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国際平和拠点ひろしま

Hiroshima Report 2024第3章 核セキュリティ1  (1) 核物質及び原子力施設の物理的防護

第3章 核セキュリティ1
(1) 核物質及び原子力施設の物理的防護
国際原子力機関(IAEA)によると、核セキュリティとは「核物質、その他の放射性物質、関連施設または関連する活動が絡むか、あるいはそれらに向けられた犯罪または意図的な不正行為の防止、検知、及び対応」である2。その主な対象は、非国家主体による核物質及びその他放射性物質の盗取、その関連施設に対する妨害破壊行為である。

 

A) 核物質
核爆発装置の製造を試みようとするテロリストなどの悪意を持つ者にとって、兵器に直接利用可能な高濃縮ウラン(HEU)3及び分離プルトニウムといった核物質は魅力的な存在になりうる。そのため各国の核セキュリティへの取組を評価するうえで、これらの物質の保有量及びその貯蔵施設の有無は重要となる。各種の公開情報によれば、本調査対象国のHEU及び分離プルトニウムの保有量はそれぞれ表3-1、表3-2に示すとおりである。

各国におけるHEU及び分離プルトニウムの保有量は推定値を多く含んでおり不確実性が高いが、2023年は世界におけるこれらの物質の総量が前年の1,803トンから1,806トンへと増加した。これは、HEUの保有量が減少した一方で、分離プルトニウムの保有量が増加したことによるものである。

物質毎の詳細を見ると、まずHEUのうち、軍事用についてはパキスタンの保有量が前年比で0.9トン増加した。インドの保有量は前年比で0.7トン減少したが、引き続き海軍推進力用(原子力潜水艦の燃料)にHEUを生産していると見られる4。

民生用については、英国で0.05トン減少したほか、日本で0.6トンまで減少した5。他方で、生産が続けられているロシアで2トン増加した。イランもHEUを生産し続けており、2023年11月のIAEAの報告書によれば、同年10月28日時点で濃縮度が約60%の六フッ化ウランを128.3kg保有していると推計されている6。

なお、米国が推進する地球的規模脅威削減イニシアティブ(GTRI)などを通じて、これまでに34カ国と台湾が民生用のHEUを完全に除去している。こうしたHEU最小限化の取組(本章(3)(A)を参照)は引き続き進められており、世界の在庫量は減少傾向にある。他方で、世界に存在するHEUの約9割を軍事用が占めていることから、民生用のみならず軍事用HEUの核セキュリティ確保も引き続き重要である。

分離プルトニウムに関しては、軍事用についてインドの保有量が0.4トン増加した。民生用については、日本で0.7トン減少した(本章(3)(A)を参照)一方、フランスで約7トンへと大幅に増加しており、全体として近年増加傾向にある。

B) 放射性物質
2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以降、放射性物質の発散装置(いわゆる「汚い爆弾(dirty bomb)」)の脅威も懸念されるようになった。そのため、核セキュリティの取組の対象には核物質のみならず、その他の放射性物質も含まれる。なかでも放射線源は医療から農業まで幅広い分野において世界で広く利用されている。これらは一般に、兵器利用可能な核物質ほどにはセキュリティが厳格ではない場所に保管されていることから盗取のリスクが相対的に高いと言え、国際的な取組の一層の強化が求められている。

こうした放射線源の核セキュリティに関連する重要な国際文書には、2003年9月に IAEA理事会で採択された「放射線源の原子力安全と核セキュリティに関する行動規範」(以下、行動規範)7がある。本行動規範に法的拘束力はないが、2023年6月時点で、北朝鮮以外のすべての本調査対象国を含む147カ国が、これに政治的なコミットメントを表明している8。そのうち、それぞれ131カ国及び58カ国が、本行動規範の補足文書である「放射線源の輸出入に関するガイダンス」及び「使用されていない放射線源の管理に関する補足ガイダンス」に沿って行動する意向をIAEA事務局長に通知した。G7は4月に発出した不拡散局長級会合(NPDG)の声明の中で、本行動規範及びその補足ガイダンス文書へのさらなる政治的コミットメント及びそれらの実施を奨励した9。

放射性物質の核セキュリティについて、カナダは5月に「放射線源の原子力安全と核セキュリティに関する行動規範の実施に関する報告」を公表し、その中で2019年1月から2022年12月の間の本行動規範及び「放射線源の輸出入に関する補足ガイダンス」の実施に関する取組の概要について報告した10。

米国については、3月にバイデン(Joseph Biden)大統領が、「大量破壊兵器テロへの対抗及び核・放射性物質のセキュリティ向上のための国家安全保障覚書」に署名し、放射線テロの脅威低減を政策的優先事項の1つに掲げた。この覚書では、代替できない高放射能線源11はすべて、ライフサイクル期間中全体を通じて強固なセキュリティを維持すること、線源を用いた装置について、技術的・経済的に実施可能な場合には非放射性同位元素の技術で代替することを奨励するなど、複数の政策的措置を講じるとの方針が示された12。

なお、米国の核脅威イニシアティブ(NTI)は、2023年7月に発行した第6版となる『核セキュリティ・インデックス』において、各国における放射線源のセキュリティへの取組には最低限の進展しか見られないと指摘した13。そのうえで、放射線源の移動を追跡及び管理するための規制措置を確立すること、盗取から守るための基本的な法律を施行すること、高放射能線源を他のもので代替すること、及びIAEAのガイダンスを実施することによって、より優先度の高い案件とすべきと主張している。

C) 原子力施設

施設
妨害破壊行為がなされた場合に、潜在的に深刻な放射線影響が生じうる原子力関連施設には、発電用原子炉、研究炉、ウラン濃縮施設、再処理施設、並びに使用済燃料及び放射性廃棄物の貯蔵施設が挙げられる。このうち発電用原子炉については、世界原子力協会によると、2023年12月末時点で、稼働可能なものが全世界に436基(-1)、建設中が62基(+2)、計画段階が111基(+7)、建設が提案されているものが318基(-20)ある(括弧内は前年比の増減)14。ただし、データは随時更新されており数値には変動がある。

原子力発電については、ロシア及び中国が原子力発電所(以下、原発)輸出の国際市場で大きな割合を占めるようになっている。2023年1月時点で建設・計画中の「第3世代」の原発が110基あり、全体の69%を中露が占めている15。このうち33基が他国で手掛ける案件であり、そのうち19基がロシアによるものである。また、地球温暖化対策やエネルギー安全保障の観点から、2022年に一部の国々でエネルギー政策が見直された結果、再び原子力発電推進の動きが見られる。そうした流れのなか、2023年12月にドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)において、22カ国(本調査対象国であるカナダ、フィンランド、フランス、日本、韓国、オランダ、スウェーデン、UAE、英国及び米国の10カ国を含む)が、2050年までに原子力のエネルギー容量を3倍にまで増加させる内容を含む多国間宣言を発表した16。宣言では、原子力安全、持続可能性、核セキュリティ及び核不拡散に関し最高水準に沿って原発を運転すること、燃料廃棄物を長期にわたって管理することなどについて、各国が責任をもって国内措置を講じることへのコミットメントが表明された。
研究炉については、2023年11月時点で全世界に840基(-1)あり、その内訳は以下のとおりである17。

