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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2023(2) 核セキュリティ・原子力安全にかかる諸条約などへの加入及び国内体制への反映

A) 核セキュリティ・原子力安全にかかる諸条約などへの加入状況

2022年の署名・批准動向

核セキュリティ及び原子力安全に関する条約としては、核物質の防護に関する条約(核物質防護条約、CPPNM)とその改正(A/CPPNM)、核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロ防止条約)に加えて、原子力の安全に関する条約(原子力安全条約)、原子力事故の早期通報に関する条約(原子力事故早期通報条約)、使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約(放射性廃棄物等安全条約)、及び原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約(原子力事故援助条約)などが成立してきた。原子力安全条約以降の条約では、安全上の防護措置を課すことが定められている。こうした防護措置は核セキュリティ上の防護措置にも援用できることから、本報告書において核セキュリティに関連する国際条約とみなしている。調査対象国のこれらの条約への加入状況は、表3-5のとおりである。

これらの条約に関する2022年12月時点における新たな署名・批准は以下のとおりである。

CPPNM114(1987年発効):締約国数164カ国。新たな加入国なし。2016年以降の新たな加入国数は2017年を例外として毎年2~3カ国であり、継続的な増加が維持されていたが2022年は増加なし。
A/CPPNM115(2016年発効):批准国数131カ国。ブラジル、マラウイ、モザンビーク及びオマーンが新たに批准。近年の新規批准国数は、2016年が15カ国、2017年が7カ国、2018年が3カ国、2019年が5カ国、2020年が2カ国、2021年が2カ国であり、継続的に増加している。

核テロ防止条約116(2007年発効):締約国数120カ国。オマーン及びタジキスタンが新たに批准。近年の新規締約国数は、2017年が6カ国、2018年が1カ国、2019年が2カ国、2020年が1カ国、2021年が1カ国となっている。
原子力安全条約117(1996年発効):2021年3月時点の締約国数91カ国118。新たな批准国なし。2021年の批准国数は2カ国。
原子力事故早期通報条約119(1986年発効):2022年2月時点の締約国数132カ国。マラウイが新たに批准。2021年の批准国数は4カ国120。
原子力事故援助条約121(1987年発効):2022年10月時点の締約国数127カ国。カンボジア、マラウイ及びモザンビークが新たに批准。2021年の批准国数は2カ国。

放射性廃棄物等安全条約122(2001年発効):2022年2月時点の締約国数88カ国。マラウイ及びシリアが新たに批准。なお、トルコは2022年9月のIAEA総会において7月に批准し、締約国になったと発表したが、IAEAの批准国リスト(2022年2月が最新)には反映されていない123。2020年の批准国数は1カ国。

2021年はすべての条約について締約国数の漸増が見られたが、2022年はCPPNM及び原子力安全条約以外のすべての条約について増加が見られた。なかでも、3月に条約発効後初となる運用検討会議が開催されたA/CPPNMについては、批准国数が倍増した。調査対象国の核セキュリティ関連条約の署名・批准にかかる動向については、ブラジルが前述の運用検討会議開催直前の3月18日にA/CPPNMを批准した。

なお、条約の加入状況とは関係ないが、2022年3月4日、核テロ防止条約の締約国であるウクライナは、「ロシア連邦による武力侵攻及びそれに伴う外出禁止令のため、ウクライナの主権、領土一体性及び不可侵性の侵害が完全に終焉するまでの間、核テロ防止条約上の義務を完全に保証することができない」旨の書簡を、条約の寄託者である国連事務総長に通知し、条約第18条15に基づいて、事務総長が締約国に通達した124。上述のとおり、ウクライナの原子力施設から放射性物質が盗み出されたとされており、ウクライナがこの条約上の義務の完全な履行を確保することが困難な状況が生じている。

 

A/CPPNM運用検討締約国会議

2022年3月28日から4月1日にかけて、2016年のA/CPPNM発効後初となる運用検討締約国会議(以下、運用検討会議)が、スイス及びナイジェリアの共同議長のもと、ウィーンで開催された。条約第16条1の規定に基づき、条約発効から5年後に当たる2021年に開催される予定であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため延期されていた。会議には、A/CPPNMの締約国106カ国に加え、オブザーバー参加国として南アフリカを含むCPPNMの締約国17カ国及びイランを含むCPPNM未締約国7カ国が参加した125。会議は、ロシアがウクライナの原子力施設を占拠し、核セキュリティが脅かされているなかでの開催となった。

