当サイトを最適な状態で閲覧していただくにはブラウザのJavaScriptを有効にしてご利用下さい。
JavaScriptを無効のままご覧いただいた場合には一部機能がご利用頂けない場合や正しい情報を取得できない場合がございます。

国際平和拠点ひろしま

広島アンデルセンが「ひろしま街づくりデザイン賞」大賞に 被爆建物の建て替えと被爆壁の再設置

広島本通商店街にある「広島アンデルセン」は、広島市がリストに登録する被爆建物の一つ。2020年のリニューアルで、被爆建物の意匠や外壁の一部を保存しながら建て替えた点などが評価され、2022 年の「第18回ひろしま街づくりデザイン賞」の大賞に輝きました。建て替えによって改めて見えてきた市民の願い、その声に応えようと奮闘したアンデルセングループの思いについて、同グループ広報を担う株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所の清川秀樹(きよかわ・ひでき)さんにお聞きしました。

戦後間もない1948年、創業者である高木俊介(たかき・しゅんすけ)と妻の彬子(あきこ)が、パンで「食卓に幸せを運ぶ」という思いを実現するため、比治山のたもとでタカキベーカリー(現・アンデルセングループ)を創業。1952年には「パンをいかにおいしく食べていただくか」をテーマに広島本通商店街にパンホールを開き、1967年に今の位置に広島アンデルセンをオープンさせました。

広島アンデルセンの元の建物は、1925年に三井銀行広島支店として建てられたもので、その後は帝国銀行広島支店に名前を変え、1945年8月6日を迎えます。爆心地から約360mに位置していたため、爆風によって建物は大破、さらに火災によって全焼。大きな被害を受けながらも改修され、再び銀行として使用されていました。


1925年 竣工時の三井銀行広島支店

その後、縁あってこの建物の購入を決めた高木俊介は、使い方のヒントを求めてローマとミラノを訪問。そこで見た「歴史的な建物を活かしながら、その中で新しい商いをする」というスタイルに感動し、当初は全改修する話もあったようですが、「歴史ある建物の力を借りよう」と決めたのです。被爆建物だから残すというよりは、「本物のパンとそれを楽しむ食文化を提供するのにふさわしい建物」との考えがあったようです。

オープンして間もないころの広島アンデルセン(1967年)

オープンに向けて準備を進める中で、ローマで菓子店に立ち寄った際に魅かれて購入したショーケースが、店内に置けないことが判明しました。銀行として建てられた重厚な建物には柱が多く、それを構造的に取り除くことができなかったのです。そこで「何か別の方法があるはずだ」と皆で考え、知恵を出した結果、パンを棚に並べてお客さまに取ってもらうセルフサービスを始めることにしました。この新しいスタイルは楽しいと評判を呼び、あっという間に日本中に伝わりました。これらのことをはじめ、この建物の力を借りて、「食卓に幸せを運ぶ」という夢を実現していったのです 。

日本で初めてパンのセルフサ―ビス方式を導入

その後は、8階建ての新館の増築やリニューアルを繰り返しながら大切に使い続けていましたが、竣工から90年近くを経た建物の安全性を第一に考え、建て替えを決断しました。閉店を前に店内に置いたノートには、たくさんのメッセージが寄せられました。「子どものころ母に連れられてきました。娘はここで結婚式を挙げました。」と三世代で通ってくださっているお客さまの声など、我々が思っている以上に、広島アンデルセンと建物に対する市民の皆さまの思いが強いことが分かったのです。そのメッセージは今も大切に残しています。

お客さまからたくさんのメッセージが寄せられた

2016年1月に旧建物での営業を終え、新建物が完成したのは2020年8月。約4年半かかっています。その期間の多くは、保存のための調査・検討をしていました。この建物は、私たちがパンのある暮らしを伝え続けてきた舞台です。素晴らしいお客さまが来てくださることで、従業員も成長させていただきました。広島アンデルセンは広島の方に育てていただいたお店ですので、私たちを応援してくださっている皆さまの「残してほしい」という声に応えたくて、その方法を探し続けていましたが、検討の結果、被爆当時のまま残る旧建物東側2階の約50㎡分を切り出し、新店舗の外壁に再設置することにしました。さらに、この建物が建てられた1925年当初にあったコリント式の4本の円柱も再現しました。

建て替えられた店舗の東側。2階部分に被爆壁を設置

本通入口側に設置されている被爆建物のプレート


こうした思いが評価されたこの度の受賞は、我々へのエールだととらえています。当グループを応援してくださっている皆さまに、これからも誇りに思っていただけるようにチャレンジを続けていきます。

現在、当グループは国内だけでなく海外でも事業をしていますが、創業の地である広島を最も大切にしています。世界のヒロシマにあるお店として、世界中から広島を訪れる皆さまに「広島といえば広島アンデルセン」と言っていただき、心に刻んでいただけるようなお店を目指してまいります。


広島アンデルセン

広島県広島市中区本通7−1

 082-247-2403

https://www.andersen.co.jp/hiroshima/

この記事に関連付けられているタグ