➢ 稼働状態(Operational):225基(+3)
➢ 一時的に稼働停止中(Temporary Shutdown):9基(-1)
➢ 建設中:7基(-4)
➢ 計画中:13基(±0)
➢ 稼働停止延長(Extended Shut-down):12基(-1)
➢ 永久稼働停止(Permanent Shut-down):55基(-1)
➢ 廃止・解体(Decommissioned):450基(+1)
➢ 解体中:69基(+2)
(括弧内は前年比の増減)

一方、研究炉用のHEU使用済核燃料集合体に目を向けると、濃縮度が20%を超えるものは全世界に20,640体ある18。そのうち濃縮度が90%以上のものは9,384体あり、2022年から95体減少した。20,640体の内訳を地域別に見ると、東欧に10,992体、西欧に4,211体、北米に1,623体、極東に1,600体、東南アジア及び太平洋に1,450体、アフリカに433体、中東及び南アジアに223体、ラテンアメリカに108体となっている19。このように数多くのHEU使用済核燃料集合体が世界に存在する状況は、研究炉施設におけるHEUの盗取防止対策に加えて、かかる施設に対する妨害破壊行為の防止措置の強化が引き続き重要であることを示唆している。

ウラン濃縮施設及び再処理施設については、HEUや分離プルトニウムを入手しうることから、核爆発装置を製造しようとするテロリストなどの悪意のある者にとって最も魅力度の高い原子力関連施設であると考えられる。本調査対象国の発電用原子炉、研究炉、ウラン濃縮施設及び再処理施設の保有状況は、表3-3に示すとおりである。

新興技術がもたらすリスク

無人航空機(ドローン)

原子力施設への妨害破壊行為に関しては、近年発行の『ひろしまレポート』で報告のとおり、ドローンなどの無人航空機(UAV)による関連事案が複数発生している。ドローンは原発における点検、監視、調査などの目的での使用が増加する一方で、核セキュリティ面での脅威が懸念される。原子力施設は堅牢な防護を備えた建物であり、ドローンによる直接的な攻撃によって重大な放射線影響がもたらされる可能性は低い一方で、その技術改良や進化のスピードは速く、安価で容易に入手可能であることからリスク動向を注視した対策が求められる。

こうしたなか、IAEAは、2023年10月末に、「UAVのための核セキュリティ対抗策」と題する技術会合を米国の国家安全保障局(NNSA)の協力を得て米国で開催した20。この会議は、「高い耐久性及び積載能力、自律型、単一または群体型のUAVから原子力施設を防護することは一層難しくなっており、高度な対無人航空機(CUAV)技術及び政策が必要になるであろうこと、また、焦点を地上からの脅威に置いた対策から地上及び空中の双方からの脅威へと移す必要があるかもしれず」、新たな防護方法及び技術が必要となる21といった認識のもとで開催された。会合では、UAVシステム、積載量、能力を巡る現状を取り上げ、現在及び将来の核セキュリティ上の脅威に対処するために、技術と政策の両面でのCUAV能力をいかに開発・展開できるかについて議論がなされた。IAEAではまた、UAVのみならず、あらゆる無人システム(空中、地上及び海上)の核セキュリティへの示唆を見極めるために新たな「調整研究プロジェクト(Coordinated Research Project)」を立ち上げ、検討が行われている22。

各国による取組については、英国で原発を含む機微なインフラ施設周辺に対ドローン検知器が配備されることになったと報じられた23。このシステムは警察や警備員があらゆる小型・中型ドローンを追跡できるように設計されており、スキャン技術を使用することでドローンが信号を発していない場合でも発見が可能であるという24。

 

サイバー攻撃

こうした原子力施設に対するUAVの脅威に加えて、サイバー攻撃の脅威も多様化、複雑化しており、これへの対策は技術先進国を含め、各国の大きな課題となっている。デジタル化は利便性が高くメリットもある一方で、原子力施設の原子力安全及び物理的防護システムのデジタル機器・技術への依存はサイバーリスクを高めることが懸念される。それらのシステムへのサイバー攻撃は、核物質の盗取、あるいは放射性物質の放出につながる破壊行為を容易にする目的にも使用されかねない25。

こうしたなか、IAEAは2023年6月に「原子力の世界におけるコンピュータ・セキュリティに関する国際会議-原子力安全のための核セキュリティ」をウィーンで開催し、94カ国及び7つの国際機関から約500名が参加した26。この会議の主な目的は、デジタル化が進む中で核物質や放射性物質を扱う施設をサイバー攻撃から守るための効果的なセキュリティ対策について議論することであった。会議の開会にあたり、グロッシ(Rafael Grossi)IAEA事務局長は、「原子力活動は世界の至るところで拡大しており、デジタルツールの悪意ある使用によってもたらされる課題は現実のものとなり、その規模は拡大の一途を辿っている」と述べた27。

この国際会議では、コンピュータ・セキュリティに関するサプライチェーン管理、持続可能性、人的資源、国際協力などを含む8つの幅広いテーマについて議論された。なお、この国際会議の開催費用については、オランダ、韓国、英国、米国及びEUが資金を提供した。

IAEAはこの会議の開催に合わせ、機関誌『IAEA Bulletin』でコンピュータ・セキュリティを特集し、最新の動向や様々な論点を紹介した。そのなかでIAEA事務局長は、注視すべき近年の動向として人工知能(AI)や機械学習(ML)技術に言及し、「デジタル革新はここ数カ月で驚くべきペースで既存のゲームに変化をもたらすような進歩を遂げており、こうした進歩は原子力施設の運転効率の向上、人件費の削減、原子力安全と核セキュリティの向上といった潜在的なメリットをもたらす一方で脅威にもなる」と警鐘を鳴らした28。同様の指摘は他でもなされており、悪意を持つ者がAIを悪用して標的を絞ったより高度な攻撃を行ったり、ネットワーク、システム、さらには原子力・放射線施設の機密情報を操作して悪用するなどの可能性が懸念されている29。

 

