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国際平和拠点ひろしま

核兵器のない世界へ向けて(ひろしまレポート2020年版小冊子)

核兵器の現状

~世界の核兵器は13,865発、9カ国が保有と推定〜

第二次世界大戦末期の1945年7月に米国が世界初の核実験に成功し、その翌月、広島 (8月6日)と長崎(8月9日)に原子爆弾が投下されました。以来、70年以上にわたって核兵器は実戦では使用されていませんが、現在、米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタンが核兵器を保有し、イスラエルの保有も確実視されています。さらに、2000年代に入ると北朝鮮が核実験を実施し、核兵器の保有を公言しています。

核兵器保有数の推移

米国とソ連の核軍拡競争が繰り広げられた冷戦期、ピーク時には地球上に7万発もの核兵器が存在しました。その数は冷戦の終結とともに削減されてきましたが、2019年現在、依然として13,865発の核兵器があると考えられています。近年は削減のペースが鈍化し、また中国、インド、パキスタンの核兵器保有数は、ここ数年にわたって、それぞれ年10発程度のペースで増加していると推定されています。北朝鮮の核兵器も増加傾向と推測されています。

また、いずれの核兵器国/核保有国も、核兵器と、これを搭載するミサイルなど運搬手段の性能・威力の向上(近代化)を続けています。そのなかには、核爆発を伴わない未臨界実験やコンピュータ・シミュレーション、さらには核爆発実験を実施する国もみられます。

国際的・地域的な安全保障環境が不安定化するなか、核兵器国/核保有国は国家の安全を守るうえで,核兵器による抑止力を働かせることが依然として必要不可欠であると位置づけ、その役割を改めて重視しています。「核兵器のない世界」を実現するためには、国際的・地域的な安全保障環境を改善し、安全保障における核兵器の役割を低減していくことが必要です。同時に、核兵器の使用は非人道的な結末をもたらすことを踏まえ、被爆の実相を伝えていくこと、核兵器は廃絶されるべき兵器であるとの規範を構築していくことといった取組も重要です。

核兵器を巡る国際的枠組み

核兵器不拡散条約(Nuclear Non-Proliferation Treaty:NPT)

核兵器不拡散条約(NPT)は、冷戦期に、核兵器の廃絶に関する交渉が進まず、他方で核兵器の新たな取得を模索する国、あるいは核兵器を製造する潜在能力を持つ国が増えるなかで、まずは核兵器の拡散を防止することが核兵器の廃絶につながるとの考えのもとでつくられました。核不拡散、核軍縮、原子力の平和利用を三本柱とする、核不拡散体制の中心的存在です。

NPTが1968年に成立し、1970年に発効した後も、核兵器の取得を企てる国はなくなりませんでした。冷戦終結直後に、南アフリカが核兵器を廃棄して非核兵器国としてNPTに加盟しましたが、冷戦期から核兵器を保有している(とみられる)インド、パキスタン、イスラエルは、現在もNPTに加盟しておらず、これらの国々が早期に非核兵器国としてNPTに加盟することが求められています。また、北朝鮮は1985年に NPTに加入しましたが、2003年に NPTからの脱退を宣言しました(NPT締約国全体としては、北朝鮮の条約上の地位に関する解釈を明確にしていません)。

NPT運用検討会議

NPTでは、条約が発効してから5年ごとに運用検討会議が開催され、締約国が核軍縮や核不拡散などをどのように実施してきたかを見直し、今後採るべき施策を議論してきました。これまで最終文書が採択できるかが会議の成功・失敗の評価を分けてきました。2015年に開催されたNPT運用検討会議では、核軍縮問題(特に核兵器の非人道性や法的禁止)と、中東の核問題を巡り、会議参加国の間で激しいやり取りが交わされ、最終文書の採択に失敗し、締約国の意見の相違が鮮明になりました。

核兵器を巡る最近の動向

核兵器のない世界にむけたアプローチ

「核兵器のない世界」という目標に公然と反対する国はありません。これを実現するための様々なアプローチが核兵器国・非核兵器国の双方から提唱されています。

 

核軍縮を進める効果的な措置として、すべての場所での核爆発実験の禁止を定める「包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効」、核兵器の製造に必要な核分裂性物質の生産禁止を定める「兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の交渉開始」、「新STARTに続く核軍縮条約の交渉開始」、「非核兵器地帯の強化」、「核兵器の先行不使用」、「透明性の向上」、「警戒態勢の解除」などがあります。


これまで、米国、ロシア、英国、フランス、中国の5核兵器国は、これらの核軍縮措置をひとつずつ達成していく「ステップ・バイ・ステップ・アプローチ」を主張してきました。また日本など米国と同盟・友好関係にある非核兵器国は、核兵器国と非核兵器国が協力して着実に核軍縮措置を積み上げていく「前進的アプローチ」の重要性を述べてきました。どちらのアプローチもNPT体制を基礎として、核軍縮と安全保障上の要請とのバランスをとりつつ、実行可能な措置を着実に進めることが、核兵器のない世界に向けた最も効果的かつ現実的な道程だとしています。

しかしながら、CTBTは1996年に条約が署名されてから20年以上経過しましたが、いまだ発効の目途はたっていません。FMCTも、やはり20年以上にわたって、条約の交渉開始にすら至っていません。核兵器削減の取組も停滞を続け、逆行しかねない状況にあります。こうしたなかで、多くの非核兵器国と市民社会が新たな核軍縮アプローチとして推進したのが「核兵器禁止条約」制定でした。

核兵器禁止条約(Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons:TPNW)

核兵器禁止条約(TPNW)は、核兵器禁止の法的規範の確立を目指して、国連で開催された交渉会議の結果、2017年7月に122カ国の賛成で成立しました。TPNW は核軍縮の歴史において、非核兵器国と市民社会が積極的に主導して条約策定プロセスが進んだ初めての事例です。条約では、締約国による核兵器の開発、実験、製造、取得、保有、使用・威嚇を法的に禁止しています。

【署名/批准】

2017年9月20日に署名開放されて以降、署名/批准国は着実に増加し、2019年末時点で、81カ国が署名、34カ国が批准しました。TPNW は50カ国の批准により発効します。

【課題】
すべての核兵器国と核保有国、また日本を含め米国と同盟関係にある非核兵器国(核傘下国) は、TPNWに署名していません。核兵器国は、国家安全保障上、核兵器が直ちに禁止されることに反対しています。また核傘下国は、核兵器を保有する国々を取り込む形で核軍縮を進めるべきだと主張しています。

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