会議では、A/CPPNMの履行及び妥当性に関するレビューが行われた。条約の妥当性に関し、中国、ロシア、米国のいずれも現況に照らして適切であるとの見解を示し、また、条約の普遍化や今後も運用検討会議を開催し続けていくことの必要性などを強調した126。具体的には以下の発言を行った。

➢ 中国127:「今日の世界は大きな変化の渦中にあり、核セキュリティの脅威と課題は増加し続けている。核物質の違法な取得、使用及び取引の防止や、原子力施設に対する妨害破壊行為の防止、また核テロリズムへの対応は、すべての国家における原子力の平和利用のみならず、国際的な平和と安全にも関連する。A/CPPNMは、国際的な核セキュリティ体制の維持とグローバルな核セキュリティガバナンスの発展に関して重要な役割を果たしてきた」。「中国は自らの条約遵守の実践に基づき、現在の状況においてA/CPPNMは適切であると考える」。「より多くの国に対し、条約の批准及び対応する制度や措置の確立を求めるが、他方で各国が自国の状況に応じ、最適な核セキュリティ政策及び対策を採用する権利を尊重する必要がある」。
➢ ロシア(ウィーン代表部のツィッター投稿)128:「改正条約の規定は現在の状況に見合っているとの理解から進める。条約の新たな改正は必要ない。条約の規定を広く解釈する必要性もない」。

➢ 米国129:「現在の我々の法規制は今日の一般的な状況の変化に適切に対処していると考えている。とはいえ、各国が継続的に自国の核セキュリティ体制を見直すことは不可欠であり、グローバルな核セキュリティ体制に関する対話とレビューの継続もまた重要である」。

さらに、会議では中国や米国がA/ CPPNMの国内実施状況についても言及した。なお、運用検討会議における各国の演説内容は公開されていないことから、中国及び米国以外の国々の国内実施状況については、それらの国のIAEA総会での演説からの情報を記載する。

➢ 中国130:「1989年のCPPNM加入に際し、核物質管理規則及びその詳細規則を、またA/CPPNM発効後は国家安全保障法及び原子力安全法を公布した。中国は包括的かつ効果的な核セキュリティ規制制度と核物質防護体制を確立した」。
➢ ブラジル131:「本年、A/CPPNMを批准した。改正条約の主要な原則と義務はすでに国内の規制枠組みに盛り込まれている」。
➢ 日本132:「グローバルな核セキュリティの確保は1カ国ではなしえないため、 A/CPPNMや核テロ防止条約のような法的枠組みの重要性を強調する。今年3月に開催されたA/CPPNMの初の運用検討会議の開催とその成果文書が採択されたことを歓迎する。日本はこれらの条約の普遍化を促進するための努力を続けて行く」。

➢ パキスタン133:「核セキュリティを国の責任とみなし、包括的な核セキュリティ体制を発展させた。CPPNMとその改正、IAEAのガイダンス文書及び国際的な優良実践に照らして、体制を定期的に見直し更新している。また、条約とその修正条項が今日の核セキュリティの課題に完全に対応していることに満足している。現在の核セキュリティの課題に対応するのに十分なものであることに留意する。今後、CPPNMとその改正の締約国は、その普遍化と各国による効果的な実施に焦点を当て続けるべきである」。
➢ トルコ134:「原子力技術の平和利用を促進するため、原子力安全、セキュリティ、保障措置における最高水準を支えるために、IAEAと緊密に協力していくことを強調したい。7月に放射性廃棄物等安全条約に批准したことにより、トルコは原子力分野におけるすべての国際条約の締約国となった。透明性と信頼醸成を促進するため条約の遵守に関する報告を定期的に提出している」。
➢ 米国135:「A/CPPNMに基づく義務の完全な履行を優先し、条約第2Aの基本原則を適用している」。(サイバーセキュリティ及び分離プルトニウムに関する取組にも言及した。詳細は本章(2)B)及び(3)A)を参照)