D) 国家による原子力施設に対する武力攻撃

『ひろしまレポート2023年版』における報告のとおり、2022年2月末のロシアによるウクライナ侵略の中で発生したウクライナの原子力施設に対する攻撃・軍事占拠は、非国家主体を脅威に想定した従来の核セキュリティの概念を超えて、国家が原子力施設に対してもたらす核セキュリティ上の脅威にどのように対処するかという難しい問題をもたらした。2023年も紛争は終結せず、また戦闘が激化するなかで、ウクライナ国内の原子力施設の原子力安全・核セキュリティの確保は幾度も困難に直面した。ザポリージャ(Zaporizhzhia)原子力発電所(ZNPP)が引き続き最も深刻な状況にあるという状況は2022年と変わらない一方、ウクライナ国内の他の原発についても外部電源が喪失するなどの事態が発生した30。

以下では、主にウクライナ国内の原発の核セキュリティに関連した2023年の主要な出来事と、それらに対するIAEAなどによる対応を概観する。

 

ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)

戦闘が激しい地域の最前線に位置するZNPPでは、2023年もロシア軍は撤退せず、施設の軍事占拠・要塞化を続けた。施設の管理についてもロシアの国営原子力事業者であるロスアトムが継続し、施設のウクライナ人従業員は厳しい状況下での業務遂行を強いられた。

ZNPPでは、紛争前は4系統が利用可能であった主要送電線のうち、唯一利用可能だった最後の1系統も利用できなくなり主要外部電源が完全に喪失し、非常用ディーゼル発電機による電力確保がなされる事態が12月までに8度も生じた31。

5月には、ウクライナによる領土奪還のための反転攻勢開始に向けた動きを受け、ZNPP内のロシア軍兵士の数が2,500人を超え、職員数を上回った32。ロシア軍はさらに、施設内や周辺で防衛体制向上の試みを開始し、街の周囲により多くの塹壕や地雷を敷設したとされる33。

そうしたなか、6月6日、ロシアが管理する区域に所在し、ZNPPが原子炉と使用済燃料の冷却のために水の供給を受けているカホフカ(Kakhovka)ダムが重大な損傷を受けて決壊し、ZNPPの貯水池の水位の低下を招いた34。ダム破壊については、ロシアとウクライナの双方が「相手が破壊した」と非難した。

7月に入ると、ウクライナはZNPPの2号機、3号機及び4号機の建屋の屋根に爆発物のようなものが仕掛けられたと主張した35。IAEAは直ちにロシアの施設運営者に対して建屋へのアクセスを求めたが認められず、最終的にアクセスが可能となったのは1カ月後のことであった36。調査の結果、IAEAは地雷や爆発物は見当たらなかったと報告した。

そうしたなか、ロシアの原子力関連企業であるロスエネルゴアトムは、「ウクライナが国内の別の原発から輸送された核廃棄物が含まれる弾薬をZNPPに投下する計画を立てている」、「7月5日夜にウクライナ軍は長距離精密機器(equipment)とカミカゼ・ドローン(自爆型無人機)を使って、ザポリージャ原発を攻撃しようとするだろう」と主張した37。ZNPPを管理するロスアトムの関係者は原発から退避を始め、同社と契約するウクライナ人従業員も7月5日までの避難を勧告された38。その後、ロシアはIAEAに対し、ウクライナ軍の砲撃を阻止し、ZNPPの原子力安全を確保するよう要請したが、幸いそうした攻撃は発生しなかった39。

7月末になると、ZNPPサイトの内部と外部を隔てる緩衝地帯に複数の指向性対人地雷が敷設されているのが確認された40。また、サイト内部の場所でも地雷の敷設が確認された41。8月初旬には再び砲撃が行われ、ウクライナはロシア軍の砲撃によってZNPPの施設の一部が「深刻な損傷」を受けたほか、ロシア軍が同原発内から周辺の民間区域を砲撃し、「テロ戦術」を駆使しているとして非難した42。11月に入ると、ロシア軍はZNPPの付近でウクライナ側のドローン9機を撃墜したと主張し、重大な核危機の危険を冒しているとしてウクライナを非難した43。

 

その他のウクライナの原子力発電所

チョルノービリ(Chornobyl)原発サイトでは、3月にミサイル攻撃及びウクライナ国内電力網の混乱のため、主要外部電源からの電力が大幅に低下した44。リウネ(Rivne)原発については、ロシアは1月に、ウクライナは敷地内に米国が提供した武器(高機動ロケット砲システム〔HIMARS〕)を貯蔵していると主張した45。ウクライナ側はこれを否定し、さらに後日、IAEAもロシアの主張を否定した46。7月には、外部送電線が切断されたが2日後に再接続された。他のすべての送電線は利用可能であった47。南ウクライナ原発については、3月に付近を巡航ミサイルが飛行した48。また、砲撃を受けて2本の外部高電圧線が切断されたが、幸い複数の予備電源が利用可能であった。フメリニツキー原発(Khmelnytskyy)では、3月に原発付近に航空機(aerial vehicles)が飛来したほか、10月下旬には爆発による衝撃波により、原子炉建屋への通路を含む敷地内のいくつかの建物の窓ガラスが破損した49。さらに11月末にも付近で爆発音が聞かれた50。

 

ロシアの原発

また、10月末に、ウクライナ国境近くのロシアの原発敷地内の施設に対する攻撃も発生した。ロシア外務省は、クルスク(Kursk)原発に対しウクライナがドローン3機を用いて攻撃を行い、このうち爆発物を積んだ1機が使用済核燃料の保管施設に衝突し外壁が損傷し、残りの2機も管理棟の敷地内に落下したとし、「核テロ行為だ」と非難した51。原発の稼働に直接的な影響は生じなかったとのことである。

 

国際社会による対応

IAEA事務局

IAEA事務局は、2022年にIAEA理事会で採択された3つの決議52及びウクライナからの要請に基づき、2023年も積極的な対応を行った。紛争当事国のロシアが国連安全保障理事会(以下、安保理)の常任理事国であることから、国際の平和と安全に責任を有する安保理が機能していないなか、この問題への対応においてIAEAが果たす役割の重要性が一層浮き彫りとなった。

IAEAは2022年9月1日以降、ZNPPに「ザポリージャ原発支援ミッション(ISAMZ)」を派遣し専門家を常駐させていたが、2023年1月半ば以降は、ウクライナ国内の他の4つの原子力施設でも支援・援助ミッションの常駐を開始した。これら5つのミッションに加え、7月には、ウクライナにおける放射線源の安全及びセキュリティに関するIAEA支援・援助ミッション(ISAMRAD)がキーウ(Kyiv)に派遣された53。

