序章 (1) 調査、分析及び評価する具体的措置
『ひろしまレポート2021 年版』では、以下のような文書に盛り込まれたものを軸に、調査、分析及び評価する具体的措置として、65 の評価項目(核軍縮:32 項目、核不拡散:17 項目、核セキュリティ:16項目)を選定した。
➢ 2010年NPT運用検討会議で採択された最終文書に含まれた行動計画と1995年中東決議の実施
➢ 2015年NPT運用検討会議の最終文書最終草案
➢ 核 不拡散・核軍縮国際委員会(ICNND)の提言
➢ NPT運用検討会議及びその準備委員会で日本が提出した提案
➢ 平和市長会議(2013年に「平和首長会議」に改称)の「核兵器廃絶の推進に関する決議文」(2011年)
評価項目の選定にあたっては、核軍縮、核不拡散及び核セキュリティの推進・強化に重要な役割を果たし、「核兵器のない世界」に向けた取組の検討に資すること、並びに客観的な分析及び評価が可能で、各国の取組の状況・態様を明確化することなどを基準とした。評価項目は、以下のとおりである。
1. 核軍縮
(1) 核兵器の保有数(推計)
(2) 核兵器のない世界の達成に向けたコミットメント
A)日本、新アジェンダ連合(NAC)及び非同盟運動(NAM)諸国がそれぞれ提案する核軍縮に関する国連総会決議への投票行動
B)重要な政策の発表、活動の実施
C)核兵器の非人道的結末
(3) 核兵器禁止条約(TPNW)
A) TPNW 署名・批准
B)核兵器の法的禁止に関する国連総会決議への投票行動
(4) 核兵器の削減
A)核兵器及び核兵器を搭載可能な運搬手段の削減
B)核兵器の一層の削減に関する具体的計画
C)核兵器能力の強化・近代化の動向
(5) 国家安全保障戦略・政策における核兵器の役割及び重要性の低減
A)国家安全保障戦略・政策、軍事ドクトリンにおける核兵器の役割及び重要性の現状
B)先行不使用、「唯一の目的」、あるいは関連ドクトリンに関するコミットメント
C)消極的安全保証
D)非核兵器地帯条約議定書への署名・批准
E)拡大核抑止への依存
(6) 警戒態勢の低減、あるいは核兵器使用を決定するまでの時間の最大限化
(7) 包括的核実験禁止条約(CTBT)
A)CTBT 署名・批准・実施
B)CTBT 発効までの間の核爆発実験モラトリアム
C ) 包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会との協力
D)CTBT 検証システム構築への貢献
E)核実験の実施
(8) 兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)
A)FMCT に関する即時交渉開始に向けたコミットメント、努力、提案
B)兵器用核分裂性物質の生産モラトリアム
C)検証措置の開発に対する貢献
(9) 核戦力、兵器用核分裂性物質、核戦略・ドクトリンの透明性
(10) 核兵器削減の検証
A)核兵器削減の検証の受諾・実施
B)核兵器削減のための検証措置の研究開発
C)軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質に対するIAEA 査察の実施
(11) 不可逆性
A)核弾頭及びその運搬手段の廃棄の実施または計画
B)核兵器関連施設などの解体・転換
C)軍事目的に必要ないとされた核分裂性物質の廃棄や平和的目的への転換など
(12) 軍縮・不拡散教育、市民社会との連携
(13) 広島・長崎の平和記念式典への参列
2. 核不拡散
(1) 核不拡散義務の遵守
A)核兵器不拡散条約(NPT)への加入
B)NPT 第1条及び第2条、並びに関連安保理決議の遵守
C)非核兵器地帯
(2) 国際原子力機関( IAEA) 保障措置(NPT 締約国である非核兵器国)
A)包括的保障措置協定の署名・批准
B)追加議定書の署名・批准
C)統合保障措置への移行
D)IAEA 保障措置協定の遵守
(3) IAEA 保障措置(核兵器国及びNPT 非締約国)
A)平和的目的の施設に対するIAEA保障措置の適用
B)追加議定書の署名・批准・実施
(4) IAEA との協力
(5) 核関連輸出管理の実施
A)国内実施システムの確立及び実施
B)追加議定書締結の供給条件化
C)北朝鮮及びイラン問題に関する安保理決議の履行
D)拡散に対する安全保障構想(PSI)への参加
E)NPT 非締約国との原子力協力
(6) 原子力平和利用の透明性
A)平和的目的の原子力活動の報告
B)プルトニウム管理に関する報告
3. 核セキュリティ
(1) 兵器利用可能な核分裂性物質の保有量
(2) 核セキュリティ・原子力安全にかかる諸条約などへの加入、参加、国内体制への反映
A)核物質防護条約及び改正条約
B)核テロ防止条約
C)原子力安全条約
D)原子力事故早期通報条約
E)使用済み燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約
F)原子力事故援助条約
G)IAEA 核物質防護勧告(INFCIRC/225/Rev.5)
H)国内実施のための法・制度の確立
(3) 核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組
A ) 民生利用における高濃縮ウラン(HEU)及びプルトニウム在庫量の最小限化
B)不法移転の防止
C)国際評価ミッションの受け入れ
D)技術開発―核鑑識
E)キャパシティ・ビルディング及び支援活動
F)IAEA 核セキュリティ計画及び核セキュリティ基金
G ) 国際的な取組( CTR 、G7GP 、GICNT、核セキュリティサミットなど)への参加