また、条約の国内実施に関しては、2022年8月に開催されたNPT運用検討会議に多くの調査対象国が国別報告書を提出しており、そのなかで、核セキュリティ関連条約の加入、履行状況、核セキュリティに対するこれまでの取組についても報告している。この国別報告書は、2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画の実施に関するものであり、この行動計画には核セキュリティに関して7つの行動(行動40-行動46)が含まれている136。調査対象国では、ブラジル、ベルギー、カナダ、中国、フィンランド、ドイツ、日本、カザフスタン、韓国、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ロシア、スイス、トルコ、英国及び米国が報告書を提出し、核セキュリティの取組について報告した137。こうした報告は各国の核セキュリティ実施状況を知るうえで極めて有用な資料である。報告中の情報量や内容の充実度にはばらつきがあるものの、報告の提出は核セキュリティの取組に対する透明性を向上させるものであり、国際社会や市民社会とのコミュニケーションとしても重要である。また、核セキュリティへのコミットメントに対する説明責任を果たすことにもつながる。

会議では議論の結果として、今日を取り巻く状況(prevailing situation)に照らして、条約の前文、運用部分全体及び附属書は適切である旨の結論を盛り込んだ成果文書が採択された138。成果文書は今日を取り巻く状況に関し、関連する主な変化や要因には技術進化一般に関連する原子力の平和利用の拡大、革新先進炉技術、並びに脅威やリスク環境が含まれると述べている139。成果文書にはさらに、必要な数の締約国が条約第16.2条に従って、寄託者であるIAEA事務局長に対し次回会議を招集するよう要請したことも記載された140。この点については、豪州、中国、スイス、スウェーデン、EUなどが次回の運用検討会議の開催を支持する発言を行い、米国については遅くとも6年以内に開催することが不可欠だとした141。

なお、2022年NPT運用検討会議の最終文書案では、A/CPPNM運用検討会議に関し、次のパラグラフが盛り込まれた。

➢ A/CPPNMが発効したことを歓迎する。さらに多くの国によるA/CPPNMの受諾、承認または批准の重要性を認識し、その完全実施と普遍化の重要性に留意する。A/CPPNMの運用検討会議の成果を歓迎する(パラ47)。

➢ CPPNMのすべての締約国に対し、可能な限り速やかにA/CPPNMの締約国となることを要請する。また、本会議は、まだCPPNMの締約国となっていないすべての国に対し、可能な限り速やかにCPPNMの締約国になるとともに、A/CPPNMの締約国にもなるよう奨励する(パラ187-65)142。

この最終文書案でも述べられたように、A/CPPNMの課題は、条約の普遍化及び各国による条約の完全な履行であり、そのために各国が条約履行に関する経験や法令整備等に関する情報をさらに共有していくことが重要となる。この点に関し、EUはIAEAと共同でA/CPPNMの普遍化に向けたサイドイベントを4月に開催し143、またカナダも、運用検討会議の開催期間中にIAEAとの協力のもと「A/CPPNMの普遍的な履行に向けて:課題、成功事例及び今後の道筋」と題するサイドイベントを開催した144。

条約の完全な履行との関連では、CPPNM第14条1項は、締約国に対し条約履行のための国内法令に関する情報を条約の寄託者であるIAEAに通報することを義務付けており、近年では各国の核セキュリティに関する措置の透明性や情報共有の観点からもかかる通報が重視されてきている。2022年に第14条1項に基づき情報を提出した国の数をIAEAは公表していないが、2021年末時点で64カ国がこれまでに提出したとのことである145。今次運用検討会議の成果文書においても、未提出の締約国に対してさらなる遅延がないよう提出が奨励された146。

なお、核セキュリティ関連条約等の各国による実施を国際的に保証するものとしても、こうした透明性の向上や機微情報を保護したうえでの情報共有は奨励されている。そのため、この分野における各国の取組状況を表3-6に示す。

 

 

B) 「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」改訂5版(INFCIRC/225/Rev.5)