各ミッションチームは、IAEA事務局長が2022年3月初めに提示した武力紛争下での「ウクライナにおける原子力安全と核セキュリティ確保のための7つの柱(以下、「7つの柱」)」54に照らして、それぞれの施設における状況の監視及び評価を行った。IAEA事務局は、2022年9月に自らが提案した「原子力安全・核セキュリティ保護地帯(以下、「保護地帯」)」を設置する必要性を引き続き訴え、ロシアとウクライナの双方と交渉を重ねた。しかしながら、ロシア軍によるZNPPからの撤退を求めるウクライナと撤退を拒むロシアが対立し、交渉は難航した55。

その後、ウクライナによる反転攻勢開始を前に、グロッシ事務局長は5月30日に安保理において、特にZNPPの「原子力安全及び核セキュリティを巡る状況は極めて脆弱で危険な状態が続いている。同地域では軍事活動が続いており、近い将来大幅に拡大する可能性がある」と警告を発した56。そのうえで、「原発事故を防止し、原発の一体性(integrity)を確保するため、またZNPPにおける原子力安全と核セキュリティの確保に貢献するため」に特定された以下の「5つの原則」を提案し、ウクライナ及びロシアの双方にこれらを守るよう求めるとともに、安保理各国に対しこれらの原則を明確に支持するよう要請した57。

1. 特に原子炉、使用済燃料貯蔵施設、その他の重要インフラ、または人員を標的とした、ZNPPからの、またはZNPPに対するいかなる種類の攻撃もあってはならない。
2. ZNPPからの攻撃に使用される可能性のある重火器(すなわち、多連装ロケット砲、火砲システム及び弾薬、戦車)の貯蔵場所や兵員の基地としてZNPPを使用してはならない。
3. ZNPPへの外部電源を危険に晒してはならない。そのため、外部電源が常に利用可能で安全であることを確保するためにあらゆる努力を払う必要がある。
4. ZNPPの安全で確実な運転に不可欠なすべての構造物、システム、コンポーネントは、攻撃や破壊活動から保護されなければならない。
5. 以上の原則を損なうような行動をとってはならない。

これに対し、ロシアのネベンジャ(Vasily Nebenzya)国連大使は、「ウクライナとその西側支援国に起因するZNPPのセキュリティ上の脅威を防ぐためにあらゆる努力をしてきた」、「原発敷地内から攻撃が行われたことはない。重火器や弾薬が置かれたことはなく、攻撃を実行するために使用される可能性のある軍関係者も存在しない」としてロシアの責任を否定した58。また「5つの原則」について、「国家レベルでの決定に従い、我々がすでに長い間実施してきた措置に沿ったものである」、「現在の状況において、ロシアは、国内法及び自らが締約国である関連国際法的文書に基づく義務に従い、原発の原子力安全及び核セキュリティを強化するためにあらゆる可能な措置を講じるつもりである」と述べた。

一方、ウクライナのキスリツヤ(Sergiy Kyslytsya)国連大使は、「ロシアはZNPPを軍事目的で使用し続けており、約500人の軍人と50の重火器、装備品、軍需品、爆発物を配備している」、「ロシアはZNPPを不法に占拠し、軍事戦略の一翼を担わせることで、原子力安全と核セキュリティに関するすべての重要な国際原則と、国際条約に基づく義務の大部分に違反していることを我々は繰り返し指摘する」と反論した59。「5つの原則」については、「原発に不法に駐留しているロシア軍と職員の撤退、施設への無停電電源供給の保証、職員の安全で秩序ある交代を確保するための人道回廊も含めるべきである」と主張した。

このように、ロシア、ウクライナのいずれも「5つの原則」を遵守するとは明確に表明しなかった。

本調査対象国の反応については、ブラジルがロシアとウクライナの双方に対し、「5つの原則」を遵守する意思を個別に確認し示すよう促した60。中国は、「ザポリージャはウクライナの危機の一側面に過ぎず、その最終的な解決は政治的解決の見通しにかかっている」とし、「両当事者は互いに歩み寄り、対話を再開しなければならない。影響力を持つ国々は『火に油を注ぐのではなく』責任ある役割を果たすべきである」とした61。一方、多くの国々がロシアに対しウクライナからの軍の撤退を求め、英国も「ロシアの違法な支配が続く限り、原発の原子力安全と核セキュリティを確保することはできない」と主張した。また、「新たな画像では、いくつかの原子炉建屋の屋上に土嚢を積んだ戦闘態勢が構築されており、戦術的な防衛計画に組み込まれていることが分かる」として、ロシアの主張に反論した62。

こうした紛争下での原子力施設の原子力安全と核セキュリティの確保という新たな課題について、IAEAでは、武力紛争下におけるIAEAの原子力安全基準及び核セキュリティ指針文書の適用について内部検討が行われている63。なお、2023年のIAEA総会で採択された核セキュリティ決議でも、IAEA事務局に対し「加盟国と緊密に協議しつつ、武力紛争下で核セキュリティシリーズ文書の適用における課題を特定するための核セキュリティ指針の見直し作業を継続するよう奨励」された(パラ68)64。

 

IAEA理事会・総会

2023年3月9日に開催されたIAEA理事会では、本調査対象国15カ国(豪州、ベルギー、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、イスラエル、日本、韓国、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国及び米国)を含む49カ国及び欧州原子力共同体(EURATOM)が、「ウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ及び保障措置に関する共同声明」を発表し、ZNPPを危険に晒しているとして同原発を占拠しているロシアを非難した65。共同声明は「ウクライナの原発への電力供給が危うい状態が続くことに深刻な懸念」を表明し、「7つの柱」の重要性を再確認するとともに、「ロシアが原発に居座る限り、原子力事故の危険性が極めて高い状態は変わらない」として、ロシアに対しZNPPからの撤退を求めた。

中国は、「ウクライナの原発やその他の平和目的の原子力施設の原子力安全と核セキュリティの問題に取り組むIAEAの努力を支援するため、ウクライナへの技術支援として20万ユーロをIAEAに拠出する」ことを発表した66。また、「原子力発電所やその他の平和目的の原子力施設に対する武力攻撃に反対する」67との立場を示し、すべての当事国に対し、「原子力安全条約(CNS)を含む国際法を遵守し、人為的な原子力事故を断固として回避する」よう求めた。さらに、「平和のための協議を推進し、ウクライナ危機の政治的解決に向けた努力を支援し続けることで、原子力安全リスクの原因を取り除き、ウクライナの原子力施設の原子力安全を維持していく」とした68。

米国は、「ロシアはIAEA理事会や国連決議に背く行動を続けているが、最も重要なことは、IAEAの「7つの柱」に示された各原則に違反していることである」、「ZNPPにおけるロシアの非合法な存在は現代の最も重大な核セキュリティ上のリスクである」と述べた69。

