広島から平和を考える「知」の拠点広島市立大学 広島平和研究所
広島平和研究所は、1998年に設立された広島市立大学の附属研究機関です。世界で最初に核兵器により被爆し、廃墟から復興した都市・広島の経験に基づく「平和研究」と、平和学研究科で学ぶ大学院生への「教育」、そして研究した内容を地域および国内外に発信する「地域・社会貢献」を3本柱に活動を続けています。
所長の大芝亮(おおしば りょう)特任教授によると、現在、同研究所に所属する研究者は、アメリカ、シンガポール、中国、韓国というように約1/3が外国籍。研究分野も大芝教授の国際関係論のほか、憲法学、国際法、科学技術史、日本近現代史、歴史社会学など多岐にわたります。
広島平和研究所 所長、特任教授の大芝さん。国際政治に関する研究を行っている
「研究所の教員それぞれアプローチが多様であり、とても刺激になります。広島で実際に被爆を経験した人々の声や平和への思いから学んで上で平和を議論することには大きな意味があります。学問においてフィールドワークは非常に重要であり、広島は平和学を学ぶための重要なフィールドです。」(大芝教授)
なぜ、アメリカは広島と長崎に原爆を投下したのか。原爆投下は被爆地の人々に、そして人類に、いかなる惨禍をもたらしたか。こうした問題を、国際法や国際関係論、社会学や歴史学などのアプローチによって徹底して研究することは、被爆の経験・記憶を継承しこれからの戦争勃発を防ぎ、核兵器を廃絶するという目標を実現するために不可欠の重要なことと、大芝教授は語ります。一方で、同研究所に所属し、気候変動を専門に研究を行っている沖村理史(おきむら ただし)教授は、人類が目の前に迫る温暖化という未曽有の危機を止められないことと、戦争という絶対悪を止められないことには共通点があるのではないかと考えています。
「研究分野やアプローチは多様でも、私たちには共通の関心事があります。被爆の記憶をどう継承していくか、それをどう核兵器の廃絶に結び付けていくかということです。広島から平和を考え、世界に発信していくことが重要だと思っています。」(大芝教授)
大学院の学生には、広島で子どもたちに平和を教える高校の教員、JICAなど政府機関での勤務経験者、地方公務員、ジャーナリストなど、多彩な社会経験をした上で、平和をきちんと学びたいと志した人が多い。留学生も多く、アメリカや中国、韓国、ミャンマーなどの学生が、それぞれの視点を持って議論しています。
「学生たちの議論からは、私たちも多くのことを学んでいます。国を越えて、同じ学生という立場で平和について議論できる場があることには、大きな意義があると感じています。」(沖村教授)
広島平和研究所 教授の沖村さん。国際的な環境問題に関する研究を行っている
研究の成果は、国際シンポジウムや研究フォーラムで発表するほか、『広島平和研究』、『広島平和研究所ブックレット』などの出版物、ウェブサイトやニューズレターなどで国内外に精力的に発信しています。2023年10月20日から11月23日には、無料のオンライン連続市民講座として『広島からウクライナ戦争を考える』を実施。ウクライナ戦争と核問題について、広島平和研究所所属の教授陣だけでなく、他大学からも研究者を招いてそれぞれの視点で語りました。
これまで広島平和研究所で発行した出版物の数々
また、海外からの若手研究者を広島に招く短期訪問研究プログラムにも積極的に取り組んでいます。広島の地に一定期間滞在し、広島平和研究所の研究者や学生たちと議論を交わすことで、海外の研究者たちは大いに刺激を受けて帰国するそうです。
「広島での私たちの研究が、学生や海外の研究者の中に種を撒き、あちこちで芽吹いて花開いてくれるとうれしいです。そうして広島の被爆経験を後世に生かしていくことが、私たちの願いです。」と沖村教授。
広島の人々の歴史と想いを受け継ぐ「知」の拠点として。広島から世界に向けて、広島平和研究所の挑戦は続きます。
広島平和研究所
広島市安佐南区大塚東3-4-1広島市立大学内
082-830-1811
https://www.peace.hiroshima-cu.ac.jp/
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