IAEAは2011年に「核物質及び原子力施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告」改訂5版(INFCIRC/225/Rev.5)をIAEA核セキュリティシリーズ文書第13号として刊行した。これが2022年時点で最新の「勧告文書」である。INFCIRC/ 225/Rev.5の勧告措置に準拠した物理的防護措置を導入・履行するとともに課題を炙り出し、個別の対応策をいかに打ち出すかはすべて国家の責任であり、各国の規制当局と事業者の取組に委ねられている。したがってINFCIRC/225/Rev.5で勧告された措置について、各国がその導入や適用状況にかかる情報発信を行うことは重要である。しかしながら、2016年の核セキュリティサミット・プロセスの終了後、そうした情報発信の量は徐々に減少している。表3-7は調査対象各国によるINFCIRC/225/Rev.5の勧告措置の適用・取組状況を示したものである。

INFCIRC/225/Rev.5は刊行から10年以上が経過し、IAEAでは核セキュリティシリーズ文書の「基本文書」及びINFCIRC/225/Rev.5を含む3つの「勧告文書」について、近い将来にこれらを改訂する必要があるか否かを見極めるための検討が行われ、2020年12月にその作業が完了したとされる147。その後の進展については公開情報からは明らかではない。

以下に、INFCIRC/225/Rev.5に示された核物質及び原子力施設にかかる国の物理的防護体制の主な要素に関し、調査対象国による2022年の情報発信や取組、並びに国際機関等による取組の動向について記載する。

 

国内法令整備

➢ ブラジル148:「国の原子力委員会は、国際的な最良実践、2005年のA/CPPNMの条項、INFCIRC/225/Rev.5、またその他の関連するIAEA勧告を考慮し、核・放射線セキュリティに関する規則の全面的な見直しを行った」。
➢ 中国149:「核物質防護システムについて、原子力施設の設計、建設及び運転、核物質の生産、輸送、貯蔵及び使用の全工程において、厳格な許認可・管理体制を設けている。核物質防護システムのアップグレード、新規の原子力施設に対する国際的な最高基準の適用、また核セキュリティ関連の技術革新への投資の増加等を通じた核セキュリティに関する能力構築を推進している」。

➢ オランダ150:「原子力施設の物理的防護を強化するため、国際的な義務や協定に完全に沿った物理的防護体制を導入している」。

 

妨害破壊行為

妨害破壊行為に関する各国の2022年の取組についての情報は得られなかったが、トルコが第10回NPT運用検討会議に提出した国別報告書において、「稼働中または建設中の原子力施設に対する武力攻撃または攻撃の威嚇を禁止するまたは防止するための国の核セキュリティ体制を強化することによって、あらゆる必要な予防措置を講じている」と報告した151。

妨害破壊行為に関して、A/CPPNM運用検討会議の成果文書では、「不法移転、無許可の核物質の取得及び使用並びに核物質及び原子力施設に対する妨害破壊行為がもたらす潜在的な危険性を回避することが望まれること、並びにかかる行動に対する物理的防護の重要性」が強調された152。

 

脅威の同定及び評価(内部脅威対策を含む)

脅威の同定及び評価に関しては内部脅威対策の強化が重視されてきている。しかしながら、核脅威イニシアティブ(NTI)によると、「2020年版核セキュリティ・インデックス」のために行った調査では、「原子力施設の従業員について、定期的な人事調査を義務付けている国はわずか55%、薬物検査、身元調査、心理テストなどを含む強固な人事調査を義務付けている国はわずか35%にとどまっており、20%はこれらのテストを一切要求していなかった」ことが明らかになったという153。したがって、この分野における各国の取組は重要となるが、2022年は本調査対象国によるこの分野での新たな取組の情報は得られなかった。

他方、核セキュリティ上の脅威について、A/CPPNM運用検討会議の成果文書では、「既存及び出現途上の核セキュリティ上の脅威に懸念を表明し、国際協力及びこの点に関する広範な対話を始めることの重要性が強調され」154たほか、2022年NPT運用検討会議の最終文書案にも、「既存及び出現途上の核セキュリティ上の脅威を認識し、締約国はかかる脅威に対処することにコミットする」との文言が盛り込まれた155。

なお、内部脅威者が核物質を扱う施設からそれらを盗取することがないようにするため、核不拡散の観点に加えて、核セキュリティの観点からも核物質の計量管理は重要となっている。そのため、IAEAは2月に実務者向けの核物質の計量管理に関する国際訓練コースを対面とウェブの併用で開催し、国内の核物質の計量管理技術に関する実践的な訓練を提供した156。

 