EUは、「ロシア軍が高放射性物質が含まれるチョルノービリの研究所を損傷させ、略奪を行ってから1年が経過した」ことに言及し、「規制を外れた放射線源によって引き起こされる潜在的なリスクに対する特別な懸念を改めて表明」した70。また、「平和目的の原子力施設に対する武力攻撃を具体的に禁止する、法的拘束力のある新たな国際ルールを検討する必要性」についても改めて提起した71。

9月のIAEA理事会では、グロッシ事務局長が、「最も懸念するのは、ZNPP周辺での軍事活動の増加であり、重大な放射線影響をもたらす原子力事故の可能性は現実だ」と述べ、「5つの原則」が引き続き遵守されるよう求めた72。また、2023年5月末から8月末までの「ウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ及び保障措置」に関する事務局長報告が公表され、ZNPPでは「7つの柱」のすべてが損なわれていること、「5つの原則」の遵守に関連し、IAEAがZNPP内の場所にアクセスするのに1週間前の承認をロシア側が求めていること、ロシア軍がサイトに引き続き駐留しているなどの詳細が報告された73。

同月に開催された第67回IAEA総会では、「ウクライナにおける原子力安全、核セキュリティ及び保障措置」と題する新たな決議が採択された74。本決議には以下のような内容が盛り込まれた。

ウクライナのZNPPからすべての公認されていない(unauthorized)軍人及びその他の要員を緊急に撤退させ、同原発をウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)が発行した現行のライセンスに基づき、ウクライナの所轄当局の完全な管理に直ちに戻すこと」を求める。
IAEAが要請に応じて、チョルノービリ原発、リウネ原発、南ウクライナ原発におけるIAEA技術専門家の継続的な物理的駐在を含め、ウクライナの原子力施設及び放射線源が絡む活動の安全かつ確実な運営を支援するための技術支援及び援助を継続的に提供することを全面的に支持する。

決議には69カ国が賛成し、ロシア、中国、イランを含む6カ国が反対、33カ国が棄権した75。なお、ウクライナに関連するあらゆるIAEAの活動を支援するため、23の国とEUが特別な資金拠出を行った76。

IAEA総会では、本調査対象国から以下のような発言がなされた77。

➢ 豪州、ベルギー、フランス、日本、UAE、及び英国は、ロシアの無謀な行動が原子力安全、核セキュリティ及び保障措置に与える影響に深刻な懸念を表明したほか、豪州はロシアがZNPPを支配し続けていることを非難した。
➢ 豪州、カナダ、フランス及び英国は、ロシアに対し、敵対行為を停止し、ZNPPから、またウクライナ全域から直ちに撤退するよう求めた。
➢ ベルギー、ブラジル、カナダ、フランス、日本、韓国、南アフリカ、スウェーデン、スイス及びUAEは、ウクライナにおける原子力安全と核セキュリティの確保のためのIAEAの取組や活動に対する支持を表明した。
➢ 日本、オランダ、ノルウェー、韓国及びスイスが「7つの柱」及び「5つの原則」の実施に対する支持を表明した。
➢ 豪州、ベルギー、カナダ、フランス、日本、ノルウェー、スウェーデン及びスイスは、ウクライナの原子力施設の原子力安全及び核セキュリティ確保のためのIAEAの活動支援を目的とした資金提供に言及した。

なお、国連総会に提出されたIAEAの年次報告書に関し、ロシアは「セヴァストポリ(Sevastopol)、ドネツク(Donetsk)及びルハンスク(Luhansk)人民共和国、並びにヘルソン(Kherson)及びザポリージャ地方の原子力施設(ZNPPを含む)がロシア領土内にあり、その管轄下にあるという事実をIAEAの年次報告書やその他の文書が無視することは容認できない」と主張した78。

11月のIAEA理事会では、グロッシ事務局長が、ZNPPの状況は依然として厳しく、「7つの柱」のうち6つが完全または部分的に損なわれており、「サイトの人員配置、定期的なメンテナンス活動の実施、安定した冷却水供給を確保するための特別措置に関する問題は、ZNPPの全体的な原子力安全と核セキュリティに継続的かつ重大なリスクをもたらしている」と警告した79。さらに、「5つの原則」についても、「遵守されていないことを示す状況は見られなかった」としつつも、「IAEAの専門家による適時かつ無制限のアクセスが制限されているため、IAEAは5つの具体的原則のすべてが常時遵守されていることを完全に確認することができない」とした。

 

NPT運用検討会議準備委員会

2023年7月31日から8月11日にかけてウィーンで開催された第11回NPT運用検討会議第1回準備委員会においても、多くの国からウクライナの原子力安全・核セキュリティの状況への懸念が示され、ロシアによる侵略への非難や本件に関するIAEAの対応の取組への支持が表明された。

➢ 非同盟運動(NAM)諸国は、「国連憲章の目的及び原則、並びに国際法に従って、平和目的のために稼働中または建設中の原子力施設への攻撃や威嚇を控えるよう」、すべての国に強く求めた80。
➢ 豪州、ベルギー、ドイツ、日本、韓国、スウェーデン、スイス、英国、米国及びEUは、ロシアによるウクライナに対する戦争と、ウクライナの原子力発電所の接収・占領及び軍事活動について非難あるいは懸念を表明し、ロシアに対し、すべての原子力施設をウクライナ当局に返還し、ウクライナから撤退するよう求めた81。
➢ カナダは、「稼働中の原子力発電所に対する攻撃を含むロシアの侵略は、引き続き重大な原子力安全・核セキュリティ上のリスクをもたらしており、原子力事案・事故のリスクを著しく高めている」と懸念を表明した82。

本会合では、議長の自らの責任のもと、議長サマリー83が作成され、ZNPPの原子力安全と核セキュリティに懸念が示されたほか、ウクライナの原子力施設及び核物質の原子力安全と核セキュリティをIAEAの「7つの柱」に従って確保する必要性が複数のパラグラフで言及された。これらのパラグラフではロシアに対して直接的な非難はなされていなかったものの、ロシアは自国の原子力活動に関する記述に強く反発し文書を受入れず公式記録から外すべきと主張した。ロシアを含む複数の国が反対を表明したことを受け、最終的に議長サマリーは公式文書として残されることはなかった。

他方で、次回第2回準備委員会で重点的に議論しうる分野について勧告事項を記した文書(議長が議場配布)では、今次準備委員会会合で「多くのNPT締約国が、武力紛争地帯を含むあらゆる状況における平和目的の原子力施設及び核物質の原子力安全と核セキュリティの重要性を強調し、ウクライナの原子力施設とりわけZNPP及び核物質のセキュリティに懸念を表明した」(パラ19)ことが言及された84。そのうえで、重点的に議論すべき分野として(a)「IAEAが提唱する武力紛争中の原子力安全と核セキュリティを確保するための「7つの柱」及びZNPPにおける原子力安全と核セキュリティの確保を支援する5つの具体的な原則の遵守を強化する方法」、(b)「IAEAの活動をさらに支援する方法」の2点が勧告された。この議長による勧告は、「議長による考察」と題する作業文書として本準備委員会の公式文書とされた。

