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国際平和拠点ひろしま

(10) 核兵器削減の検証

核軍縮に関する検証は、米露二国間の新 START のもとで、両国による戦略核戦力 削減に対して実施されており、両国は条約 発効以来、条約で規定された回数の現地査 察を毎年実施してきた210。

米国が 2014 年に立ち上げた IPNDV では、 28 の参加国(並びに欧州連合(EU)及び バチカン市国)211により、核弾頭の解体、 並びに解体された核弾頭に由来する核物質 の検証方法・技術に焦点を当てた検討が続 けられている。中国及びロシアはフェーズ 1 にはオブザーバー参加していたが、フェ ーズ 2 には参加していない。

2015~2017 年のフェーズ 1 に続く 2018 ~2019 年のフェーズ 2 では、将来の核軍縮 検証を支援するために、効果的かつ実践的 な検証オプションの理解を深め、演習やデ モンストレーションなどの目に見える活動 を通じてその任務を示していくことが目標 に掲げられ212、以下の 3 つの作業部会のも とでの議論が進められた。

➢ 作業部会 4:核兵器に関する申告につ いての検証

➢ 作業部会 5:兵器の削減についての検 証

➢ 作業部会6:検証の技術的課題

2019 年 12 月には、第 7 回全体会合がカ ナダの主催によりオタワで開催され(24 カ 国が参加)、フェーズ 2 が終了した。フェ ーズ 2 のサマリー・レポートでは、核兵器に関する申告の検証、核兵器削減の検証、 並びに検証技術といった課題が取り上げら れた213。フェーズ 3 の最初の会合はジュネ ーブで 2020 年 3 月に開催される214。

2016 年に採択された国連総会決議に基づ き、核軍縮の促進における検証の役割の検 討を目的として 2018 年 5 月に設置され、 25 カ国の政府関係者215が参加した「核軍縮 検証に関する国連政府専門家会合(Group of governmental experts to consider the role of verification in advancing nuclear disarma- ment)」は、3 回の会議を経て、コンセン サスで報告書を作成し、2019 年 5 月にこれ を公表した。報告書では、政府専門家会合 (GGE)に参加した専門家が、核軍縮の促 進は継続的な取組であり、検証を含むあら ゆる側面について、引き続き国際的な検討が必要であると結論付け、GGE の報告を考 慮に入れて、核軍縮を進める上での検証の 役割に関するさらなる作業を検討することを勧告した216。

2019 年 NPT 準備委員会では、2015 年に 開始された核軍縮検証に関する英国、米国、 ノルウェー及びスウェーデンの 4 カ国パー トナーシップについて、英国が代表してス テートメントを発表し、2017 年に実施した 核軍縮検証に関する演習で、検証技術・手 続きの開発、多国間査察チームの機能など について教訓を得たことなど進捗状況を報 告した217。ノルウェーは、IPNDV など核軍 縮検証に関連する活動に関心を持つすべて の国の参加を確保すべく、国連軍縮部のも とに核軍縮検証基金の設置を呼び掛けた218。 また、NAM 諸国は、核兵器計画から除去 される核分裂性物質に適用される検証措置の発展などについて、IAEA の関与を求め た。NAM 諸国はさらに、核兵器国に対して、非核兵器国と同内容の包括的保障措置 を受諾すること、核軍縮ステップを監視・ 検証するための常設委員会を 2020 年 NPT 運用検討会議で設置することを求めた219。


210 The U.S. Department of State, “New START Treaty Inspection Activities,” https://www.state.gov/new-start- treaty-inspection-activities/.

211 3 核兵器国(フランス、英国及び米国)のほか、アルゼンチン、豪州、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、フ ィンランド、ドイツ、ハンガリー、インドネシア、イタリア、日本、ヨルダン、カザフスタン、韓国、メキシコ、 オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、スウェーデン、スイス、トルコ、UAE。

212 第 1 フェーズでは、今後検討すべき具体的分野として、幅広い核軍縮プロセスのなかにおける、また核兵器廃 棄のより特定の監視・査察を補完するものとしての申告、査察プロセスを通じたデータの取り扱い、インフォメー ションバリア技術、特殊核分裂性物質及び高性能爆薬の測定を可能にする技術、核兵器テンプレートの開発、並び に有望な技術及び手順の実験及び訓練が挙げられていた。

213 “Phase II Summary Report: Moving from Paper to Practice in Nuclear Disarmament Verification,” IPNDV, December 2019.

214 “IPNDV Phase II Concludes in Ottawa,” IPNDV, January 9, 2019, https://www.ipndv.org/news/ipndv-phase-ii- concludes-in-ottawa/.

215 参加国はブラジル、チリ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、日本、カザフスタン、メキシコ、 オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、パキスタン、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スイス、英国、米国など。

216 A/74/90, May 15, 2019.

217 “Verification Statement on behalf of ‘the Quad’: United Kingdom, Norway, Sweden and the United States,” Cluster 1, 2019 NPT PrepCom, May 2, 2019. 英国及び米国、並びに英国及びノルウェーが、それぞれ共同で進めてきた技 術開発については、『ひろしまレポート 2017 年版』などを参照。

218 “Statement by Norway,” General Debate, 2019 NPT PrepCom, May 1, 2019.

219 NPT/CONF.2020/PC.III/WP.14, March 21, 2019.

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