サイバーセキュリティ

サイバーセキュリティについては、上述のようにその脅威の高まりから各国が対策を強化することが急務となっている。第10回NPT運用検討会議の最終文書案では、サイバーセキュリティに関して、「無許可のアクセス、盗取及び妨害破壊行為に対し核物質、サイバーセキュリティ及び原子力施設の防護を含む核セキュリティはNPTの目的を支えるものであることを再確認する」(パラ43)との文言が盛り込まれ、サイバーセキュリティも明示的に取り上げて重要であることが示されている157。この分野での対策を進めるドイツは「コンピュータ・セキュリティの分野での懸念される進展は、枢要インフラをサポートするための熟練した現場の専門家を確保することが重要であることを示唆している」と指摘し、IAEAに対し、サイバーセキュリティに関する新たな核セキュリティ指針を発展させるよう求めた158。調査対象国のサイバーセキュリティの取組に関して2022年に明らかになったものは以下のとおりである。

➢ 英国159:2022年5月に「民生用原子力サイバーセキュリティ戦略2022」と題する政策文書を発表した。「政府、民生用原子力産業及び規制者によるこの共同戦略は、英国の民生用原子力部門が今後5年間に進化するサイバーリスクを如何に管理し緩和しようとするのかを示している。この文書は原子力部門のサイバーセキュリティをさらに強化するため、その前身にあたる『民生用サイバーセキュリティ戦略2017』『国家サイバー戦略2022』の上に積み上げを行ったものである」。
➢ 米国160:「米国原子力規制委員会(NRC)の職員が、米国の原発用のサイバーセキュリティプログラムに基づいて、施設がサイバーセキュリティに関する要求事項を完全に実施していることを検証するための検査を完了した。2022年以降、各発電所は2年に1度、遵守継続に関する検査を受けることになる」。

なお、インドの連邦議会上院で、インドの原発におけるサイバーセキュリティ措置に関する質問が取り上げられた際に、科学技術担当大臣が回答した内容が報じられたため、参考までに要点を記載する161。

➢ 「(インドでは)原発システムのセキュリティを確保するためにセキュリティ措置を導入している。原発システムはインターネットには接続されておらず、事務管理用のネットワークからはアクセスされない。原発の事務管理用ネットワークティを確保するためにセキュリティ措置を導入している。原発システムはインターネットには接続されておらず、事務管理用のネットワークからはアクセスされない。原発の事務管理用ネットワークも同様に、インターネットと事務管理用のイントラネットの接続を堅牢化し、取り外し可能な媒体の(使用)制限やウェブサイト及びIPsブロックなどの情報セキュリティの強化措置も講じた」(括弧内引用者)。

➢ 「クダンクラム(Kudankulam)原発での2019年9月のサイバー攻撃に関連して、コンピュータ・情報セキュリティ諮問グループによる調査が行われた」。

この分野に関する2022年のIAEAによる取組には、たとえば、2023年6月に開催予定の原子力分野(Nuclear World)におけるコンピュータ・セキュリティ国際会議に関する初のプログラム委員会会合を1月に開催したことや、加盟国間の協力・情報交換を向上させることを目的として、小型モジュール炉及び超小型炉の計装・制御とコンピュータ・セキュリティに関する技術会合を2月にウィーンで開催したことが挙げられる162。

 

核セキュリティ文化

核セキュリティ文化163についての本調査対象国の取組に関しては、あまり言及する国がないなかで、ブラジルがワークショップ、セミナー、訓練コースなどを通じた取組について第10回NPT運用検討会議に提出した国別報告書で言及したほか、ロシアについても詳細は不明だが、「核セキュリティ文化に関して措置を講じた」と国別報告書に記述している164。また、中国はA/CPPNM運用検討会議において、条約の国内実施として核セキュリティ文化の醸成に取り組んでいることに言及した165。日本は、2022年2月に、日本原子力研究開発機構(JAEA)の核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)と世界核セキュリティ協会(WINS)の共催により、「核セキュリティ文化を考え直す―人的要因と組織文化―」をテーマとしたワークショップをオンラインで開催した166。