 

G7

2023年4月に開催されたG7不拡散局長級会合においては、「7つの柱」の重要性を再確認し、IAEAの取組努力を支持するほか、「ロシアに対し、ZNPP及びウクライナ全土から軍・民間の要員を撤退させ、同原発の完全な管理権を所管のウクライナ当局に返還すること、並びに原子力事故を引き起こす可能性のあるいかなる行動も取らないことを引き続き求める」などした共同声明が発出された85。


1 第3章「核セキュリティ」は、堀部純子により執筆された。
2 IAEA, “Nuclear Security Series Glossary Version 1.3 (November 2015) Updated,” p. 18. 核セキュリティの脅威対象、リスクシナリオなどについては『ひろしまレポート2023年版』134頁を参照。
3 核兵器の材料となりうるのは濃縮度が20%以上のHEUである。軍事用の大半は濃縮度が90%以上と推定される。
4 Stockholm International Peace Research Institute, SIPRI Yearbook 2023: Armaments, Disarmament and International Security (Oxford: Oxford University Press, 2023), p. 330.
5 International Panel on Fissile Material (IPFM), “Fissile Materials Stocks,” April 29, 2023, https://fissilematerials.org/. 2019年時点のデータでは、日本はHEUを1.75トン保有していたとされており、1.15トンの削減したこととなる。Nuclear Threat Initiative (NTI), “Civilian HEU: Who Has What?” October 2019, https://nonproliferation.org/wp-content/uploads/2021/10/heu_who_has_what.pdf.
6 IAEA, “Verification and Monitoring in the Islamic Republic of Iran in Light of United Nations Security Council Resolution 2231 (2015) Report by the Director General,” GOV/2023/57, November 15, 2023, p. 8.

7 本行動規範の主な目的は、放射線源の安全と核セキュリティの高いレベルでの達成、放射線源への不正なアクセス、盗取及び不法移転の防止によって、個人、社会及び環境に有害な影響が引き起こされることを抑止すること、並びに事故や悪意ある行為により引き起こされる放射線影響を最小化することである。
8 IAEA, Nuclear Security Report 2023, GOV/2023/37-GC(67)/14, September 2023, p. 14.
9 “Statement of the G7 Non-Proliferation Directors Group,” Ministry of Foreign Affairs of Japan, April 17, 2023, https://www.mofa.go.jp/files/100492352.pdf.

10 “National paper of Canada on the implementation of the Code of Conduct on the Safety and Security of Radioactive Sources 2023,” Canadian Nuclear Safety Commission, May 30, 2023, https://nuclearsafety.gc.ca/eng/resources/international-cooperation/code-of-conduct/canada-report-2023.cfm.
11 放射線源のなかでも高放射能線源は核テロのリスクが高いため代替することが望ましいとされる。
12 “FACT SHEET: President Biden Signs National Security Memorandum to Counter Weapons of Mass Destruction Terrorism and Advance Nuclear and Radioactive Material Security,” The White House, March 2, 2023, https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2023/03/02/fact-sheet-president-biden-signs-national-security-memorandum-to-counter-weapons-of-mass-destruction-terrorism-and-advance-nuclear-and-radioactive-material-security/.
13 The 2023 NTI Nuclear Security Index, NTI, July 2023, p. 36.
14 “World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements,” World Nuclear Association, November 2023, https://world-nuclear.org/information-library/facts-and-figures/world-nuclear-power-reactors-and-uranium-requireme.aspx.
15 「新設原発、中国・ロシア製が7割 技術輸出で外交手段に」『日本経済新聞』、2023年6月9日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2643R0W3A120C2000000/。

16 “At COP28, Countries Launch Declaration to Triple Nuclear Energy Capacity by 2050, Recognizing the Key Role of Nuclear Energy in Reaching Net Zero,” U.S. Department of Energy, December 1, 2023, https://www.energy.gov/articles/cop28-countries-launch-declaration-triple-nuclear-energy-capacity-2050-recognizing-key.

17 IAEA, “Research Reactor Database,” https://nucleus.iaea.org/rrdb/#/home.
18 IAEA, “Worldwide HEU and LEU Assemblies by Enrichment,” https://nucleus.iaea.org/rrdb/#/reports/summary-report/WorldwideHEUandLEUassembliesbyEnrichment.
19 IAEA, “Regionwise Distribution of HEU and LEU,” https://nucleus.iaea.org/rrdb/#/reports/summary-report/RegionwisedistributionofHEUandLEU.
20 “Technical Meeting on Nuclear Security Countermeasures for Uncrewed Aerial Vehicles Information Sheet,” https://www.iaea.org/sites/default/files/23/07/evt2005113_information_sheet.pdf.
21 Ibid.
22 IAEA, Nuclear Security Report 2023, p. 3.
23 Charles Hymas and Tony Diver, “Home Office to Install Anti-Drone Detectors to Protect UK from Aerial Terror Attacks,” Telegraph, January 25, 2023, https://www.telegraph.co.uk/news/2023/01/25/home-office-install-anti-drone-detectors-protect-uk-aerial-terror/; Charles Harrison, “UK Deploys Anti-Drone Tech in Nuclear Plants to Fight Growing Risk of ‘Devastating’ Attack,” Express, January 25, 2023, https://www.express.co.uk/news/uk/1726358/drone-terrorist-attack-nuclear-plants-uk-government.
24 Charles Harrison, “UK Deploys Anti-Drone Tech in Nuclear Plants to Fight Growing Risk of ‘Devastating’ Attack,” Express, January 25, 2023, https://www.express.co.uk/news/uk/1726358/drone-terrorist-attack-nuclear-plants-uk-government.
25 “Outpacing Cyber Threats Priorities for Cybersecurity at Nuclear Facilities,” NTI, 2016, p. 10.
26 “Addressing Cyber Threats to Ensure Nuclear Security and Safety: IAEA Conference on Computer Security Begins,” June 19, 2023, https://www.iaea.org/newscenter/news/addressing-cyber-threats-to-ensure-nuclear-security-and-safety-iaea-conference-on-computer-security-begins.

27 Ibid.
28 Rafael Mariano Grossi, “The Essential Role of Computer Security in Nuclear Security and Safety,” IAEA Bulletin, Vol. 64-2, June 2023, p. 1.
29 Mitchell Hewes, “How Artificial Intelligence Will Change Information and Computer Security in the Nuclear World,” IAEA Bulletin, Vol. 64-2, June 2023, pp. 14-15.
30 IAEA, “IAEA Director General Statement to United Nations Security Council,” May 30, 2023, https://www.iaea.org/newscenter/statements/iaea-director-general-statement-to-united-nations-security-council.

