26 福屋八丁堀本店8階
TEL:082-546-1158 FAX:082-546-1159
サロンシネマ
広島市中区八丁堀16-10 広島東映プラザビル8階
TEL:082-962-7772 FAX:082-962-7773
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