また、核セキュリティ文化の醸成・維持は、サイバーセキュリティや内部脅威対策を含む核セキュリティ措置の実効性を継続的に確保していくうえでも極めて重要との認識が近年高まっている。規制機関、事業者など、原子力に関連するすべての組織において、核テロの脅威が存在することや核セキュリティの重要性を認識し、各人が核セキュリティにおける自身の役割を自覚し責任を果たすことが求められる。

なお、2022年のIAEA核セキュリティ決議にはIAEA事務局に対し、以下の内容を奨励するパラグラフが盛り込まれた。

➢ 「各国の核セキュリティ体制と両立する強固な核セキュリティ文化を開発、育成、維持する方法に関する経験、知識、優れた実践の国際的な交換を促進すること、及び核セキュリティ文化の維持に関する国際ワークショップを開催する」こと。

➢ 「加盟国と協議し、要求に応じて、ガイダンスの発行、訓練活動の提供、関連する自己評価支援及び訓練資料とツールの提供を含む、堅固な核セキュリティ文化を開発、育成、維持するための加盟国への支援を強化する」こと167。

 


114 権限のない核物質の受領、所持、使用、移転、変更、処分または散布により人的・財産的被害を引き起こすことや、核物質の盗取などの行為を犯罪化することを義務付けており、核プログラムを保有していない国々を含めた条約の普遍化の取組が引き続き重要である。
115 平和利用目的の核物質及び原子力施設の防護に関して法的拘束力を有する唯一の国際約束である。普遍化については、CPPNM未締約国はA/CPPNMも合わせて批准することが望ましく、その点での働きかけの強化、またCPPNMにしか加入していない国によるA/CPPNM批准に向けた取組及びそれらの国々に対する批准の働きかけや支援などの外交努力が重要である。
116 悪意をもって放射性物質または核爆発装置などを所持・使用する行為や、放射性物質の発散につながる方法による原子力施設の使用、または損壊行為を犯罪化することなどを締約国に義務付けている。
117 原発の安全性の確保や安全性向上を目的としており、締約国は、原発の安全性確保のために法律上、行政上の措置を講じ、本条約に基づき設置される検討会で報告し、また他の締約国の評価を受けることなどが義務付けられている。
118 2022年12月時点において更新情報なし。
119 原子力事故が発生した際、IAEAに対し事故の発生事実や種類、発生の時刻や場所を速やかに通報し、情報提供することを締約国に義務付けている。
120 『ひろしまレポート2022年版』では、2021年の批准国数がコンゴ共和国、ルワンダ及びジンバブエの3カ国となっているが、2021年12月19日にニジェールが批准し、2021年の批准国数は131カ国であった。
121 締約国に対し、使用済燃料及び放射性廃棄物の安全性確保のために法律上、行政上の措置を講じ、本条約に基づいて設置される検討会に報告し、また他の締約国の評価を受けることなどを義務付けている。

122 原子力事故や放射線緊急事態に際して、その拡大を防止し、またその影響を最小限にとどめるべく、専門家の派遣や資機材提供などの援助を容易にするための国際的枠組みを定めている。
123 “Statement by Turkey,” at the 66th IAEA General Conference, September 2022.

124 “ICSANT Ukraine Communication,” Reference:C.N.72.2022.TREATIES-XVIII.15 (Depositary Notification), https://treaties.un.org/doc/Publication/CN/2022/CN.72.2022-Eng.pdf.
125 6の国際機関(アラブ原子力エネルギー機関、湾岸協力理事会(GCC)、EU、IAEA、国際刑事警察機構(ICPO)、国連)及び11のNGO組織もオブザーバーとして参加した。
126 “Statement by China at the A/CPPNM Review Conference”; Russian Vienna Delegation Twitter, https://twitter. com/mission_rf/status/1508476451535872009; “Statement by the U.S. at the A/CPPNM Review Conference.”
127 “Statement by China at the A/CPPNM Review Conference.”
128 Russian Vienna Delegation Twitter.

129 “Statement by the U.S. at the A/CPPNM Review Conference.”
130 “Statement by China at the A/CPPNM Review Conference.”
131 “Statement by Brazil,” at the 66th IAEA General Conference, September 2022.
132 “Statement by Japan,” at the 66th IAEA General Conference, September 2022, pp. 5-6.
133 “Statement by Pakistan,” at the 66th IAEA General Conference, September 2022.
134 “Statement by Turkey,” at the 66th IAEA General Conference, September 2022.
135 “Statement by the U.S. at the A/CPPNM Review Conference.”

