「以和為貴」 書から発する世界平和
毎年9月21日は、非暴力と世界停戦の日として、世界の国々に敵対行為の禁止を国連が呼びかける「国際平和デー」に定められています。広島の平和記念公園では世界平和や新型コロナウイルス感染症の終息を願って、書道家が揮毫(きごう)を行いました。
午前11時から、平和記念公園内にある平和の鐘の前で『9.21世界平和の祈り』と題された書のパフォーマンスが行われました。呉市出身の書家・鳥生春葉(とりゅう・しゅんよう)さんが、芸能伝道者であり奏者でもある鼓谷義之(こだに・よしゆき)さんの篠笛のたおやかな音色をバックに、思いを込めて筆を走らせていきます。例年ならば県内の高校の書道部員と共に行われるのですが、今年は緊急事態宣言下ということもあり、二人での揮毫となりました。
実はこの日、広島の平和記念公園だけでなく、長崎の平和記念公園や全国の護国神社、東京の靖国神社、そしてメキシコでも『9.21世界平和の祈り』と題して、世界平和を願う書のイベントが行われました。
「この催しは、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロをきっかけに起こった、世界中のテロに対抗するため、2017年から開催しています。愛と平和、そして循環、調和、寛容という和の精神を書を通して伝え、世界から戦争や憎しみをなくしていくことが大きな目的です」
この『9.21世界平和の祈り』を主催する、和プロジェクトTAISHIの宮本辰彦(みやもと・たつひこ)さんが話してくれました。
「今年の靖国神社では、5ヵ国(ウクライナ、ギニア共和国、サンマリノ共和国、ミャンマー連邦共和国、レバノン共和国)の駐日大使も参加され、平和メッセージを寄せ書きしていただきました。石川県金沢市にある石川護国神社では、日本人書家のお弟子さんである外国人の方が筆を執り、奉納揮毫されました。書を通して和の精神を伝え、たくさんの外国の方々に参加いただける催しを続けていくことが一つの目標です」
また、パフォーマンスを行った鳥生さんは、世界にメッセージを発信しながら、次の世代に繋げていくことも大切だと話します。
「私の祖父は呉にあった海軍関係に勤務し、祖父の兄が海軍の軍人だったため、祖父はもちろん、父や叔父などからも、戦争の話を聞かされて育ちました。母方の祖母も、呉の空襲から防空壕に逃げたときことをいつも話していました。広島に生まれ育った者の責務の一つとして、戦争を知っている世代の経験を伝えていくために、私には何ができるだろうと考えたとき、書を通じて世界の人たちに何か小さなことでも感じていただけるのではないかと思い、筆を執っています」
昨年の国際平和デーでは、広島井口高校の書道部の皆さんと一緒にパフォーマンスを行いました。
「若い方たちと一緒に、書を通して世界の平和を考え願うということは、私にとって大変貴重な体験でしたし、何より元気をもらえました。生徒さんたちにも、素晴らしい時間を過ごしていただけたと考えています。今年は残念ながら実現することができませんでしたが、世界の方々が広島を訪れることができる日が来たら、日本の若い人たちはもちろん、各国のたくさんの人たちが書に触れ、平和を願うイベントが実現できたらいいなと思います」
力強く、そして鳥生さんの願いが込められ書き上げられたのは「以和為貴(和をもって、貴しとなす)」という、聖徳太子が十七条憲法の第一条で伝えたとされる言葉。
「平和、人、人の思いなど、すべてが尊いもの。それぞれを尊重し、尊敬し合いながら生きていくことがとても大切だという意味が込められたお言葉です。今年はちょうど聖徳太子没後1400年といわれています。世界中の方々が、立場は違ってもお互いに思いやり、平和を願って、さらに力を合わせてコロナに打ち勝つことを願いながら書かせていただきました」
鳥生春葉(とりゅう・しゅんよう)
呉市出身の書家。広島を拠点に全国、世界各国で書を通して活動。神社仏閣への奉納揮毫(ほうのうきごう)を行うなど、文字の神秘性や言葉の力(言霊)を研究し、「心に響く書」「生きる書」を発信している。
HP:http://www.anniversary.co.jp/r-fudehana/
Facebook:https://www.facebook.com/%E9%B3%A5%E7%94%9F%E6%98%A5%E8%91%89-Toryu-Shunyo-330780297362879/
和プロジェクトTAISHI
和の精神(循環、調和、寛容)を、書を通して伝え世界平和の実現を呼びかけていくイベントを主催。毎年2月11日、2月23日、4月3日、9月21日を中心に全国各地で平和揮毫を開催している。
HP:https://www.tatsu.ne.jp/wa/
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