31 IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” March 9, 2023; “Ukraine War: Russian Air Strikes Cut Power at Zaporizhzhia Nuclear Plant,” BBC, March 9, 2023, https://www.bbc.com/news/world-europe-64897888; IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” December 2, 2023.
32 Olena Roshchina, “More Military at Zaporizhzhia Nuclear Power Plant Than Station Personnel,” Ukrainska Pravda, May 17, 2023, https://www.pravda.com.ua/eng/news/2023/05/17/7402612/.
33 Tom Balmforth and Sarah Mcfarlane, “Russian Forces Dig in at Ukrainian Nuclear Plant, Witnesses Say,” Reuters, May 19, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/russian-forces-dig-ukrainian-nuclear-plant-witnesses-say-2023-05-19/;「ザポリージャ原発を要塞化、ロシア軍が地雷や塹壕…駐留2,500人超え」『読売新聞』、2023年5月22日、https://www.yomiuri.co.jp/world/20230522-OYT1T50175/。
34 “Major Dam Breached in Southern Ukraine, Unleashing Floodwaters,” Reuters, June 7, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/ukraine-says-russia-blows-up-major-nova-kakhovka-dam-southern-ukraine-2023-06-06/.
35 「ザポリージャ原発の屋根に『爆発物』」『読売新聞』、2023年7月5日、https://www.yomiuri.co.jp/world/20230705-OYT1T50106/; “Russia, Ukraine Accuse Each Other of Plotting Imminent Attack on Nuclear Plant,” Reuters, July 5, 2023, https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-zaporizhzhia-idAFKBN2YK1AA.
36 IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” July 5, 2023; IAEA, GOV/2023/44, September 5, 2023, p. 32.
37 “Russia, Ukraine Accuse Each Other of Plotting Imminent Attack on Nuclear Plant,” Reuters, July 5, 2023, https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-zaporizhzhia-idAFKBN2YK1AA.
38 「ザポリージャ原発の屋根に『爆発物』」『読売新聞』、2023年7月5日。
39 “Russia Asks IAEA To Ensure Zaporizhzhia Nuclear Plant Security,” Reuters, June 23, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/russia-asks-iaea-ensure-zaporizhzhia-nuclear-plant-security-2023-06-23/.

40 IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” July 24, 2023. なお、IAEAの観測とプラント側の説明に基づく初期評価で、これらの地雷が爆発してもサイトの原子力安全・核セキュリティシステムには影響しないとされた。IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” July 5, 2023.
41 “Land Mines Placed Around Russian Occupied Zaporizhzhia Nuclear Plant, UN Says,” PBS, July 25, 2023, https://www.pbs.org/newshour/world/land-mines-placed-around-russian-occupied-zaporizhzhia-nuclear-plant-un-says; “New IAEA Complaint about Anti-personnel Mines in Russian-held Nuclear Plant,” Reuters, July 25, 2023, https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-nuclear-zaporizhzhia-idAFKBN2Z41MG.
42 “Ukraine War: IAEA Says Zaporizhzhia Nuclear Plant Out of Control,” BBC, August 3, 2023, https://www.bbc.com/news/world-europe-62412429; “Zaporizhzhia: Real Risk of Nuclear Disaster in Ukraine – Watchdog,” BBC, August 6, 2023, https://www.bbc.com/news/world-europe-62449982.
43 “Russia Says Ukraine ‘Playing with Fire’ with Drone Attack Near Nuclear Plant,” Reuters, November 3, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/russia-says-ukrainian-drones-launched-an-attack-near-zaporizhzhia-nuclear-power-2023-11-02/.
44 IAEA, “Nuclear Safety, Security and Safeguards in Ukraine Report by the Director General,” GOV/2023/30, May 31, 2023, p. 32.
45 “Russia Says Ukraine Storing Arms at Nuclear Plants, Kyiv Denies Claim,” Reuters, January 23, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/russian-spy-service-says-himars-other-weapons-deployed-nuclear-power-stations-2023-01-23/.
46 “IAEA Rejects Russian Claims That Ukraine Stores Arms at Nuclear Power Plants,” Anadolu Agency, January 25, 2023, https://www.aa.com.tr/en/russia-ukraine-war/iaea-rejects-russian-claims-that-ukraine-stores-arms-at-nuclea r-power-plants/2796455.
47 IAEA, GOV/2023/44, September 5, 2023, p. 33.
48 IAEA, GOV/2023/30, May 31, 2023, p. 33.
49 IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” October 25, 2023; “Ukraine War: Russians Likely Targeted Khmelnytsky Nuclear Plant-Zelensky,” BBC News, October 26, 2023, https://www.bbc.com/news/world-europe-67226741.
50 IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” November 29, 2023.