136 “Final Document, NPT 2010 Review Conference,” NPT/CONF.2010/50 (Vol. I), 2010, pp. 26-27, https:// documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/N10/390/21/PDF/N1039021.pdf?OpenElement.
137 これらの国別報告書は、次の国連のホームページから入手可能。https://www.un.org/en/conferences/npt2020/ documents。
138 “2022 Conference of the Parties to the Amendment to the Convention on the Physical Protection of Nuclear Material, Outcome Document,” ACPPNM/RC/2022/4, April, 2022, p. 4.
139 Ibid.
140 Ibid.
141 Swiss Federal Nuclear Safety Inspectorate ENSI, “Review Conference on the Security of Nuclear Material,” April 6, 2022, https://www.ensi.ch/en/2022/04/06/review-conference-on-the-security-of-nuclear-material/; “Statement by the U.S. at the A/CPPNM Review Conference.”

142 NPT/CONF.2020/CRP.1/Rev.2, August 25, 2022, pp. 7, 29.

143 Nuclear Security Report 2022, p. 4.
144 Ibid.
145 IAEA, Nuclear Security Review 2022, GC(66)/INF/5, August 2022, p. 11.
146 “2022 Conference of the Parties to the A/CPPNM, Outcome Document,” ACPPNM/RC/2022/4, April 2022.

147 IAEA, Nuclear Security Report 2021, p. 30. INFCIRC/225/Rev.5の改訂の必要性に関する議論には以下がある。Mathew Bunn, Laura Holgate, Dmitry Kovchegin, Nickolas Roth and William Tobey, “IAEA Nuclear Security Recommendations (INFCIRC/225): The Next Generation,” Stimson Center, July 2020, https://www.stimson.org/ wpcontent/uploads/2020/07/IAEA-225-Recommendations.pdf.
148 NPT/CONF.2020/11, November 10, 2021.
149 “Statement by China at the A/CPPNM Review Conference.”
150 NPT/CONF.2020/10/Rev.1, November 29, 2021.
151 NPT/CONF.2020/37, November 9, 2021.
152 ACPPNM/RC/2022/4, April 2022, p. 6.

153 “Nuclear Security is Only as Strong as the Weakest Link: 2020 NTI Index Highlights Cybersecurity and Insider Threat Prevention,” August 4, 2020, https://www.nti.org/atomic-pulse/nuclear-security-only-strong-weakest-link-2020-nti-index-highlights-cybersecurity-and-insider-threat-prevention/.
154 ACPPNM/RC/2022/4, April 2022, p. 6.
155 NPT/CONF.2020/CRP.1/Rev.2, August 25, 2022, p. 7.
156 Nuclear Security Report 2021, p. 15.
157 NPT/CONF.2020/CRP.1/Rev.2, August 25, 2022, p. 7.
158 “Statement by Germany” at the IAEA General Conference, September 2022.

159 Department for Business, Energy & Industrial Strategy, Civil Nuclear Cyber Security Strategy 2022, May 13, 2022, https://www.gov.uk/government/publications/civil-nuclear-cyber-security-strategy-2022.
160 “Statement by the U.S. at the A/CPPNM Review Conference.”
161 “Security in Place to Secure India’s Nuclear Power Plants from Cyber-attacks: Singh,” Mint, December 8, 2022, https://www.livemint.com/news/india/security-in-place-to-secure-india-s-nuclear-power-plants-from-cyber-attacks-singh- 11670489850008.html.
162 Nuclear Security Report 2022, p. 15.
163 IAEAは「核セキュリティ文化」を「核セキュリティを支援、強化及び維持するための手段としての役割を果たす個人、組織及び機関の特質、姿勢、及び振る舞いの集合体」と定義している。INFCIRC/225/Rev.5, p. 52.

164 NPT/CONF.2020/11, November 10, 2021; NPT/CONF.2020/17/Rev.1, March 19, 2021.
165 “Statement by China at the A/CPPNM Review Conference.”
166 原子力委員会『令和三年度版原子力白書』、20222年7月、144頁。
167 GC(66)/RES/7, September 2022, p. 7.

 

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