51 “Ukrainian Drone Struck Russian Nuclear Waste Facility Risking Disaster, Moscow Says,” BBC News, October 28, 2023, https://www.reuters.com/world/europe/ukrainian-drone-struck-russian-nuclear-waste-facility-ministry-says-2023-10-28/; IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” October 27, 2023.
52 IAEA, GOV/2022/17, March 3, 2022; IAEA, GOV/2022/58, September 15, 2022l IAEA, GOV/2022/71, November 17, 2023.これらの決議は、「IAEA事務局長に対し、ウクライナの原子力安全、核セキュリティ、保障措置に関する状況を引き続き注意深く監視し、定期的に理事会に報告するよう要請した」。
53 IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” July 24, 2023.
54 「7つの柱」とは、①原子炉、燃料貯蔵プール、放射性廃棄物貯蔵・処理施設にかかわらず、原子力施設の物理的一体性が維持されなければならない、②原子力安全と核セキュリティに関するすべてのシステムと装備が常に完全に機能しなければならない、③施設の職員が適切な輪番で各々の原子力安全及び核セキュリティに関する職務を遂行できなければならず、不当な圧力なくそれらに関して決定を行う能力を保持していなければならない、④すべての原子力サイトに対して、サイト外から配電網を通じた電力供給が確保されていなければならない、⑤サイトへの及びサイトからの物流のサプライチェーン網及び輸送が中断されてはならない、⑥サイト内外の放射線監視システム及び緊急事態への効果的な準備・対応措置がなければならない、⑦必要に応じて、規制当局とサイトとの間で信頼できるコミュニケーションがなければならない、との原則である。IAEA, “IAEA Director General Grossi’s Initiative to Travel to Ukraine,” March 4, 2022, https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-director-general-grossis-initiative-to-travel-to-ukraine.
55 ロシアのウリヤノフ(Mikhail Ulyanov)在ウィーン国際機関代表部常駐代表は3月27日、「ロシアはグロッシ氏の訪問に特別な期待を持っていない」と述べ、撤退の用意がないことを示した。「IAEA事務局長、『軍事活動続く』ザポリージャ原発を訪問…ロシアは撤退の用意なし」『読売新聞』、2023年3月29日; IAEA, “IAEA Director General Statement on Situation in Ukraine,” January 6, 2023.
56 “IAEA Director General Statement to United Nations Security Council,” IAEA News, May 30, 2023, https://www.iaea.org/newscenter/statements/iaea-director-general-statement-to-united-nations-security-council.
57 “Briefing Security Council, International Atomic Energy Agency Director Outlines Five Principles to Prevent Nuclear Accident at Zaporizhzhia Power Plant in Ukraine,” IAEA News, May 30, 2023, https://press.un.org/en/2023/sc15300.doc.htm.
58 “IAEA Chief Outlines Five Principles to Avert Nuclear ‘Catastrophe’ in Ukraine,” UN News, May 30, 2023, https://news.un.org/en/story/2023/05/1137172.
59 Ibid; “Ukraine NPP Counter Offensive ‘Concerns Dangerous Situation,’ IAEA Head,” Asahi Shimbun,June 14, 2023; “U.N. Monitor Aims to Cross Front Line in Ukraine to Inspect Nuclear Plant,” New York Times, June 13, 2023, https://www.nytimes.com/2023/06/13/world/europe/grossi-zaporizhzhia-nuclear-plant.html.
60 “Briefing Security Council, IAEA Director Outlines Five Principles to Prevent Nuclear Accident at Zaporizhzhia Power Plant in Ukraine,” United Nations, May 30, 2023, https://press.un.org/en/2023/sc15300.doc.htm.
61 Ibid.
62 Ibid.
63 IAEA, GC(66)/RES/7, September 30, 2022, p. 11. IAEA事務局に対し、「加盟国との緊密な協議のもと、平和目的の原子力施設に対する武力攻撃がもたらす核セキュリティ上のリスクと影響に対処するための新たな核セキュリティ指針の策定を検討するよう奨励する」とともに、IAEAに対し、「さらなる核セキュリティ計画にこれらの側面を反映させることを検討する」よう奨励している。(パラ66)
64 IAEA, GC(67)/RES/8, September 2023, p. 11.
65 “Joint Statement on Nuclear Safety, Security, and Safeguards in Ukraine,” at IAEA BoG Meeting, March 2023, https://www.government.is/library/09-Embassies/Vienna/230131-Joint%20Statment%20on%20Ukraine-FINAL-With%20Sponsors.pdf.

66 “China Supports IAEA’s Efforts to Ensure Nuclear Security in Ukraine,” CGTN, March 6, 2023, https://news.cgtn.com/news/2023-03-06/China-supports-IAEA-s-efforts-to-ensure-nuclear-security-in-Ukraine–1hXqLFzvtQs/index.html.
67 Ministry of Foreign Affairs of China, “China’s Position on the Political Settlement of the Ukraine Crisis,” February 24, 2023, https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/zxxx_662805/202302/t20230224_11030713.html.
68 “Foreign Ministry Spokesperson Mao Ning’s Regular Press Conference on March,” March 8, 2023, http://ag.china-embassy.gov.cn/eng/fyrth/202303/t20230308_11037728.htm.
69 “U.S. Statement on Agenda Item 3,” at the IAEA BoG Meeting, March 6, 2023.
70 “EU Statement on Nuclear Security Review 2023,” at the IAEA BoG Meeting, March 2023.
71 “EU Statement on Nuclear Safety, Security and Safeguards in Ukraine,” at the IAEA BoG Meeting, March 9, 2023.
72 “IAEA Director General Briefs Board of Governors,” IAEA News, September 11, 2023, https://www.iaea.org/newscenter/news/iaea-director-general-briefs-board-of-governors-fukushima-daiichi-alps-water-release-ukraine-iran-and-new-atoms4food-initiative.
73 “Nuclear Safety, Security and Safeguards in Ukraine: Report by the Director General,” GOV/2023/44, September 5, 2023, https://www.iaea.org/sites/default/files/23/09/gov2023-44.pdf.
74 IAEA, GC(67)/RES/16, September 2023. 本決議ではまた、2022年にIAEA理事会で採択された3つの決議を想起し、IAEA理事会がロシアに求めたウクライナの原子力施設に対する及びそこでのあらゆる行為を直ちに停止すること及びZNPPからのロシアの軍及び他の人員の撤退の要請にロシアが応えていないことに深刻な懸念が表明された。
75 IAEA, GC(67)/RES/16, September 2023;「ウクライナ侵攻 露に原発から撤退要請 IAEA決議」『毎日新聞』、2023年9月30日、朝刊、7面; “IAEA adopts resolution demanding immediate return of Zaporizhzhia Nuclear Power Plant to full control of Ukraine,” Ukrainska Pravda, September 29, 2023, https://www.pravda.com.ua/eng/news/2023/09/29/7421917/.
76 “IAEA Director General’s Introductory Statement to the Board of Governors,” IAEA, November 22, 2023, https://www.iaea.org/newscenter/statements/iaea-director-generals-introductory-statement-to-the-board-of-governors-22-november-2023.
77 “Statements to the IAEA General Conference,” IAEA, September 2023, https://www.iaea.org/about/governance/general-conference/gc67/statements.

78 “Frank Discussion Follows Submission of International Atomic Energy Agency Report to General Assembly, with Focus on Compliance, Risk of Nuclear Disaster,” UN Meetings Coverage and Press Release, GA/12558, November 8, 2023.
79 “IAEA Director General’s Introductory Statement to the Board of Governors,” IAEA, November 22, 2023, https://www.iaea.org/newscenter/statements/iaea-director-generals-introductory-statement-to-the-board-of-governors-22-november-2023.
80 “Statement by Indonesia on Behalf of the Group of the Non-Aligned States: Cluster 3,” August 8, 2023.
81 Ray Acheson and Laura Varella, “Report on Cluster Three,” NPT News in Review, Reaching Critical Will, Vol. 18, No. 5, August 9, 2023.
82 Ibid, p. 11.
83 準備委員会合における一般討論、NPTの3つの柱の討論及び各国の作業文書の内容を踏まえて作成されるものであり、通常は各準備委員会の「決定事項」(公式文書)に添付される慣行となっている。

84 NPT/CONF.2026/PC.I/6, August 10, 2023.
85 “Statement of the G7 Non-Proliferation Directors Group.”

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